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<経済レポート> 慎重に楽観的:米ホリデー商戦予想

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今年のホリデー商戦売上高を前年比+3.2%と個人予想する。今年の商戦は昨年の前年比+4%台好調な伸びの反動もあり、前年比+3%前半に減速せざるを得ない。しかしこの数字は堅調な個人消費の拡大を表象するものである。ホリデー商戦売上の原資となる個人所得は雇用増と賃金上昇により再拡大し商戦を支えるだろう。もっとも米経済全体が昨年同時期に比べると相対的に加速度が低下していることから、予想に対するリスクはやや下方と言わざるを得ない。

今年のホリデー商戦売上高は前年比+3.2%を個人予想する

10月の米小売売上高は前月比+0.1%と、8、9月の2ヶ月連続横ばいからわずかながら回復し、8月の世界同時株安による米個人消費の減速が一時的なものであったことが示唆された。11月に入り、米国はホリデー商戦(クリスマス商戦)のシーズンに入った。当レポートでは、同時株安の影響から回復したあとの、今年のホリデー商戦の動向を占う。

ホリデー商戦は通常、感謝祭翌日の金曜日(=ブラックフライデー、今年は11月27日)からクリスマス前日まで(12月24日)までの期間を指す。今年の場合この期間は昨年より1日多い28日間であるが、ホリデー商戦の期間としてはやや短い方に属する。しかし、ここ数年の継続的傾向としてホリデー商戦期間が分散化している、すなわち、小売業による販促はブラックフライデー以前に開始され、クリスマス以降も継続する傾向があるとされている。全米小売業連盟(NRF)は13日のプレスリリースで「感謝祭週末の買い物はここ数年で大きく変化し、もはやホリデーシーズンの“開始”とは見なせない」と述べている。筆者は、ホリデー商戦期間売上として「自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く小売売上高の11月、12月合計」という定義を用いている。また後に述べる米小売業界団体もそれぞれやや異なる小売売上の範囲による11月、12月売上合計をホリデー商戦売上としている。

筆者の定義による今年のホリデー商戦売上高を、筆者個人は前年比+3.2%程度と予想する([第1図])。これは数字上、好調だった昨年の同+4.4%の伸びからは大幅に売上が減速となる一方で、米個人消費が堅調に拡大を継続しているとの見方に基づくものである。以下では、この個人予想の背景となる小売売上や個人所得の動向を見ていく。

[第1図]
20151115図1

賃金上昇で今後可処分所得の伸びは加速へ

今年のホリデー商戦売上の伸び予想が昨年よりも-1%以上低下することは、この一年間に個人消費の拡大ペースが減速することを必ずしも意味しない。昨年11月、12月時点(原油価格急落の時期)の消費者物価上昇率は前年比+0.8~1.3%のレベルにあった。現在のそれは原油価格下落の影響で前年比ほぼゼロ%である。つまり小売売上高が前年比-1%強の減少を示したとしてもそれは物価要因で説明でき、実質ベースの個人消費は昨年同様の拡大を続けているといえる。実際、直近の個人所得統計によれば、9月時点の実質ベース個人消費支出は前年比+3.2%と、減速の兆しを見せながらも昨年同時期の同+3.0%を上回っている([第2図])。

世界同時株安後の小売売上の拡大ペースも、トレンド的には大きな減速は見られない。10月の小売売上高(自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く)は前年比+2.9%と、4月、6月のボトムから反発ののちこのボトムをまだ下回っていない([第3図])。また、昨年同時期の同売上の伸び率は同+3.8%であり、これと比較した今年10月売上の伸び減速はちょうどインフレ率低下幅に相当する。

小売売上を支える個人所得の伸びも堅調といえる。2015年7-9月期の名目可処分所得は前年比+3.6%と、4-6月期の同+3.4%から伸びが加速している([第4図])。もっともこれは、昨年7-9月期の同+4.2%と比べると減速感は否めない。減速の主因は個人所得のうちの雇用者報酬である。雇用者報酬の伸び減速は、昨年の時間当たり賃金の伸び率が前年比+2%台にまで高まったのに対し、今年に入り同-2%割れにまで減速したことが主因である。しかしながら直近の雇用統計によれば、10月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.2%と昨年11月以来の水準に伸び率が加速している。労働資源余剰の低減により時間当たり賃金伸び率は今後も本格的に上昇すると見る。更に、株価上昇等により金利・配当所得の増加ペースが加速している。以上より個人所得の伸びは11月以降さらに加速して、ホリデー商戦を押し上げる可能性が高い。

