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閉鎖の影響じわり~米国経済定点観測

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17日期限の米政府債務上限問題の解決の目途は未だ立たないが、少なくとも短期的妥協案で米国債デフォルトは回避できると憶測する。しかし一方で政府閉鎖は長期化の可能性が高まり、成長への影響が目に見えるレベルになっている。

閉鎖の悪影響はやや緩和:一部職員復帰と給与遡及支払法案

1日に米国政府一部閉鎖が開始されてからの主な動きは次の通りである。まず、9月30日に成立済のPay Our Military Act(H.R.3210)に基づき、米国防省は5日、同法に基づき給与支払いを受けられる職員(軍人)についての強制休暇を解除すると公表した。これにより職場に復帰する職員の数は約350千人とされる(各種報道による)。

当初約800千人(各種報道による)と見積もられていた強制休暇職員数は、国防省職員の職場復帰に伴い450千人に減少することになる。ただし同法で支払われるのは軍人の給与のみであり、国防省の予算執行が可能になったわけではない。米予算制度における国防費は裁量支出に属し、議会の議決による法令化が必要である。従って、この措置による経済へのマイナス効果縮小は350千人分の個人消費にとどまり、政府財政支出については引続きマイナス効果が継続することになる。

また、米共和党下院は5日、政府閉鎖により給与支払を凍結された職員につき閉鎖終了後速やかに同期間の基準給与の支払を受けることができるとする法案Federal Employee Retroactive Pay Fairness Act, H.R.3223を407‐0で可決し、上院に送付した。本法案が成立すれば、政府閉鎖解除後に給与支払いが過去に遡って行われることから、給与支払凍結に伴う個人消費へのマイナスの影響は政府閉鎖後に取り戻されることになる。

閉鎖に伴う政府部門のマイナス効果が徐々に緩和される一方で、民間部門へのマイナスの影響が徐々に波及していると考えられる。結果政府閉鎖のマイナス効果が大幅に縮小したとは言い難い。そこで、政府閉鎖の成長への影響は、10月6日付当レポートでの試算とほぼ同じく、1ヶ月で10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率で約-1%押し下げるとの想定を維持することとする。

債務上限引上げ協議は不調、両党上院院内総務会談へ

債務上限問題についてはまず9日、共和党議会下院が新たな歳出削減案策定を条件に債務上限を見直す法案Deficit Reduction and Economic Growth Working Group Act, H.R.3273を224-197の共和党議員中心の多数で可決した。これは上下両院議員から選出されたワーキンググループが2014年度の新たな裁量支出額と新たな公的債務上限額に関する報告書を法案成立後3日以内に議会に提出することを定めようとする法案で、いわば債務上限引上げの条件として更なる歳出削減策を求める共和党戦術の反映と言える。ただこの法案はその後上院での審議には付されずまた民主党多数の上院での可決の見込みは薄いといえる。

次に報道によれば共和党は10日、債務上限を11月22日まで暫定的に引き上げる案をオバマ大統領に提案した。債務上限引上げを認めることで経済・市場の混乱を回避しつつ、オバマケア停止の交換条件として(暫定)予算の審議には応じないとの共和党の戦術が読み取れる。共和党案につきホワイトハウスと共和党が協議を行ったが、これに付されたオバマケアや赤字削減に関する条件をオバマ大統領は拒否した模様で両者の協議は不調に終わった。

さらに民主党議会上院は12日、政府債務上限を2014年12月31日まで暫定不適用とする法案Default Prevention Act, S.1569を提出した。しかし同法案は審議打ち切りに必要な3分の2の賛成を得られず(53-45)事実上見送りとなった。この法案はほぼ無条件での債務上限1年以上不適用とする民主党の意向の反映された法案だが、上院で約半数を占める共和党の反対で成立できなかったものである。

政府閉鎖は継続も債務上限引上げ交渉には期待

17日の債務上限期限に向けた交渉は期限ぎりぎりまで続きそうだ。最新の報道では、民主党リード上院院内総務と共和党マコネル上院院内総務の会談が13日に予定されている。

