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<経済レポート> 待てば海路の。。:9月FOMC議事要旨

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9月FOMCの議事要旨からは、FOMCの経済・インフレ見通しは基本的に維持され、ただ世界同時株安や中国経済減速懸念が見通しに与える影響がないことを見極める追加情報を待つために利上げが見送られたにすぎないことが読み取れる。筆者個人の年内利上げ開始予想を維持しておきたい。金融市場は安定を取り戻しつつあることから、注目は12月FOMCまでに公表される実体経済指標となる。

「労働市場は著しく改善」

先月9月16、17日に開催されたFRB連邦公開市場委員会(FOMC)では、FF金利誘導目標レンジ引上げの開始が見送られた。声明文では「市場ベースのインフレ予想は低下」「最近のグローバルな経済と金融動向は経済活動を幾分抑制するかもしれず、短期的にインフレに更なる下方圧力をもたらす可能性が高い」と、8月のいわゆる世界同時株安の動向に関する1文が挿入された(9月21日付当レポート参照)。本レポートでは、8日に公表された同会合の議事要旨を分析し、利上げ見送りの背景と今後の金融政策を探る。

まず経済条件と見通しに関する議論を見ると、FOMC参加者は総じて米経済が個人消費を牽引役として適度なペースで拡大していると見ている。「個人消費は強いペースで上昇している」とされ、小売や自動車販売などのコンタクト先も「総じて見通しに楽観的」とされた。住宅セクターについては、最近の住宅販売増加や着工増加を反映して「改善している」とされた。一方で企業部門については「まちまち」とされた。「自動車産業は好調」だが「ドル高が輸出財生産を抑制している」、さらに「エネルギーセクターの見通しは悪化している」とされた。強い個人消費に加え、ここ数ヶ月の間に住宅市場の基調判断は改善している一方で、為替レートや海外景気の影響を受ける企業部門はまだ回復が遅めとの見方で、これは当レポートの見方とも同じである。

労働市場についても改善が進んだと判断されている。労働市場条件は「今年前半から著しく改善した」とされ、失業率は「ほとんどの参加者が長期均衡水準と見るレベルにまで低下した」「求職意欲喪失者や経済的理由によるパートタイマー数は減少した」と認識されている([第1図]、[第2図])。さらに、「ほとんど」の参加者が「労働資源の余剰は相当に縮小した」と見ておりそのうちの「何人か(a few)は余剰が完全に解消した」と述べた。一方で「いくらかの(some)」参加者は「失業率計測される以上の市場ののりしろが依然残っている」と考えており、その根拠として「労働参加率の低さ(特に働き盛りの世代)」と「経済的理由によるパートタイマー」数が依然高いことを挙げている。全体としてみれば、労働市場ののりしろがほぼ解消しつつあるとの見方の参加者の方が数の上では優勢である。

[第1図]
20151011図1

[第2図]
20151011図2

「株安の米経済への影響は小さい」

賃金については「広範囲な加速は見られない」と、従前通り賃金上昇率が低位にとどまっているとしたうえで、その背景について議論がなされている。「いくらかの(some)参加者」はこれを「労働市場の使用率の水準からくる上方インフレ圧力の欠如の証跡」とし、低い賃金上昇率は労働市場の余剰の証だとした。一方で「数人の(several)参加者」は「低い生産性と低いインフレ率が緩やかな賃金上昇に寄与している」と述べている。ここでも、賃金上昇率の低迷を労働市場の余剰に帰する意見は相対的には少数にとどまっており、利上げの条件としての労働市場余剰の解消はほぼ達成されたと見る参加者の方が多数だといえるだろう。なお、筆者個人は上記のうちの後者の考え方に近く、現在の米国の賃金上昇率は主に低い労働生産性と低インフレにより抑制されていると考えている([第3図]及び5月11日付当レポート参照)。

消費者インフレ率について参加者は「インフレ率の(2%目標からの)下方乖離の相当の部分は原油と商品価格下落による一時的な効果の結果」と判断したとされ、インフレ率低下が一時的なものとの従前からの見方を維持している。なお、「何人か」の参加者は原油価格の低下一服後「1月以降コアPCEインフレ率は委員会の目標に近い年率1.7%のペースで上昇している」ことを指摘している([第4図])。

利上げ見送りの大きな要因と考えられる8月の世界同時株安や中国経済減速懸念拡大についても議論がなされている。「中国経済の減速の顕在化とその他国経済への潜在的な波及は米国の輸出をある程度抑制する可能性がある」とされ、さらに中国や他の新興国経済への懸念はドル高と原油価格下落につながり、短期的には米国の消費者インフレ率を抑制する可能性があるともされた。しかし、米国株価の下落については「著しい市場変動をともなう株価下落とリスクスプレッド拡大」を認識したものの「多くの参加者はかかる動向の国内経済活動への影響は小さい可能性が高いと判断した」とされ、株価下落の米経済への影響を限定的と判断している。さらに「いくらかの参加者」は「これまで相対的に高かった株価のバリュエーションとの関連の中でみられるべきである」と述べ、株価下落がバリュエーション調整に過ぎないとの見方を示している。当レポートでもほぼ同様の見方をとっている(8月27日付当レポート参照)。

[第3図]
20151011図3

[第4図]
20151011図4

「追加的情報を待つのが賢明」として利上げ開始を見送り

経済条件と金融政策に関する議論においては「多くの参加者」が「最近の(株価下落等の)動向が経済活動とインフレに与える影響は小さいかまたは一時的」と見ており、「ほとんどの(most)参加者は、現状の経済条件と経済活動見通し、労働市場、そしてインフレに関する彼らの評価に基づけば、金融引締めの条件は満たされているかまたは年末までに満たされると引き続き予想した」とされ、世界同時株安等が金融政策見通しに大きな影響を与えていないことが示唆されている。もっとも、「いくらかの(some)」参加者はインフレと経済の下方リスクが上昇したと判断し、また何人かの(a few)参加者は、賃金上昇率が高まるまで労働市場余剰は解消されていないとの見方を示したが、相対的には少数派にとどまっている。

