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<経済レポート> 跳ぶ前に見る:米経済定点観測

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1-3月期のソフトパッチののち、米経済は4-6月期には3%前後の強い回復に回帰した模様だ。今後も個人消費の加速が成長を牽引、設備投資も緩やかながら回復を続け、2015年通年成長率は2%前半と個人予想する。インフレ率も原油価格下落一服で今年末に1%弱、来年末には2%への回帰が見込めることもあり、FOMCは9月に利上げ開始を決定するとの個人予想は維持する。もっともその後の利上げペースについてはこれを大幅下方修正し、利上げは1定例会合おきに0.25%とのペースに留まるとの見方に修正する。

個人消費の再加速で4-6月期は3%成長を見込む

1-3月期成長率がマイナスに終わったことから、2015年通年の成長ペースは筆者個人の4月時点の予想(4月7日付当レポート参照)に比べてやや下振れして推移している。1-3月期のマイナス成長(前期比年率-0.2%)による下振れを反映して、2015年通年の成長率予想を前年比+2.3%に下方修正する(4月時点予想は同+2.6%)。しかしながら、米経済は総じて1-3月期のソフトパッチから脱却して巡航速度の成長ペースを取り戻しつつある。4-6月期の実質GDP成長率は、以下に見るように前期比年率+3.0%の強い伸びを回復すると予想する。年後半は四半期毎に2~3%の成長ペースを維持するだろう。以下需要項目毎に、4-6月期の成長率予想を中心に今後の米経済を占うこととする。

個人消費は4-6月期に大幅に成長ペースを回復したと見る。5月に小売売上高は前月比+1.2%と大幅に増加し、自動車販売も年率17百万台台に急増した。実質個人消費は5月に前月比+0.6%と大幅な伸びを示した。これは、1-3月期の個人消費の減速が天候要因等の一時要因、ならびに昨年末の急激な成長からの反動に過ぎないとの見方に沿った動きである。6月についても個人消費は堅調な伸びが期待できる。6月ミシガン大学消費者センチメント指数は今年に入り低下傾向にあったが、6月に96.1ポイント(前月比6.0ポイント)と今年1月以来の水準に回復した([第1図])。最近の同指数は個人の実質可処分所得の伸び率との相関がみられる。同指数の6月の上伸は6月にも雇用が拡大して個人の購買力が増加していることを示唆している。

実質ベースの可処分所得の拡大に遅行して個人の消費意欲も上昇していると考えられる。原油価格下落開始当初の昨年末はインフレ率低下による実質可処分所得の伸びに比較して実質個人消費の伸びは弱めであり、消費者が余剰購買力を貯蓄に回す傾向も見られた。しかるに5月時点では実質個人消費の伸びが実質所得の伸びに追いついてきている([第2図])。ついては、6月の実質個人消費の同+0.2%の伸びを見込んで、4-6月期のGDP統計上の実質個人消費予想を前期比年率+3%レベルに上方修正する([第3図])。雇用拡大ペースは堅調であり、また時間当たり賃金上昇率も5月に4ヶ月ぶりに前年比2%の伸びを回復するなど、賃金もようやく上昇加速の兆しがみられる。これらの背景から、今後も今年一杯個人消費は2-3%の伸びを続け、通年でも前年比3%の伸びを達成すると見込む。

[第1図]
20150628図1

[第2図]
20150628図2

[第3図]
20150628図3

設備投資拡大ペースは緩やかにとどまる

設備投資は個人消費よりも昨年後半以来の減速が大きく、1-3月期にはGDP統計上の実質設備投資は前期比年率-2.0%のマイナス成長に落ち込んだ。4-6月期に入ってからは、設備投資にも回復の兆しがみられる。GDP統計上の設備投資のうちの機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は、5月までで前期比年率+1.5%と小幅ながら3四半期ぶりのプラス成長に回復している([第4図])。

設備投資のうち建物などの構造物投資は、4-6月期に大幅回復すると見る。GDP統計上の構造物投資は1-3月期に前期比年率-18.8%とやや異常値とも思えるマイナス成長であった。同需要項目の基礎統計となる民間非住宅建設支出統計を見ると、商業施設中心に建設支出が3月、4月に急増している。これは四半期ベースでは前期比+22.7%という大幅な増加になるペースである([第5図])。以上より、機器投資は小幅な伸びに留まるものの、構造物投資が前期の反動で大幅増加すると見て、これに知的財産投資を合わせた実質設備投資は1-3月期のマイナス成長からプラスに転化すると考えられる。4-6月期GDP統計における実質設備投資は前期比年率+8.0%の成長と見込む。

しかしながら中期的には、企業の設備投資意欲はまだ強いとは言えず、設備投資拡大ペースは緩やかになると引き続き見る。原油価格下落とドル高により、石油産業と海外部門の企業収益がそれぞれ鈍化している。4-6月期企業収益統計によれば、企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)のうち国内部門の伸びは前年比+9.0%と前期の同+2.7%から加速したが、うち石油産業は同+8.5%の伸びにとどまっている。またドル高の影響により海外部門企業収益は同-13.1%と2四半期連続のマイナスになっている。これらを合わせた全体の企業ネットキャッシュフローは前年比+3.0%と緩やかな伸びにとどまった。企業設備稼働率も5月時点で78.1%の低水準である。企業設備投資の決定要因と当レポートで見る企業キャッシュフローと設備稼働率は、設備投資の伸びが今後も緩やかにとどまることを示唆している。さらに最新の6月フィラデルフィア連銀製造業景況感調査によれば、6ヶ月先の設備投資見通しを表すDIは8.1ポイント(前月比-8.7ポイント)と、2013年3月以来の低水準に低下した([第6図])。中期的な設備投資拡大ペースは1桁台の緩やかなものに留まるとの見方は維持したい。

