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<経済レポート> 一人成長は続く:米国経済定点観測

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米経済は今年後半にも2%台半ばの成長を維持すると見る。直近の経済指標はこの見方を支持する結果となっており、かつこれはFOMCの年内利上げ予想をも支持するものである。リスク要因として海外景気減速、株価下落、ドル高が考えられるが、いずれも米経済成長に現在のところは重大な悪影響は与えないものと見たい。

個人消費は3%の拡大を維持すると見る

25日に公表された米4-6月期実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+3.9%と、ソフトパッチのあった1-3月期(同+0.6%)から力強い回復を見せた。年後半はこの反動でやや成長率は減速するものの、潜在成長率を超える2%台半ばの成長を継続すると筆者個人は引き続き見ている。本レポートでは直近の経済指標をもとに7-9月期以降の米経済成長率予想を点検することとする。

個人消費は年後半も引続き3%レベルの成長を続け、米経済の牽引役になると見る。GDP統計確報値によれば4-6月期の実質個人消費は前期比年率+3.6%と、改訂値の同+3.1%から大幅に上方改訂された。改訂値時点で8、9月の実質個人消費が前月比+0.2%の増加の場合7-9月期の実質個人消費は前期比年率+2.5%となる計算であった。4-6月期確報値の上方改訂による発射台の上ブレで、7-9月期の個人消費は+3%台の成長が十分可能になる。雇用・賃金も個人消費の追い風だ。8月時点で非農業部門雇用者数は前年比+2.1%、実質賃金は同+1.7%の伸びを示しており、これらを合わせた実質購買力は同+3.8%の伸びとなる。過去3四半期の消費者の限界消費性向は約0.9であり([第2図])、従って雇用と賃金の伸びからは実質個人消費は潜在的に3%台の拡大が可能な条件にある。

一方で、8月の世界同時株安に伴い消費者センチメントや株の資産効果の低減が考えられる。ミシガン大学消費者センチメント指数は9月時点で87.2ポイントと3ヶ月連続で低下している。実質個人消費の前年比の伸び率と消費者センチメント指数の間にはある程度の相関が認められる([第3図])。2012年から現在までの月次データに基づく相関からは、87.2ポイントの消費者センチメント指数は上記よりもやや弱めの実質個人消費前年比の伸び+2.5%に相当する。従って今後の個人消費は+3%を大きく上回る消費者購買力の伸びより低めの伸び率を想定しておく必要はあるだろう。これらを勘案し、7-9月期のGDP統計上の実質個人消費の伸びを前期比年率+3.0%と個人予想しておく。

[第1図]
20150928図1

[第2図]
20150928図2

[第3図]
20150928図3

企業設備投資は目先加速へ:中期的には緩やかな拡大

企業設備投資は4-6月期に前期比年率+4.1%の伸びだったが、7-9月期には同+7%台に加速すると見る。設備投資のうちの機器投資の基礎統計を見ると、8月までの7-9月期非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は前期比年率+3.6%の伸びとなっている。過去20四半期のデータに基づく相関からは、これを基礎統計とするGDP統計上の機器投資は同+6.4%の伸びになる計算になる。また構造物投資について、7月建設支出統計によれば7-9月期の民間非住宅建設支出は前期比年率+9.1%となるペースで、これは前期の同+44.4%からは大きな減速となる([第4図])。しかし、前期に積み上げた建設支出はまだ4-6月期GDPに計上されていないと見られることから、7-9月期の構造物投資も前期並みの前期比年率+6%台の伸びが期待できる。これらに知的財産投資を合わせると7-9月期の企業設備投資は前期比年率+7%台の成長ができる計算になる。

企業の設備投資意欲も不悪である。9月フィラデルフィア連銀製造業景況感調査によれば、6ヶ月先の設備投資DIは27.2ポイント(前月比+8.8ポイント)と急上昇した。四半期ベースで見ても、同DIの7-9月期平均は17.8ポイントと前期平均の13.6ポイントを上回っている([第5図])。これは7-9月期の企業設備投資の伸びが前期より加速するとの見方を支持している。

