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<経済レポート> 株安・債券高・原油安続く:米経済への影響点検続き

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株安・債券高・原油安が当レポートの想定以上に進んでいる。為替市場でも一時1ドル=110円台までの円高が進行するなど、金融市場は不確実性が高まっている。現在の米実体経済指標にはその明らかな影響はまだ見られないが、一旦下方リスクを点検しておく必要はあるだろう。現状では大幅な成長予想の修正は行わないものの、引き続き経済見通しには慎重姿勢を維持し、必要な場合は下方修正をも考慮する。

NYダウは一時8月安値を下回った:ドル安・金利低下が進行

1月分の米経済指標は一部に弱さが目立つものの、一時的な天候要因もあり総じてまだら模様といえる。マクロ経済指標の動向を見極めるには2月以降の指標を見る必要があろう。一方で、金融市場は筆者の想定以上に悪化しており、これが実体経済に想定以上の悪影響をもたらすリスクが高まりつつあると言わざるをえない。本レポートでは、金融市場とマクロ経済指標の双方の状況を確認し、筆者個人の経済・金融見通しへの影響を点検することとする。

株式市場は悪化が続いている。NYダウは12日現在で15973ドルと、昨年8月20日につけた安値15666ドルに近いところで終了した([第1図]、なお11日終値は15660ドルと、8月安値を下回った)。更に、ハイテク企業銘柄を多く含むナスダック指数は12日現在で4377ポイントと、8月安値の4506ポイントを大幅に下回っている(日経平均は12日現在で14952円と、昨年8月安値及び今年の1月安値を大幅に下回っている)。テクニカルには米株価指数は更に下方を目指す形である。NYダウの次の下値の目途は2013年央に揉み合いの下限となった15000ドル近辺となる。原油価格低下や海外景気減速が米企業収益の悪化を招いている観点からは、株価の昨年末終値以上への上昇は考えづらいことは従前の当レポートでも見てきたところである。2015年7-9月期の企業収益(資本減耗及び在庫評価調整後)は前年同期比-5.1%と6四半期ぶりの減益となった。10-12月期もおそらくエネルギーや金融分野中心に減益が継続していると見られることから、企業収益が株価押し上げ要因になるとは考えにくい。

為替市場の変動は更に波乱含みである。1月29日の日銀による「マイナス金利付き量的・質的緩和」の導入決定を受けて為替市場では一時ドル高円安が進み、ドル円は1ドル=121円台を付けた。しかしながらその後ドル円は急反落し、11日には海外市場で一時1ドル=110円台まで下落したのち12日には113円台で取引を終了している。債券市場では長期金利低下が進んだ。1月末に1.92%だった米国債10年物利回りは11日に1.66%にまで低下、その後やや上昇して12日には1.74%で引けている(日本国債10年物利回りは一時9日に初のマイナス金利-0.03%を付けた)。WTI原油先物価格は12日現在で1バレル=29.02ドルと、30ドルを割り込んで推移している。

[第1図]
20160214図1

金融市場の悪化の消費への影響は限定的

これらの金融市場の動きは、筆者個人の1月時点の金融市場予想からいずれも大幅に株安・金利低下・ドル安・原油安方向に乖離している(1月3日付当レポート参照)。筆者個人は1-3月期の成長率を前期比年率+1.7%と、10-12月期の同+0.7%よりは加速するものの、2%を下回る成長に留まると見ている。また2016年通年成長率は前年比+2%と、2015年の同+2.4%からは減速するものの潜在成長率を上回る成長を個人予想している。以下では、金融市場変動要因が実体経済に与える影響を見ていく。

まず、株価下落が個人消費に直接に与える悪影響はさほど大きくないと見る。実質個人消費の要因分析によれば、個人消費のNYダウ変化率に対する弾性値は0.01程度であり、NYダウの年初来下落率である-8%は、個人消費を-0.08%程度抑制するに過ぎない(2015年12月13日付当レポート参照)。非農業部門雇用者数は1月に前月比+151千人に減速したものの、1月の寒波による一時要因や統計の乱れがあると憶測できることから、雇用市場に現状急変があるとはいえない。雇用の拡大ペースは堅調な個人消費を支えうるペースを保っている。また、失業率低下により時間当たり賃金の上昇が加速していることも個人消費の押し上げ要因である。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の前年比伸び率は昨年12時点で+2.5%、今年1月時点で+2.4%と、失業率が4.9%と自然失業率にほぼ達したことと平仄を合わせて急上昇している。原油安によるインフレ率低下も個人消費にとっては追い風要因となる。

もっとも個人の消費者センチメントは徐々に低下に転じつつあることから、個人消費にもある程度の下方リスクを見ておく必要はあるだろう。ミシガン大消費者センチメント指数(2月速報)は前月比-4.9ポイントと3ヶ月連続の低下で、その水準自体はまだ高水準であるものの、昨年初をピークになだらかな低下傾向を辿っていると見ざるを得ないだろう([第2図])。しかしながら総じて2016年の実質個人消費は前年比+2%半ばの伸びを示すとの見通しは維持できる。