[第4図]
20150628図4

[第5図]
20150628図5

[第6図]
20150628図6

住宅投資は伸び加速、在庫調整は継続と見る

住宅投資も4-6月期には成長が加速して前期比年率約+10%の成長に回復すると見る。GDP統計上の住宅投資の基礎統計となる住宅着工戸数は、4-5月までで前期比+12.5%と、前期のマイナスの伸びから大幅に反発している([第7図])。のみならず、5月には住宅着工許可件数が2007年以来の高水準に急増しており、今後も住宅着工戸数は堅調な増加が見込まれる(6月20日付<経済指標コメント>参照)。住宅市場では販売の増加に対する在庫不足から需給が極めてタイトであり、住宅価格上昇率には加速の兆しがみられる。供給の増加は住宅市場の需給緩和にも必要なものであり、需要が牽引する住宅着工増加は今後も継続しそうだ。

企業在庫については、在庫売上高比率の上昇が最近顕著であり、企業は今後在庫調整を余儀なくされるだろう。在庫循環図でも現在は在庫調整局面にあり、今後年末にかけて企業在庫は成長にマイナスの寄与をすると見る。

輸出の減少と輸入増加で大幅に1-3月期に成長率を押し下げた純輸出も、4-6月期はその反動でわずかに成長を押し上げると見る。貿易収支統計によれば、4月には実質ベースの財輸出が前月比+2.4%増加、同輸入は同-3.4%減少しており、1-3月期に比べて実質ベースの財収支赤字は縮小している([第7図])。もっとも、海外景気の減速やドル高といった輸出抑制要因は今後安定しつつも継続し、内需拡大により輸出には増加圧力がかかることから、中期的には財・サービス収支赤字の拡大基調は継続すると見る。

[第7図]
20150628図7

[第8図]
20150628図8

FRBの9月利上げ開始予想は維持するもその後のペースは下方修正

雇用は今後も堅調な拡大を続けると見る。5月の非農業部門雇用者数は前月比+280千人と増加ペースを加速させた。新規失業保険申請件数の4週移動平均は6月20日時点で273.35千件と、先月の同時期(272.0千件)と概ね同水準で低位安定している。従って非農業部門雇用者数は6月も+200千人を超える増加を見せると見る。中期的にも堅調な雇用拡大ペース継続を支持する材料がある。米労働省の求人労働異動調査(JOLTS)によれば、4月の欠員率(Job Openings Rate)は3.7%と、現行統計が開始された2000年12月以来最高の水準にまで上昇した。6ヶ月移動平均をとってみても、現在の欠員率は金融危機前のピークを超える水準にある([第9図])。これは、米労働市場の需給が金融危機以前の成長期よりもタイトになっていることを示唆している。5月時点で前年比の雇用増加ペースは+2.2%と金融危機前のピークである2006年の水準に既に回帰しているため、増加ペースのこれ以上の加速は見込みにくいものの、雇用市場は2%前後の拡大ペースで消費者購買力の拡大を支えると見る。

インフレ率については、原油価格下落の一服で今後来年2016年末にかけて徐々にFRB公開市場委員会(FOMC)の目標である2%に回帰していくと見る。総合個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)と同コア指数が今後毎月+0.1%のペースで上昇すると、今年末にPCEインフレ率は前年比+0.7%、同コアインフレ率は同+1.2%となる計算である。2016年に月次の伸び率が+0.15%に加速すれば2016年末にはPCEインフレ率、同コアインフレ率はいずれも同+1.8%に回帰する計算になる。

FRBの金融政策については、9月のFOMC定例会合で+0.25%の利上げ開始が決定されるとの個人予想を維持する。FOMCは年内の利上げ決定にあたっては「跳ぶ前に見る」慎重姿勢を基本的には維持しているが、上記の経済指標及び見通しは、9月に跳ぶことを十分に正当化しうるものである。しかしながら、その後の利上げペースについてはこれまでの予想を下方修正せざるを得ない。最近の当レポートで見てきたように、定例会合毎に0.25%という従前の利上げ予想に対しては次のような背景から下方リスクが高まっていた。一つは、FOMC委員経済予測による適正なFF金利水準予測が6月予測にかけて下方シフトし、6月時点ではFF金利レンジ中間値の委員予測中央値が今年末0.625%、2016年末1.625%となっていることである。これらの予測は今年末のFF金利誘導目標レンジが0.50-0.75%、2016年末で1.50-1.75%であることを示唆している。これはほぼ1会合おきに0.25%の利上げペースに相当する。もう一つは、テイラー・ルールによる適正FF金利水準推計結果も同様に、2016年初の適正FF金利水準を1%強、2016年末の同水準を約2%と示唆していることである(6月21日付当レポート参照)。以上より、今年末のFF金利目標レンジについての筆者予想を0.50-0.75%に下方修正する(4月時点の予想は0.75-1.00%)。来年については、8回のFOMC定例会合のうち4回の会合での利上げを見込み、2016年末の同レンジを1.50-1.75%と予想する。

[第9図]
20150628図9

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