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<経済レポート> 長く穏やかに:日本経済定点観測

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日本経済は4-6月期にマイナス成長に転化したが、7-9月期はプラス成長に回復すると見る。もっともその反発力は強くはないだろう。企業部門は引き続き緩やかな成長にとどまり、輸出の伸びには期待しづらいことから、日本経済成長率の牽引役として鍵を握るのは家計になりそうだ。なお、4-6月期実績と直近の経済指標に基づく短期的見通しから、筆者個人の成長予想を大幅に下方修正する。

GDPはほぼトレンド水準、需給ギャップは縮小

まず、現在の日本の実質GDPの立ち位置を見てみよう。[第1図]は、2012年10-12月期から2015年4-6月期までの実質GDP(対数値)と、その長期トレンド(1994-2015年の四半期データをHPフィルターで平滑化したもの)を示したものである。この図からは次のことが読み取れる。第1に、現在2015年4-6月期の実質GDP(529.0兆円)は、消費税率引上げ前の駆け込み需要発生直前(2013年10-12月期)の水準(529.1兆円)にほぼ等しい。つまり、日本経済は反動減から消費税率引上げ前の水準にまで回復したものの、当時から現在までほぼゼロ成長にとどまっていることになる。第2に、1994年からの長期トレンド値(4-6月期時点で530.6兆円)との比較では、ほぼ現在の実質GDPはトレンドに沿っている。ここから算出されるトレンドと実績の乖離(需給ギャップ)は約-0.3%となる。第3にしかしながら、2012年10-12月期を起点として年率+2%の成長を示すラインを引いてみると、そのライン(4-6月期時点で543.4兆円)からは大きな乖離がある。政府が掲げる「実質+2%」の持続的成長目標との関係からは依然経済成長ペースは大きく劣後していることになる。

HPフィルターを用いたトレンド抽出の場合、直近のサンプルの変動がトレンドにより大きく反映される。そのため、同方式では消費税引上げに伴うGDP低下が反映され、トレンドGDPが低めに出ている可能性がある。上記の筆者推計のトレンドGDPとのギャップ-0.3%に対し、内閣府は4-6月期時点のGDPギャップを-1.6%と推計している(ここから計算される潜在GDPは約537.6兆円)。ただいずれにおいても、マイナスの需給ギャップはかなり縮小しており、今後年率1%の成長ができれば需給ギャップは解消すると見られる。一方、上記のHPフィルター推計による4-6月期時点の潜在成長率は年率約+0.8%と推計される([第2図])。これは内閣府の推計する同+0.5%よりもやや高めであるが、2012年以降現在までほぼ横ばいで推移している。つまり、日本の潜在成長率は金融危機からの回復に伴う上昇以降ほとんど伸長していないとの結果になる。

上記より、①日本経済は長期的な成長トレンドにほぼ沿った水準に回帰しつつある、②しかしその成長トレンドは消費税率引上げによる成長ペース下方シフトを織り込んだものであり、持続的2%成長からは相当に下方乖離している、③日本の潜在成長率は金融危機からの回復要因を除いてほぼ横ばいにとどまっている、ことが推測できる。一方で、④日本経済ののりしろは相当程度に縮小しており、需給のタイト化が進んでいることも推察できる。

[第1図]
20151004図1

[第2図]
20151004図2

家計消費の目先の反発は弱め:中期的には2%成長可能

以下では、直近の経済指標をもとに主に7-9月期の実質GDP成長率の個人予想を見直すことで日本経済の定点観測を行う。まず、消費税率引上げ後の反動減から比較的好調に回復してきた家計消費から見る。GDP統計上の実質家計消費は消費税率引上げ直後の2014年4-6月期に大幅マイナスとなったが、その後3四半期連続前期比プラス成長で日本経済の成長回復を牽引していた。しかしながら家計消費は今年の4-6月期に急減速し、GDP統計上の実質個人消費は前期比年率-2.8%のマイナス成長となった。

7、8月の家計消費はやや回復している。総務省家計調査による家計消費支出実質指数(二人以上の世帯)は2ヶ月連続で前月比増加した。8月までの7-9月期同指数は前期比+0.6%と、前期の同-3.2%からわずかにプラス転化している。同指標との相関をもとに7-9月期GDP統計上の実質家計消費の伸び率を推計すると前期比+0.3%(同年率+1.0%)との計算になる。ついては、7-9月期GDP統計上の実質家計消費を前期比年率+1%レベルの伸びと新たに個人予想することとする。

それでもなお、実質家計消費の水準(7-9月期予想値年率約299.4兆円)は、消費税率引上げ駆け込み需要前の水準(2013年10-12月期で307.5兆円)を約-2.6%下回っている。この差分は概ね3%の消費税率引上げ幅に等しい。消費税率引上げに伴う反動減が駆け込み需要を上回り、引き上げ分だけ実質家計消費の押し下げ効果をもたらしたことは、現時点ではもはや概ね認めざるを得ないところである。一方で、家計消費を巡る環境は決して悪くはなく、年末にかけては再び拡大ペースを加速させる可能性が高いと見る。総務省家計調査における勤労者世帯の実収入(名目)は4月以降前年比でプラスの伸びを継続しており、8月時点で前年比+2.2%となっている。可処分所得(名目)も8月時点で同+1.8%の水準にある。家計所得の伸びからは、今後家計消費が2%レベルの拡大に近々回帰する可能性が高いと考えられる。

