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早期解決に期待~米国政府閉鎖と債務上限問題

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1日の米政府閉鎖開始から5日が経過、更に政府債務上限引上げの期限が17日に迫っている。17日までには債務上限引上げが合意されまた遅くとも10月中には政府閉鎖されれば市場混乱やリセッションは回避可能である。

1週間の閉鎖で4半期成長率は-0.2%低下

2014年度の米連邦政府予算が9月中に成立しなかったことで政府は予算の執行権限を失い、10月1日より政府一部閉鎖が開始された(米連邦政府の財政年度は前年10月から同年9月末)。政府一部閉鎖の経済への影響につき以下に概算を試みる([第1表])。

まず連邦政府支出への影響を試算する。各種報道によれば、政府一部閉鎖により約800千人の連邦政府職員が強制休暇を命じられるとされる。米労働省雇用統計における8月現在の連邦政府職員数は2,739千人、また2013年4-6月期GDP統計における連邦政府支出は1兆1680億ドル(実質年率)である。連邦政府職員の29.2%に当たる800千人の休暇が、連邦政府支出を同じ‐29.2%減少させると仮定すると、1週間の政府一部閉鎖で連邦政府支出は約‐66億ドル減少する計算になる。

次に個人消費への影響を試算する。各種報道によれば、給与支払を停止される連邦政府職員が1百万人単位で存在するとされる。そこで、連邦政府の給与支払停止により1百万人相当の消費者が消費を停止すると仮定する。1百万人は8月現在の非農業部門雇用者数(136.1百万人)の約0.7%に相当する。GDP統計上の個人消費がこれと同じ比率だけ減少すると仮定すると、1週間の給与支払停止により実質個人消費は-15億ドル減少する計算になる。

これらを合わせ、1週間の政府閉鎖により実質GDPは約‐81億ドル減少する。これは通年のGDPを-0.05%押し下げ、また10-12月期の実質GDP成長率を年率-0.21%ポイント押し下げる計算になる。

[第1表]
20131006表1

閉鎖が1ヶ月以内ならリセッションは回避できる

政府閉鎖が1ヶ月継続すると影響は相応に大きくなる。上記と同じ試算によれば、1ヶ月の政府閉鎖で連邦政府支出は‐282億ドル、個人消費支出は‐65億ドル、合計-347億ドル減少する。これは通年の実質GDPを約-0.22%押し下げ、10-12月期の成長率を年率‐0.88%ポイント押し下げる。

現実には、民間部門へのマイナスの波及効果(民間部門による政府向けの財・サービス提供停止など)が出る。また政府部門の支払事務の遅れにより予定以上の支出減少が考えられる。そのため、実際には1ヶ月の閉鎖は通年の成長率を-0.5%程度、10-12月期の成長率を年率-1%以上押し下げる可能性がある。因みに、米Moody’s Analytics社のチーフエコノミストであるマーク・ザンディ氏は、9月24日の上院予算委員会での証言テキストで「3~4週間の政府閉鎖は10-12月期の実質GDP成長率を年率-1.4%ポイント押し下げる」と推計している。

3月に開始された政府歳出自動削減が今年の米国の実質GDPを既に‐0.4%押し下げると筆者は見ている。従って、1ヶ月の政府一部閉鎖と歳出自動削減と合計で、本来の2013年の通年成長率を約‐0.6~-0.7%押し下げることになる。

現在筆者は、歳出自動削減勘案後の米国の今年の通年成長率を前年比+1.6%と見ている。ここに1ヶ月の政府閉鎖継続のマイナス効果が加わると、今年の成長率は+1%前半レベルにまで下がる計算になる。これは2012年の前年比+2.8%成長に比べ大幅な減速になる。10-12月期の成長率は、現在の筆者の見通しである+2%レベルから、+1%以下に低下する可能性がある。ただし、政府閉鎖が1ヶ月以内であれば成長率のマイナス転化やリセッション入りは回避できると言える。

17日に迫る政府債務上限問題

次に、政府閉鎖より深刻な問題である連邦政府債務上限問題を見てみる。現在、議会承認を得た連邦政府の公的債務上限は16.7兆ドルである。これは、2月4日に成立したNo Budget, No Pay Act of 2013で、当時16.4兆ドルだった債務上限を暫定的に5月18日まで不適用とし、5月18日時点の公的債務残高を翌日以降の新たな債務上限としたことに基づいている(2011年以降の「財政の崖」と「政府債務上限」に関する経緯は[第3表]参照)。

ルー米財務長官のベイナー下院議長宛9月25日付書簡によれば、米財務省の資金は10月17日に底を突くと見積もられている。同書簡では、財務省の資金残高は同日付で300億ドルとなり、ネット支払い額の600億ドルに満たなくなるとされている。3日付の米財務省Daily Treasury Statementによれば、すでに公的債務残高は16.7兆ドルと上限に達しており、また財務省の手元資金残高は244億ドルとなっている。なお、米財務省の通常の月間の支払日程は[第2表]の通りで、月末に国債利払い、月初に政府医療保険や年金などの支払いが集中する。

