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<経済レポート> さらにペースダウン:9月FOMC

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先月9月のFOMC定例会合では、「労働市場余剰の縮小ペース減速」「金融政策に非対称性」を理由に追加利上げが見送られた。しかしFOMC委員予測は年内1回の追加利上げを支持している。12月定例会合で追加利上げ実施との筆者個人予想は維持する。一方で「中立金利低下」を理由に、来年2017年の利上げペースダウンが委員予測で示唆されている。これは従前の当レポートの見方に下方修正を考慮せざるを得ない材料である。

9月FOMCは追加利上げ見送り

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は、去る9月20-21日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジの据置き(0.25-0.50%)を決定した。声明文及びFOMC委員経済予測、並びにイエレンFRB議長の定例記者会見のポイントは以下の通りである。うち、①、③、④は年内利上げ予想を支持する要素、一方⑤、⑥は来年以降の利上げペース減速を示唆するハト派的要素である。

①声明文で「経済見通しのリスクは概ねバランス」の文言が復活
②声明文の利上げ見送り理由「FF金利引上げの根拠は強まったと判断するが、目標への進捗継続の更なる証左を当面待つことに決定した」
③3人の投票メンバーが利上げを主張し決定に反対
④FOMC委員経済予測では14人の委員が年内追加利上げを予測
⑤来年2017年末の適正FF金利予測中央値は1.1%に低下(6月予測は1.6%)
⑥イエレン議長は記者会見で利上げ見送り理由として「労働市場余剰縮小ペース低下」「金融政策の非対称性」をあげるとともに「中立利子率低下」に改めて言及

本レポートでは、上記の内容を、9月FOMC声明文、FOMC委員経済予測、イエレンFRB議長の定例記者会見から確認していく。

声明文はタカ派にシフト:3メンバーが利上げ見送りに反対票

まず、9月21日のFOMC声明文の基調判断は「労働市場は強まりを続け、経済活動の成長は加速した」とされ、経済活動に関する判断が7月声明文の「適度なペースで拡大している」から上方改訂された。インフレについては「一部にエネルギー価格の下落と非エネルギーの輸入価格低下を反映して委員会の2%の長期目標を下回って推移している」と従前の判断が維持された。今後の予想についてのパラグラフでは、「短期的な経済見通しへのリスクはほぼバランスしている」と、経済見通しへのバランスに関する文言が新たに挿入された(上記①)。経済見通しへのリスクバランスに関する文言は今年1月声明文で削除されて以来、6会合ぶりの復活ということになる。「見通しへのバランス」文言の復活は、FOMCが経済拡大の持続につき、英国のEU離脱選択や年前半の雇用に一時的軟化を克服して、相応の自信を持つに至ったことを示唆している。

一方で、利上げを見送る理由として声明文は「委員会は、FF金利引き上げの根拠は強まったと判断するが、当面の間〔雇用・インフレ〕目標に向けての進捗の証左を当面の間待つことを決定した」と述べている(上記②)。決定の背景の説明としてはこの声明文の文言はあまり明示的とは言いにくい。その背景はのちに述べるイエレンFRB議長の記者会見でより詳細に説明される。

この決定については3人の投票メンバー(カンザスシティ連銀ジョージ総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、ボストン連銀ローゼングレン総裁)が+0.25%の利上げを主張して反対票を投じている(上記③)。FOMCの決定について3票の反対票が投じられたのは2014年12月会合以来、3名がいずれも金融緩和継続反対を主張して反対票を投じたのは2011年9月会合以来である。今回反対票を投じた3名のうち、ジョージ総裁とメスター総裁はいずれも当レポートでタカ派とみていたメンバー。ローゼングレン総裁は本来ハト派とみていたが会合直前の9月9日の講演で利上げ支持を示唆する発言を行ったメンバーである(8月29日付9月11日付当レポート参照)。結果的に、一部のタカ派が利上げを主張するもののイエレン議長とFRB理事からなる執行部が利上げ見送りで一致することで利上げは決定されない、との当レポートの従前の見方に沿った結果となった。

FOMC委員予測は年内利上げを支持:来年の利上げペースは低下

次に、声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測の9月時点の内容をみる([第1表])。同経済予測によれば、実質GDP成長率・失業率・インフレ率についての予測中央値は前回6月時点の予測とほぼ不変である。一方で、適切なFF金利予測の中央値は大きく下方シフトした。2016年末のFF金利については、6月時点では予測中央値0.9%(年内+0.50%利上げ)だったのが、9月時点の中央値は0.6%に下方シフトした(上記④)。これは年内に+0.25%の利上げ実施を示唆する予測である。一方、9月時点の予測では、17人の委員中14人が年内1回以上の利上げを予測している(上記⑤)。これは、年内追加利上げ実施を予測する委員が全体の過半数以上を占めていることを表している([第1図][第2図])。

