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年内縮小シナリオへのリスク~バーナンキ議長議会証言

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QE3の年内縮小開始を巡るFOMC内の議論は引続き微妙なバランスにある。一方で成長率、インフレ率というマクロ経済指標はタカ派にとって悪材料になりつつある。年内QE3縮小予想は維持するも、リスク要因が高まっていることには留意したい。

バーナンキ議長議会証言では年内QE縮小を改めて示唆

17日に行われた米議会下院金融サービス委員会でのバーナンキFRB議長証言(半期金融政策報告)は、FRBによる月間850億ドルの資産購入(いわゆるQE3)の縮小開始時期についての新たな示唆があるかが注目されていた。

バーナンキ議長は議会証言で、準備されたテキストに基づき「入手されるデータがこれら[FOMC委員の経済]予測と整合的ならば、今年後半に資産購入のペースを縮小」し「来年前半にかけ縮小継続し、来年央頃に終了する」と述べた。これは6月12日のFOMC後の記者会見における発言(発言原稿に基づくもの)とほぼ同内容である(5月以降のバーナンキ議長による主な発言は[第1表]参照)。

[第1表]
20130722表1

文言はFOMCで詳細に議論されたもの

この議長発言の文言は、6月のFOMC会合での詳細な議論に基づくものだったことが議事要旨から読み取れる。6月FOMC議事要旨によれば、「ほとんどの most 参加者は、議長が声明文公表後の記者会見において、経済が概ね委員会の期待に沿うとの条件付きでの今後数四半期における資産購入についての可能性の高い道筋を述べるべきだと考えた」「加えて、議長は資産購入や他の金融政策手段についての決定は引続き委員会の経済見通しに依存することを明言する」「議長は、資産購入終了とFF金利誘導目標引上げが適切になる時期との間には相当の期間considerable time があると委員会が考えていることを述べることで、資産購入と、FF金利誘導目標についてのフォワードガイダンスを区別すること」が議論されている。

つまり、6月12日、7月17日の議長発言はいずれも、事前にFOMC内で議論の上決定された文言であり委員の殆どが支持した内容である。したがって、年内のQE3縮小と来年央のQE3縮小は(経済がFOMC委員予測に沿うとの条件付きで)FOMC内のコンセンサスに近いと考えてよい。

「極めて緩和的な金融政策」はゼロ金利政策を指す

一方、議長の17日議会証言には「当分の間foreseeable future極めて緩和的な金融政策が適切であり続けるだろう」との文言がある。これは10日に行われた講演における議長の発言とほぼ同じ文言である。10日講演ではこの発言がハト派と受け止められ、NY株価指数の反発とその後の史上最高値更新のきっかけとなった。

しかし、この発言をいちがいにハト派と受け取るべきではないだろう。FOMC声明文では「極めて緩和的な金融政策」とはゼロ金利政策を指す文言であって資産購入QE3 を指すのではない。QE3と、その後も相当の期間継続するべきゼロ金利政策とを明確に区別すべきことは上記の6月議事録でも明確に議論されている。つまり、バーナンキ議長が「当分の間極めて緩和的な金融政策が適切」と述べたのはゼロ金利政策が当分の間適切ということであって、QE3を当分の間継続するという意味ではない。

年内QE3縮小予想へのリスク:成長率は下振れ方向

以上より、17日の議長証言では、QE3縮小時期に関する新たな情報はなく、引続き年内QE3縮小開始、来年半ばにQE3終了との筆者個人の予想を維持する。

ただし、この予想に対するリスクがやや高まりつつあるのも事実である。第1に、議長証言にある年内縮小開始は、今後の経済実績がFOMC 委員予測に沿っていることが条件になっている。しかるに、6月FOMC声明文と同時に公表された6月時点のFOMC委員の成長率予測はかなり楽観的と言わざるを得ない(6月23日付当レポート参照)。FOMC委員の2013年成長率予測(第4四半期前年同期比)の中心傾向は+2.3~2.6%だ。しかし実際の成長率はこれよりも下ぶれる可能性が高いと筆者は見ている(筆者個人は同期間の成長率を+1.7%程度と見ている)。IMFも7月に公表した世界経済見通しで、同期間の米国の成長予想を4月時点の+2.2%から+2.0%に引き下げている。

FOMC内のハト・タカのバランスは微妙

第2に、FOMC内でのQE3早期縮小派と慎重派のバランスは依然として微妙である。6月FOMC議事要旨によれば、多数のmanyメンバーが「資産購入ペース縮小が適切になる前に、労働市場見通しの更なる改善が必要」と述べており、これは「資産購入縮小は間もなく正当化されるだろう」と述べた数人のseveralメンバーを数の上で上回っている。5月会合時点との比較でもハト派がタカ派に対する差を広げている([第2表])。

6月議事要旨と同時に公表された6月FOMC委員経済予測サマリーによれば「約半数の参加者が年後半に資産購入を終了するのが適切と述べた」とされていることからは、タカ派勢力が半数を占めているとも読める。しかし、この「半数」とはFOMC「参加者」全体に対する比率である。上記のとおりFOMCの決定に投票権をもつ「メンバー」の多数は資産購入縮小に慎重である。これはFOMC内のハト・タカ分布の特徴を表している。投票権をもつFRB理事はイエレン副総裁をはじめとするハト派が多数を占めている。また今年の投票権をもつ地区連銀総裁にも、シカゴ連銀エバンス総裁、サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁などハト派が目立つ。投票メンバーである地区連銀総裁で本来的なタカ派と言えるのはカンサスシティ連銀ジョージ総裁(今年に入り全ての会合で緩和継続に反対)一人といっていい。

[第2表]
20130722表2



予想は維持しつつFOMC内議論の状況には留意したい

第3に、インフレ率が低下を続けている。FOMCがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比の伸び率は5月現在で+1.0%と、FOMCが目標とする2%から大きく下ぶれている。PCEデフレーターを構成する品目の内訳を見ると、今年に入ってから原油等のエネルギー価格が下落し、また耐久消費財の代表である中古車や家具、非耐久消費財の代表である衣服の価格の伸び率が大幅に低下している。

状況証拠からは年内QE3縮小開始予想に対するリスク要因は徐々に増えつつある。しかしQE3やゼロ金利政策の長期化がもたらしうる「過度なリスクテイク」による悪影響の可能性も看破し得ないだろう。FOMCは成長見通しのみならず将来の金融市場に対するリスクをも踏まえた判断を年内に行うと考える。年内QE3縮小開始予想は維持しつつも、FOMC内の議論状況は引続き注意したい。

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