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<経済レポート> 中期の循環に留意:米企業収益と設備投資

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7-9月期の米企業収益は6四半期ぶりに前年同期比減益となった。合わせて企業設備投資の実績も伸びが減速する傾向が続いている。海外景気減速、ドル高、原油価格低下等がこの背景にあると考えられる。短期的には企業の設備投資意欲回復の証跡もあるものの、中期的設備投資サイクルも勘案すれば、来年の米企業設備投資も緩やかな拡大にとどまりそうだ。

米7-9月期企業収益は6四半期ぶりの前年比マイナス

米7-9月期の企業収益(速報)が24日に公表された。企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年比-4.7%と6四半期ぶりの前年同期比減益に転じた。また総じて企業収益は2012年以降伸びが減速する傾向が続いている([第1図])。7-9月期企業収益の部門別内訳をみると、国内非金融機関が同-2.2%、国内金融機関が同-4.9%、海外部門が同-12.2%と、3部門すべてが減益に転じた([第2図])。これら3部門がそろって減益となるのはリーマンショック直後の2008年10-12月期以来のことである。

企業部門の収益悪化には、低金利継続による債券市場取引の縮小(国内金融機関)、海外景気減速による輸出低迷とドル高による海外収益縮小(国内非金融機関、海外部門)、があると考えられる。国内非金融機関の業種別内訳は12月の改訂値公表を待たねばならないが、引続き石油や公益事業が減益を続けていると見られる。一方で自動車販売の増加を中心とする内需は、一部に減速が見られるものの相対的に好調な収益を保っていると憶測できる。

企業収益の伸び悩みで、企業ネット・キャッシュフロー(税引後利益‐ネット配当支払+固定資本減耗)の伸びも減速している。7-9月期の企業ネット・キャッシュフローは前年比-4.6%とこれも6四半期ぶり前年比マイナスの伸びに転じた。中期的に見ても、企業収益、同ネット・キャッシュフローのいずれもが2012年以降総じて伸び悩んでいる([第3図])。

[第1図]
20151129図1

[第2図]
20151129図2

[第3図]
20151129図3

企業キャッシュフロー伸び悩み、設備投資循環はピーク接近の可能性

企業部門収益が伸び悩むのに合わせて、企業設備投資も減速傾向が続いている。GDP統計上の7-9月期の実質設備投資(構造物投資・機器投資・知的財産投資の合計)は前期比年率+2.4%と前期の同+4.0%から伸びが減速、前年比では+2.2%と4四半期連続で伸び率が低下している([第4図])。2015年通年の設備投資は前年比+3%台の伸びに留まる見通しで、これは昨年の同+6.2%から大幅な減速となる。

設備投資の長期的な循環を見ると[第5図]のようになる。設備投資の対GDP比率は概ね10年弱の周期で循環している。直近の同比率のピークは2008年1-3月期(13.5%)、その前のピークは2000年7-9月期(14.6%)である。現状は2014年後半から今年前半にかけて12.9%に達したのち、今年の7-9期には12.8%となっているが、明確なピークアウトの兆しはまだ見られない。しかし、直近の設備投資循環が8年であったことを勘案すれば、2008年にピークアウトした設備投資循環が今後1~2年の間に次のピークアウトを迎える可能性はそれなりに想定できる。

また中期的に見ると、GDPに対する設備投資の比率は依然低下傾向にある。設備投資が成長に占める割合の長期的低下の背景には、資本生産性の低下という構造要因があることは、8月2日付当レポートでも見た通りである。資本生産性〔=GDP/(ネット資本ストック*設備稼働率)〕は2014年時点で前年比-1.3%の低下、過去5年のうち4年間で前年比低下を続けている([第6図])。

[第4図]
20151129図4

[第5図]
20151129図5

[第6図]
20151129図6

設備稼働率の回復遅れもあり、今後も設備投資は緩やかに

さらに、2008年の金融危機以降大幅に低下した設備稼働率がいまだ危機前の水準に回帰していない、つまり余剰生産設備の存在も設備投資抑制要因となっている。10月時点の鉱工業設備稼働率は77.5%で、直近のピークである昨年11月の79.0%から1年間で約-1.5%も低下している(11月22日付<経済指標コメント>参照)。過去1年に鉱工業設備稼働率の急低下には、原油価格下落で鉱業及び公益事業の設備稼働率が大幅低下したことが寄与している。これに対し製造業の設備稼働率は上昇基調を保っているものの、金融危機前の2007年の水準にいまだ回帰していない([第7図])。

ここで、企業ネット・キャッシュフロー、鉱工業設備稼働率を外生変数とする企業設備投資の回帰分析をアップデートする(6月7日付当レポート参照)。企業ネット・キャッシュフローと設備稼働率はいずれも設備投資に4四半期先行させ、1992年1-3月期から今年の7-9月期までの91四半期のデータで推計した結果が[第8図]、[第1表]である。ここからは、来年2016年の企業設備投資は、今年の企業ネット・キャッシュフローの伸び減速と設備稼働率の大幅低下により、前年比マイナスの伸びに転化する計算になる。

こうした環境からは、依然として企業設備投資が急激に拡大する可能性は低いと考えられる。資本生産性低下、企業収益の伸び減速、余剰生産設備の存在という要因が今後も企業設備投資の伸びを抑制するだろう。2016年のGDP統計上の設備投資は今年の見通しである前年比+3%を大きく上まわらず、今年の反動要因を勘案しても前年比+3~+5%程度の伸びに留まると見ておきたい。

[第7図]
20151129図7

[第8図]
20151129図8

[第1表]
20151129表1

短期的には企業設備投資意欲拡大の証跡もある:中期的サイクルには留意

もっとも短期的には企業設備投資に対する明るい材料もある。一つは、設備投資の先行指標となる資本財の受注の回復である。10月の非国防資本財受注(除く航空機関連)前月比+1.4%の強めの伸びで2ヶ月連続の増加、また前年比では+0.4%と9ヶ月ぶりにプラスの伸びに転じた(11月28日付<経済指標コメント>参照)。

またサーベイによる企業の設備投資意欲は決して悪化はしていない。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における、設備投資DI(6ヶ月先)は11月時点で25.9ポイントと比較的高水準にある。中期的な同DIの動きを見ても、設備投資実績の低迷に比較して企業の設備投資意欲は持続的な水準を保っている([第9図])。これは、企業は潜在的には設備投資拡大の意欲を持っているにも関わらず、海外景気減速懸念やドル高などの想定外の要因がその実行の妨げになっている可能性を示唆している。少なくとも同時株安や原油安などの一時要因が剥落すれば企業設備投資が実施に移される潜在的な環境はあるといえる。

ともあれ、2015年を含め3年連続で前年比+2%台の成長を継続した米経済が循環的な減速サイクルに入る可能性を今後1、2年の間には見ておく必要があるだろう。足元の雇用拡大と労働市場の余剰解消は、これまでの米経済に対するデフレ圧力を後退させ、経済を上方スパイラルに入らせる契機である。その意味でFOMCが12月の利上げをはじめとする金融政策正常化を開始する見通しは理に適っている。しかしながら、8月の世界同時株安による一時見合わせにより利上げ開始がやや遅くなった可能性は否定できない。次回の景気減速局面までに金融政策ののりしろを積み上げるために残された時間はさほど多くはない。

[第9図]
20151129図9

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