<経済レポート> 引き締め加速の可能性②:FOMC見通し

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2月のFRB関連のイベントと経済指標は、いずれも年内の利上げが筆者の個人予想比加速する可能性を示唆するものだった。イエレン議長は講演等で利上げ加速の可能性を暗示、インフレ率も1月時点でFRBの目標である2%にほぼ接近した。次回3月14-15日のFOMC定例会合で+0.25%の利上げが決定されるとの従前からの個人予想を維持する。またこれと合わせて年内合計3回の利上げとの個人予想には上方リスクを引き続き見ておきたい。

2月FOMC議事要旨はタカ派的内容だった

2月5日付当レポートでは、FRBによる利上げペースが予想以上に加速し今年の利上げ回数が3回を超える可能性を見た。その後の経済指標やFRB高官発言はこの見方をさらに裏付けるものとなっている。以下本レポートでは2月に公表されたFRB関連情報、イエレンFRB議長発言、経済指標を点検していく。

まず、2月のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合の内容をみる。22日に公表された1月31日―2月1日FOMC(金融政策維持を全会一致で決定)の議事要旨によれば、「参加者は彼らの経済・金融政策予想は12月会合からほとんど変わっておらず」「本会合ではFF金利誘導目標レンジを0.5-0.75%に維持するのが適切と考えた」とされており、2月の利上げ見送りについては比較的たやすく合意された模様である。

しかしながら、今後の金融政策緩和解除の行程についてタカ派的意見が多かったといえる。金融政策見通しに関する議論の中で、多くの(many)参加者が「今後入手される労働市場とインフレに関する情報が彼らの現在の予想と整合またはより強い場合、または委員会の雇用最大化とインフレ目標がオーバーシュートするリスクが高まった場合は、FF金利をかなり早期に(fairly soon)再び引き上げることが適切かもしれないとの考えを強調した」とのべた。また、何人かの(a few)参加者は「緩和政策解除を継続することで、委員会は将来の経済条件の変動により柔軟に対応できる」と述べた。また数人の(several)参加者は「特に経済成長が現状期待より加速した場合に、長期的な均衡失業率が下方に大きくオーバーシュートするリスクは高いと判断した」「その状況が進めば、インフレ圧力を抑制するために委員会はFF金利を現在の予想よりも速く引上げる必要が出てくるかもしれない」と述べている。さらに参加者は、保有する国債等の満期における再投資政策の変更を今後の会合で議論すべきことで総じて合意した、ともされている。また2-3人の(a couple of)参加者は「金融政策の漸進的な解除」との文言が年間1-2回のみの利上げをコミットしたものと誤解される可能性に懸念をしめした、とされている。

イエレン議長は議会証言でも早期の利上げを暗示

2月FOMC議事要旨からは、FOMC委員の中で、継続的な金融緩和解除の方針がおそらく過半数の参加者で合意されている。議事要旨をみる限りでは3月定例会合での利上げを示唆する文言はない。しかし、インフレと失業率のオーバーシュート懸念が複数の参加者から示されていることは、利上げペース加速の可能性を示唆している。なお、何人かの参加者から示された「利上げ継続により将来の経済変動への柔軟な対応が可能になる」との見方は、従前より当レポートで主張してきた「早期の利上げが将来の金融政策ののりしろとなる」との考え方に類似するものである。また、トランプ新大統領の政策について「ほとんどの参加者は、政府の財政政策等の規模、構成、変更時期については不確実性が高いとの見方を継続した」とされている。

次に、2月14、15日に行われた、イエレンFRB議長による議会宛半期金融政策報告の冒頭証言の内容をみる。議会上院の銀行・住宅・都市委員会(14日)と、下院の金融サービス委員会(15日)で行われた証言のテキストによれば、議長はFOMCの経済基調判断及び見通しと、12月の利上げ実施及び2月の利上げ見送りについての説明ののち、「従前にも述べた通り、緩和政策解除を長く待ちすぎることは賢明でなく、潜在的にFOMCの利上げペースを速くせねばならない結果となり、金融市場を混乱させ経済をリセッションに陥らせるリスクとなりうる」と述べ、利上げ開始の遅れが結果的に後の利上げペース加速により経済・金融を混乱させるリスクに言及した。また、中立金利の低下についても「現状の中立金利が金融危機前よりかなり低いことは、遅い生産性上昇、海外経済の減速、長期安全資産への強い需要や他の要素の反映かもしれない」としたうえで、「委員会は(中立金利を)押し下げている効果は今後いくぶん減退して、中立金利を引き上げ」うるとも述べている。また今後の金融政策について「来る会合〔複数形〕において、FOMCは雇用とインフレがこうした予想に沿って推移しているかを評価し、沿っている場合はFF金利の更なる調整が適切となる可能性が高い」と述べ、近い会合での追加利上げの可能性を示唆した。

なお、イエレン議長は新大統領の政策につき「財政政策や他の経済政策の変更は潜在的に経済見通しに影響を与える」「もちろん、如何なる政策変更が実施されるか、またその経済効果を知るには現在は時期尚早である」と述べ、2月FOMCの見方を踏襲している。さらにイエレン議長は「特定の税制や財政提案に意見を述べるのは私の意図ではないが、長期的な経済成長ペース改善と米国民生活水準の上昇と生産性向上を目指す政策で実施することの重要性を指摘したい」「財政政策は米国財政を持続的軌道に乗せることと整合的であることを望む」として、トランプ大統領の政策に一部コメントしている。

