FC2ブログ

<経済レポート> 0.25%利上げ決定:12月FOMC

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
FRBは15-16日のFOMC定例会合で、予想通り+0.25%の利上げを決定した。声明文では今後の利上げペースは「漸進的(gradual)」とされ、FOMC委員予測ではFF金利が来年末に1.4%にまで引き上げられることが示唆された。これらも筆者個人予想を支持しており、FOMCが来年3月の定例会合で2回目の利上げ、その後1会合おきに来年は4回の利上げを決定し、来年末のFF金利誘導目標は1.25-1.50%となるとの予想を維持する。

FOMCは0.25%の利上げを決定

FRBは15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で、FF金利誘導目標レンジを+0.25%引上げ、0.25-0.50%とすることを決定した。FF金利誘導目標が0-0.25%を上回るのは2008年12月以来7年ぶり、FRBがFF金利誘導目標を引き上げるのは2006年6月以来9年半ぶりである([第1図])。本レポートでは12月FOMC声明文、FOMC委員経済予測、イエレンFRB議長記者会見の内容を点検し、今後の金融政策の動向を見ていく。

16日に公表されたFOMC声明文の基調判断部分では「経済活動は適度なペースで拡大してきた」と従前の判断を維持。労働市場については「最近の労働市場指標は、、更なる改善を見せ、労働資源の余剰が目に見えて減少したことを確認した」として、前回声明文よりも判断を引き上げている。一方でインフレについては「委員会の2%目標を下回って推移を続けている」と従前の判断を据え置き、かつ「調査ベースの長期インフレ期待は低下した」としている。そのうえで「委員会は、金融政策スタンスの漸進的な(gradual)調整により経済活動は適度なペースで拡大し労働市場指標は強化を続けると現状予想している」とした。

そして金融政策につき「委員会は今年労働市場が著しい改善をしたと判断し、インフレは中期的に委員会の2%目標に上昇すると合理的に確信している」「経済見通しと政策行動が将来の経済結果に影響する時間を認識したうえで、委員会はFF金利誘導目標レンジを0.25-0.50%に引き上げることを決定した」とされた。今後の金融政策については「委員会は経済条件の進展が漸進的なFF金利の上昇を正当化するのみであると予想する」「FF金利は長期的に維持されると予想される水準を当面の間下回り続ける可能性が高い」として、今後の利上げペースが漸進的(徐々に)であると予想している。更に「FF金利の実際の行程は経済見通しに依存する」として今後の利上げ決定が指標依存であることが新たに表明された。なお、FRBの保有資産の償還金の再投資は従前通り継続されることも決定された。

[第1図]
20151220図1

利上げペースは「徐々に」:政策効果波及のラグを考慮して利上げ開始

声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測の内容は[第1表][第2図]の通りである。結果は9月時点の予測と大きな変化はない。来年2016年についての各項目の予測中央値は、実質GDP成長率が+2.4%、失業率が4.7%、PCEインフレ率が1.6%、コアPCEインフレ率が1.6%と、いずれも筆者個人の見通しと同様の結果である。また適切なFF金利予測の中央値は2016年末が1.4%すなわち1.25-1.50%のレンジという筆者予想に整合している。また、長期的な(均衡的な)FF金利の中央値は3.5%となっている。

イエレンFRB議長は、声明文公表後の定例記者会見の冒頭発言で声明文に対するいくつかの補足的コメントをしている。「インフレ率が依然低いにも関わらずなぜ利上げをするのか」につき「最近のインフレ率低下の多くはいずれ解消する一時要因である」「労働市場と生産市場の余剰の解消がインフレ上昇圧力をもたらす」「金融政策が将来の経済に与えるには時間がかかる」ことを理由として挙げている。また議長は今回の利上げにもかかわらず金融政策は依然緩和的であること、また今後の利上げペースが「漸進的」であり、FF金利は長期的な均衡水準を下回る水準に当面留まる可能性が高いことも改めて強調した。質疑応答では、今後の利上げペースがデータ依存的であること、「漸進的な」の文言は一定ペースの利上げを意味しないことも述べた。

FF金利誘導目標の引上げは具体的には超過準備預金付利金利(IOER)の引上げ(FF金利レンジの上限)と、オーバーナイトリバースレポ(RRP)金利の設定(同レンジの下限)によって行われる。FRBは同日、上記FOMCの指示に則り、IOER及び所要準備預金付利金利(IORR)を現状の0.25%から0.5%に引き上げること、並びに0.25%でのオーバーナイトリバースレポの開始を公表した。

[第1表]
20151220表1

[第2図]
20151220図2

次回利上げは3月定例会合を予想:2016年末のFF金利は1.25-1.50%予想

今回のFOMCの利上げ決定並びにその経緯は、筆者個人の予想と整合的であるとともに、これまでFOMCが利上げの条件としてきた「労働市場の更なる改善」と「インフレ率が2%に上昇することへの合理的確信」、及び前回10月声明文で「次回会合での利上げ判断」の強く示唆したこととも整合的である。現在の失業率5.0%はFOMC委員の長期的な均衡失業率予測中央値である4.9%にほぼ近く(米議会予算局の推計する自然失業率は5%)、労働市場の余剰がほぼ解消されたとの判断は合理的である。イエレン議長が記者会見で述べているように、非農業部門雇用者数が11月時点の過去3ヶ月平均で+218千人の増加となったこと労働市場の改善を示している(もっともイエレン議長は記者会見で「(失業率に表れない)循環的労働市場の弱さは残っている」と述べている)。またインフレ率についても、PCEインフレ率が来年2016年1%台後半、2017年に2%に上昇するとのFOMC委員予測は合理的な確信に足るものといえる。

