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<経済レポート> 来年も2%拡大可能:利上げの米個人消費への影響

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堅調に拡大する米個人消費も、来年はFRB利上げによる長期金利上昇の影響を受けざるを得ない。雇用、賃金、金利等6つの決定要因を外生変数とする分析によれば、来年の実質個人消費は今年の3%成長から2%成長に減速するとの結果になった。それでも、2%の個人消費の伸びは米国経済の堅調な拡大を維持するには十分なペースである。成長ペースはピークアウトの可能性があるが、来年時点ではまだ米個人消費がこれを底支えしよう。

FRB利上げの来年の個人消費への影響を推計する

米個人消費は、8、9月に同時株安の影響で一時減速したものの、その後11月にかけては堅調に回復している。8月の世界同時株安の個人消費への影響は一時的なものであったといえる。自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高は、9月に前月比横ばいにまで減速したが、その後10月同+0.3%、11月同+0.5%と伸びを再加速させている。11月の小売売上高の結果は、今年のホリデー商戦売上高についての筆者個人予想(前年比+3.2%)を強く支持する内容だった。

個人消費の拡大を牽引しているのは、雇用と賃金上昇、それに原油安によるインフレ率低下である。時間当たり賃金の伸びから消費者物価指数の伸び率を差し引いた実質賃金の伸び率は10月時点で前年比+2.1%、非農業部門雇用者数の増加率は10月時点で同+2.0%の水準にある。これらに週平均労働時間の伸びを加えた実質購買力は、10月時点で同+4.1%となり、雇用と賃金の伸びだけで4%台の実質個人消費が確保できる状態にある([第1図])。

雇用、賃金、インフレ率のほかにも、金利、住宅価格、株価が個人消費を決定する要因となる。1992年1-3月期から今年の7-9月期までのデータをもとに、雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格の6つを決定要因とする実質個人消費の要因分解を行った結果が[第1表]である。これによれば、実質個人消費の各決定要因に対する弾性値は、雇用、賃金、物価に対して最も大きく、金利・株価・住宅価格に対しては相対的に小さい。しかしながら、今後FRBの利上げによりFF金利誘導目標レンジが筆者個人予想通りに来年末に1.25-1.50%にまで引き上げられた場合、金利の上昇率は相応に大きくなり、個人消費への影響は無視しえないだろう。以下、決定要因毎の来年2016年の動向を前提として立て、それらをもとに来年の実質個人消費の伸びを推計していく。

[第1図]
20151213図1

[第1表]
20151213表1

来年の雇用拡大ペースはやや減速、賃金上昇率は加速と前提

雇用要因である非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は11月現在で前年比+1.9%と、今年前半の同+2.3%をピークにやや減速している。長期的に見ると、過去の非農業部門雇用者数増加率のピークは、1994年の同+3.4%、1997年の同+2.7%、2006年の同+2.1%と低下傾向にある。米労働市場の構造的要因から労働参加率が低下しているため、労働力人口増加率は長期的に低下傾向にあり、11月時点ではわずかに前年比+0.6%である([第1図])。労働力人口が伸び悩んでいる現状からは、今後雇用拡大ペースが来年にかけて再加速する可能性は低い。循環的な雇用拡大ペースは今年前半の2.3%で一旦ピークアウトした可能性が高いといえるだろう。ついては、来年2016年の雇用増加ペースは前年比+2%で推移すると前提しておく。

賃金要因である時間あたり賃金上昇率は現在、失業率の低下に比較して相対的に低位にある。11月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)上昇率は前年比+2.0%にとどまっており、失業率が現在(11月時点で5.0%)とほぼ同水準だった2005年の賃金上昇率同+2.6%を大幅に下回っている([第3図])。現在の失業率がほぼ自然失業率に近い水準であることを考えれば、失業率低下ペースは今後減速する可能性が高い。一方で賃金上昇率は、失業率が自然失業率を下回るとペースが加速することも経験則である。これらの要因を総合的に勘案して、2016年の賃金上昇ペースは徐々に加速し、2016年末に前年比+2.5%にまで上昇すると前提しておく。

物価要因である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は、昨年末の原油価格急落の影響が剥落する2016年初から来年末にかけて、1%台後半に上昇すると筆者は従前から予想しており(11月1日付当レポート参照)、本レポートでもこれを前提とする(2016年平均同+1.6%)。もっともこの予想は、原油価格が1バレル=40ドル台で安定的に推移することが前提となっていた。しかるに、4日のOPEC総会で原油の減産が見送られたことを契機に、原油先物価格は再び下落し、11日現在で1バレル=約35ドルとなっている。原油価格がこのまま回復しなければインフレ率も筆者予想を下回るリスクが出てきている。ただ、本推計においてはインフレ率の前提に対する下振れは消費の上ブレ要因として見ておくこととしたい。

[第2図]
20151213図2

[第3図]
20151213図3

FRB利上げにより来年末の長期金利は3.6%に上昇と前提する

金利要因である30年物住宅ローン金利は、来年2016年に利上げとともに上昇し消費を抑制する可能性がある。30年物住宅ローン金利は11月現在で3.94%と、今年一杯概ね4%を下回る低水準で推移してきた。米国債10年物利回りは現在2%台前半であり、30年物住宅ローン金利のスプレッドは、1992年から現在までの平均で1.66%である。ここでは、来年の米国債10年物利回り推移を推計することで30年年物住宅ローン金利の来年の動向を推計することとする。