シカゴ講演では利上げ加速の可能性を示唆

次に、イエレン議長が3日にシカゴで行った「緩和の追加から縮小へ」と題する講演の内容をみる。同講演でイエレン議長は、金融危機後、2014年の量的緩和解除、2015-2016年の利上げ開始、の3期に分けてFRB金融政策の変化を振り返ったうえで今後の金融政策について論じている。まず議長は、金融政策の緩和度合を計るのに有用な概念としての「中立実質金利」をここでも論じている。ここ数年の間に中立実質金利は大幅に低下したと述べたうえで、現状のFOMC委員経済予測から導出できる長期均衡中立実質FF金利は約1%(12月FOMC委員経済予測における長期均衡FF金利中央値と長期均衡インフレ率の差)としている。一方、現在の中立実質金利は、ある研究によればほぼゼロ%と推計されていることと比較し、現在の実質FF金利実績が約-1%であることは、現在の金融政策が適度に緩和的であることを示しているとしている。

またイエレン議長は、2014年10月にFRBが量的金融緩和政策の手段としての資産購入を停止して以来、利上げが2015年と2016年のそれぞれ1回にとどまり、2014年時点のFOMC予測よりもペースが遅くなったのは、2015年の原油価格急落やドル高、経済成長とインフレ率の下ブレ、中国経済減速や英国EU離脱選択などの予期せぬ事象のためだと述べた。また、中立実質金利の低下や、長期均衡失業率予想の低下(12月時点のFOMC委員経済予測による長期均衡失業率は4.75%)が、2014年時点のFOMC委員予想よりも金融緩和政策が長期化したことの背景であると述べている。

しかし、2016年半ば以降の動向についてイエレン議長は強気の評価をしている。議長は「2016年半ば以降の動向は、法律が付与した委員会の目標(雇用最大化とインフレ安定)の達成に向けた軌道にあるとの委員会の確信をさらに強めた」と述べた。背景として失業率がFOMC委員予測による上記の長期均衡水準である4.8%に低下したこと、FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率が+2%に接近したこと、を挙げている(1日に公表された1月PCEインフレ率は前年比+1.9%と、2月会合時点で判明していた12月の同+1.6%からさらに上昇している)。

インフレギャップと需給ギャップは解消へ:新FRB理事ポストもタカ派の可能性

今後の金融政策について講演で議長は12月時点のFOMC委員予測中央値である「2016年に合計0.75%の利上げ」が「今年については適切である可能性が高い」、また「FRBがビハインド・ザ・カーブになっているとの証跡は現状ない」と述べており、あくまで今年3回つまり+0.75%の利上げがFOMCの現状のメインシナリオであることを強調している。しかし冒頭証言の最後には「経済見通しに下方影響を与える予期せぬ動向がなければ、緩和政策の解除のプロセスは過去2年ほどには遅くない可能性が高い」と述べた。イエレン議長の一連の発言は、3月定例会合での利上げを直接示唆するものはなく、また今年の利上げ幅が3回合計+0.75%を超えることを直接に示唆するものもない。失業率の低下やインフレ率の上昇により、イエレン議長の発言が微妙にタカ派方向にシフトしていることは読み取れる。

最後に、2月FOMC定例会合以降の経済指標を見る。これらも今年のFRB利上げペースの加速の可能性を示唆している。上記の通りPCEインフレ率は1月時点で既に2%に接近している。現状ペースだと、2017年末には総合PCEインフレ率、コアPCEインフレ率ともに前年比+2%レベルになると見る([第1図])。また、10-12月期の実質GDP成長率は速報値と同じ前期比年率+1.9%を維持、結果10-12月期時点のマイナスの需給ギャップは約-0.9%、筆者個人の成長予想によれば2017年末には概ね解消する計算になる([第2図])。2017年末にインフレ・ギャップと需給ギャップが解消した場合、中立実質金利をFOMC委員予測に従い+1.0%とした場合でも、テイラー・ルールによる同時期の適正FF金利水準は約3%となる計算になる。つまり、年末のFF金利誘導目標レンジを1.4%とするFOMC委員予測中央値は需給ギャップとインフレ率から与えられる適正FF金利水準に比べて著しく緩和的といえることになる。

以上より、次回3月14-15日の連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合での+0.25%の利上げ決定との個人予想を維持し、これを合わせ年内3回の利上げとの個人予想には上方リスクを引き続き見ておく。

なお、今年の金融政策を占うに当たり重要な一つの要素は、トランプ新政権により任命されるであろう空席のFRB理事ポストである。FRB理事ポストは7席(議長・副議長を含む)あるが、現在就任中の理事は5名、2名が空席である。現在の5名の理事はいずれも民主党オバマ大統領に指名された人物であり、政治的には民主党に近いリベラル派かつ金融政策についてはハト派の人物が約半数を占めている([第1表])。イエレン議長、タルーロ理事、ブレイナード理事はいずれもリベラルなハト派、一方でパウエル理事のみは共和党のブッシュ(父)大統領政権下で財務次官補を務めた経験がある。FRB理事ポストの空席が続いたのは、2015年以降民主党大統領と共和党上院のねじれが続いたことが一つの背景である。議会と大統領がいずれも共和党になった今年は、空席理事の指名承認が進む可能性がある。さらに10日、ハト派のタルーロ理事は4月5日頃をもって理事を辞任すると公表した。これで少なくとも3つの理事ポストがトランプ新政権により指名される可能性があることになる。トランプ大統領指名かつ共和党が多数を占める上院の承認による新理事はタカ派よりの人物になる可能性が高そうだ。こうした状況証拠も、今年の利上げペースが現在予想比加速する可能性を示唆する材料の一つである。

[第1図]
20170305b図1

[第2図]
20170305b図2

[第1表]
20170305b表1

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