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<経済レポート> 利上げ継続スタンスは不変:5月FOMC

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FOMCは5月定例会合でFF金利誘導目標レンジの据置きを決定した。FOMCの判断では、第1四半期の成長減速は一時的であるとされている。筆者個人も、年内合計3回以上の利上げがあるとの予想を維持し、次回6月定例会合では追加利上げが決定されると見る。年後半にはFRB保有資産再投資の終了も見込む。下方リスク要因は、個人消費の中期的な循環的減速と、国内外の政治的・地政学的リスクである。

5月FOMCはFF金利据置き:「第1四半期の減速は一時的」

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は3-4日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジを0.75-1.00%に据置くことを決定した。前回3月定例会合で3ヶ月ぶりの追加利上げを決定したのち、再び利上げに間を置いた形である([第1図])。会合後に公表された声明文の基調判断のパラグラフでは、1-3月期の実質GDP成長率の前期比年率+0.7%への減速を反映し「経済活動の成長が減速」「家計消費は緩やかに(modestly)上昇したのみ」といった修正がなされている。しかし、経済見通しのパラグラフでは「委員会は第1四半期の成長減速が一時的なものである可能性が高いと見て」いるとの文言が挿入され、今後の経済見通しは、従前の声明文と同じ「経済活動は適度なペースで拡大し、労働市場は更にいくぶん強化され、インフレ率は中期的には2%付近で安定する」に維持された(末尾[第2表])。FRBの保有資産の再投資政策も維持された。金融政策据置きの決定は全会一致でなされた。なお、FRBタルーロ理事は4月で辞任しており、5月定例会合の投票メンバーから外れている。

利上げペースが「漸進的(gradual)」になるとの従前からのフォワードガイダンスからは、今回の利上げ見送りは予想通りである。1-3月期の実質GDP成長率は個人消費の減速を主因に減速したが、4-6月期以降前期比年率+2%成長を継続すれば2017年に+1.7%(第4四半期前年同期比)の成長が可能なペースである。3月の非農業部門雇用者数は前月比+98千人に減速していたが、3ヶ月移動平均では同+177.7千人の雇用増が確保されていた。失業率は3月時点で4.5%と2007年以来の低位にあった。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の伸び率は3月時点で前年比+1.8%と、2月の同+2.1%から低下したが、筆者個人の見通しでは2017年末に同+1.7%程度の伸びを維持する見込みである。

3月時点のFOMC委員経済予測によれば、2017年の成長率(同上)は+2.1%、PCEインフレ率は+1.9%、失業率は4.5%となっており、1-3月期の成長とインフレの鈍化は、実績値がこの予測を若干下回るペースで推移していることになる。しかしながら、上記の個人見通しをテイラー・ルール公式に当てはめて推計した2017年末の適正FF金利は2.24%(自然利子率=1.5%の場合)となる([第3図])。これは、1-3月期の成長とインフレの減速にかかわらず、年内3回以上の利上げが適切との当レポートの見方を支持するものである。ついては、今後6月、9月の定例会合で各+0.25%の利上げが実施されるとの個人予想を維持、更に12月にも追加利上げが決定される上方リスクを引き続き見ておく。

[第1図]
20170505図1

[第2図]
20170505図2

[第3図]
20170505図3

保有資産再投資終了タイミングは年後半

遡って、+0.25%の利上げが決定された前回3月FOMC定例会合の議事要旨から、3月の利上げに至った議論をさらっておこう。3月14-15日の定例会合議事要旨によれば、金融政策に関する議論の中で「ほとんどすべての参加者は、入手されたデータが今会合におけるFF金利誘導目標の25bpsの引上げと整合的である」としていた。また「ほとんどすべての参加者は米経済が最大雇用近辺で推移していると判断した」とされた。一方で「対照的に、委員会のインフレ目標について参加者は異なる見解を持っていた」とされた。「多数の(a number of)参加者はコアインフレ率が将来の総合インフレの有用な指標であり、直近のコアインフレの12ヶ月上昇率は総合インフレ率が2%に持続的に上昇するには幾分の時間がかかることを示唆している」と述べた。しかし「数人の(several)参加者は、1月時点で総合インフレ率が2%近くに上昇しコアインフレ率が1.75%近くに上昇していることから、委員会は実質的にインフレ目標を達成しているかまたは年後半に達成しつつある」とのべ、これらの参加者は「金融緩和の解除を、FOMC委員経済予測で示されたよりも速いペースで実施することを正当化しうる」と述べたとされる。一部のFOMC委員の中では、年3回を超える利上げ実施を主張する意見が3月時点で出ていたことになる。

3月FOMCでは、FRBの保有資産の再投資の終了のタイミングに関する議論も行われていた。2014年FOMCが公表した「金融政策正常化の原則と計画(2014年9月17日FRBプレスリリース)」によれば、「FRBの証券保有を一義的には償還金の再投資停止により縮小する」「再投資終了または縮小開始はFF金利誘導目標レンジの引上げを開始したのちに実施する」とされている。3月の会合ではこの「原則と計画」が再確認されたうえで、実際の再投資終了の時期が議論された。「数人の参加者は、(再投資終了の)時期は数値的閾値またはFF金利誘導目標レンジに連関したトリガーに基づくべき」と述べた一方、「他の幾人か(some)の参加者は、その時期は質的な判断に依存するべき」と主張した。その上で「政策担当者は、委員会の再投資政策変更が適切となるFF金利の水準を議論」した。その結果「ほとんどの参加者は、FF金利の漸進的な引き上げを予想し、委員会の再投資政策への変更は今年の後半になりそうだと判断した」とされた。

