<経済レポート> 経済は平時に回帰:米経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
米経済成長率は1-3月期に一時的に低下したが、今後は再び+2%台の成長に回帰すると見る。個人消費は中期的な減速に入っているが潜在成長率を超える成長には十分な雇用の伸びがある。企業収益や景況観も回復した。インフレ率は今後もFRBの目標である2%近辺で推移すると見る。FRBの金融政策については、従前の個人予想を上方修正し、実施済の3月利上げを含め年内合計4回(+1.00%)の利上げが決定されると今や個人予想する。

今後2%台に回復を見込む:消費は中期的に減速へ

米実質GDP成長率は1-3月期に前期比年率+0.7%(速報値)に減速した。主因は個人消費の同+0.3%への減速と、在庫積み上げペース減速による成長へのマイナス寄与(寄与度同-0.93%)であった。しかし、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+2.2%と、前期の同3%台から減速はしたものの2%台の成長を維持している。1-3月期の成長減速は個人消費の一時的軟化と在庫要因による一時的なものと見たい。本レポートでは各経済指標を基に、4月以降の米経済成長予想を点検していく。

個人消費のベースとなる個人の購買力の伸びは減速を続けている。非農業部門雇用者数の伸び率は1-3月期時点で前年比約+1.6%と、1年前の同+1.8%、2年前の同+2.2%から減速が続いている。これは、失業率が自然失業率に接近したことに伴う中期循環的な減速といえる。現在の非農業部門雇用者数は約146百万人であるから、年率2%の雇用増を達成するには月間+243千人の雇用増が必要になる計算で、月間+200千人の雇用増では2%の雇用増加ペースを実現できないことになる。また、インフレ率を差し引いた実質ベースの時間当たり賃金は、インフレ率の上昇により今年の1、2月に一時前年比マイナスの伸びに転化した。結果、雇用者数、実質賃金、週平均労働時間の伸びを合わせた実質購買力の伸びは1月時点で前年比+1.2%と2013年以来の低い伸びに低下した([第1図])。

今後雇用が前年比+1.6%、インフレ率が同+1.7%程度で推移するとした場合、実質ベースで+2%の購買力の伸びを確保するためには、名目時間当たり賃金が同+2.1%上昇すれば足りる。名目時間当たり賃金の伸び率は想定以上に低位ではあるが、4月時点で同+2.3%は確保している。ここからは、今後も個人消費は前年比+2%の成長は十分に可能である。4月までの小売売上高統計なども勘案し、4-6月期以降のGDP統計上の個人消費は前期比年率+1.8%の成長を継続すると見る([第2図])。

[第1図]
20170521図1

[第2図]
20170521図2

設備投資は大幅に回復した

1-3月期には設備投資が個人消費に代わり回復を見せた。1-3月期のGDP統計上の設備投資は前期比年率+9.4%と、13四半期ぶりの強い伸びとなった。うち機器投資は同+9.1%と2四半期連続のプラス成長で、それまでの4四半期連続のマイナス成長から脱却した。この背景には、企業の在庫調整の終了、海外景気の回復による輸出財の生産回復があると考えられる。企業設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)は1-3月期に前期比年率+6.0%と前期比伸びが加速、かつ2四半期連続のプラスの伸びとなっており、4月以降の設備投資もこの増加基調を維持できることを示唆している。

株価上昇、海外景気の回復で、企業収益も回復している。2016年10-12月期企業収益(在庫評価及び資本減耗調整後)は前年比+9.3%と2四半期連続プラスの伸びかつ2012年7-9月期以来の高い伸び率に回復した。内訳は、国内金融機関同+21.0%、国内非金融機関同+3.0%、海外部門同+14.5%と、金融機関と海外部門の回復が目立つ。これに伴い、設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローも10-12月期には同+10.9%と2四半期連続のプラスの伸びに回復した。企業景況観も不悪である。ISM製造業指数はトランプ米大統領当選後上昇基調にあり、4月時点で54.8%と8ヶ月連続で景気判断の分かれ目を示す50%を超えている。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における設備投資DI(6ヶ月先)は4月時点で36.5ポイントと、昨年後半以降上昇ペースの加速が著しい([第3図])。こうした背景から、GDP統計上の企業設備投資は4-6月期以降もプラス成長を継続できると見る。

もっとも企業部門の回復ペースは緩やかなものにとどまり、今後は前期比年率1桁の伸びになりそうだ。鉱工業設備稼働率は3月時点で76.1%と、1972-2016年平均の79.9%に比べ依然低水準にある。

[第3図]
20170521図3

住宅は今後も堅調に、輸出は拡大へ

住宅市場の需給は依然タイトであり、今後も住宅投資は堅調に増加して成長にプラス寄与を続けると見る。GDP統計上の住宅投資は1-3月期に前期比年率+13.7%の強い拡大だった。住宅販売市場では、中古住宅販売の在庫期間が3.8ヶ月と、極めてタイトな需給になっている。全米住宅建設業協会(NAHB)の住宅市場指数は5月時点で70ポイントと、実に2005年7月以来の高水準にある([第4図])。4月時点の住宅着工許可件数の6ヶ月移動平均は年率1254.8千戸と、住宅着工件数のそれ(同1219.3千戸)を上回っており、今後も住宅着工件数が堅調に増加することを示唆している。GDP統計上の住宅投資は4-6月期以降も前期比年率約+8%程度の拡大継続を見込む。

