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<経済レポート> +0.25%の追加利上げ決定:3月FOMC

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FOMCは14-15日の定例会合で、3ヶ月ぶりとなる+0.25%の追加利上げを決定し、FF金利誘導目標レンジを0.75-1.00%とした。声明文などからは利上げペースの加速を明示的に示唆する情報はなく、市場はこれをハト派と受け止めたようである。筆者自身も年内利上げは今回を含め合計+0.75%との個人予想を維持するが、労働市場ギャップとインフレギャップが解消した現状では、FF金利の中立水準への引上げを早期に実施すべきとの見方が自然であり、利上げ予想には引き続き上方リスクを見ておく。

FOMCは3ヶ月ぶりの利上げ決定:インフレ率2%安定の見通し

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は3月14-15日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジを+0.25%引上げ0.75-1.00%とすることを決定した。FOMCの追加利上げは2016年12月定例会合以来3ヶ月ぶり、また実質ゼロ金利政策以降では、2015年12月の最初の利上げを含め3回目の利上げとなる([第1図])。本レポートでは、3月FOMC会合の声明文、FOMC委員の四半期経済予測、イエレンFRB議長の会合後の定例記者会見の内容をもとに、今回の利上げの背景と今後の金融政策予想を点検する。

まず、会合後に公表された声明文の内容を見ていく(末尾[第3表])。3月FOMC声明文の内容は前回2月のそれに比べて経済成長やインフレにつき判断が好転していることが読み取れるが、経済見通しに本質的な変更は見られない。今回の利上げが従前の利上げ見通しに基づき済々と決定されたことがうかがえる(ただし1名の反対票あり)。基調判断のパラグラフでは「インフレ率は最近の数四半期に上昇し委員会の2%の長期目標に接近しつつある」とされ、従前の「依然委員会の2%の長期目標を下回っている」から上方改訂された。設備投資も「いくぶん強まったように見える」とされて、従前の「軟化したまま」から判断が引き上げられた。経済見通しのパラグラフにおいては「インフレ率は中期的には2%付近で安定するだろう」とされ、従前の「中期的には2%に上昇するだろう」から判断が引き上げられている。これは、会合時点で公表されていた個人消費価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率が+1.9%にまで上昇したことの反映であるとともに、インフレ率が2%に到達後、これが一時的なものでなく持続的になるとFOMCが見通していることが示唆されている。

これらの基調判断と見通しを踏まえ、FOMCは「FF金利誘導目標レンジを0.75-1.00%に引き上げることを決定した」。また、フォワードガイダンスのパラグラフでは「委員会はその対称的なインフレ目標との関係においてインフレ実績と予想を注意深く監視していく」とされた。ここでは、従前の「現在のインフレ率の2%からの下方乖離に鑑み」の文言が削除されるとともに、インフレ目標が「対称的(symmetric)」であることを確認する文言が挿入された。これはのちに見るイエレン議長の記者会見での発言にもあるように、これまでのインフレ率下振れ状態から、今後はインフレ率が一時的に2%を超える上方リスクをもFOMCが勘案し始めたことを示唆している。しかし、総じて声明文の内容は前回2月声明文と比較して大きな変化はなく、特にフォワードガイダンスのパラグラフにおいて今後の利上げペース加速を示唆する文言変更はなされていない。なお、今回の決定においては、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が、FF金利誘導目標レンジの現状維持を主張して反対票を投じている。

[第1図]
20170319b図1

委員予測は不変:3年後には需要超過を示唆している

次に、声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期毎の経済予測の内容をみる。3月時点のFOMC委員の経済予測のうち、実質GDP成長率、失業率、PCEインフレ率の予測中央値は前回12月時点の予測と比べてほとんど変化はなかった。実質GDPの長期均衡成長率は+1.8%、今後2019年間でこれをやや上回る前年比+2%前後の成長が続くと予想されている。失業率は2019年まで、長期均衡水準(4.7%)を下回る4.5%で推移。PCEインフレ率は長期均衡水準と同じ+2%で推移するとされた。

適切なFF金利予測の中央値も大きな変化はなく、2017年末のそれは前回同様1.4%つまり2017年内に合計+0.75%の利上げが実施されるとの結果になっている。また長期的均衡FF金利水準は3.0%と前回予測比不変である([第1表])。今後の利上げペースに関する予測の分布は、2017年末に1.375%(年内合計+0.75%の利上げ)を予測する委員が9名と、前回の6名から増加した([第2図])。2017年末FF金利水準予測の平均値は、前回12月予測の1.375%から今回は1.404%に上昇しており、利上げ加速方向にややシフトしているといえる。また長期均衡水準である3.0%にFF金利誘導目標を引き上げるのは12月予測同様2019年とされている。

FOMC委員経済予測に大きな変化は見られなかったが、この予測は今後の利上げペースが現状の委員予測よりも加速する可能性を示唆している。委員予測中央値によれば、米国経済は今後約3年間潜在成長率を上回るペースで成長し、失業率は自然失業率を下回る水準に低下すすることになっている。これは、2019年に米国経済は需要超過の状態になっていることを意味する。祖の場合、物価上昇率は現状よりも加速するはずである、つまり今後3年の間にインフレ率は2%を超えて上昇する可能性があることをこの予測自体は示唆しているといえる。その場合、FF金利を中立水準よりも低いレベルに維持することがインフレの目標値以上への加速リスクをもたらす可能性がでてくる。

