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<経済レポート> Tug of War:FOMC追加利上げ決定

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FOMCは13-14日の定例会合で1年ぶりの追加利上げを決定し、FF金利誘導目標レンジを0.50-0.75%とした。またFOMC委員の経済予測によれば、来年2017年の利上げペースが3回に加速することが示唆された。これまでの成長とインフレ実績の予想比の上振れですでに来年の利上げペース加速は正当化される。ここにトランプ次期米大統領の政策が加わればさらに利上げペースは加速の可能性がある。新政権の政策が不確実な現状ではその影響度を見積もるのはまだ困難と言わざるを得ない。しかし、これまでの当レポートの見方であった来年2回の利上げとの見通しは、再び上方に修正せざるを得ない。

FOMCは+0.25%の追加利上げを決定

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は13-14日の定例会合で、当レポート及び市場の予想通り、FF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ0.50-0.75%とすることを決定した。FOMCが利上げを決定するのは昨年12月の定例会合以来1年ぶり、ゼロ金利政策以降では2回目の利上げ実施となる([第1図])。

まず、14日の声明文の内容をみる。会合後の声明文は前回11月会合のそれから本質的な変化はない。基調判断では「経済活動は年央以降適度なペースで拡大」「雇用拡大は最近堅調」と従前の判断を据え置いたが、「失業率は低下した」、「インフレ率は上昇した」と失業率とインフレについては前回11月声明文から判断をやや引き上げた。今後の見通しについて委員会は「金融政策の漸進的な調整により、経済活動は適度なペースで拡大し労働市場条件はさらにいくぶん強化されると予想」し、「インフレ率は中期的に2%に上昇すると予想される」として前回判断を維持。経済見通しへのリスクも「おおむねバランスしているように見える」として前回声明文の文言を踏襲した。

これらを受け「労働市場条件とインフレとの実績及び予想に照らし、委員会はFF金利誘導目標レンジを0.50-0.75%に引き上げることを決定した」とされた。しかし、FRBの保有証券の償還金再投資は継続が決定。これらの決定は投票メンバーの全員一致でなされた。なお、FF金利の目標レンジへの誘導は、超過準備預金付利金利(IOER)及び所要準備預金付利金利の0.75%への引き上げ(レンジの上限を形成)、及びオーバーナイトリバースレポ金利の0.50%への引き上げ(レンジのフロアを形成)により実施される。FOMCの決定を受けてFRB理事会は上記金利引き上げと15日からの実施を決定・公表した(14日付のFRB“Implementation Note”及び、2014年9月17日付FRBプレスリリース「金融政策正常化の原則と計画」参照)。

[第1図]
20161218図1

来年の利上げペース予測は3回に上方シフトした

次に、FOMC委員の経済予測をみる。声明文と同時に公表された、12月時点のFOMC委員の四半期経済予測の中央値は[第1表]の通りである。前回9月時点予測に比べ、成長率はいくぶん上昇方向、失業率はいくぶん低下方向にシフト、インフレ率はほぼ横ばいの予測となった。これは7-9月期の実質GDP成長率実績の上ブレ(改定値前期比年率+3.2%)と11月の失業率の4.6%への大幅低下を反映したものと考えられる。ちなみに、成長率については2017年に前年比+2.1%(第4四半期前年同期比)と、当レポート見通し(同+1.5%程度)よりも強めで潜在成長率を上回るペースの予測、コアPCEインフレ率は2017年に同+1.9%とほぼ当レポート同様の予測となっている。

一方、適切なFF金利予測の中央値は1.4%と、9月時点予測の1.1%から+0.25%上方シフトした。これは、2017年中の利上げペースが2回から3回に加速することを示唆している。長期的な均衡FF金利の水準も9月予測からわずかに上方シフトして3%となっている。適正なFF金利水準予測は6月から9月にかけ大幅下方シフトしたのち12月にその半分ほど上方シフトしたことになる([第2図])。2017年末の適切なFF金利に関するFOMC委員の予測分布は[第3図]の通りで、1.125%(9月予測の中央値)またはそれ以下を予測する委員が10人から6人に減少、一方で1.375%(12月中央値)またはそれ以上を予測する委員が7人から11人に増加した。

のちに見るように、イエレン議長は会合後の記者会見で「FF金利水準予測の変化はいくらかの委員の予測変更にすぎない」と述べており、この予測中央値のシフトが大きな意味があるものではないことを強調している。しかし、次の通り、成長率とインフレ率実績の上ブレで、利上げペースの加速は十分に正当化できると見る。

[第1表]
20161218表1

[第2図]
20161218図2

[第3図]
20161218図3

テイラー・ルールは適正FF金利の上昇を示唆:新政権政策でさらに加速もありうる

ここで、テイラー・ルール公式を用いた適正FF金利の推計値をアップデートする。7-9月期までの実質GDP実績値、10月までの個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の実績値と、2017年にかけての筆者個人予想をもとに、米議会予算局推計の潜在GDPを用いてテイラー・ルール公式による推計を行った。成長率は2017年各四半期に前期比年率+1.5%成長、インフレ率は2017年を通じ2%弱との筆者個人予想である([第4図])。テイラー・ルール公式はイエレンFRB議長が採用する1999年版、自然利子率は2%と1.5%の二通りを用いた。結果は[第5図]の通りで、自然利子率を1.5%と低めにおいた(潜在成長率とほぼ同水準)場合でも、2017年末の適正FF金利水準は約2%との結果になった。