今後の金融政策についても、FOMC委員のFF金利予測が示す通り、2016年に4回の利上げが実施される可能性が高い。引き続き筆者は、今後1会合おきに+0.25%の利上げ(次回利上げは3月定例会合)が決定され、2016年末のFF金利誘導目標レンジは1.25-1.50%となるとの予想を維持する。来年のFOMC定例会合の日程([第2表])に照らし、2016年には3月、6月、9月、12月にそれぞれ+0.25%の利上げが決定されるとすると予想する。

来年の米経済についての筆者個人の予想は改めて今後のレポートで提示する予定であるが、概ねFOMC委員の予測と同様、前年比2%半ばの成長が可能であると見る。ただし、成長ペースはやや減速するリスクがある。12月13日付当レポートで見たように、FF金利引上げによる長期金利の上昇が個人消費の拡大ペースを幾分減速させると見るからである。今年2015年のGDP統計上の実質個人消費は前年比+3%を見込んでいるが、来年はこれが+2%台に減速すると現在では試算している。一方でインフレ率は昨年末の原油価格急落の影響が剥落する来年初から上昇をはじめ、総合PCE、コアPCEいずれも来年末は前年比+1.7%レベルで推移すると筆者は個人予想している。これらの指標をテイラー・ルールに当てはめると、2016年末のFF金利は約1.25%が正当化される([第3図])。もっとも、12月のOPECによる原油減産見送り決定を契機に原油価格は再び下落しており、18日現在でWTI原油先物価格は1バレル=35ドル近辺にある。原油価格の再下落は上記予想に対する下方リスクともいえるが、これまで通り原油価格下落のコアインフレ率への波及は限定的にとどまると見ることから、ここではリスク要因と認識するにとどめておきたい。

[第2表]
20151220表2

[第3図]
20151220図3

市場対話文言と再投資停止時期が今後の注目

FRB金融政策にかかる今後の他の注目ポイントの一つは、今後の利上げ決定に関する市場との対話文言である。12月声明文では次回の利上げ決定時期について何らの具体的な示唆はなく、FOMC委員予測やイエレン議長記者会見の中で2016年末のFF金利水準を1.4%と見ていることが表明されたのみであった。筆者個人は、次回1月の定例会合の声明文では3月会合で利上げの判断をすることが示唆される文言が挿入され、これが1会合おきに使用されるのではないかと見ている。前回10月声明文では「次の会合で(FF金利)誘導目標レンジを引き上げることが適切かどうかを決定するにあたり、、」との文言が使用され、これが12月会合での利上げを強く示唆するものとされた。今後も同様の文言が利上げ判断会合の直前の声明文では使用されるのではないか。

二つめは、FF金利引上げ後に実施されるとされている保有資産償還金の再投資停止の時期である(FRB「金融政策正常化の原則と計画」2014年9月、及び11月23日付当レポート参照)。再投資停止の時期についてFOMCはこれまで何らの示唆をしていない。イエレン議長は16日の記者会見で今後のFRBバランスシート政策についての質問に対し「未決定」「極めて早期に再投資を停止するとは期待していない」旨答えたのみである。再投資停止は基本的には長期金利の上昇を促す可能性があることからは、FF金利引上げを行っても長期金利上昇ペースが急激に加速しないことを見極められることが再投資停止判断のポイントとなるだろう。そのためには少なくともあと1回のFF金利誘導目標引上げとその後の金利市場動向を見極める必要がある。この観点からは、再投資停止の決定は早くとも来年半ばになりそうだ。

10年ぶりの利上げという歴史的な決定は、事前のFOMCによる市場対話の効果で現状市場には冷静に受け止められている。筆者個人にとってもこれは想定通りの金融政策正常化のプロセスであり、今後もこれを整斉と実施することが妥当と見る。ただし市場への下方リスク要因として、現状の長期金利が理論値に比べて相当に低水準にあることを勘案すれば、今後の長期金利上昇ペースは筆者予想である2016年末の3%台半ばに向けてある程度加速せざるを得ない点には留意が必要だろう(12月13日付当レポート参照)。また、米経済が今後1~2年の間に景気循環のピークを迎える可能性も見ておきたい。全米経済研究所(NBER)による前回のリセッション終期(景気の谷)は2009年6月であったから、既に景気拡大局面は6年以上継続していることになる。景気サイクルを約10年(景気の山と谷の間は約5年)とした場合、2016年には少なくとも景気拡大ペースが減速するリスクがある。その場合、FOMCが見るFF金利の長期均衡水準である3.5%までの利上げの実現可能性(委員予測によれば2017年末においてもなおFF金利は2%台半ばまでしか引きあげられないとされている)にはやや留保が必要である。更に、景気減速が来年に前倒しになるリスクも見込んでおく必要はあるだろう。

スポンサーサイト



コメント

トラックバック