<経済レポート> 引き締め加速の可能性:FOMC見通し

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1月31-2月1日のFOMC定例会合では、FF金利誘導目標の0.50-0.75%への据え置きが決定された。去る昨年12月の定例会合議事要旨では、トランプ新政権の政策の金融政策への影響見積もりは時期尚早とされており、1月会合でもその状況に著変はなかったと想像できる。筆者個人は、トランプ大統領政策を抜きにしても2017年の米経済成長ペースは2016年比加速し、トランプ効果はさらなる上振れ要因と見ている。2017年に3回のFOMC利上げとの個人予想は維持するが、利上げ回数は3回を超える可能性が徐々に高まりつつある。

1月FOMCはFF金利据え置きを決定

FRBは1月31日‐2月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で、当レポートの予想通りFF金利誘導目標レンジを0.50-0.75%に据え置くことを決定した。決定は10名の投票メンバーの前回一致だった。声明文の内容は前回12月会合のそれから大きな変更はなかった。ただ基調判断のパラグラフに「消費者と企業センチメントは最近改善した」との文言が新たに挿入され、トランプ大統領当選以降の消費者センチメントや企業景況観指数の改善を認識している。声明文では従前通り「漸進的な金融政策調整により、経済は適度なペースで拡大し労働市場条件はさらにいくぶん強化される」「短期的な経済見通しへのリスクは概ねバランスしている」とした。また「委員会は、経済条件の進展は漸進的なFF金利の引き上げを正当化するのみ」であるとの見通しを維持。FRBが保有する債券の再投資継続も決定された。

11月の大統領選挙で当選を決めたトランプ新大統領は1月20日の正式就任後、財政支出拡大、減税、保護主義的通商政策を矢継ぎ早に打ち出している(1月22日付当レポート参照)。トランプ大統領の政策は今後のFRBの金融政策にも相応の影響を与えることになるだろう。同氏の財政拡大・減税政策・保護主義政策は米国の景気拡大を加速する可能性があり、これは金融政策引き締めペースの加速をもたらしうる。一方で、ドル高や政治リスク・地政学リスクの拡大は、米国の景気拡大ペースを減速させる可能性もある。当レポートでは、トランプ氏の政策がネットで経済見通しに上方リスクをもたらすと見ている。

トランプ氏の政策が金融政策に与える影響をFRBが1月においても十分に分析していると考えるのは時期尚早であろう。1月FOMCでの金融政策維持決定はほぼ従前からのシナリオに沿ったものであり、トランプ大統領政策の影響を織り込んだものとは言えない。FOMC内で新政権の政策がいかに分析されているかを見極めるには、今後の議事要旨やFOMC委員の発言をみていく必要がある。

12月議事要旨ではトランプ氏を「上方リスク」と認識していた

まず本レポートでは、+0.25%の利上げが決定された12月FOMC定例会合の議事要旨に遡って、利上げ決定の背景と、トランプ大統領当選がFOMCの金融政策決定に与えた影響の有無を見ていく。1月4日に公表された12月13-14日のFOMC定例会合の議事要旨によれば、トランプ政権の誕生は、今後の経済・財政見通しへの「不確実性」を高めたものの、総じて経済見通しには上方リスクをもたらすものとみられたようである。12月FOMC議事要旨によれば「参加者は将来の財政及び経済政策の時期・規模・構成及びこれらが総需要と総供給に如何に影響を与えうるかについての著しい不確実性を強調した」として、トランプ大統領の政策が経済に与える影響が不確実であることでほぼ一致していた。しかし「ほとんどのすべての参加者は、今後数年の更に拡張的な財政政策見通しの結果、経済成長見通しへの上方リスクが高まったことを示唆した」として、トランプ政権の政策が経済上ブレリスクをもたらすことでほぼ一致している。