これは、当レポートの従前の推計値(10月2日付当レポート)であった2017年末1.2~1.3%(自然利子率は1.5%を採用)から大幅に上方シフトしている。これは、その後のインフレ率実績が当時の予想をやや上回ったこと、また特に7-9月期の実質GDP成長率が当時の予想を大幅に上回ったことが背景である。つまり、現状までの成長率とインフレ実績からでも、来年の利上げペース加速は正当化できることになる。さらに、11月24日付当レポートでみたように、トランプ次期米大統領の財政政策は成長と利上げペースをさらに加速させる可能性を孕んでいる。ついては、筆者個人の来年の利上げ予想を3回以上に再び上方修正することを考慮する。

FOMC委員の経済予測では、2017年に筆者個人予想よりも強い2%の成長が予測されている。またイエレン議長によれば、すべての委員が新政権の財政政策を予測に反映しているわけではないとされる。したがってFOMC委員の経済・インフレ予測に照らせば、委員の予測するFF金利水準はさらに高めにシフトしていてもよいはずだということになる。これも来年の利上げペースがさらに加速する可能性を示唆する材料である。

[第4図]
20161218図4

[第5図]
20161218図5

イエレン議長は利上げ加速を能動的に強調せず

最後に、FOMC会合後のイエレンFRB議長の定例記者会見の内容をみる。ここでは、これまで利上げ判断の材料と議長が言及していた「労働余剰縮小ペース低下」「金融政策の非対称性」「中立利子率低下」についての議長見解を検証する。次にFOMC委員の利上げ予測上方シフトした背景について見る。さらに今後の金融政策への新たな材料となる「次期政権の財政政策」についての議長の見解を見ていく。

労働市場についてイエレン議長は冒頭発言で「失業率はリセッション前の2007年以来の低水準に低下」「労働市場余剰の広い指標も低下」、さらに「雇用条件はさらにいくぶん強まると予想する」として、労働市場余剰縮小ペースは12月の利上げの条件を満たしたとの見方を示唆した。一方、中立利子率については「中立名目FF金利は、、、現在歴史的に極めて低い水準で推移している」「FF金利が中立金利をわずかに下回っているにすぎないため、中立金融政策に至るまでには今後数年間で徐々の利上げで十分と予想する」と述べている。つまり、FOMCは依然中立金利が低いとの認識は維持しており、今後の利上げペースが漸進的(徐々に)であることの根拠とされている。

一方で来年の利上げペースに関するFOMC委員予測中央値が3回に増えたことについて、イエレン議長は記者の質問に答えて「FF金利水準予測の変化はいくらかの委員の予測変更にすぎない」としてこの予測中央値のシフトが大きな意味があるものではないことを強調した。少なくともイエレン議長個人の考えでは、主に自然利子率の低下を背景に、来年の利上げペースを加速させる積極的な意図は感じられない。しかし、これまでの経済指標実績から来年の利上げペース加速が正当化しうることは上記で見た通りである。

トランプ政権の政策には不確実性:議長は政府からの中銀の独立性を強調

トランプ次期米大統領の政策について議長からいくつかの発言がなされた。まず冒頭発言では「多くの人が観察する通り、財政政策や他の経済政策の変更は経済見通しに潜在的に影響を与える」「勿論これらの政策がいかなるものになるかを知るには時期尚早である」と述べた。また質疑応答では「すべての参加者が経済予測に経済政策変更を前提として組み入れているわけではない」「FOMC参加者は経済政策の変化や経済への影響には著しい不確実性があると認識した」「我々はこれらの政策を金融政策への影響がある限りにおいて要素として組み入れてく」として、次期政権の政策についてはまだ不確実性が高く金融政策見通しには十分に反映がなされていないことを強調した。

さらに、次期米大統領との関係につき質疑応答で「現状において完全雇用実現のための財政政策は明確に必要とは言えない」「しかし、私は新政権や議会に何が適切な(財政)政策スタンスかについてのアドバイスを提供するつもりなないことには注意したい」「次期大統領に彼自身の政策運営につきアドバイスは提供しない」「私はFRBの独立性を強く信じている」として、中銀の政府からの独立性を強調した。また同じく中銀の独立性を保証する制度として大統領任期とFRB議長任期のずれは妥当として、自身のFRB議長としての4年の任期(2018年2月3日まで)を全うする意向を示した。

共和党のトランプ米次期大統領は、オバマ民主党政権に指名されたイエレンFRBの金融緩和政策を批判する発言をするなど、政治的にはイエレン議長と対立しうる立ち位置にある。またトランプ氏の大型の財政出動政策は、これまでの金融緩和政策解除ペースを加速させる要素となりうる。14日の記者会見発言からもみられる通り、リベラル派・ハト派のイエレン議長は潜在的には金融緩和解除ペースを漸進的なものにとどめたい意向があると考えられる。今後は、財政政策対金融政策、共和党対民主党、といった軸を通じて、中銀の独立性は維持されつつも、様々な綱引きTug of Warがなされそうだ。

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