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<経済レポート> バランスシート縮小開始:9月FOMC

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FOMCは9月の定例会合で、10月からのバランスシート縮小開始を決定した。FF金利誘導目標は現状に据え置いた。FOMC委員経済予測は、年内あと1回の利上げを示唆している。ハリケーンの影響は2四半期程度で解消し、米経済は今年2%を超える成長を実現しそうだ。インフレ率は当面2%を下回るものの、テイラー・ルールは依然2%台後半の適正FF金利水準を示唆している。従前通り、漸進的な利上げペースを減速させる要因はないとの見方を維持する。

バランスシート縮小開始を決定、12月追加利上げを示唆

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は9月19-20日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジの1.00-1.25%での据置きと、10月からのバランスシート正常化計画の実施開始とを決定した。これらの決定は全会一致でなされた。9月会合での利上げ見送りは、6月時点の当レポートの予想(年内4回合計+1.00%の利上げ)に対する下方リスクが示現したものであるが、直前の市場期待に整合する結果である。バランスシート正常化の開始決定は、前回7月会合声明文で「比較的早期に」開始すると表明されていたことと整合する結果で、市場の期待に沿ったものといえる。以下本レポートでは、9月FOMC声明文、四半期FOMC委員経済予測、イエレンFRB議長定例記者会見の内容を点検し、今後のFRB金融政策を占う。

20 日のFOMC会合後に公表された声明文では、バランスシート正常化開始の決定と、ハリケーン影響に関する記述が新たに加えられたものの、これら以外の部分では前回声明文に比して本質的な変更はなかった。冒頭の基調判断のパラグラフでは、経済活動が適度なペースで拡大、雇用増は堅調、インフレ率は低下と従前の判断をほぼ踏襲している。経済見通しに関するパラグラフでは、ハリケーン・ハーヴェイ、イルマ、マリアの影響と復興が「短期的に経済活動に影響を当与えるであろう」としつつ「過去の経験はハリケーンが国全体経済の中期的な行程を本質的に変える可能性は低いことを示唆している」として、ハリケーン影響が今後の経済見通しに与える影響は中期的には限定的との見方を示した。結果、「FF金利誘導目標レンジを1.00-1.25%に維持すること」ならびに「10月に、委員会は2017年6月の『金融政策正常化の原則と計画』の付属文書に記述されているバランスシート正常化プログラムを開始する」ことが全会一致で決定された。

声明文と同時に公表されたFOMC委員による四半期経済予測([第1表])は、前回6月予測と比較して顕著な変更は見られなかった。注目すべき点は以下の2点である。第1に、2017年末の適正なFF金利水準の予測中央値は1.375%と前回比不変であった。年末のFF金利水準を1.375%(レンジでは1.25-1.50%)と予測する委員の数が11人と最多で、前回6月予測の9人から増加している([第1図])。これは、年内にあと1回+0.25%の追加利上げがFOMCで決定されることを示唆している。これは、現在の成長率、労働市場、インフレ率の環境から、漸進的な利上げを停止する理由がないとの当レポートの見方に整合するものである。

[第1表]
20170924b表1

[第1図]
20170924b図1

長期的な適正FF金利予測は低下した

第2に、長期的な適正FF金利均衡水準の予測中央値が、従前の3.0%から2.75%に低下していることである。イエレンFRB議長はしばしば、自然利子率がここ数年間で大幅に低下している可能性に言及している。FOMC委員経済予測の長期的な適正FF金利水準の予測中央値は、2015年の3.5%から徐々に低下する傾向にあり、今回の2.75%は2016年以降の予測値で最も低い水準にある([第2図])。これは、米国の均衡インフレ率や自然利子率が徐々に低下しているとのFOMC委員の見方の反映ともいえる。ちなみに9月予測における長期適正FF金利の予測には相応にばらつきがある。前回6月予測では、長期的な適正FF金利を3%と予測する委員が8人で最多かつ中央値であったが、今回9月予測では、3%を予測する委員が5人に減少、代わって、2.5%、2.75%を予測する委員がそれぞれ4人ずつとなった([第3図])。

定例会合後に行われたイエレンFRB議長の定例記者会見は、声明文や経済予測以上の多くの情報を提供するものではなかった。冒頭発言でイエレン議長は、ハリケーンにつき雇用やインフレ等に短期的影響があるものの、2四半期以降の経済行程に本質的影響がある可能性は低いとした。今年のインフレ率低下については、携帯電話サービス価格低下などの一時要因がその原因であるとの従来の見方を維持した。バランスシート正常化の開始決定については、6月の付属文書の内容を説明するにとどまった。

総じて9月FOMCの結果は直近の直前の市場の予想通りの内容であり、大きなサプライズのないものであった。もっとも、市場では9月にかけて一時、FF金利先物価格に見られる年内の追加利上げ期待が半分以下に後退していた時期があった。9月声明文と経済予測を受けて、12月定例会合での利上げ期待は70%以上に上昇した。

