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<経済レポート> 年内追加利上げを支持:9月FOMC議事要旨

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9月FOMC議事要旨の内容は、年内の追加利上げ予想を支持するものであった。もっとも来年以降の中期的なFF金利引き上げペースについては慎重な意見が意外に多く、ややハト派的内容だったと言わざるを得ない。しかし、テイラー・ルールは既に現状においても2%台半ばの適正FF金利を示唆している。また今後のFRB人事によってはよりタカ派な執行部形成の可能性もある。来年の利上げペースは少なくとも3回、FF金利2%台への引き上げを見ておきたい。

多くの参加者は2%インフレへの回帰を支持した

FRBのバランスシート縮小開始を決定した9月19-20日のFRB公開市場委員会(FOMC)議事要旨が11日に公表された。議事要旨によれば、バランスシート縮小自体は大きな議論の余地なく全会一致で決定された模様である。9月FOMC議事要旨の他のポイントは大きく2点あると見る。一つは賃金やインフレ見通しに係る議論、もう一つは今後のFF金利誘導目標引き上げペースに係る議論である。

まず、賃金とインフレに係る議論について。議事要旨では賃金とインフレに係る参加者の議論に相当の紙数が割かれている。まず賃金について「ほとんどの時間当たり賃金と労働報酬指標の上昇率は抑制されている」と認識された。「数人の(several)参加者は、広範囲な賃金上昇圧力の欠如は、失業率の持続的な水準が現在推計されているよりも低いことを示唆している」として、自然失業率の低下の可能性を挙げた。また他に賃金上昇率の抑制要因として「生産性上昇率の低下」「労働力の構成要素の変化」「企業の競争によるコスト抑制圧力」があげられた。一方で、コンタクト企業によれば、需要が強く人材の少ない業種では賃金上昇がみられることが報告された。ほとんどの(most)参加者は、賃金上昇は労働市場が更に強まるにつれて加速すると予想したとされた。

インフレ率については現状の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)ベースのインフレ率が委員会の2%目標を下回っていることが確認されたうえで、低インフレ率の背景について議論がなされた。タカ派的見方としては「多くの(many)参加者は依然タイト化しつつある労働市場や、潜在生産力以上の水準で推移する経済にかかる循環的圧力が、中期的には高いインフレ率を通じて顕在化すると引き続き考えた」とされた。さらに、「多くの参加者は少なくとも今年のインフレ率の低下の一部は、固有な(idiosyncratic)または一時的な要因の結果」と述べた。一方で、ハト派的意見も提出された。政府健康保険プログラム変更による医療費抑制などは当面の間インフレ押し下げ要因になる可能性があるとされた。またいく人かの(some)参加者は「技術革新の報酬や企業価格設定への影響などの長期トレンドがインフレ圧力を抑制している」可能性を論じた。かように、低インフレ率の今後の継続如何については、タカ・ハト両方の意見が出されたが、人数の上では経済の需給の引き締まりを背景に今後インフレ率が上昇するとの見方が多数派だったといえる。

今後の利上げペースについてはむしろ慎重な意見が優勢

次に、今後のFF金利誘導目標引き上げペースについての議論では必ずしもタカ派優勢とは言えなかったようだ。金融政策に関する議論の中で「多くの参加者」が「今年の低インフレ率が一時的なものでなくより継続的要因である可能性があり、金融緩和政策解除にはいくらかの忍耐強さ(patience)」が必要と述べたとされた。これらのうち何人かは「短期的にはこれ以上のFF金利の引き上げは不要であるかまたは適切な引き上げ幅は極めて小さい」と述べた。これらは、多くの参加者が2%インフレ率回帰を予測しているにもかかわらず、「多くの」参加者が今後の利上げペースについてかなり慎重な見方をしているという点で、9月議事要旨のハト派的側面を表象する内容といえる。

もっとも「いく人かの」(タカ派的な)参加者は「既に完全雇用に達して更にタイト化が予測されている労働市場からくるインフレの上方リスクをより懸念」していた。彼らは「金融緩和政策解除ペースが必要以上に遅いことが委員会のインフレ目標をオーバーシュートし」「これを反転することはコストが高く」また「解消が困難な不均衡」につながると警告した。しかし、インフレのオーバーシュートを警告する参加者の数は全体からみると多数派ではないようだ。