[第3図]
20151004図3

貿易赤字は拡大基調で成長にマイナス寄与を見込む

企業設備投資は過去4四半期のうち3四半期において前期比マイナス成長を記録するなど、家計消費に比較するとその回復ベースは引き続き鈍い。企業設備投資低迷の継続的な要因としては、設備稼働率の低さが考えられる。製造工業設備稼働率指数は7月時点で96.9(2010年=100)と、2010年の水準を下回っており、製造工業にはまだ過剰設備が存在することを示唆している。これに加えて海外景気減速懸念が設備投資の抑制要因となっていると考えられる。経済産業省鉱工業生産指数統計によれば、8月までの7-9月期資本財出荷は前期比+0.3%と前期のマイナス成長からわずかにプラス転化している([第4図])。7月までの資本財出荷との相関からは、7-9月期のGDP統計上の実質企業設備は前期比年率+1%台半ばのプラス成長転化と推計できる。

住宅投資はその水準はまだ低いものの、過去2四半期連続でプラス成長を続けている。7-9月期にも同レベルのプラス成長が期待できる。先行指標となる住宅着工戸数統計は、7-9月期の住宅着工戸数は前期比で大幅なマイナスの伸びとなる見込みである([第5図])。しかしながら、この落ち込みは6月の一時的な着工戸数の急増(分譲住宅着工の大幅増加)からの反動であり、着工の積み上げのGDP統計への計上ペースのラグを勘案すれば、前期の着工が7-9月期にも継続計上される可能性が高いと見る。

純輸出は前期に続き7-9月期にも成長にマイナスの寄与となりそうだ。8月の貿易統計によれば、数量ベースの輸出は前年比-4.2%と2ヶ月連続の減少、同輸入も4ヶ月連続マイナスの伸び乍らそのマイナス幅は-0.7%にとどまっている。特に対中国の輸出が前年比-4.2%と2月以来のマイナスに転化している。季節調整済の名目貿易収支は8月にかけて赤字拡大傾向にあり、引き続き貿易赤字が成長を押し下げる要因になりそうだ([第6図])。企業在庫は7-9月期にも3四半期連続となる成長へのプラス寄与を見込む。経済産業省鉱工業生産指数統計によれば引き続き企業在庫は高水準にあり、在庫調整ペースは緩慢である。

[第4図]
20151004図4

[第5図]
20151004図5

[第6図]
20151004図6

個人予想は下方修正:2015年暦年成長率は1%を割り込む見込み

以上より、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.8%程度の弱い反発に留まると見たい。その後10-12月期には家計消費を中心にやや成長が加速して2%台の成長を実現、来年1-3月期は再び巡航速度の成長に回帰して+1%弱の成長になると見る。結果、2015年暦年の成長率は前年比+0.7%、2015年度成長率は前年度比+1%強を見込み、これを筆者個人の新たな成長予想とする。これは、7月時点の個人予想(7月5日付当レポート参照)で前者を+1%強、後者を+2%弱と見ていたことからは大幅な下方修正となる。

インフレについて、原油価格低下の影響で引き続き消費者物価指数の前年比伸び率は低迷している。コアインフレ率(生鮮食品を除く総合指数)の前年比伸び率は前年比ゼロ近辺にあるものの、来年半ばには原油下落要因が剥落して同+1%まで伸び率が上昇すると見る。一方で、コアコアインフレ率(食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数)の前年比の伸び率は8月時点で+0.8%と、1998年以来の高水準にまで上昇している(消費税影響を除く)。これは日本経済全体ののりしろの縮小に伴う需給のタイト化が徐々にインフレ圧力として示現しつつある可能性を示唆している。コアインフレ率の2%目標達成はまだ困難であるものの、それは必ずしも日本経済のデフレ圧力が拡大していることを意味することにはならないだろう。

上記の個人予想に対するリスクは下方である。中国経済の減速はすでに企業設備投資の低迷や輸出の減速に織り込まれているとの見方を基本的には上記ではとっている。日本の中国の成長の間には、過去20年間はそれ以前にくらべてやや相関が見え始めている([第7図])が、中国経済成長が6%レベルにまで減速する分にはこれを要因として日本がリセッションに陥るリスクは小さいと見てよいだろう。年末にかけての日本経済の短期的な下方リスク要因はむしろ、世界同時株安にともなう景況感の悪化とこれによる家計消費の更なる減速である。また中国経済のファンダメンタルズが想定以上に悪化していた場合やその懸念が他のアジア各国経済の想定以上の減速をもたらした場合、輸出の減少を通じた成長押し下げの可能性がある。

[第7図]
20151004図7

[第1表]
20151004表1

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