政府一部閉鎖による予算執行停止は必要不可欠でない業務に限られる。また、予算のうち防衛費など議会の可決を必要とする裁量支出の執行は停止されるが、年金支払など義務的支出は議会の可決を経ず執行できる。しかしながら、17日までに債務上限引上げが行われず政府資金が枯渇すると、義務的支出執行さらに米国債利払いに影響を及ぼす可能性がある。米国債の利払い停止の懸念は、米国債格下げや米国債デフォルト懸念でもある。

最近の他の債務上限引上げの例として、2011年8月の2011年財政管理法による引上げがある([第3表]参照)。同法では債務上限を14.3兆ドルから16.4兆ドルに引き上げて米国債デフォルトを回避する代わりに、10年間で9170億ドルの裁量歳出削減及び追加で10年間1.2兆ドルの歳出削減案策定が条件とされた(なお、S&P社は同法成立の数日後に米国債をAAAからAA+に格下げ、また同年内に歳出削減案が議会で合意されず2013年3月からの歳出自動削減の開始となった)。過去はこうして米国債デフォルトが何度か回避されてきたが、今回も17日までに何らかの債務上限引上げが議会で成立するかが注目となる。

[第2表]
20131006表2


政府閉鎖・債務上限問題の背景にイデオロギー対立

今回の政府閉鎖は、共和党多数の米議会下院、民主党多数の上院というねじれ議会の中で、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止または延期を求める共和党と、オバマケアを目玉政策とする民主党の対立が要因となっている(オバマケアは、オバマ大統領が2011年3月23日に署名成立した医療保険制度改革法Affordable Care Act =ACAに基づき、全ての国民に医療保険加入を要請する制度)。いわば両党の本質的なイデオロギーの対立である。

今回の政府閉鎖の経緯を振り返ると次のようになる。10月からの2014財政年度の予算案につき、共和党下院は9月20日、オバマケア予算執行禁止を盛り込んだ12月15日までの暫定予算決議案(H.J.RES..59)を可決した。上院は同月27日、オバマケア禁止条件を削除する修正をこれに加えて可決し下院に送付した。下院は同29日、これをオバマケアの1年間停止を条件とする再修正案として決議した。下院はこの決議案を採決できず同決議は廃案となった。結果10月1日から政府予算が成立せず、政府一部閉鎖が実施された。

オバマケア実施停止や追加歳出削減を、予算執行や債務上限引上げの条件とする共和党の戦術は、世論の支持を得ているとは言い難い。NBC/WSJの9月5-8日付世論調査によれば、オバマケアに否定的な意見が45%と、肯定な的意見の23%を上回っていた。また債務上限引上げに否定的な意見が44%と、肯定的な意見22%を上回っていた。しかしながら、政府閉鎖開始後10月4日実施のCBS NEWSの世論調査では、オバマケアを巡る与野党対立による政府一部閉鎖について否定的な意見が72%で、肯定的な意見25%を大幅に上回っている。

共和党が政府閉鎖や米国債デフォルトのリスクを冒してもオバマケア停止と歳出削減に固執するのは、ティーパーティなど保守系の一部の支持者への配慮と考えられる。オバマケア実施に修正された暫定予算決議採決阻止のため、25日に19時間の長時間演説を行った共和党クルーズ上院議員(テキサス州選出)は、ティーパーティの支持で当選した議員の典型とされる。

しかし、長期間の政府閉鎖や、米国債デフォルトといった大きなリスク示現を国民が容認するとは到底考えられず、少なくとも債務上限引上げについては両党合意すると見るのが自然であろう。

早期の政治決着に期待

現状、政府閉鎖終了と債務上限引上げについての民主・共和両党の交渉は進展していない模様だ。報道によれば、4日共和党ベイナー下院議長はオバマケア実施停止に固執することを示唆、また債務上限引上げには(歳出削減などを)条件とし、「無条件の債務上限引上げ案は拒否する」と述べた。

議会内政治問題についての予想は困難だが、共和党が妥協して小幅な債務上限引上げで民主党と合意し、米国債デフォルトは回避される可能性が高いと個人的には考えている。米国債デフォルト容認は与野党いずれにも極めて代償の大きい選択である。政府閉鎖長期化と米国債デフォルトの回避のための妥協案として、共和党がオバマケアと追加的歳出削減の条件をやや緩めることで妥協し、債務上限引上げと短期間の暫定予算決議が17日までに議会で可決されることをメインシナリオとしておきたい。

次に考えられるシナリオは、影響の大きい債務上限引上げにつき17日までに合意成立するも、暫定予算は合意されず引続き共和党がオバマケア停止を民主党に迫るシナリオである。この場合デフォルトという事態は回避されるも、政府閉鎖による経済への悪影響が更に長引くことになる。しかし、経済への影響は世論への配慮から、遅くとも10月中には短期の暫定予算などの妥協案が成立し、米国のリセッション入りは回避できるものとみておきたい。

[第3表]
20131006表3


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