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<経済レポート> 熱すぎず冷めすぎず:日本経済定点観測

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日本経済は、7-9月期に前期比年率+0.4%と、潜在成長率にほぼ近い拡大を見せたと個人予想する。その後年度末にかけての経済対策効果を見込めば今年度末にはマイナスの需給ギャップはほぼ解消する計算になる。一方で、インフレ率の2%目標達成は、足元のインフレ率上昇ペースの低下もありさらに遠のいたと言わざるを得ない。

家計消費は低迷:実質所得増で今後は回復へ

日本経済は、ほぼ潜在成長率に近い巡航速度で拡大している模様だ。14日に公表予定の7-9月期の実質GDP成長率は、前期比年率+0.4%の成長になったと見る。もっとも以下でみるように、家計消費はマイナスの伸びに転じ、企業設備と住宅投資の過去の着手分が成長を押し上げるにとどまる見込みである。その後は、内需にやや持ち直しがみられるうえに政府経済対策の効果で成長率は加速し、2016暦年では前年比+0.7%、2016年度は前年度比+1.1%の成長を見込む([第1図])。以下では需要項目ごとに、主に7-9月期の成長率を占っていく。

家計消費は7-9月期に2四半期連続のマイナス成長になった見込みだ。家計調査による実質家計消費支出(二人以上の世帯)は7-9月期に前期比-0.5%と2四半期連続前期比マイナス成長となった([第2図])。家計消費を取り巻く環境は悪くはなく、家計消費の低迷の要因は定かではない。雇用市場では失業率は3%の低位にまで低下しており、実質賃金上昇率は今年に入ってから前年比プラスの伸びを維持している([第3図])。また、勤労者世帯の実収入は9月時点で前年比+2.7%と2ヶ月連続の上昇をしている。

実質購買力は拡大していると見られることから、ここ2四半期の家計消費不振は一時的なものとみたい。10-12月期以降は購買力の拡大を背景に家計消費はプラス成長に回帰すると見ておく。

[第1図]
20161104図1

[第2図]
20161104図2

[第3図]
20161104図3

企業部門も今後回復が見込める

企業設備は7-9月期に3四半期ぶりのプラス成長に回帰した見込みだ。企業設備の先行指標となる資本財出荷指数は7-9月期に前期比-0.2%とわずかにマイナス成長に転じた([第4図])。しかしながら、前期の同+4.5%の大幅増加分が7-9月期のGDP統計にラグを伴って計上されると見られることから、7-9月期のGDP統計上の企業設備は前期比年率+3%レベルのプラス成長を見込む。

今後についても企業部門にはようやく回復が見込める。設備投資の先行指標となる機械受注(船舶・電力を除く民需)が7-9月期に大幅増加(前期比+8.9%)している。また在庫循環図も「在庫調整」局面から「意図せざる在庫減」の局面に入っている。海外景気減速を背景とする輸出の低迷が一段落し、在庫調整もほぼ一巡したことから、企業部門は長い低迷からようやく脱却できそうだ。

住宅投資は7-9月期に前期並みの2桁のプラス成長になると見る。住宅着工戸数は7-9月期に前期比-2.4%と3四半期ぶりの減少となったが、過去2四半期の大幅増加分とGDP統計とのラグからは、7-9月期もGDP統計上の住宅投資はプラス成長が見込める([第5図])。

[第4図]
20161104図4

[第5図]
20161104図5

2%インフレ目標達成はあと倒し:来年にかけ経済対策が成長押し上げ

純輸出は7-9月期のGDP成長率にプラス成長を見込む。9月までの貿易統計によれば、貿易収支はほぼ安定した黒字基調にあり、7-9月期のそれは前期に比べてわずかに拡大している([第6図])。

消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコアCPI)の前年比の伸び率は従前の筆者個人の見通しをやや下回って推移している。原油価格が今年初をボトムに上昇に転じたにも関わらず、電気代等が遅効的に低下を続けているほか、食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコアCPI)の上昇ペースが年央から鈍っている。現状の試算では、コアCPIインフレ率は2016年度末(2017年3月)には+0.7%程度の伸びにとどまる見込みである([第7図])。これは、日銀の2%インフレ目標が来年中に視野に入るとのこれまでの見方に対する下方リスクである。実際日本銀行は、1日の金融政策決定会合後に公表した「経済・物価情勢の展望」で、「「(消費者物価の前年比が)2%程度に達する時期は、、2018年度になる可能性が高い」として、従前の見通し(2017年度)を下方修正した。

以上から、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.4%程度の、潜在成長率に近い成長を見込む。その後は、上記の通り内需が再び巡航速度に回帰するとともに、政府支出が成長を押し上げると見る。8月2日に閣議決定、10月11日に第2次補正予算として成立した「未来への投資を実現する経済対策」経済対策のうち、いわゆる真水にあたる2016年度の国費歳出は約4.6兆円(GDPの約0.9%)。このうち現実に2016年度の成長率に寄与する割合を約半分(成長率を約+0.5%押し上げ)とみておく。結果、2016年度の成長率はベースライン個人予想の前年度比+0.6%を約+0.5%押し上げるとみて、前年度比約+1.1%と見ておく。

[第6図]
20161104図6

[第7図]
20161104図7

現在の成長ペースはほぼ巡航速度といえる

総合的に見て、日本の経済成長は潜在成長率(内閣府推計では年率+0.3%)にほぼ近い速度での拡大を7-9月期までの3四半期の間継続することになる。また需給もほぼ均衡している。4-6月期時点のGDPギャップは、内閣府推計では約-1.0%とされており、この状況は7-9月期においてもほぼ同様になる見込みだ。

今後、政府の経済対策により潜在成長率を上回る成長が10-12月期以降2四半期継続すれば、GDPギャップは2016年度末(2017年3月)にはほぼ解消する計算になる。失業率については、現在の失業率3%は、CPIインフレ率の変化と失業率実績から推計される自然失業率(筆者推計で約3.8%)を大幅に下回っていることになる([第8図])

つまり、現在の日本経済の需給はほぼ均衡水準にあるといってよく、この状態がほぼ巡航速度だということになる。熱すぎず冷めすぎない巡航速度の経済成長ペースである。ただ、労働市場は(自然失業率の低下により緩和されてはいるものの)かなりタイトな状態にあるといえる。さらに上記の通り今年度末に需給ギャップは需要超過になる可能性が高い。にもかかわらず、インフレ率の2%への高進は、現在の日本のフィリプス曲線の形状からは簡単には実現し得ない。失業率とインフレ率の関係を示すフィリップス曲線からは、2%インフレの実現には失業率が1%レベルにまで低下する必要があると計算されるからである([第9図])。さらに、現在のインフレ率は、フィリップス曲線のトレンドをさらに下回る水準にまで低下している。今後失業率が3%を割り込んで低下すれば、インフレ率は加速が見込めるものの、その実現時期は日本銀行の見通し通り、2018年度を待たねばならない可能性が高い。

なお、筆者個人の経済・金融予想のアップデートを[第1表]に示す。

[第8図]
20161104図8

[第9図]
20161104図9

[第1表]
20161104表1

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