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<経済レポート> 堅調な拡大継続:日本経済定点観測

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日本経済は実質GDPの水準も成長ペースもほぼ中期トレンドに一致しており、現状の経済拡大はほぼ巡航速度の均衡水準に近いといえる。2016年も潜在成長率をやや上回るペースの成長が可能と見る。2016暦年の成長率は前年比+1.0%、2016年度は前年度比+1.2%の成長を個人予想する。

日本の実質GDPはほぼトレンド上にある

2016年の成長予想の前に、2015年10-12月期の成長率見通しを点検する。2015年11月までの経済統計からは、10-12月期の日本の実質GDP成長率は前期比ほぼ横ばいに留まると見る。実質消費支出(二人以上の世帯)は11月時点で3ヶ月連続前月比マイナスの伸びで、10-11月平均は7-9月期比-1.9%の大幅マイナスとなっている。このペースだと10-12月期での前期比マイナス成長は数字上避けられない計算になる。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷も、10-11月平均は前期比-0.7%のマイナス成長。11月までの10-12月期住宅着工戸数も前期比-4.4%の大幅マイナスとなっている。企業在庫も11月時点で過去3ヶ月のうち2ヶ月で減少しており、成長への寄与度はマイナスとならざるを得ない。12月分の指標での回復を見込んでも10-12月期の成長率は前期比横ばいか、マイナス成長になるリスクも出てきている。結果2015暦年の実質GDP成長率は前年比+0.6%になると見る。

中期的トレンドの観点も含めて2016年の成長率を占うために、日本経済の中期的なトレンドに照らした現在の立ち位置を見る。[第1図]は統計の連続性のある1994年1-3月期から2015年7-9月期までの実質GDPをHPフィルターで平滑化したトレンドGDPと、実質GDP実績との比較である。これによれば、7-9月期現在の実質GDPはそのトレンドにほぼ近いところに位置している。トレンドGDPを潜在GDPと見做すならば現在の日本経済はほぼ完全雇用を実現する潜在GDPレベルの位置にあることになる。

トレンドGDPから算出したトレンド成長率の推移をみたのが[第2図]である。これによれば、7-9月期時点の日本のトレンド成長率は約+0.7%と計算される。上記でみた2015年暦年成長率予想である前年比+0.6%はほぼトレンド成長率に近い成長ペースであるといえる。以上から、現在の日本の実質GDPはその水準もほぼ中期トレンドにあり、成長ペースもトレンド成長に沿ったものということができる。いいかえれば(トレンドGDPを潜在GDPと見做した場合)、日本経済はほぼ需要と供給が均衡しかつその成長ペースも潜在成長率にあるという、極めて安定した立ち位置にあるといえる(なお、内閣府は7-9月期時点のGDPギャップを-1.3%、潜在成長率を+0.4%と推計している)。

[第1図]
20160103b図1
[第2図]
20160103b図2

2016年は前年比+0.8%成長を予想:家計消費はプラスの伸びに転化を見込む

こうした熱すぎず冷めすぎない日本経済も、直近の経済指標を見るとやや減速の状況が見られる。しかし2016暦年はこの巡航速度の成長を維持し、2016暦年成長率を前年比+0.8%とこれもほぼトレンド成長率に近いペースと個人予想する。なお、本レポートでは2017年4月に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられることを前提に個人予想を行うこととする。2017年1-3月期には駆け込み需要により一時的に成長ペースが拡大する結果、2016年度の実質GDP成長率は前年度比+1.2%の強めの伸びになると見る。以下、需要項目毎にこの予想の内訳を見ていく。

まず、家計消費は2014年4月の消費税率引上げ(5%→8%)以降不振が続いている。総務省家計調査における実質家計支出水準指数は11月時点で91.8ポイント(2010年=100)と、消費税率引上げ前の水準(2013年は99~100)を-8%近く下回って推移している(12月26日付<経済指標コメント>参照)。今後の個人消費の動向を占うために、労働市場と賃金市場の状況を見てみよう。雇用市場では失業率が3.2%(11月までの10-12月期平均)と、1995年7-9月期以来の低水準にまで低下している。上記のトレンドGDPとの関係からも、雇用市場はタイトな状況にあり、場合によっては完全雇用を達成している可能性もある。その場合、今後は就業者数の増加ペースは徐々に減速していくことが考えられる。実際、就業者数と労働力人口の伸びの推移を見ると、両者の拡大ペースは2013年をピークに減速局面にある([第3図])。10-12月期時点の就業者数の伸び率は前年比+0.3%程度であり、これが今後顕著に加速する可能性は低いと見たい。

賃金動向は消費にとっての好材料である。[第4図]に見られるように、10月時点での現金給与総額(きまって支給する給与)は前年比+0.4%と、2015年に入り前年比プラスの伸びが定着しつつある。この賃金上昇には政策的な背景によるベア等も含まれているものの、労働市場の需給からみても賃金の上昇は妥当な結果である。就業者数の拡大ペースの減速に代わり賃金が遅行的に上昇ペースを速めることで、雇用の伸びと賃金の伸びを合わせて約+1%レベルの購買力が維持されると見たい。