なお世論調査によれば、ティーバーティなど一部の保守層を除き、債務上限問題を深刻に受け止める意見が多い模様だ。10月7-9日付のNBC/WSJ世論調査によれば、63%が「債務上限引上げ拒否は現実的で深刻な問題になる」と回答している。支持政党別では、民主党支持者の72%が「深刻な問題」と回答をしたのに対し、共和党支持者の同回答は57%にとどまっている。ただし共和党内でも意見が明瞭に分かれており、ティーパーティ支持者を除く共和党支持者で見ると71%が同回答をしている。

仮に政府債務上限の引上げがなされず仮に米国債元利払いが滞った際の経済・金融への影響は測り知れない。格付会社S&Pは米国債(現在の格付AA+)の元利払い遅延は「選択的債務不履行(SD)」に引下げられるとしている。仮にそうなれば、2012年12月に政府債務の一部民間負担実施が選択的債務不履行とみなされたギリシャ国債と同様の扱いになる。共和党もかかる混乱を招くことは本意ではなく、債務上限引上げにはなんとか応じると憶測しておきたい。

これらの状況からは、債務上限引上げにはまだ期待が残されている一方、政府一部閉鎖は長期化しそうな模様である。そこで、10月6日付当レポートでのリスクシナリオすなわち、17日までに債務上限引上げの合意がなされて米国債デフォルトは回避、ただし政府一部閉鎖は10月末まで継続する、ことを新たなメインシナリオとしたい。

個人消費は減速を予想

こうした不確定要素が多い中、米国経済ファンダメンタルズの定点観測を試みる。前提としては、債務上限引上げにより米国債デフォルトは回避するも政府一部閉鎖は1ヶ月程度継続するシナリオによることにする。結果米国成長率予想を引き下げることとする。

まず米国経済の中心である個人消費は減速しつつある。月次の実質個人消費の前年比の伸びは今年に入ってから8月まで前年比+1.7~2.0%の間でほぼ安定している。雇用の伸びも同じく前年比+1.5~1.7%の安定的な伸びである。しかし何れのペースも好景気時における2%台の伸びに比較すればまだ低位である。10-12月期にはこれに政府閉鎖の影響が加わると更に個人消費の伸びは減速することが予想できる。

個人消費の今後の減速を示唆する要因として消費者センチメントの陰りがあげられる。ミシガン大学消費者センチメント指数は7月にピークを付けたのち9月まで2カ月連続で大幅低下している([第1図])。そこで、7-9月期のGDP統計上の実質個人消費の伸びは前期比年率+1.4%程度と前期の同+1.8%から減速、また10-12月期には同+1%程度に減速すると見る。

[第1図]
20131013図1

企業設備投資は低迷している

次に企業の設備投資が低迷している。GDP統計上の機器ソフトウエア投資の基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の7-9月期の伸びは、8月までで前期比年率-2.9%のマイナスの伸びとなっている([第2図])。GDP統計上の民間設備投資は2四半期ぶりにふたたびマイナス成長に転化しそうだ。

これと一見異なる動きをみせているのが企業景況感指数である。ISM製造業指数は7月に急伸したのち9月までほぼ高水準を保っている([第3図])。しかし、他の企業景況感指数はフィラデルフィア連銀指数のように9月に悪化を見せたものがあるなど、全体として方向感が見えにくい。更に政府閉鎖を反映した10月分では企業景況感の更なる悪化の可能性が高い。企業設備投資も今年後半は力強い伸びは期待しにくい。

以上より、筆者個人の7-9月期の実質GDP成長率予想を前期比年率+1.5%、10-12月期を同+1.0%に下方修正する([第4図])。2013年の通年成長率は前年比+1.5%の予想となる。

[第2図]
20131013図2

[第3図]
20131013図3

[第4図]
20131013図4


なお、米国を含む10月13日時点の筆者個人の経済・金融予想を以下の[第1表]にまとめる。

[第1表]
20131013表1


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