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<経済レポート> 株安から立ち直り:米消費者センチメントと企業景況感

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NYダウは8月下旬の同時株安から反発し、株安開始直前の水準近くにまで回復した。これに伴い消費者センチメントや企業景況感も10月に持ち直している。これらの先行指標を見る限り世界同時株安の実体経済への影響は一時的なものにとどまっている。9月に軟化した経済指標は10月には回復すると見たい。米経済成長と金融政策の個人予想は維持する。なお、最近のFRB高官のハト派発言が報道されているが、これらは9月定例会合以降のFOMC内の勢力図の変動を示唆するものとはいえないと見る。

株式市場は同時株安から一旦持ち直した

8月下旬の世界同時株安からほぼ2ヶ月が経過した。株式市場は8月末をボトムに反発し、NYダウは16日時点で17215ドルと、8月25日の安値15666ドルから大幅に値を戻した。現在の株価は同時株安が始まった17500ドルレベルを概ね回復しつつある水準だ。テクニカルには株価指数は再び上昇トレンドに回帰する可能性が高いと見る。もっとも同時株安開始時水準かつそれまで約1ヶ月間揉み合った17500ドルレベルではいったん頭を抑えられる可能性が高い。ついては、引き続き年末のNYダウは17500ドルレベルに落ち着くと見たい。

一方で、8月株安及びその後の反発が実体経済に与えた影響を確認できるのはこれからである。これまでに公表された9月分経済指標はやや弱めだったと言わざるを得ない。9月ISM製造業指数は50.2%と3ヶ月連続の低下で、景気判断の分かれ目を示す50%に接近した。9月小売売上高は前月比+0.1%の伸びに留まる予想外の不振であった。

しかし、9月の経済指標は多分に8月の株安の心理的影響を一時的に受けていると考えられる。その後の株価反発も含めた影響を見極めるには10月の指標を見る必要がある。筆者個人は、9月でいったん軟化した経済指標も10月分では持ち直す可能性が高いと見ている。以下では、消費者センチメント、企業景況感といった先行指標をもとに、年末にかけての米経済が同時株安から持ち直すと見られる材料を見ていく。

消費者センチメントは10月に反発した:ミシガン大消費者センチメン

まず、消費者センチメントを表すミシガン大学消費者センチメント指数を見る。同指数は9月に87.2ポイント(前月比-5.1ポイント)と同時株安の影響とみられる大幅低下だった。しかしながら、16日に公表された10月分速報は92.1ポイント(同+5.6ポイント)と前月の低下を上回る反発を示した([第1図])。同指数は一般に雇用や可処分所得との連関が大きいと見ているが、9月の低下と10月の反発は同時期の株価の下落と反発の影響も受けていると見るのが自然であろう。

消費者センチメント指数と実質個人消費の前年比の伸び率の相関([第2図])から10月のGDP統計上の実質個人消費の伸びを推計すると、前年比+3.0%との結果になる。これは9月、10月にそれぞれ実質個人消費が約+0.2%の伸びを続けることを意味している。これは従前からの筆者個人の成長予想の前提とほぼ同じ拡大ペースである。

以上から、株安が一時的なものに終わりその後ほぼ下落前の水準にまで反発したことで、結果的に個人消費への影響は限定的にとどまることが推測される。9月の小売売上高は予想外の不振だったが、10月17日付<経済指標コメント>でも見た通り、9月に大きなトレンド転換があったとは言いにくい。自動車・ガソリン・レストランを除くいわゆるコアの小売売上高の前年比の伸び率は+3.0%程度で安定推移している([第3図])。昨年の同+4%レベルの伸びからの減速は消費者物価上昇率の低下でほぼ説明可能である。また、雇用統計における非農業部門雇用者のうちの小売業雇用者が9月時点でも前月比+24千人と、過去12ヶ月平均の同+26千人にほぼ匹敵する安定した伸びを見せたことも、小売業が特に売上の先行きに不安を抱いていないことを示唆している。