[第2図]
20170924b図2

[第3図]
20170924b図3

12月FOMCでの追加利上げを個人予想する

今後のFRB金融政策について、12月の定例会合で+0.25%の追加利上げが実施されると個人予想する。イエレン議長が述べている通り、GDP、雇用市場、インフレ率に係る経済指標は、ハリケーン・ハーヴェイ、イルマ、マリアの影響で、米国南部を中心に7-9月期に下振れる(インフレ率はガソリン価格上昇の可能性から上振れる)可能性が高い。しかしこの影響は10-12月期には反動で解消されると見たい。2005年8月に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナの事例では、成長率や失業率への影響は僅少であった。非農業部門雇用者数は2005年9月、10月に前月比+100千人を割り込むまでに伸びが一時減速したが、11月には同+300千人台に反動増加している。雇用市場のベースラインは今後も堅調な拡大を継続すると見る。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、7月現在で前年比+1.4%と年初来の低下傾向がここ2ヶ月ほどで底入れした形になっている。PCEインフレ率は、ハリケーン影響を除くと年末には同+1.3%程度で推移すると見る([第4図])。

米議会予算局(CBO)が推計する米国の潜在GDPを基に計算すると、4-6月期時点の米国経済のマイナスの需給ギャップは約-0.2%にまで縮小しており、米経済はほぼ需給均衡状態にあるといえる。この需給ギャップやインフレ実績をもとに、テイラー・ルール公式による適正FF金利水準を推計すると、4-6月期現在の適正FF金利は2.67%、本年末においてもほぼ同水準の適正値が算出される([第5図])。これは、現状においてもFF金利の水準は均衡水準に対してかなり低位にあることを示唆している。インフレ率がFOMCの目標値である2%を下回っていても、利上げペースを停止する理由は見つからない。イエレン議長が定例記者会見でも強調したように、金融政策正常化の一義的手段はFF金利誘導目標であってバランスシート正常化ではない(後述参照)。したがって、バランスシート正常化が済々と開始されたことをもって、利上げペースを減速させる理由にはならないことになる。

FOMC委員が予測する長期の適正FF金利水準の低下(9月時点予測で2.75%)につき付言しておく。FOMC委員予測によれば長期的なPCEインフレ率の予測中央値は2.0%(16人の委員全員が2%を予測している)とされている。つまり、FOMCは長期的な均衡自然利子率を0.75%程度の低水準とみていることになる。一方で、同予測によれば、長期的な成長率予測の中央値は1.8%とされており、これは均衡自然利子率と計算される0.75%と整合しない。ちなみに、9月委員予測の中で長期成長率予測の最低値は1.5%であり、長期的成長率を1%以下とみている委員は存在しない。FOMC委員の中には、自然利子率を潜在成長率とは異なるものとして潜在成長率以下とみている者が複数いることになる。筆者自身は、現在の米潜在成長率を約1.5%程度とみており、これを自然利子率とみなしている。この自然利子率に均衡インフレ率(現在では約1.7%程度)を加えた3%強が、長期的に適正な金利水準との考え方をとっている。

[第4図]
20170924b図4

[第5図]
20170924b図5

長期金利は上昇へ:下方リスクは財政と地政学要因

FRBのバランスシート正常化の行程は、6月に公表された「金融政策正常化の原則と計画への付属文書」に示された通り、当初は米国債につき毎月60億ドル、エージェンシー債及び住宅ローン担保証券につき40億ドルの上限を超える部分についてのみ再投資が行われることになる。この上限は3ヶ月毎にそれぞれ300億ドル、200億ドルにまで引き上げられる([第2表])。また、イエレン議長が定例記者会見で強調したように、金融政策正常化の一義的手段はFF金利誘導目標であることが本付属文書でも謳われている。

バランスシート正常化開始は、数値的に予測は困難であるものの、長期金利を押し上げる圧力になると見る(7月2日付当レポート参照)。現在米国債10年物利回りは2.3%の低位にあるものの、インフレ期待や成長率を基に推計した均衡値は3%強である。FRBのバランスシート正常化は、長期金利を均衡値に回帰させる一つの要素となるだろう。もっとも、FRBのバランスシート規模に比して、縮小ペースは極めて小さいものである。FRB付属文書に基づき試算すると、現在約4.5兆ドルあるFRBのバランスシートは、縮小開始から2年強を経た2019年末においても約3.4兆ドルに縮小するにすぎないことがわかる([第6図])。金融危機以前のバランスシート規模は約1兆ドルであったから、FRBの資産規模は長期間にわたり平時の規模を大幅に上回る規模を維持することになる。

上記の当レポート予想に対する下方リスクは、ハリケーンの経済への影響が予想以上に大きなものとなるケース、9月から3ヶ月間の不適用が決定した政府債務上限問題の12月の再燃の可能性、そして北朝鮮問題を中心に国際的な地政学リスクの顕在化が起きるケースである。これらのリスクを捨象した場合、2017年通年の米経済成長率は前年比+2.1%(第4四半期前年同期比では+2.2%)と、FOMC委員予測中央値よりもやや弱めとなると個人的には見通している。

[第2表]
20170924b表2

[第6図]
20170924b図6

[第3表]
20170924b表3



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