また上方リスクは新大統領のみならず「海外の予想以上の経済成長や国内の設備投資の加速」によってももたらされると数人の(several)参加者が述べている。またいくらかの(some)参加者は「インフレ率の最近の上昇や、将来の原油価格上昇によるインフレ予想の上方リスクの可能性から、経済成長により強い上方リスク」があると述べている。一方で、他の数人の参加者は「米ドルの更なる上昇はインフレ率を抑制し続ける」と成長抑制要因について言及している。

また、今後の金融政策について12月会合では「中立金利の低下」を背景に漸進的な利上げが適切との考えをほとんどの参加者が持っていたとされた一方で「現在予想しているものとは異なる金融政策の行程」が必要になるリスクも指摘がなされている。また参加者は「(財政・経済)政策にいかなる変更が実施されるか、またこれらが経済見通しを如何に変更させるかを知るには時期尚早」ということで合意している。

当レポートでも米経済と金融政策には上方リスクをみる

なお、12月FOMCでは同会合での利上げ決定自体についてはほとんど異論もなく決定された模様である。議事要旨によれば「雇用最大化と2%インフレ率という委員会の目標にむけた、累積的な継続進捗の十分な証跡は、25bpsのFF金利誘導目標引き上げを正当化する」ことで参加者が合意し、投票メンバーの全会一致で0.25%の利上げが決定された。

こうしたFOMCの見方は、当レポートの見方とほぼ同様である(1月9日付当レポート参照)。トランプ大統領の政策が経済に与える影響を見積もるのは時期尚早であり、当レポートの予想もトランプ政策効果はいったん捨象して個人予想を策定した。結果、2017年米経済は従前の予想よりもやや上ブレして拡大し、かつトランプ効果はこれに対する更なる上方リスク要因と見ている。

金融政策について当レポートでは2017年に3回の利上げが実施されると見ており、これについても利上げペース加速のリスクをみている。12月FOMCの議事要旨や1月FOMC声明文の内容は、これらの見方を支持するものだったといえる。

FOMCの利上げは今年3回を超える可能性が高まりつつある

直近の経済指標も当レポートの見方を支持する結果だった。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は12月時点で前年比+1.6%、同コアは同+1.7%といずれも2%に近づいている。今後原油価格が安定推移すれば、PCEインフレ率は2017年の間概ね前年比+1.6~2.0%のレンジで推移すると見る([第1図])。インフレ率は概ねFRBの政策目標に近いレベルでの推移が見込まれることになる。

雇用についても、1月非農業部門雇用者数が前月比+227千人の強い伸びを示すなど、年初の出だしは好調である。経済成長は10-12月期に前期比年率+1.9%とやや予想を下回った。一方で米議会予算局は1月24日に公表した「財政・経済見通し2017-2027」において、2017年の潜在GDP水準を前回8月推計に比べわずかに下方改訂している。結果、インフレ率と成長率予想からテイラー・ルール公式で推計した2017年末の適正FF金利水準は2.79%と、1月9日付当レポートでの推計値(2.6%)を更に上回る結果になった。これは、FRBの利上げが今年3回にとどまらず、それ以上の回数になる可能性が高まりつつあることを引き続き示唆するものである。

なお、2017年のFOMC投票メンバーとFOMC定例会合日程を[第1表][第2表]に示す。2017年の地区連銀総裁投票メンバーは、2016年に比べいくぶんハト派に移行したということができる。2016年投票メンバーには定例会合で利上げを主張して金融政策維持に反対票を投じた実績のある3名のタカ派すなわち、ボストン連銀ローゼングレン総裁、カンザスシティ連銀ジョージ総裁、クリーブランド連銀メスター総裁がいた(セントルイス連銀ブラード総裁はハト・タカ両方の発言あり)。2017年にはハト派代表格のシカゴ連銀エバンス総裁が投票メンバーとなった一方、タカ派はフィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ダラス連銀カプラン総裁の2名である。ミネアポリス連銀カシュカリ総裁はほぼ中立といえる。

[第1図]
20170205b図1

[第2図]
20170205b図2

[第1表]
20170205b表1

[第2表]
20170205b表2

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