[第1図]
20151019図1

[第2図]
20151019図2

[第3図]
20151019図3

企業景況感も好転の兆しがみられる:NY連銀、フィラデルフィア連銀指数

次に、企業景況感を表す指標を見る。ここでは既に10月分が公表されたNY連銀製造業指数とフィラデルフィア連銀製造業指数を取り上げてみよう。いずれの指数も9月にかけて景気判断の分かれ目を示すゼロを下回る水準に低下していたが、10月にはいずれもゼロを下回りつつも指数はやや持ち直している。10月のNY連銀製造業指数は-11.36ポイント(前月比+3.31ポイント)、フィラデルフィア連銀製造業指数は-4.5ポイント(同+1.5ポイント)であった。この動きからは、9月に50%に接近したISM製造業指数も10月には持ち直しに転じる可能性が高い([第4図])。

フィラデルフィア連銀調査からは他の企業取引条件の改善もみられる。10月調査によれば、受取価格DIから支払価格DIを差し引いた交易条件が5ヶ月ぶりにプラスに転じている([第5図])。これは、ドル高が総じて米企業収益にはプラスの効果をもたらす可能性を示唆している。これらの指標からは、企業景況感も9月には一時的に悪化したものの、その後株価回復もうけて回復しつつあることが推測できる。

もっとも企業部門については、株安の影響如何にかかわらずその拡大ペースは緩やかなものになるとの見方は従前と不変である。鉱工業生産指数は今年に入り9ヶ月中7ヶ月で前月比低下している。設備投資の先行指標となる非国防資本財(航空機関連を除く)の出荷・受注はいずれも8月時点で前年比マイナスの伸びになっており、そのトレンドは下降局面にある([第6図])。ISM製造業指数調査の調査対象先のコメントからは、原油価格低下や中国等海外経済の減速懸念は株価にかかわらず企業景況感を押し下げていることがうかがわれる(10月3日付<経済指標コメント>参照)。年後半のGDP統計上の設備投資は年率+7%弱を見込んでいるが、受注統計等からはこの予測は下方リスクを孕んでいる。

[第4図]
20151019図4

[第5図]
20151019図5

[第6図]
20151019図6

年内利上げ個人予想維持:FRB高官発言も従前のFOMCスタンスと矛盾せず

以上を総合すると、世界同時株安から株価が回復したことで年末にかけての米景気の急激な変動はみられず、成長予想も現状維持が可能といえる。金融政策についても年内利上げ開始との見方も維持したい。12月15-16日のFOMC定例会合時点では10月分の経済指標は出そろっており、更に11月分雇用統計と同小売売上高も公表済の予定である。9月に一旦軟化した経済指標が10月、11月で好転していれば、FOMCのいわゆる「追加情報」は十分に得られたと考えることができるはずだ。

なお、金融政策に関しては、年内利上げに消極的なFRB高官発言が報道されている。まずFRBブレイナード理事は、12日の講演で「(利上げまで)注視して待つ場合」があると述べ、これが年内利上げ見送りを示唆したものと一部市場には受け止められたようだ。実際同氏は講演テキストで、インフレ率の下方リスクや中国経済等新興国経済減速の影響拡大に懸念を示し、またこれらのリスクが顕在化した場合にとりうる金融政策手段が限定的であると述べている。同氏はよって、これらのリスクが逓減するまで「待って注視する」ことがリスク管理上望ましいと結論している。しかしながら、同氏はテキストの中で利上げ時期を(「年内」など)一切示唆していない。また元来ブレイナード氏は民主党クリントン政権の国家経済諮問委員であったこともあり、FRB理事の中ではハト派色の強い経歴である。

また、FRBタルーロ理事は13日のCNBCのインタヴューで「金利を引き上げることが適切になるとは期待していない」旨の発言をしている。タルーロ氏も同様に従前よりハト派と見られていたFOMC委員であり、この発言がこれまでの同氏のスタンスを変更したものとは見られない。9月FOMC委員経済予測によれば、合計4名の委員が適切な利上げ時期を2016年以降と予想しており、FOMC内に年内利上げを否定する委員がいることは公知である。ブレイナード理事、タルーロ理事いずれの発言も、これらがイエレン議長の「FOMCの多くの委員は年内利上げを予想している」との見方と矛盾するものではないだろう。

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