米国債10年物利回りの推計に当たっては、FRBが量的緩和を実施する以前のデータ(1992年1-3月期~2007年10-12月期の64四半期)をもとに、実質GDP成長率、FF金利誘導目標、長期期待インフレ率を外生変数として推計した回帰式を用いる。長期金利推計に当たりFRBの量的緩和要因(FRBのバランスシート)を外生変数に含めない理由は、量的緩和要因を回帰式に含めることが推計式の妥当性を低下させる可能性があるからである(4月29日付当レポート参照)。そこで、量的緩和開始前の64四半期のデータをもとに推計した[第2表]の回帰式を用いて、FF金利誘導目標レンジが12月FOMC会合で引き上げ開始され2016年末に1.25-1.50%となるとの筆者個人予想に基づき米国債10年物利回り推移を推計した(なお、長期期待インフレ率は2.2%で不変、実質GDP成長率は2016年の各四半期に前期比年率+2%台半ばで推移すると前提した)。

上記の前提で推計した米国債10年物利回りの推移が[第5図]である。これによれば、米国債10年物利回りの推計値は現在でも約3.3%と、実績値の2%台より約1%高くなる。また筆者のFF金利誘導目標レンジ予想に基づく2016年末の米国債10年物利回りの推計値は約3.6%との結果になった。FRBは既に資産購入を停止しており、またFF金利誘導目標レンジを引上げ後まもなく保有資産の償還金の再投資を停止する予定である(2014年9月17日FRBプレスリリース「金融政策正常化の原則と計画」による)。量的緩和の長期金利への影響がFRBバランスシート残高よりも、バランスシート拡大というアナウンスメント効果に依存する可能性が高いとすれば、来年の再投資停止以降量的緩和効果は徐々に剥落すると見るのが自然であろう。ついては、本レポートでは2016年末の米国債10年物利回りを3.6%とし、これに過去のスプレッドの平均値を上乗せして30年物住宅ローン金利を5.5%と前提することとする。

[第4図]
20151213図4

[第2表]
20151213表2

[第5図]
20151213図5

金利上昇が個人消費を約-0.8%押し下げるも2%の拡大ペース確保

住宅価格要因であるS&Pケース・シラー住宅価格指数(20都市)は9月現在で前年比+5.5%と、比較的緩やかな上昇ペースにとどまっている。中古住宅販売の在庫期間との相関から推計される現在の住宅価格上昇率は同+10%レベルであり、現在の住宅価格は理論値に比して穏やかな上昇ペースにとどまっているといえる([第6図])。来年2016年については、現状と同じペースの前年比+5%の価格上昇が継続すると本試算では前提しておく。住宅市場は依然タイトな需給にあり、今後上昇ペースが加速する可能性がないわけではないが、在庫不足で消費者の選択の余地が狭いことがむしろ価格上昇を抑制する要因であり続け、かつ利上げにともなう住宅ローン金利の上昇も住宅価格抑制要因となる可能性が高いと見るためである。

株価については、2016年末のNYダウ水準を18500ドルとここでは前提しておく。米経済の拡大が2016年も2%ペースで続けば、利上げにかかわらず株価は堅調に推移するだろう。しかしながら、NYダウが今年5月19日につけた史上最高値18312ドルを来年大幅に上回る可能性は低いと見たい。米国株のバリュエーションは歴史的にやや割高領域にある(12月11日時点のS&P500の株価収益率は22.73倍)うえに、原油価格下落やドル高が来年も企業収益を圧迫する要因になると見るためである。もっとも株価が個人消費に与える影響は他の決定要因に比してかなり小さく、株価前提のブレが個人消費推計には大きく影響しない。

以上の前提をもとに2016年の実質個人消費の伸びを推計した結果が[第7図]である。これによれば、今年の7-9月期現在で5四半期連続前年比+3%台の強い伸びを続けている実質個人消費は、2016年10-12月期には同+2%台前半にまで伸びを減速させるとの結果になった。2016年10-12月期時点の各決定要因の実質個人消費伸び率への寄与度は、雇用要因が前年比+1.22%、賃金要因同+1.94%、物価要因同-0.58%、金利要因同-0.85%、株価要因同+0.03%、住宅価格要因同+0.51%である。つまり、FRBによる利上げが2016年10-12月期においては個人消費を前年比約-0.85%押し下げる効果をもたらすことになる。利上げが個人消費に与えるマイナスの影響は相応に意義のある水準だといってよい。もっともこの結果からは、利上げ開始後も個人消費は2%の堅調な拡大を継続することが可能であり、潜在成長率を上回る米経済の成長が期待できることになる。利上げに拘わらず2%成長が可能な米国経済の拡大ペースは、今年が循環的なピークである可能性があるものの、来年一杯はまだ堅調なペースが維持できることをこの推計は示唆している。

[第6図]
20151213図6

[第7図]
20151213図7
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