もっとも企業収益の動向は、今後も企業設備投資の伸びは緩やかなペースに留まることを示唆している。4-6月期の企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年比+0.6%の伸びにとどまり、前期の同+4.6%から大きく減速した。内訳をみると、収益の伸びを抑制したのは原油価格下落の影響をうけた公益事業や石油産業であり、これらを除いた国内非金融機関企業収益は同+17.8%と好調である([第6図])。しかしながら企業全体の収益の伸び減速に加え、企業ネットキャッシュフローの伸びも4-6月期には前年比+0.4%にまで落ち込んでいる。企業設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローが低迷している間は企業設備投資の急激な拡大は望みにくいだろう。また、鉱工業設備稼働率の低下(8月時点で77.6%と1972-2014平均の80.1%を大幅に下回っている)も企業の設備投資意欲を今後抑制する要因とならざるを得ない。

[第4図]
20150928図4

[第5図]
20150928図5

[第6図]
20150928図6

住宅投資も前期並みの成長、貿易赤字も7-9月期は縮小ペース

住宅投資は7-9月期も前期並みの前期比年率+9%レベルの成長を維持すると見る。基礎統計となる7-9月期住宅着工戸数は8月までで前期比-1.2%とマイナス圏にある([第7図])。しかしこれは前期の住宅着工の急増(同+18.4%)からの反動であり、かつ前期にはこれらの着工がすべてGDP統計に反映されていない可能性が高い。前期からの積み残し分の計上も勘案すれば、7-9月期に前期並みの住宅投資の拡大は十分に考えられる。

在庫投資は7-9月期から成長にマイナス寄与すると見る。企業在庫統計によれば、7月に企業在庫の3ヶ月前対比の伸びは大幅に減速した。また在庫売上高比率は1.36倍と引続き高水準にある(9月20日付<経済指標コメント>参照)。在庫循環図上は現在の在庫循環は「在庫調整」局面に入りつつある。4-6月期GDP統計では企業在庫の成長への寄与度が+0.02に減速している。これらの状況からは今後2四半期程度にわたり在庫調整は成長の抑制要因となるだろう。

純輸出は7-9月期のGDPにわずかながらプラスの寄与をすると見る。海外経済の減速とドル高により中期的に輸出が減速している状況であることは確かである。しかし、7月までの貿易収支統計によれば過去4ヶ月間の実質ベースの財の貿易収支赤字は概ね横ばい状態にある([第8図])。四半期ベースでは、7-9月期の実質ベースの貿易収支赤字は前期に比べて縮小するペースとなっている。

[第7図]
20150928図7

[第8図]
20150928図8

中国減速の影響は限定的、ドル高も企業に有利

以上より、7-9月期の実質GDP成長率についての筆者個人の予想を前期比年率+2%台半ばとする。その後10-12月期も+2%台の成長を継続すると見ることから、結果2015年通年の成長率は前年比+2%半ばとなる計算になる。この成長率は米議会予算局(CBO)が推計する今年の潜在成長率(+1.7~1.8%)を上回るペースであり、米経済が巡航速度以上の成長を継続することを意味する。またこの予想は、9月21日付当レポートで見た、FOMCの年内利上げ開始予想の前提とも整合しており、金融政策についても従前の予想(年内利上げ開始)を維持することとする。

この予想に対するリスク要因はむろん、8月の世界同時株安の影響である。筆者個人は、NYダウが15000ドルを大きく下回らない限り株価は再び上昇トレンドに回帰すると見ており、これまでのところ株価はこの見通しに沿った動きとなっている。世界同時株安は中国を中心とする海外経済減速という実体経済上のマイナス要因の表象に過ぎないとの考え方からは、むしろ海外経済減速とドル高の米経済への影響を考えることが妥当であろう。しかしその観点からも、9月21日付当レポートでみたように米経済の中国経済との相関はほとんどなく、中国経済減速による米経済への影響は限定的といってよいだろう。

ドル高も総合的に見れば米経済にプラスの影響をもたらすはずである。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における製造業の受取価格DIから支払価格DIを差し引いた交易条件の推移を見ると、ドル高が始まった昨年後半からこれが更に改善し、7-9月期時点では2002年以来の高水準にまで上昇している([第9図])。ドル高による輸出の減速は統計上成長押し下げ要因であるが、交易条件の好転は総合的な企業の利鞘拡大につながり得ることから企業収益の底支え要因となる可能性はある。これが引いては賃金上昇を通じた米経済拡大を支えるという波及は十分にありそうな仮定である。

[第9図]
20150928図9



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