なお、低インフレ率がFF金利の中期的行程に与える意味についてもハト派・タカ派双方より多数の意見がだされた。数人の参加者は「継続的な低インフレでインフレ率の基調トレンドが2%を下回り続けると、インフレ期待が低下するリスクがあり」「その場合、適切な金融政策の行程においてはインフレ期待を引き上げる必要性を考慮する必要がある」とハト派的意見を述べた。しかしながら、何人かの(a few)参加者は「資源利用率のタイト化に対するインフレ率の反応のラグを考慮する必要性と、労働市場の更なるタイト化に伴うインフレの上方リスクを考慮する必要性」を論じたとされた。

年内追加利上げは多くが支持したが慎重派意見も

年内の追加利上げの是非についても明示的に議論がされた。「多くの」参加者は年内のもう一回の利上げが正当化される可能性が高い」として年内利上げを支持した。9月定例会合では多数派の参加者が、年内追加利上げを支持しており、9月時点のFOMC委員経済予測とも整合する内容である。

しかし「数人の」参加者は「インフレ見通しの不確実性に照らし、(追加利上げという)政策行動についての決定は今後数ヶ月に入手される経済データが、インフレ率が委員会の目標に向けて上昇するとの彼らの確信を強めるかどうかに強く依存する」として現状での判断を避けた。また「何人か」の参加者は「FF金利の追加引き上げは、入手される情報が今年の低インフレ率が継続せず委員会の2%目標に中期的に向かう行程にあることが明瞭になるまで先延ばしされるべき」と述べた。

9月定例会合後に公表されたFOMC委員経済予測によれば、年内追加利上げを予測する委員は16人中11人であった。年内利上げを支持する「多くの」参加者はこの11人のうちの多くと見られる。11人のうちでも「数人」の参加者はやや慎重な「数人」に相当すると見られる。

年内あと1回の追加利上げ予想を維持

当レポートでは、年内あと1回の追加利上げを個人予想している。9月FOMC議事要旨の内容はこれを支持するものであった。9月会合後に公表されたインフレ指標(8月はいずれもインフレの加速を示唆するものであった。8月PCEデフレーターは前年比+1.4%と前月比横ばいの伸び率で、年初から低下基調にあったインフレ率が下げ止まりつつあることを示唆している。今年末時点でのPCEインフレ率は同+1.4%程度に着地しそうだ([第1図])。9月の消費者物価指数(CPI)も、エネルギー中心とはいえ前月比の伸びが加速し、総合CPIインフレ率は5ヶ月ぶりに同+2%台を回復した(10月15日付<経済指標コメント>参照)。

来年以降の中期的なFF金利引き上げペースについては、上記の通り9月定例会合議事要旨を見る限りではややハト派的内容だったと言わざるを得ない。しかし、9月会合後に公表されたFOMC委員経済予測によれば、2018年末の適正FF金利予測中央値は2.1%で、この予測水準は昨年12月予測以来不変である。議事要旨は来年以降の利上げペースにつきハト派意見が多数都との内容ではあったが、その程度は委員のFF金利予測を大きく変更させるほどの内容ではなかったとの憶測が成り立つ。また、テイラー・ルール公式は現状においてさえすでに2%台半ばの適正FF金利を示唆している。FOMC委員予測通りに来年も3回程度の利上げは実施されると見ておきたい。

なお、現在のイエレン氏のFRB議長としての任期は2018年2月に満了となる。後任候補人事について、トランプ大統領は「今月中に」決定するとの意向のようだ(各種報道による)。現在報道等で取りざたされている時期FRB議長候補は、現FRB理事のパウエル氏、元FRB理事のウォーシュ氏、またイエレン議長の再任の可能性も残っているとされる(一時最有力候補とされたコーン国家経済会議委員長はトランプ氏の意向で候補から外れたとされる)。このうちで、最もタカ派と目されるのがウォーシュ氏、中立と目されるのがパウエル氏、イエレン氏は従来からハト派の代表である。来年以降の利上げペースはこのFRB議長人事に大きく左右されよう。タカ派のウォーシュ氏や中立のパウエル氏が議長に就任した場合、利上げペースは現状予測より加速の可能性がある。また空席だった金融監督担当副議長ポストにはトランプ政権に近いクォールズ氏が13日に正式に就任した。一方、先月辞任を公表したフィッシャーFRB副議長の後任もおそらくトランプ政権に近い人物が選任されるであろう。政権交代に伴うFRB人事交代は、これまでの雇用重視ハト派路線からの転換の契機となりうる。

[第1図]
20171015b図1

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