これに対してインフレ率(生鮮食品を除く総合指数=コアCPI)は11月現在で現在前年比横ばいとなっているが、2014年末の原油価格急落の影響が剥落する今年のコアCPIは年央にかけて前年比+1%前後に上昇、2016年平均では前年比+0.6%レベルの上昇を見込む。このインフレ率上昇は消費の抑制要因とならざるを得ず、下方リスク要因ではあるものの、総じてこれまでの家計消費が環境に比して抑制的であったことを勘案、今後は巡航速度の拡大ペースへの回帰を見ておきたい。2016年の家計消費は前年比+1%前後の拡大を見込む。これは2015年の見込み同-0.9%からの大幅好転であり、3年ぶりのプラス成長である。2014年4月の消費税率引上げ後1年半以上にわたり低迷した家計消費もようやく安定拡大に入ることを意味する。なお、2017年1-3月期には、2017年4月予定の消費税率引上げ前の駆け込み需要で家計消費が一時的に前期比年率+6%程度の急拡大を見せると見込んでおく。

[第3図]
20160103b図3
[第4図]
20160103b図4

企業設備投資は緩やかな拡大:在庫調整は年前半のマイナス要因

次に、企業部門である。企業設備投資は2016年も緩やかな拡大にとどまらざるを得ないだろう。短期的な先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の11月時点での3ヶ月移動平均は前年比+1.7%と低水準にあり、今後の資本財生産の伸びが低位にとどまることを示唆している([第5図])。製造工業の稼働率も相対的には低位である。経済産業省の製造工業稼働率指数(2010年=100)は10月現在で98.7と、2015年1月のピーク104.3から-5.4%低下している。ただし、2016年後半にかけては、2017年4月に予定されている消費税率引上げ前の追加設備投資が見込まれることから、2016年通年の企業設備投資は現在の2015年見込み(前年比+1.2%)よりやや強めの同+4%レベルを見込むこととする。

企業在庫は成長にマイナス寄与する基調と見る。在庫循環図は依然在庫調整局面にあり([第6図])、企業の在庫率指数も高水準にあることから、2016年7-9月期までは企業在庫調整が成長の押し下げ要因となるだろう。10-12月期には2017年1-3月期の駆け込み需要を見込んだ在庫積み増しが行われて成長にプラス寄与に転化すると見る。

財貨・サービスの輸出入はいずれも国内外の景気減速を反映して伸び率が低下している([第7図])。2016年も同様の傾向が続くと見て、純輸出は成長に3年ぶりにマイナス寄与になると見る。米国でFRBが利上げを継続することで、為替レートがやや円安方向に向かうと個人的に見ているが、これは輸出の押し上げ要因となるだろう。ただ、総合的には為替影響は海外経済の減速要因にくらべて限定的と見ておきたい。

[第5図]
20160103b図5
[第6図]
20160103b図6
[第7図]
20160103b図7

リスクは下方:家計消費下振れと外部要因

以上の個人予想を四半期毎の成長率にしたものが[第8図]である。実質GDP成長率は2016年7-9月期までは前期比年率+1%前後で推移、10-12月期から消費税率引上げ前の駆け込み需要の先取りで成長は加速し、2017年1-3月期は駆け込み需要が本格化することで成長率は+5%レベルに一時的に加速すると見る。結果2016年暦年成長率は前年比+1.0%、2016年度は前年度比+1.2%を見込む。日本経済は2016年に前年を上回る成長ペースに加速し、かつ潜在成長率を上回る堅調な成長は維持することになる。内閣府推計による潜在GDPに基づいた場合も、マイナスのGDP2017年1-3月期には解消する計算になる。

一方で、この予想に対するリスクは下方と言わざるを得ない。まず、家計消費の予想以上の減速が考えられる。2015年にインフレ率の低下、家計所得の増加(総務省家計調査においても2015年央)にかけては勤労者世帯の実収入は前年比+5%を超える増加を示していた)にも拘わらず2015年通年の家計消費が前年比マイナスの伸びに留まった要因は定かではない。この傾向が2016年も継続する場合は上記予想を下振れさせる要因となり得る。

また、世界の経済成長は2016年に想定以上の減速になるリスクがある。筆者個人は2016年の米国経済成長率を前年比+2.0%と2015年に比べやや減速と見ている(2015年12月30日付当レポート参照)。欧州については2015年よりいくぶん成長の加速を見込んでいる。しかし、新興国中心に成長の下方リスクはあり、また一旦下げ止まった資源価格の更なる下落は上記予想に対する下方リスクであり続けるだろう(なお、世界全体について例えばIMFは2015年10月時点の「世界経済見通し」で2016年の世界経済成長率を同+3.6%と、2015年見通し同+3.1%から加速を予測している)。

なお、筆者個人の経済・金融予想のアップデートを[第1表]に示す。

[第8図]
20160103b図8

[第1表]
20160103b表1

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