しかしながら、利上げ開始のタイミングについては「多数のリスクが強調された」とされ、9月の利上げ開始に限っては慎重な意見が多かったと見られる。いくらかの(some)参加者は「経済成長がトレンド以上のペースを維持しかつインフレの下方圧力が後退することが明瞭になる前にFF金利誘導目標レンジを引き上げた場合、インフレの下方リスクが顕在化することを懸念」し、また「インフレ率が2%を下回る期間が長期化した場合、時期尚早な利上げは委員会の信頼を損なう可能性がある」と述べた。

参加者によるここまでの議論を踏まえた投票メンバーによる議論では、最終的に「一人(利上げを主張し決定に反対票を投じたリッチモンド連銀ラッカー総裁)を除くすべてのメンバーは、米国経済は強さを増し労働市場の余剰は減少したものの、経済条件はFF金利誘導目標レンジを本会合で引き上げることを正当化しないと結論付けた」「彼らは前回会合から本会合までの間の動向は委員会の経済見通しを本質的に変更するものではないと合意した」「しかしながら、一部には経済とインフレ見通しへのリスクを理由に、経済見通しが悪化しておらずまたまた中期的にインフレ率が2%にむけ徐々に上昇するとのメンバーの確信を支持する追加的情報を待つのが賢明と委員会は決定した」として、本会合における利上げ決定を見送る判断をした。なお、投票メンバーの利上げ開始時期に関する見方は「多くの(many)メンバーは(労働市場とインフレの)条件が年後半に満たされる」と予想しているのに対し、経済活動とインフレへ見通しへの下方リスクを懸念したメンバーは数人(several)にとどまった。

年内利上げ開始の個人予想は維持:今後の雇用・小売・インフレ指標に注目

以上の議事要旨の議論を要約すると次のようになる。すなわち、①総じてFOMC委員は8月世界同時株安や中国経済減速懸念に拘わらず米経済とインフレ見通し並びに年内利上げ開始見通しを変更していない、②9月の利上げ見送りは、これらの見通し変更が不要であることを今後の経済指標等で確認するための期間を置くために過ぎない、ということである。ここからは、利上げ開始を来年以降に後送りする意図が大きく高まった証跡はなく、これは声明文と同時に公表されたFOMC委員経済予測でも確認されている(17人中13人の委員が年内利上げ開始を予測)。従って、年内にFF金利誘導目標レンジが1回0.25%引き上げられるとの筆者個人予想を変更する材料は議事要旨には見当たらないといえるだろう。9月FOMCの議事要旨は、市場の反応のほどにはハト派ではないと見たい。

FOMCのいわゆる「追加的情報」について、金融市場と実体経済という2つの観点から見てみたい。まず金融市場については、9月会合以降概ね落ち着きを取り戻したといっていいだろう。NYダウは8月下旬の同時株安で直前の17500ドルレベルから一時15300ドル台にまで下落したが、10月9日現在で17084ドルにまで回復している。テクニカルには、3番底を付けた後に9月の戻り高値を上回っており、今後は上昇に転ずることを示唆する形状である([第5図])。筆者個人は年末にNYダウは同時株安開始直前の水準である17500ドルレベルにまで上昇すると見ている。

次に実体経済については、9月FOMC会合以降の経済指標は現在のところやや軟化していると言わざるを得ない。8月の実質個人消費は前月比+0.4%と力強い伸びを示した。しかし9月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+142千人の伸びにとどまり、また9月ISM指数は製造業・非製造業ともに連続で低下した。ただ、9月指標はある程度世界同時株安を契機とした市場センチメントの悪化の影響を受けていると考えられることから、市場センチメントに起因する経済指標悪化は早晩回復すると見たい。年内に利上げ開始が決定されるためには、遅くとも12月13、14日のFOMC定例会合までに公表される経済指標が、これまでのFOMCの経済・インフレ予測を支持するものである必要がある。今後の実体経済指標で注目するべきは、まず10月、11月の雇用統計である。失業率には大幅な変動はないと考えられることから、非農業部門雇用者数の伸びが現状以上の大幅減速をしないこと、具体的には前月比+150千人前後を維持することが利上げ開始の条件の目途と見る。同じく10、11月に小売売上高が大幅減少しなければ、株安の消費者センチメントへの波及が限定的と見ることができる。インフレ指標では、コア消費者物価指数が大幅に低下に転じなければ、インフレ見通しは維持できると見たい。

一方で、中国をはじめとする新興国経済の減速が為替レートや実体経済を通じて米経済に与える影響の確認には時間を要する上不確実要因も多い。貿易収支統計によれば、米国に対外輸出は8月にかけても継続的に減速を続けている([第6図])。海外経済減速とドル高への影響の見極めには厳密には数ヶ月単位での確認を要すると考えられることから、この点は上記予想に対するリスク要因といえる。なお、個人的には利上げ開始は年内に行うことが賢明と見る。金融危機に端を発する景気後退が2007年12月に始まったことを考えれば、景気循環を10年とすると次の景気のピークは2017年頃つまり約2年後に訪れる可能性がある。次の景気後退開始時に十分な金融緩和余地を残すためには、2017年時点でFF金利誘導目標を2%~3%にまで引き上げておくのが得策である。

[第5図]
20151011図5

[第6図]
20151011図6

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