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<経済レポート> 反発力は弱い:日本経済定点観測

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日本経済は10-12月期のマイナス成長の後、1-3月期の反発は弱いものに留まりそうだ。筆者個人の成長予想を下方修正し、1-3月期は前期比横ばい、2016暦年は前年比+0.3%とする。特に、企業部門の設備投資の大幅減少が今後の成長の大きな抑制要因になると見る。家計消費は、賃金が失業率に見合った上昇を見せれば回復の余地があるが、賃上げが滞れば下方リスクにもなる。見通しに対する不確実性リスクは依然残る。

家計消費はまだ弱い:実質賃金の減少が主因

日本経済は10-12月期に、過去3四半期で2回目のマイナス成長となり、実質GDP成長率は前期比年率-1.1%に転化した。1-3月期についても、月次の経済指標を見る限りではその反発力は弱いと言わざるを得ない。本レポートは日本経済の定点観測として、主に1-3月期の実質GDP成長率個人予想を需要項目毎に点検していく。

総務省家計調査による実質家計消費は、1月に前月比-0.6%と減少したのち2月に同+1.7%の大幅増となった。結果2月までの1-3月期実質家計消費は前期比+0.1%と前期のマイナスの伸びからわずかにプラスに転じている([第1図])。このペースだと、1-3月期のGDP統計上の実質家計消費は前期比年率+0.5%とわずかにプラス成長への回帰を見込むことができる。もっとも、2月の家計調査のうち「食料」「光熱・水道」「交通・通信」などの項目は閏年要因で押し上げられている可能性が高い。月次のうるう年要因による押し上げを3.6%(=1日/28日)とした場合、実態的な2月の実質消費は前月比でマイナスである可能性も高い。

家計消費が伸び悩んでいる背景は主に賃金上昇率の低迷にあると見る。総務省労働力調査によれば、就業者数は2月までの第1四半期で前年比+1.0%の増加を示している([第2図])。しかしながら、名目賃金(所定内給与)は1月時点で前年比-0.1%、実質賃金(きまって支給する給与)も前年比-0.1%のマイナスの伸びに留まっている(内閣府家計調査によれば、2月時点の2人以上の世帯の実質実収入は前年比-2.1%)。結果、実質ベースの消費者の購買力の伸びは計算上+1%を割るレベルでの伸び、もしくはマイナスの伸びである可能性がある。失業率と賃金の関係を示す新シンプルなフィリップス曲線によれば、現在の失業率水準であれば前年比約+0.9%の賃金上昇があってしかるべきである([第3図])。賃金上昇は労働市場の需給タイト化を十分に反映していないといえる。今年の企業のベアによりこれが一部修正される可能性はあり、家計消費を取り巻く環境は今後好転も見込まれる。4月以降の個人消費は概ね前期比年率+1%強のペースで拡大すると見ておきたい。

[第1図]
20160403b図1

[第2図]
20160403b図2

[第3図]
20160403b図3

設備投資は大幅減少の見込み

企業設備投資は更に減少ペースが加速している。経済産業省の鉱工業生産指数統計によれば、2月までの1-3月期資本財出荷は前期比-4.4%と大幅にマイナス幅を拡大させた([第4図])。このペースだと、1-3月期のGDP統計上の企業設備投資は前期比年率-3~-5%のマイナス成長になる計算になる。10-12月期には資本財出荷統計のマイナスにも拘わらずGDP統計上の設備投資はプラス成長という上方サプライズだったが、1-3月期はマイナス転化が避けられない模様だ。

設備投資は今後も減速を見込む。企業在庫はいまだ調整局面にあり、生産調整にも拘わらず出荷の低迷で在庫削減は進んでいない。2月までの1-3月期の鉱工業在庫指数は前期比+0.2%とむしろ増加しており、数字上は企業在庫が1-3月期の成長にプラス寄与すると見る。在庫循環図上在庫調整局面からまだ脱していない状況では今後も在庫調整が生産抑制要因となるだろう。製造鉱業の稼働率もまだ相対的には低位にある。企業は2011年の東日本大震災による景気後退以降継続的に設備投資を抑制して生産能力を下方に調整してきたが、それでも稼働率は十分に上昇していない([第5図])。余剰生産能力の存在も今後の設備投資の抑制要因であり続けるだろう。

住宅投資は唯一好調な需要項目である。2月までの1-3月期住宅着工戸数は前期比+6.4%と大幅なプラスに転化しており([第6図])、1-3月期GDP統計上の住宅投資は前期比年率約+8%レベルのプラス成長に回帰出来ると見る。

