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<経済レポート> 安定感ある転機:日本経済定点観測

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日本経済は2016年、2017年いずれも前年比+1%レベルの成長を個人予想する。潜在成長率を上回る成長継続で、マイナスの需給ギャップは2017年末にはほぼ解消する計算になる。原油価格の安定化でインフレ率は年末にかけ1.2%レベルに上昇すると見る。もっともこの見通しのリスクは下方と言わざるを得ない。米国、欧州他の政治関連リスク、中東等の地政学リスクは不確実であるからだ。

日本経済は潜在成長率を超える成長を継続

2016暦年の日本の実質GDPは前年比約+1%の伸びに着地した模様だ。2017年についても、前年とほぼ同じ同+1.0%の成長を個人予想する([第1図])。これは、日本経済が3年連続で+1%以上の成長、また潜在成長率(内閣府推計では+0.4%)を超える成長を続けることを意味する。日本経済はいまだデフレを脱却できていない一方、潜在成長率つまり本来の労働力・資本蓄積・生産性から導かれる成長ペースを超えるスピードで拡大していることになる。

一方で、潜在成長率をこえる成長にはこれといったけん引役がみられない。過去2年の需要項目別の成長率の推移をみると、内需関連では、住宅投資がほぼ一貫して強い成長を続けているが、家計消費、設備投資の動きはまちまちである。これに対し、在庫投資、純輸出、公的需要が入れ替わりに成長を押し上げる形となっている。

数字上、日本経済は極めて安定した成長を続ける結果になるといえる。一方で、米国の景気サイクルは来年以降転換点に差し掛かる可能性がある。さらにグローバルには米国、欧州ほかの政治要因や中東関連地政学要因など不確実性も高い。日本経済は「安定感ある転換期」にあるといえるだろう。以下当レポートでは、需要項目ごとにこれまでの拡大の推移をみるとともに、2017年の各需要項目の成長を占っていく。

[第1図]
20170115図1

賃金上昇を背景に家計消費はやや加速とみる

実質家計消費は、2016年に前年比+0.3%程度と、潜在成長率を下回る伸びにとどまった模様だ([第2図])。2017暦年は同+0.7%とやや加速すると見る。2016年の家計消費は総じて不振であった。総務省家計調査でも、2014年4月の消費税率引き上げ以降、二人以上の家計の実質消費支出はほぼ一貫して前年比マイナスの伸びで、消費税率引き上げ前の水準を回復していない。

家計消費の不振の一因は所得増加ペースの低迷にあるといえる。家計調査による実質実収入の前年比の伸び率は11月時点で+1.0%とプラスに転化している。しかし厚生労働省毎月勤労統計による実質賃金の前年比の伸び率は、2014年の消費税率引き上げ要因が剥落した2015年度以降に一時プラスに転化したが、11月時点ではほぼゼロに低下している。

一方、失業率は現在約3%と90年代以来の低水準にあり、失業率と賃金との関係を示すシンプルなフィリップス曲線からは、前年比約+1%の賃金上昇が正当化される計算になる([第3図])。また、安倍首相は2016年11月16日の第3回「働き方改革実現会議」で、2017年についても「少なくとも2016年並みの賃上げ」を要請した。また街角景気は悪くはない状態となっている。12月の内閣府景気ウォッチャー調査によれば、家計動向関連DIは現状判断DI、先行き判断DIともに11月にほぼ1年ぶりに横ばいを示す50ポイント以上に回復した。12月にはいずれもやや反落したが、総じて好転の兆しを見せている。以上から、2017年については2016年に比べいくぶん家計消費の拡大ペースは加速すると見ておく。

[第2図]
20170115図2

[第3図]
20170115図3

企業部門は緩やかな回復を見込む

企業部門はここ数四半期の間不振が続き、2016暦年のGDP統計上の実質設備投資は前年比+1%弱にとどまる見込みだ。これは潜在成長率を上回るペースではあるものの、2013年の同+3.9%、2014年の同+4.9%に比較すると大幅な減速である(2015年は同+1.2%)。主に、海外景気の減速、原油価格低下によるエネルギー関連企業活動の低下と在庫調整が企業部門の算出抑制要因となっていた。2017暦年については今年よりもいくぶん加速して前年比+1.2%程度の緩やかな拡大を見込む。設備投資の先行指標である資本財出荷は2016年10-12月期にかけて増加に転じていることが企業部門回復の兆しとなっている([第4図])。また、以下で述べる在庫調整の終了が、企業の生産活動を加速する可能性が高い。また昨年の米大統領選挙以降の株高、円安傾向も日本企業にとってはネットで追い風要因となる。

