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金利上昇がバブルを防ぐ~米住宅市場動向(2)

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米国の住宅ローン金利上昇は住宅価格上昇を抑制する要因になる。しかし今の環境下ではむしろバブル予防の効果があるだろう。米国の住宅価格・住宅建設いずれも目先は一旦減速したのち、中期的には住宅価格、実質住宅投資ともに10%程度の巡航速度で伸びると見る。

住宅価格決定要因を在庫期間から所得・金利に拡大してみる

6月30日付当レポートでは、現在の米国住宅市場の規模は歴史的にみるとまだ低水準であること、したがってここ1年間の住宅価格の上昇はバブルの兆候ではないことを論じた。特に、住宅価格は主に住宅販売在庫期間に2四半期ほど遅行して変動すること、昨今の住宅価格の2ケタ上昇も、住宅販売在庫のタイト化でほぼ説明がつくことを見た。

ところで、住宅価格の決定要因は住宅販売在庫だけではない。本レポートでは、住宅価格の決定要因として、在庫期間に個人所得と住宅ローンを加えてその影響と見通しを考察する。

QE縮小観測から住宅ローン金利は急上昇している

FRBの量的緩和(いわゆるQE3)縮小が年内に実施されるとの市場期待の高まりで、長期金利が急上昇している。きっかけはバーナンキ議長が5月22日の米議会合同経済委員会でQE縮小の可能性に言及したことで、その直後に10年物米国債利回りは2%を上抜けた。さらに6月19日FOMC後の記者会見で年内QE縮小可能性に言及したことをきっかけに同利回りは2.5%レベルに上昇した。直近では5日の雇用統計を受けて同利回りは2.7%に上昇している。

これに伴い住宅ローン金利も上昇に転じている。FRB統計によれば、30年物固定住宅ローン金利は6月末に2011年以来約2年ぶりの水準である4.5%に近付いた([第1図])。直近の長期金利の動向からはまもなく5%にまで上昇することが十分に考えられる。

[第1図]
20130707図1


住宅ローン金利1%の上昇は住宅価格を1.7%押し下げる

住宅価格は主に住宅販売在庫期間で決定されることは6月30日付レポートで見たとおりである。しかし一般には、住宅ローン金利は住宅ローンの需要を通じて住宅需要に影響し、さらに住宅価格にも影響をもたらすと考えられる。さらに個人所得の水準も住宅需要と住宅価格に影響を及ぼすと考えられる。

住宅価格上昇率と、住宅在庫販売期間・個人所得・住宅ローン金利の推移をグラフにしたのが[第2図]、さらに、住宅在庫販売期間・個人所得・住宅ローン金利を説明変数とし、住宅価格上昇率を被説明変数とする回帰分析の結果が[第1表]である。住宅価格はS&Pケースシラー住宅価格指数(20都市)の前年比上昇率、住宅在庫販売期間は全米不動産業協会の中古住宅販売在庫期間を2四半期先行させたもの、個人所得はGDP統計上の名目個人所得から移転所得を除いたものの前年同期比、住宅ローン金利はFRBが集計公表する月次の30年物固定モーゲージ金利を用いた。

この分析結果によれば、この3指標はいずれも統計的に有意な説明変数で、うち住宅在庫期間が住宅価格上昇率の85%以上を説明できるとの結果になった。

しかし、住宅ローン金利も住宅価格上昇率に相応の影響を与えている。分析結果によれば、住宅ローン金利1%の上昇は住宅価格上昇率を約‐1.7%押し下げるとの結果になっている。つまり、現在4%強の住宅ローン金利が5%台に上昇すれば、住宅価格の上昇率は再び1ケタ台に低下する計算になる。

[第2図]
20130707図2

[第1表]
20130707表1

金利上昇には住宅バブル予防の効果がある: 目先は一時的に減速へ

上記[第2図]からわかるように、10%の住宅価格上昇率は、概ね2002年~2003年の住宅価格上昇率の中央値あたりに相当する。この時期は米国経済がITバブル崩壊によるリセッションから脱却したあとの時期である。10%の住宅価格上昇はほぼ健全な景気拡大期の巡航速度のペースといっていいだろう。2004年以降住宅価格上昇率はさらに拡大し、2005年には15%を超えるペースになった。この時期は明らかに住宅市場がバブルになっていた時期である。

従って、今後住宅ローン金利の上昇で住宅価格上昇率が10%を挟んだレンジで推移するならば、この金利上昇はバブルをあらかじめ予防する機能を果たすといってよい。仮に長期金利が4月までの低い水準を保ったとした場合は、逆に住宅市場のバブルを今後誘発するリスク要因となる可能性があることになる。

住宅価格の観点からはこの辺りで長期金利の上昇を促して予防的にバブルを抑制することが妥当な政策であり、これはFOMC内で現在議論されている出口政策の方向とも一致する。

今後、住宅価格は概ね前年比+10%前後の上昇をつづけ、GDP統計上の実質住宅投資も前年比+10%前後の成長を継続すると見る。ただし目先は金利上昇の影響も含め住宅価格上昇率は一旦10%割れ、実質住宅投資は4-6月期に一旦マイナス成長になる可能性が高いと見る(6月30日付当レポート参照)。

金利上昇によるローン延滞増加は直接には説明しにくい

さて、住宅ローン金利上昇に伴う別の懸念要因は住宅ローン延滞の増加である。住宅ローン金利上昇により住宅ローン債務者の返済負担が増加し、住宅ローン延滞が再び増加する可能性は十分に考えられる。

しかし、中長期の経験値からは、住宅ローン金利と住宅ローン延滞率の間には相関関係は見られない。むしろ現実には、好況期には金利上昇・延滞率低下がおき、不況期にはその逆の現象が起きるため、住宅ローン金利と住宅ローン延滞率には逆相関関係がみられる。住宅ローン延滞率を説明する変数としては失業率が最も説明力が高く、これだけで延滞率の70%以上が説明できるというのが経験則である([第3図])

次に、家計の返済負担をより直接的に表す指標を見てみよう。FRBが集計公表するHome owner Financial Obligation Ratioは、持家保有者の可処分所得に対する返済等負担(住宅ローン、消費者ローン、自動車ローン、住宅保険料等を含む)の比率を表したものである。これによれば、持家保有者の返済負担率は金融危機にかけて持続的に上昇したのち、金融危機後低下し、現在は90年代を下回る水準にまで低下している。ただし、返済負担率と住宅ローン延滞率の間には有意な相関関係は見られなかった。

ここからは、金利上昇による返済負担の多少の増減はマクロでの延滞率には有意な影響を与える可能性は低いということが推測できそうだ。延滞率はマクロの失業率つまり所得の状況や、住宅ローン借換策・リストラクチャリング等の政策に左右されることが大きそうだといえる。

[第3図]
20130707図3

[第4図]
20130707図4

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