[第4図]
20160403b図4

[第5図]
20160403b図5

[第6図]
20160403b図6

2016暦年成長率は前年比+0.3%に留まると見る

純輸出は1-3月期に成長にプラス寄与すると見る。財・サービス収支は輸出、輸入ともに減少傾向にあるが、輸出の減少よりも輸入の減少ペースが大きく、結果財・サービス収支は昨年11月から黒字に転換している(季節調整済、[第7図])。

以上より、1-3月期の実質GDP成長率は主に設備投資のマイナスが成長を押し下げ、他の需要項目のプラス成長幅は小幅にとどまることで、前期比ほぼ横ばいにとどまると今や個人予想する。ッその後は循環的な成長加速で成長率は徐々に上昇するものの、2016暦年の成長率は前年比+0.3%程度にとどまると予想する。これは1月時点の予想同+0.8%からは大幅な下方修正となる([第8図])。

なお、当レポートでは消費税率引上げが法定通り来年4月に10%に引き上げられることを前提とした予想を引き続き維持しており、2017年1-3月期には消費税率引上げ前の駆け込み需要が成長を一時的に押し上げ、結果2016年度の成長率は前年度比+0.9%としておく。しかしながら現実には、こうした成長のもたつきから消費税率引上げ延期のリスクが高まっていると言わざるを得ない。当初2015年10月に予定されていた同率への引上げ延期を政府が判断したのはその約1年前の2014年11月だった。消費税率変更に伴う準備期間を考慮すれば、引上げ是非の判断は遅くとも半年前にはなされてしかるべきだろう。1-3月期のGDP統計公表予定は1次速報が5月18日、2次速報が6月8日である。仮に1-3月期成長率がマイナスに転じた場合は6月頃に政府が延期判断をする可能性がある。プラス成長に転化した場合は4-6月期GDP統計公表の8、9月にまで判断を引き延ばす可能性があると見る。本レポートでは当面、法定通りの消費税引上げを前提とした個人予想を継続する。

[第7図]
20160403b図7

[第8図]
20160403b図8

引き続き不確実性は高い

インフレについては、2016年末時点で消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコアCPI)は前年比+0.2%、食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコアCPI)は同+0.6%になると個人予想する。原油価格が1月以降再下落したが、3月以降には持ち直していることから、コアCPIは3月以降上昇に転ずるだろう。しかしながらこの予想は従前において年末+1%台のCPIインフレ率を見ていたことからは大幅な下方シフトとなる。CPIインフレ率が1%を超えるのは今や2017年を待つ必要が出てきた([第9図])。

金融政策について、日本銀行は1月19日に導入を決定した「マイナス金利付き量的・質的緩和」の効果を当面見守ると見る。上記でみた成長率予想、インフレ予想はいずれも1月時点の日銀「展望レポート」における政策委員の見通しの中央値を既に下回っている。その意味では、年内に追加緩和措置が実施される可能性は見ておく必要があるだろう。一方で、マイナス金利導入による効果と副作用はまだ十分に検証されているとは言いにくい。1月の金融政策決定会合におけるマイナス金利導入決定が5対4の僅差で決定されたことは、追加利下げの実施には更に慎重な議論がなされる可能性が高いことの状況証拠でもある。1月31日付当レポートで見たように、マイナス金利政策にはまだ調整の余地があることも事実である。個人的には追加利下げの限界的効果はアナウンスメント効果を除いて限定的と見ていることから、年内の追加利下げは実施されないと予想上はしておきたい。

上記個人予想に対するリスクは上下いずれにもあり、見通しは不確実と言わざるを得ない。上方リスクとしては、個人消費が上記の好転要因で拡大に転じるケースのほか、現在1ドル=111円台のドル安・円高にある為替レートが、米FOMCの利上げ期待回復により円安に転じ、未だ年初来-15%の下落圏にある日経平均が上昇、企業景況感が回復して設備投資が増加に転ずるシナリオが考えられる。下方リスクとしては、賃金上昇が進まず消費がこのまま景況感悪化とともに減少し、成長率がマイナスを続けてテクニカル・リセッションに陥るシナリオが考えられる。今後は、金融市場動向はもとより、回復の可能性のある家計消費動向が数字上の景気の鍵となるだろう。

尚、筆者個人の経済金融予想を[第1表]に示す。

[第9図]
20160403b図9

[第1表]
20160403b表1


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