企業在庫は、約2年の調整局面を終えて、2017年からは在庫積み増し局面に入り、成長にプラス寄与すると見る。経済産業省の鉱工業生産統計によれば、企業の在庫指数、在庫率指数は、昨年央以降急速に低下しており、いずれも2014年以来の水準となっている。一方で鉱工業出荷は2014年以来の水準に回復している。これは、海外景気減速により積み上がった企業在庫の調整が急速に進んでいることを示唆している。在庫循環図は「意図せざる在庫減」から「在庫積み増し」局面に入りつつある([第5図])。

財・サービス収支は主に輸入の減少を主因にここ数四半期は黒字幅が拡大した([第6図])。今後は円安による輸出の回復が貿易収支黒字の拡大を促し、2017年には純輸出が成長にプラス寄与すると見ておく。

[第4図]
20170115図4

[第5図]
20170115図5

[第6図]
20170115図6

経済対策の2017年度への寄与は限定的

公的部門では政府の経済対策「未来への投資を実現する経済対策」(2016年8月2日閣議決定)の効果が鍵になる。昨年12月20日閣議了解の「平成29年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によれば、経済対策と社会保障費等の増加が2017年度の成長率を約+0.4%押し上げるとされている。同経済対策によれば、いわゆる真水にあたる2017年度の国費歳出は合計約0.4兆円、また2017年度の保険料軽減が1.0兆円で、これらを合わせると名目GDP(2016年実績約536兆円)の約+0.3%に相当することになる。

ただし、国費の支出はすでに2016年度にも半分ほど計上されており、2017年度については前年度比の寄与度は低下せざるを得ない。ついては2017年のGDP統計上の公的需要は成長にややマイナスの寄与にならざるを得ないとみておく。なお、上記政府経済見通しでは、2016年度成長率が前年度比+1.3%、2017年度が同+1.5%と、いずれも筆者個人予想(年度ベースではそれぞれ同+1.2%、+0.9%)とよりもやや高めの見通しとなっている。

潜在成長率を超える成長を3年間継続することは、マイナスの需給ギャップが縮小していくことを意味する。上記の筆者個人予想をもとに今後の日本の需給ギャップを推計すると、2017年末にはほぼ現在のマイナスの需給ギャップ(内閣府推計によれば2016年7-9月期現在で-0.7%)はほぼ解消する計算になる([第7図])。日本経済は今年中にほぼ需給が均衡した水準に拡大することになる。

[第7図]
20170115図7

インフレ率は徐々に上昇へ:日銀は緩和政策維持と見る

失業率低下による賃金上昇、需給ギャップの解消、原油価格の安定化を背景に、インフレ率は2017年中に徐々に上昇し、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数=いわゆるコアCPI)の前年比上昇率は、2016年11月現在の-0.3%から、2017年末に+1.2%に上昇すると見る([第8図])。これは、主に原油価格急落要因の剥落によるものであるが、それでも名目上は日本経済がデフレからの脱却に向けて進むことを示唆している。またこの見通しは、2016年11月1日の日本銀行「経済・物価情勢の展望」における「政策委員の大勢見通し」における、2017年度コア消費者物価指数前年比伸び率見通し(中央値+1.5%)とも概ね方向感を一にするものである。

日本銀行は、昨年9月に「長短金利操作付き量的・質的緩和」の導入を決定した。2017年中、当面の間日本銀行はこの政策を維持すると見る。上記の通り、インフレ率が年内ほぼ一貫して上昇することを勘案すれば、いずれかの段階で緩和政策の出口が探られる可能性は考えられなくはない。しかし、同政策の「オーバーシュート型コミットメント」では「マネタリーベースを消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する」(2016年9月21日付日本銀行公表文)とされており、+1.2~+1.5%までのコアCPIインフレ率上昇ではまだ緩和政策を終了する条件は整わない。翌年2018年におけるインフレ率の2%目標達成が合理的に期待できる状況になって初めて、量的緩和拡大ペースの縮小等が検討の俎上に乗るに過ぎないと見たい。

以上の日本経済見通しに対するリスクはやや下方と言わざるを得ない。上記予想には、海外を中心とする各種下方リスク要因はその不確実性もあり十分には反映していない。トランプ次期米大統領の過激な外交・軍事政策、FRB利上げに伴う新興国からの資金流出、英国のEU離脱手続(メイ英首相は3月にEU宛正式通告することを表明済)、フランス大統領選挙(4月)、ドイツ総選挙(8~10月)などの政治日程、ISなどの地政学リスクは、本レポートの成長予想への下方リスクといえる。なお、経済・金融個人予想アップデートは1月9日付当レポートの[第3表]参照。

[第8図]
20170115図8


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