一方で、来年2017年末の適正FF金利予測中央値も、6月時点の1.6%から1.1%に下方シフトしている。これは2017年の利上げペース予測が+0.50%(+0.25%の利上げを2回)に減速したことを示唆している。筆者個人は、2017年の利上げペースを定例会合1回おきに+0.25%ずつ合計4回+1.0%と想定、2017年末とFF金利誘導目標レンジを1.50-1.75%と想定していた。今回の委員予測はこの見方につき修正の考慮を迫る内容だといわざるを得ない。

さらに、9月時点予測では、長期的な適切FF金利水準予測中央値も6月時点の3%から9月には2.9%に下方シフトしている。これはFOMC委員のみる中立FF金利水準がさらに低下したことを表している。

[第1表]
20161002表1

[第1図]
20161002図1

[第2図]
20161002図2

イエレン議長は「労働余剰縮小ペース低下」「金融政策の非対称性」「中立利子率低下」に言及

声明文公表後の定例記者会見におけるイエレンFRB議長発言の注目点は、今回の利上げ見送りの判断理由である(上記⑥)。イエレン議長は「なぜ我々はFF金利を今日の会合で引き上げなかったのか?」として、まず「労働市場ののりしろ(slack)の解消が昨年よりも遅いペースになっている」ことが、労働市場と低インフレ率の改善の余地があることを示唆していると述べた。労働市場の改善ペースは確かに減速している。失業率は昨年2015年の1年間で5.7%から4.9%へと約-0.8%低下したが、今年に入ってからはほぼ4.9%で横ばい推移している。非農業部門雇用者数の前月比増加ペースも、2015年は平均+228.7千人だったが、2016年は9月までで同+185.0千人となっている。しかしながら、この労働市場拡大ペースの減速は、労働市場が完全雇用に近づいたことによる減速であって、労働市場の改善に対するリスクを表象するものではないと個人的には見たい。

次にイエレン議長は「金融政策のサポートを解除することにおけるこの慎重なアプローチは、短期金利が依然ゼロ近辺にあることを勘案すればきわめて適切である」「将来予想外に強いインフレ圧力に対する利上げによる対処は、労働市場の軟化とインフレ低下へ利下げで対処するよりも効果的である」と述べた。これは、金融政策の「非対称性」とされるもので、3月FOMC定例会合、3月20日イエレン議長講演、9月12日ブレイナードFRB理事講演で取り上げられた議論である(4月17日付9月19日付当レポート参照)。しかし、過去の当レポートでも述べたように、8月の一連のFRB高官発言及び9月のFOMC委員経済予測が年内利上げ開始を支持する内容にシフトしていることからは、この非対称性を克服しうるだけの利上げ正当化根拠がFOMC内に相当に根付いていることが推測できる。また、当レポートではむしろ、利上げは早期に実施し、将来の金融再緩和実施に備えて金融政策ののりしろを維持しておくのが有効だと考えている。

また、イエレン議長は、利上げペースを徐々にすべきとの背景として「これは、現在の名目中立FF金利、、が過去に比べきわめて低いとの我々の見方に基づいている」「FF金利が中立金利に比べてやや低い水準にとどまっていることから、現在の金融政策はやや緩和的であるにすぎないといえる」と述べた。中立利子率が低いということは、過去の高い中立利子率時に比べ、同じ政策金利でも緩和の程度は弱い、ということである。実際に、筆者個人の推計する中立実質金利は過去に比べて低くなっており、現在では約1.5%とみられる。これは今後の利上げペースが、中立実質金利をやや高め(2%など)とみる前提にくらべ、適正なFF金利水準は低下していると言わざるを得ない。もっとも実質中立金利を+1.5%とし、2017年末のインフレ率を1.9%、2017年の実質GDP成長率を前年比2%(いずれもFOMC委員予測中央値)とした場合、テイラー・ルールでは2017年末に約1.8%のFF金利水準が正当化される計算になる([第3図])。一方2017年の成長率を前年比+1.5%と低めに見積もった場合は2017年末の適正FF金利は1.2~1.3%に低下する計算になる。後者の方が9月FOMC委員のFF金利予測中央値に近い数値である。

総じて、9月FOMCの結果は、利上げ見送り支持が利上げ支持を票読みで上回るとの筆者個人の予想に沿ったものであり、次回利上げは12月との個人予想を維持する。一方、来年の利上げペースについては、FOMC委員の予測中央値が+0.50%(+0.25%の利上げを2回)に下方シフトしている。これはこれまでの筆者個人の想定よりペースダウンであり、この点については見通しの修正を考慮せざるを得ない。

[第3図]
20161002図3

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