3月会合の議事要旨には、再投資政策を変更するトリガーとなる具体的なFF金利誘導目標の水準については記載がない。しかし、ほとんどの参加者が再投資政策変更を年後半とみていたこと、また声明文が「FF金利水準の正常化が十分に進行するまで」同政策を続けると表明していることから、その水準はレンジの下限が1%をこえてくるレベルと憶測できる。金融緩和政策解除ペースがあくまで「漸進的」であることから、再投資政策解除は9月または12月の定例会合で決定される可能性が高いと現状では見ておきたい。これについては後日公表される5月定例会合の議事要旨で再投資政策終了に関する議論の内容を確認することとしたい。

バランスシート縮小は10年がかり

ところで、FRBのバランスシート縮小は数年以上にわたる作業になる見込みである。FRBは2008年の量的緩和実施以来、それまでの1兆円弱だった総資産残高を約4.5兆円にまで拡大させてきた([第4図])。現在の約4.5兆円のバランスシートのうち約4.3兆円が保有有価証券、うち米国債が約2.5兆円、住宅ローン担保証券(MBS)が約1.8兆円である。FRBの保有する有価証券の残高を残存期間別に見たのが[第5図]である。これによれば、米国債の保有年限は1~5年が最も多い約1.2兆円、MBSは1.8兆円の保有のほとんどが10年超である。
FRBは上記2014年の「計画」において「現在では、住宅ローン担保証券(MBS)の売却は予定しない」としている。これは、FRBがMBSを売却することによる住宅ローン金利上昇などの悪影響を排除する趣旨と考えられる。MBSの売却の可能性を前提としていた2011年6月のFOMC定例会合の議事要旨でも「住宅ローン担保証券の売却は3~5年かけて解消する」とされており、FRBのバランスシート縮小は当初より相応の時間をかけて実現することが想定されていた。仮にバランスシート縮小を再投資停止のみで実施した場合、1.2兆円の縮小を実現するのに1~5年がかかり、MBS残高の1.8兆円は10年以上残存することになる。

FRBのバランスシート残高の長期金利水準への直接影響の程度は必ずしも明かではない(FRBバランスシートの対GDP比率と長期金利の関係について、2015年4月29日付当レポート参照)。しかし現在の長期金利の低位安定に、FRBの拡大したバランスシート残高と再投資政策が寄与していることは間違いない。FRBが保有資産の再投資を開始した時点でそれは長期金利上昇要因となりうる。現在米国債10年物利回りは2%台前半に抑制されているが、再投資政策の終了はこれを本来の均衡水準と筆者がみる3%台半ばレベルに上昇させる契機となりうるだろう。

[第4図]
20170505図4

[第5図]
20170505図5

次回6月追加利上げ個人予想維持:1-3月期の景気減速の波及如何に留意

今後のFRB金融政策については、上述の通り年内に合計3回の利上げが実施されるとの筆者個人予想を維持し、この予想に対するリスクは上方すなわち合計4回の利上げが決定される可能性を見ておく。一方で、1-3月期の経済指標が予想比下振れたことは、この上方リスクを若干緩和する材料となりうるものである。従前より当レポートでみてきたように、個人消費のファンダメンタルズである個人所得の伸びは、悪化はしていないものの中期的な循環的減速局面に入りつつある。個人所得統計によれば、実質個人所得の伸びは3月に前月比+0.3%と3ヶ月ぶりのプラス成長に回帰した。しかし、実質可処分所得の伸び率はここ約2年間低下傾向にある([第6図])。個別品目としては、新車販売台数(乗用車及び軽トラック)が1月以降4ヶ月連続で前年同月を下回るなど、自動車販売の減速がかなり明かになっている。

トランプ政権の経済・財政政策はいまだ経済成長予想に十分に勘案できるほどには具体化していない。大統領予算教書はいまだ正式版がリリースされておらず、4月26日に公表されたトランプ政権の税制改革案も極めてハイレベルな項目呈示にとどまっている。前回3月のFOMC定例会合では「ほとんどの参加者はより拡大的な財政政策は経済予測への上方リスク」とみていた。当レポートでも同様の見方をとっている。しかし、最近のトランプ政権の政策具体化の遅れは、政策効果が2017年には示現しない可能性を更に高めているといえる(4月30日付当レポート参照)。

現状予見しうる材料で予想する限りにおいては、米経済はほぼ2%成長を今年も実現し、金融政策は着実に正常化されていくであろう。予見しにくい材料としてはトランプ大統領の政策の他、海外の政治的・地政学的リスクがある。ただ、米国内のファンダメンタルズが、当レポートや5月FOMC声明文で判断するように「堅調」であることは、4月分以降の経済指標で確認していくこととしたい。

[第6図]
20170505図6

[第1表]
20170505表1

[第2表]
20170505表2


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