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<経済レポート> 減税案が再浮上:トランプ政権税制改革案

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米トランプ政権が9月27日に公表した税制改革案は、減税効果だけを見れば米GDPを+1%押し上げる効果がある計算になる。米議会下院は本改革を盛り込んだ予算決議案を可決したが、上院での可決如何はまだ不確定である。また、減税効果を歳出抑制で相殺して財政赤字拡大を回避する本案では、結果成長への寄与は認めにくくなる。現状では、米成長予想に対する上方リスク要因が再浮上してきたとの認識にとどめておきたい。

トランプ政権の税制改革「フレームワーク」公表

9月27日、米ホワイトハウス・米議会下院歳入委員会・同上院財政委員会は米税制改革案「破綻した我々の税制の立直しのための統合的フレームワーク(Unified Framework for Fixing Our Broken Tax Code)」を公表した。トランプ政権による本格的な税制改革案の公表は、4月27日にホワイトハウスが公表した「経済成長と米国雇用のための2017年税制改革(2017 Tax Reform for Economic Growth and American Jobs)」以来である(4月30日付当レポート参照)。本レポートでは、トランプ大統領と共和党の税制改革「フレームワーク」の内容を概観し、米経済成長への影響を点検する。

本「フレームワーク」は、トランプ大統領の選挙戦時からの税制改革公約に概ね沿ったものであるが、4月27日の税制改革案と比較すると若干の違いがみられる([第1表])。まず、個人所得税と法人税率は4月案に比してやや高めになっている。個人所得税率区分は、4月案では10%、25%、35%だったのが、「フレームワーク」では12%、25%、35%に、法人税率は4月案の15%から今回は20%に、それぞれ引き上げられた。また、4月案に含まれていたオバマケア課税廃止といわゆる国境税導入は提案が見送られた。また、米企業海外現地法人収益の本国還流非課税措置は、4月案では一時的措置とされていたが、今回は恒久措置とされた。

報道等によれば、本「フレームワーク」による減税効果は10年間で約1.5兆ドルとされているようだ。一方、米調査機関Committee for Responsible Federal Budget(CRFB)の試算によれば、「フレームワーク」実施による財政赤字拡大効果は2018会計年度までの10年間で約2.2兆ドルとされている([第2表])。これは1年度当たり0.22兆ドルの減税効果、米国の名目GDP(4-6月期で約19.25兆ドル)の約1.1%に相当する。

[第1表]
20171009表1

[第2表]
20171009表2

減税効果はGDPの1%に達する

本税制改革が実施された場合、米経済押し上げ効果は相応のものになる。CRFBの試算を基にすると、米国GDPは約1.1%押し上げられ、現在の巡航速度の成長率とみられる約+2%の成長率が、2018年度には約+3.1%に押し上げられる計算になる。これは、トランプ大統領が公約した4%成長には及ばずとも、少なくとも税制改革初年度には3%成長が実現しうることを意味する。1月22日付当レポートでみたように、トランプ政権の各種成長拡大政策の中でも、税制改革による減税効果は、他の政策(雇用拡大、インフラ投資など)に比べて各段に大きいことには変わりない。

米議会下院は5日、本フレームワークの要素を組み込んだ2018会計年度予算決議案(H Con Res 71)を219対206の僅差で可決した。採決に当たっては、共和党議員のうち18名が本決議案に反対票を投じた。上院共和党は、民主党による議事妨害(フィリバスター)を回避するため、予算和解制度(reconciliation)を活用して、上院での審議打切りに通常必要な60票の賛成ではなく51票の賛成をもって可能とする方式の採用を意図しているとされる。

仮に本「フレームワーク」が米議会の可決を経て実施された場合、トランプ政権のプロ・ビジネス政策による米経済成長上ブレ要因が実現することになる。主要閣僚等の更迭や、オバマケア代替法案の議会共和党からの反対などにより、トランプ政権の政策執行能力は大幅に後退し、税制改革やインフラ投資等の成長拡大政策の実現性は大幅に後退したと当レポートでは見てきた。しかしながら、本「フレームワーク」の下院通過により、米経済成長の上ブレ要因が再び持ち上がってきたといえる。もっともオバマケア代替法案も下院では可決したものの上院共和党議員の反対で店晒しになった経緯にある。税制改革案も、共和党上院議員の出方がその成否を左右しそうだ(報道では、マケイン、コリンズ、ポールの3名がその鍵を握っているとされている)。

財政赤字は拡大の方向とみたい

一方で本フレームワークは米政府財政赤字を同額拡大する効果をもたらしうる。米予算管理局(OMB)によれば、2017会計年度の米連邦財政赤字は約-0.6兆ドルと予想されている([第1図])。CRFBの試算を基にして今後年度毎に-0.22兆ドルの財政赤字が拡大した場合、2019年度には財政赤字が1兆ドルを超える計算になる。米連邦財政赤字が1兆ドルを超えるのは、リーマンショック後に当時のオバマ政権が財政出動を実施した2009~2012会計年度以来のこととなる。

一方で、5日に米議会下院が可決した2018会計年度予算に係る決議案では、2018会計年度の連邦政府歳入(予算ベース)は約2.7兆ドルと、2017年度OMB見通しの約2.6兆ドルからわずかに増加することとなっている。一方で同決議案では、2018年度の歳出を約3.2兆ドル(2017年度同見通し同3.3兆ドル)に抑制することにより、2018会計年度の財政赤字は-0.5兆ドルに縮小することとなっている。

米財政赤字については、やや楽観的に見える米議会下院の予算措置ベースよりも、民間調査機関の見方が現実に近いと見たい。本税制改革は、減税により経済成長を押し上げる効果がある一方で、財政赤字の拡大を促す政策と現状では見ておきたい。

[第1図]
20171009図1

経済見通しへの上方リスク要因だが不確実性はある

トランプ大統領の税制改革案は、米議会下院を通過したとはいえ、上院での成立如何はまだ不確実である。また減税面のみを見ると本改革は米成長率を大幅に押し上げる効果があることになる。最終的な成長への効果を見るには本改革に伴う連邦政府歳出抑制のレベルが鍵となる。筆者個人は本改革がネットで成長押し上げ効果をもたらすと見ているが、現状ではまだ不確実要素が多いことから、本改革を成長予想に対する上方リスク要因として、従前よりやや実現可能性が高まったものとして見ておくことにとどめたい。

米財政に係るもう一つのポイントは、12月に到来する政府債務上限問題である。9月の「2018年歳出継続法及び2017年災害救済要請のための補正歳出法」成立により、12月9日までの政府債務上限不適用が決定された。しかし、12月9日以降は、その時点での政府債務が新たな上限となり、それ以上の政府債務増加が不可能になる。

米財務省のDaily Budget Statementによれば、10月5日現在の政府債務は20.3兆ドルで、9月の上限適用停止前の水準である18.9兆ドルからすでに0.4兆ドルの債務が増加している。上記米議会下院の予算決議案によれば、2018会計年度の政府債務は約21.1兆ドル。その後2017年度には23.5兆ドルに拡大することとなっている。2018会計年度予算案の執行のためには、12月時点で政府債務上限の再引き上げが必要となることになる。

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