企業在庫は、現在在庫循環図が在庫積み上げ局面にあることから、今後年内は成長にプラスの寄与を続けると見る([第5図])。企業の在庫売上高比率は3月時点で1.35倍と、2014年末以来の低水準にまで低下しており、昨年初からの在庫調整が一巡したことを示唆している。純輸出は今後年内成長にプラスの寄与をすると見る。財・サービス収支は米ドル高にも関わらず強い拡大を続けている([第6図])。財輸出の拡大ペースは現状輸入の増加ペースを上回っている。内需が徐々に減速するのに対して、欧州他海外景気の回復ペースは速く、今後はわずかながら貿易収支赤字は縮小の方向にあると見たい。

以上から、4-6月期以降も米経済は前期比年率+2%台半ばも成長を継続し、2017年通年成長率は前年比約+2%と個人予想する。この予想は、1月時点の個人予想(1月9日付当レポート参照)であった同+2.4%からは若干の下方修正となる。これは主に1-3月期の成長率の予想比下振れを背景とするものであり、米経済に対する見通しの大きな変更を伴うものではない。

[第4図]
20170521図4

[第5図]
20170521図5

[第6図]
20170521図6

FOMC利上げ個人予想を上方修正する:政治的なリスクは継続

インフレ率は今後、FRBの目標である2%に近いかややそれを下回る水準での推移を個人予想する。失業率とインフレ率の関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、現在の失業率4.4%は、コア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)の前年比約+1.9%のインフレ率に相当する([第7図])。現在のコアPCEインフレ率は3月現在で同+1.6%と、フィリップス曲線による推計値をやや下回っているものの概ね近い水準である。インフレ率が失業率に対して相対的に低めである背景として、一般的なインフレの失業率に対する遅行性に加え、賃金上昇ペースが低位にとどまっていることがあげられる。しかしながら、今後原油価格が安定推移した場合、PCEインフレ率、コアPCEインフレ率はいずれも、2017年末に前年比+1.7%程度に着地する見込みである([第8図])。また、賃金上昇率、インフレ率ともに、失業率が自然失業率(米議会予算局推計では4.7%)を下回ったところから上昇ペースが加速することは十分に考えられる。非農業部門雇用者数は今後も前月比+150千人~+200千人ペースの増加を続け、失業率は自然失業率を下回る水準を維持すると見る。

FRBの金融政策については、上記の通りインフレ率が政策目標の2%近辺で推移し、失業率が自然失業率を下回るとの見通しのもと、3月に実施された利上げを含め年内に4回、合計+1.0%の利上げが決定される(2017年末のFF金利誘目標レンジは1.50-1.75%)と個人予想する。今後の利上げ決定は6月、9月、12月のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合においてなされると見る。これは1月時点の筆者個人予想に比べ、年内利上げペースを3回から4回に上方修正したことになる。1-3月期の実質GDP成長率下振れにも関わらず、テイラー・ルールによれば、2017年末の適正FF金利は約2.2%と推計される(5月5日付当レポート参照)。市場へのショックを緩和するために金融緩和政策の解除を漸進的に実施するとのFOMCスタンスの下でも、年内合計+1%の利上げは十分に正当化しうること、雇用市場とインフレ率がほぼFOMCの見通しに沿って推移していることが個人予想上方修正の背景である。

上記の予想に対するリスク要因は、主に政治要因となる。当レポートでは、トランプ米大統領の経済政策を潜在的に経済に対する上振れ要因と見てきた。しかしながら、就任100日以上を経ても、トランプ氏の経済政策が具体化される見込みは立っていない。3月16日に公表された大統領予算教書(ブループリント)、4月26日に公表された「経済成長と米国雇用のための2017年税制改革」はいずれも従前からのトランプ氏の公約の概要にすぎず、具体的な政策の数値化や行程が示されていない。トランプ大統領の経済・財政政策が実現した場合でも、成長への効果を発揮は2018年以降とならざるを得ない。成長見通しへの上方リスク要因は徐々に縮小しているといえる。オバマケア代替法案は3月にいったん採決を断念したのち5月4日に米議会下院で可決された。しかし、上院での成立の目途はまだ立たず、トランプ氏の政策遂行にはまだ不確定要素が多い。さらに、米司法省は17日、ロシアが昨年の米大統領選に影響を及ぼしたとされる疑惑につき、米連邦捜査局(FBI)捜査を監督する特別検察官にロバート・ミュラー元FBI長官を任命すると公表した。これは、トランプ政権維持そのものにすら影響を与えかねない下方リスク要因である。

[第7図]
20170521図7

[第8図]
20170521図8

スポンサーサイト

コメント

トラックバック