[第2図]
20151115図2

[第3図]
20151115図3

[第4図]
20151115図4

個人の消費傾向も高水準

可処分所得のうち個人消費に回されず貯蓄に回される比率を表す貯蓄率は低位で安定推移しており、同時株安後も貯蓄率が上昇した形跡は見られない([第5図])。これはまず、インフレ率低下により得られた追加的な実質所得を消費者は貯蓄に回さずに消費に振り向けていることを表している。また、消費者の将来への懸念の度合いを表すともいえる貯蓄率が、同時株安前後も低位安定している」ことは、家計の消費意欲が同時株安にも拘わらず安定していることを示唆している。

追加的な1単位の所得を消費に振り向ける割合を示す限界消費性向も高水準にある。個人所得を可処分所得の変数と見る消費関数から、比較的短期の8四半期ローリング回帰による限界消費性向を推計すると、7-9月期時点で0.89と昨年同時期の0.76を大幅に上回っている。また長期の20四半期ローリング回帰による限界消費性向は7-9月期時点で1.0と、金融危機直前の2007年以来の高水準にある([第6図])。

消費者サーベイによる消費者センチメントも同時株安の一時的軟化のあとすぐに回復している。11月ミシガン大学消費者センチメント指数(速報)は93.1(前月比+3.4%)と2ヶ月連続の上昇([第7図])。これは実質個人消費との相関からは前年比+3.1%の強い実質個人消費の伸びに相当する(10月19日付当レポート参照)。

[第5図]
20151115図5

[第6図]
20151115図6

[第7図]
20151115図7

個人予想へのリスクはやや下方:米小売業界団体は強気の予想

月次小売売上高統計からのボトムアップ推計では、自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高が11月、12月にそれぞれ前月比+0.4%の伸びを実現すれば、筆者個人予想のホリデー商戦売上前年比+3.2%が達成できる計算になる。10月の自動車・ガソリン・レストラン除きの小売売上は前月比+0.3%の伸びであった。上記の個人消費動向を表す諸指標や、10月に雇用統計において非農業部門雇用者数増加と時間当たり賃金の伸びが加速していたこと等から、年末にかけてこの伸びが+0.4%に加速していく可能性が高いと見る。

この個人予想に対するリスクはしかし、やや下方にあると言わざるを得ない。まず昨年においては、実質個人消費、限界消費性向、消費者センチメントのいずれもが一部低位ながら上昇加速局面にあったのに対し、今年のそれは相対的に高位ながら8月の一時軟化も含め横ばい傾向局面にあると言わざるを得ない。また、中国の景気減速懸念や種々の地政学リスクが急激に変動すれば、消費者センチメントが急激に悪化しこれがホリデー商戦売上を抑制するリスクがあることである。これらのリスクが示現した場合、ホリデー商戦売上は同+3.0%位にまで下振れする可能性があることを認識し、慎重に楽観的な見方をしておきたい。

なお、米小売業界団体の今年のホリデー商戦予想は筆者個人予想比強気である。全米小売業連盟(NRF)は今年のホリデー商戦売上を前年比+3.7%と予想している(10月8日鵜付NRFプレスリリース)。国際ショッピングセンター評議会(ICSC)も同+3.4%とこれに次ぐ強めの予想を出している(10月13日付ICSCプレスリリース)。これらの予想は同時株安後に小売売上が8、9月と不振だった時点での予想であり、その意味でも業界団体は今年の商戦にかなり高い期待を持っているといえる(なお、NRF、ICSCいずれも10月分小売売上高統計が公表前される前の予想である)。

(訂正) 11月23日、ホリデー商戦期間に関する記述を次のように訂正しました。「今年の場合この期間は昨年より1日多い28日間であるが、」
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