[第2図]
20160214図2

実体経済への影響は企業部門から:企業景況感は低迷中

一方で、企業部門にとっては株安や原油安の進行は将来への不確実性を増すことから、企業景況感の悪化を通じた設備投資の抑制要因となり得る。以下の通り実際に、2015年時点から企業部門の経済指標は今後も企業部門の拡大が抑制される可能性を示唆している。企業在庫は10-12月期まで2四半期にわたり成長へのマイナス寄与をつづけており、在庫調整が成長の抑制要因となっている。しかしなお、企業在庫の売上高に対する比率は高く、今後も企業は厳しい在庫調整を強いられる可能性が高い。12月分の企業在庫統計によれば企業在庫は3ヶ月連続の減少をしているにも関わらず、企業売上高がこれを上回る減少を見せており、結果企業の在庫売上高比率は金融危機直前の2009年5月以来の高水準に上昇している([第3図]および2月13日付<経済指標コメント>参照)。筆者は在庫調整が2016年前半には概ね終了するとみて2016年成長率への寄与度は年後半からプラスになると見ているが、年前半のマイナス寄与が予想以上に大きいか、マイナス寄与が長期化するリスクが出てきている。

企業サーベイには、企業設備投資の更なる減速の可能性を示すものが出てきている。フイラデルフィア連銀製造業景況感調査における6ヶ月先の設備投資DIは1月時点で9.4ポイントと2ヶ月連続の低下、中期的にもDIの低下基調が明らかである([第4図])。またISM製造業指数が1月まで4ヶ月連続で景気判断の分かれ目を示す50%を割り込んでいることも、企業景況感の悪化を示唆する指標のひとつである。

GDP統計上、設備投資は10-12月期に前期比年率-1.8%と13四半期ぶりのマイナス成長に転化した。筆者はこれが1-3月期にはプラス成長に転じ、2016年通年のGDP統計上の企業設備投資を前年比+2.1%とプラス成長で見込んでいる。しかしながら、これに対しては実体経済指標上も下方リスクが出てきている。設備投資の先行指標である非国防資本財受注(航空機関連を除く)は12月時点で前年比-7.4%と、昨年来のマイナス圏にありかつ低下基調を維持したままである([第5図])。ここからは、1-3月期のGDP統計上の設備投資が2四半期連続のマイナス成長となるリスクが読み取れる。

[第3図]
20160214図3

[第4図]
20160214図4

[第5図]
20160214図5

成長予想と金融政策予想に下方リスク:リセッションは来年以降と見たい

以上より、金融市場の悪化から筆者の通年+2%成長予想に対し、主に企業設備投資や在庫投資といった企業部門の需要項目にいての下方リスクが出てきたと言わざるを得ない。一方でドル安は輸出の回復を促すことから、ネットでは成長率に大幅なマイナスの影響がでるとは現状では考えにくい。ここでは、成長予想への下方リスクを認識するにとどめ、今後の実体経済指標を基に必要に応じて修正を考慮することとしたい。1月24日付当レポート同様に慎重姿勢は維持しておく。

金融政策予想については下方リスクがかなり大きくなっていると言わざるを得ない。筆者個人は次回利上げを3月定例会合、以降1回会合おきに各+0.25%の利上げが年内計4回実施されると予想してきた。しかしながら、現在の金融市場の混乱が3月定例会合までに回復しない場合(定例会合は15、16日)、3月の利上げをFOMCが見送るリスクは十分にある。イエレンFRB議長が11日、12日に議会宛半期金融政策報告を行った際の証言テキストからは、1月以降の金融市場の悪化が12月時点でのFOMCの金融・経済見通しに大きな変更を与えた形跡は見当たらなかった。しかしこれに先立つ1月27日のFOMC声明文で「委員会は、グローバル経済と金融の動向を注意深く監視しており、そのインフレと労働市場、並びに見通しへのリスクのバランスへの影響を点検している」との文言が挿入されたことは市場変動への配慮と思われる。また、1月声明文において従前の「見通しへのリスクはバランスしている」との基調判断が削除されたこと、次回3月定例会合での利上げを示唆する文言が挿入されなかったことは、FOMCが3月利上げを見送る可能性を示唆する材料である。

なお、今年中に米経済がリセッション(景気後退)に入るリスクはまだ小さいと筆者は考えている。景気に先行する指標の状況や、金融市場の先行指標をみても、まだ短期的なリセッション入りを示唆するものはないからである。たとえば、米国債利回り10年-2年のスプレッドは景気後退入りの予測指標として比較的予測力のあるものとされているが、現在の同スプレッドは1%以上のプラス水準にあり、景気後退前に見られるマイナス化(逆イールド化)は見られない。ISM製造業指数の50%割れは必ずしも過去の景気後退を予測していない([第7図])。一方で、景気サイクル的には直近の景気のピークである2007年10月(全米経済研究所による)からほぼ10年となる2017年には、次の景気のピークが到来する可能性が高まると言わざるを得ない。景気後退に関しては目先の金融市場混乱よりも実体経済指標のサイクルや長期経済循環要因の方を重視しておく。

[第6図]
20160214図6

[第7図]
20160214図7

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