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「更なる改善」へまた一歩~米国7月雇用統計

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7月雇用統計は、米雇用市場はペースがやや減速しつつも堅調な拡大を続けていることを示唆する内容だった。失業率低下ペースは今後減速する可能性はあるものの、FOMCの多数のメンバーがQE3縮小の条件とする「雇用市場見通しの更なる改善」を満たすデータがそろいつつある。

7月非農業部門雇用者数の伸びは162千人どまり

2日に公表された米国の7月分雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は前月比+162千人の増加にとどまった。5月、6月分もそれぞれ同+176千人、+188千人に下方改訂された。前月比雇用増加数の3ヶ月移動平均は7月時点で+175千人となり、3ヶ月連続で200千人を下回った([第1図])。短期的には米国の雇用増加ペースはやや軟化しているといえる。

しかし、非農業部門全体のトレンドを見ると、前年比の伸びが+1.7%と前月並を維持し、過去1年のレンジの上端の位置を確保している。雇用増は加速こそないが堅調な増加ペースを維持しているといえる。

業種別雇用者数増加数の内訳はまちまちだった。景気に敏感な業種としては、小売業が前月比+37.1千人と4ヶ月連続で増加幅を拡大させたのに対し、専門ビジネスサービスは同+53千人と2ヶ月連続で増加ペースが減速した。一方景気の影響をうけにくい業種としては、教育・医療が同+13千人と4ヶ月連続の増加幅縮小となっている。

前年比の雇用の伸び率を見ると、好調な個人消費を背景に小売業が雇用の増加を牽引している様子が見て取れる。同様に専門ビジネスサービスも経済全体の拡大を反映して雇用を拡大しているが、やや伸び率に軟化が見られる。特に先行性の高い派遣労働業の雇用拡大ペースがここのところ減速している([第2図])。

[第1図]
20130803図1


[第2図]
20130803図2


失業率は7.4%に低下した

失業率は7.4%と前月比-0.2%低下した。これは2008年12月以来の低水準である。内訳をみると、就業者数が前月比+227千人増加、失業者数が同-263千人減少と、いずれも労働市場の改善を示唆する内容である。ただし、労働力人口は前月比-37千人の減少、労働参加率は63.4%と同-0.1%低下している。労働市場への労働人口の再流入はまだ進んでいない模様だ。

総じて7月雇用統計からは、雇用がほぼこれまでのペースを保ちながら堅調な増加を続けているという以上の新たな材料は見られない。内訳の指標もまちまちで、雇用の加速や減速を示唆する材料は見つけにくい。雇用は今後1年間の間ほぼ前年比+1.5~2.0%のペースで堅調な増加を続けるとの見方を維持する。

[第3図]
20130803図3


失業率低下ペースは今後減速すると引続き見る:縁辺労働人口の状況

失業率について、筆者はこれが経済のファンダメンタルズに対してやや低下ペースが速すぎ、今後は低下ペースが減速するとみている(5月28日付当レポート参照)。7月統計でも失業率は大幅低下したが、一方で今後失業率低下ペースが減速することを示唆する点がいくつかある。

ます、労働市場の先行指標となる週平均労働時間が頭打ちの兆しをみせている。7月の週平均労働時間(生産及び非監督労働者)は前月比-0.1時間縮小し33.6時間だった。2003年以降の週平均労働時間の推移を見ると、失業率の継続的な低下に対して労働時間の方は伸び悩んでいることが分かる([第4図])。これは、労働市場の需給が失業率低下ほどにはタイト化していないことを示唆している。同様に、労働市場の需給を比較的早期に反映する時間当たり賃金も失業率低下にかかわらず伸び悩んでいる。7月の時間当たり賃金は20.14ドルと前月比横ばいにとどまり、前年比の伸び率も+1.9%と前月の同+2.0%から低下した。

次に、労働力人口から退出した人口のうち、縁辺労働者marginally attached workersの人口が依然高水準にある。縁辺労働者とは「現在就業も求職もしていないが職に就く意思があり過去12ヶ月間に求職をしたことがある者(米労働省)」のことで、一時的に労働力人口から退出しているものの例えば求職が増えるなどの就職の可能性が高まれば再び労働力人口に再流入する可能性が高い人口である。[第5図]によれば、縁辺労働者人口は2010年以降減少傾向にはあるものの、金融危機以前に比べればまだ高水準にある。現在の縁辺労働者人口は約2.4百万人で、これは金融危機以前の水準に比べ約1百万人多い([第5図])。1百万人の人口が労働力人口(7月現在約155.8百万人)に流入して失業者に計上されると、失業率は約0.6%上昇する計算になる。


[第4図]
20130803図4


[第5図]
20130803図5


金融政策予想には影響なし

FRBは2012年12月の声明文以来「失業率が6.5%を上回っている限り、、現在のゼロ金利政策が適切」としている。現在7%台半ばの失業率が6.5%に低下するのは2015年頃と筆者はみている(5月28日付当レポート参照)が、ゼロ金利解除に先立つ資産購入(QE3)の縮小開始と終了は年内から来年にかけて実施されると筆者個人は予想している。7月雇用統計にはこの見方の変更を必要とする新たな材料はなく、年内QE3縮小開始の個人予想を維持する。

6月FOMC議事要旨によれば、多数のmany投票メンバーが「資産購入縮小が適切になる前に、労働市場の更なる改善が必要」と考えている(7月22日付当レポート参照)。この条件は失業率の面からは徐々に満たされつつあると言える。7月31日FOMC声明文ではQE3縮小開始時期に関する新たな示唆はなかった。しかし、6月会合で現状のインフレ率低下に対する懸念(ハト派的立場)から金融政策に反対票を投じたセントルイス連銀ブラード総裁が、7月会合では賛成にふたたび転じているなど、7月にはFOMC委員や投票メンバー内でのハト・タカバランスに微妙な変化が読み取れる。次回FOMCは9月17-18日に開催予定だ。次回FOMCに先立ち公表される8月分雇用統計(9月6日公表予定)が、QE3縮小の是非を決定する重要な指標になるだろう。

なお、7月雇用統計は、直近の他の雇用関連経済指標に比べて予想外に弱かった点に留意しておきたい。1日に公表された7月ISM製造業指数のうちの雇用DIは54.4%と、前月の48.7%から大幅に上昇した。ISM非製造業指数の雇用DIは製造業指数に先立ち既に6月時点で54.7%に大幅上昇している。また、7月27日〆週の新規失業保険申請件数は、前週比-19千件減少して326千件にまで減少した。これらからは、来月8月分雇用統計公表時に7月分の上方改訂の可能性もある。

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