[第1表]
20170319b表1

[第2図]
20170319b図2

“gradual”は”measured”にあらず

更に、会合後に実施されたイエレン議長の定例記者会見の内容を見る。記者会見の冒頭発言でイエレン議長は、今回の利上げ決定の背景につき声明文とほぼ同内容の基調判断と見通しを述べた。さらに議長は冒頭発言で「漸進的な」利上げが正当であるとの声明文の背景につき「中立名目金利が歴史的基準に照らし極めて低い」ことを挙げている。中立金利の低下はイエレン議長がこれまでにもしばしば触れていたことである(3月3日シカゴ講演など)。ただし今回はこれに加えて「我々はFF金利の中立水準は今後いくぶん上昇すると予想している」と述べ、これが「今後何年かの間の漸進的な追加利上げが適切」であることの背景であるとしている。

また、FRBの保有資産の再投資政策については「我々は本会合で再投資政策の最終的な変更に関する多数の課題につき議論した」「我々のバランスシートを正常化する手続きは漸進的で予測可能との我々の減速を守るため、我々は可能な時点で更なる情報を提供する」と述べた。これは、2017年9月17日にイエレン議長のもとFRBが公表した「金融政策正常化の原則と計画」([第2表])の中で「FRBの証券保有の縮小は漸進的に予測可能な方法で、一義的には償還金の再投資停止により実施する」としていることを踏まえたものである。またこれは、前回2月定例会合の議事要旨で今後再投資政策の変更につき会合で議論していくとされていたこととも整合している。

記者会見の質疑応答でイエレン議長はいくつかの興味深い発言を行っている。まず「漸進的な(gradual)」利上げペースの意味についての質問に答えて議長は、過去2004年半ばからの金融引締め局面で「金利がすべての会合毎に引き上げられた」ことに言及、これが「漸進的かつ一定のペース(measured pace)」であったと見られたのに対し「我々は決してかかるやり方を展望していない」と述べた。”Measured pace”は、2004年からの利上げ局面で、当時のグリーンスパンFRB議長が声明文等で用いていた今後の利上げペース示唆文言である。これに対しイエレン議長は、今後の利上げペースを「一定の」ペースとせず、会合毎に利上げ要否を判断するとの姿勢を確認したものといえる。また、トランプ大統領の経済政策につきイエレン議長は記者の質問に対し「我々は潜在的な政策変更を詳細には議論していない」と述べて、現在の金融政策がトランプ大統領の今後の政策を反映していないことを述べた。これは前回2月定例会合の議事要旨でみられた、経済政策は詳細を待つとの方針が本会合でも踏襲されたことを示唆している。中立実質金利については、FOMC委員経済予測中央値からはこれが約1%とみられることを再び述べている(イエレン議長は3月3日のシカゴ講演でも同様の見解を述べている)。また、声明文に新たに挿入された「対称的な」インフレ目標文言については、これをFRBの「長期目標と金融政策戦略」の文言からの引用であることを説明するとともに、「これまではインフレ率の2%目標からの下方乖離があった」が「現在ではインフレ率はほぼ2%に上昇した」ことを同文言の声明文への採用の背景としている。

[第2表]
20170319b表2

利上げ予想へのリスクは引き続き加速方向

3月FOMCの利上げ決定は当レポートの予想通りであった。公表された声明文やFOMC委員経済予測に大きな変化がなかったことから、市場はこれをハト派的な内容と受け止めた模様である。市場ではFOMC結果を受けて長期金利が低下、FOMC前の14日に2.6%まで上昇していた米国債10年物利回りは結果公表後の15日には2.49%に低下した。イエレン議長自身も今後の利上げペースが「漸進的」でありその目途はFOMC委員予測中央値の年内合計+0.75であることを暗示する発言をしている。筆者個人もFRBの金融政策につき、年内合計+0.75%の利上げ、年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%とする個人予想は維持しておく。

しかしながら、利上げペースが年3回を超える上方リスクは引続き考慮しておくこととする。その理由の第1は、米国の実質中立金利はFOMCの想定する1%よりも高いかまたは早晩上昇する可能性が高いと見ることである。筆者の試算によれば米国の潜在成長率は1.5%程度とみられる。中立実質金利を1.5%とした場合のテイラー・ルール公式による2017年末の適正FF金利水準は約2.8%と試算される(2月5日付当レポート参照)。仮に中立実質金利をFOMCの見る1%としても、年末の適正FF金利は約1.8%と計算される。中立実質金利が1%の低位にあること自体は、FOMC自身が予測する長期均衡FF金利3%への到達ペースを遅くする理由にはならない。失業率ギャップとインフレギャップが解消しかつこれが持続的とFOMC自身が予測している現状では、FF金利の中立水準への回帰をいち早く進めることがビハインド・ザ・カーブ回避に必要というのが本来は自然な帰結であろう。第2は、現在FOMCの経済見通しに織り込まれていないトランプ大統領の経済政策が成長加速期待をもたらす可能性があることである。

一方で、FOMCの利上げペースに係る下方リスク要因は大きく2つある。1つは短期的に、1-3月期の実質GDP成長率の下振れリスクである。1月の実質個人消費は前月比マイナスの伸びにとどまり、1-3月期のGDP統計上の実質個人消費の伸び率は前期比年率+2%を下回るリスクが出てきている。第2に、トランプ大統領の政策や欧州政治動向などの不確定な要因が今後の米経済成長を下振れさせるリスクである。ただ、前者はおそらく統計上の要因にとどまる可能性が高く、また後者は現状の予測が困難な政治要因であるため、現状ではこれらの下方リスクを認識しておくにとどめておきたい。

[第3表]
20170319b表3c

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