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<経済レポート> 需要超過に転換:米経済定点観測

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米経済は7-9月期にも+3%の強い成長を見せた。これにより米経済のマイナスの需給ギャップは解消し、需要超過に転じた模様である。需給のタイト化はインフレ圧力をもたらし、FRBの継続的な利上げを促すだろう。もっとも米経済が中期循環的な減速にまもなく入るとの見方は不変である。

マイナスの需給ギャップは解消した

米7-9月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+3.0%と、2四半期連続の3%成長となった。当レポートでは、米経済は中期の循環的減速局面に入っていると見ているが、こうした見方を上回る拡大ペースである。もっとも、2017年は1-3月期に大幅に成長が減速(同+1.2%)したため、4-6月期以降の反動によっても2017年通年の成長率は前年比+2%台前半と、6月時点の筆者個人予想(前年比+2.1%)からわずかな上ブレにとどまる見込みである。

一方で、潜在成長率を超える成長の継続により、米経済のマイナスの需給ギャップは7-9月期で解消したと見られる。米議会予算局(CBO)推計による2017年7-9月の潜在実質GDPは17兆1260億ドル(2017年6月「CBO財政経済見通し」による)、これに対し7-9月期GDP統計上の実質GDPは17157億ドルと、2007年10-12月期以来約10年ぶりに潜在GDPを上回った。10年来の米経済のマイナスの需給ギャップは解消して、わずかながら需要超過(約+0.2%)に転じたことになる。今後米経済が年率+2%の成長を継続すれば、2018年末には米経済の需給は約+0.6%の需要超過になる計算になる。金融危機直前の最大の需要超過幅は2016年1-3月期の+0.5%であった。米経済は近々、金融危機前を上回る需要超過になる可能性がある。

需給の引き締まりはインフレ圧力の高まりにつながる。[第2図]は、需給ギャップとコア個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率との相関をみたものである。この回帰式によれば、需給ギャップゼロ(需給均衡)状態に対応するコアPCEインフレ率は約+1.8%となる。FRBの目標とする2%インフレ率は需給ギャップが解消した状態で概ね達成できることになる。もっとも、本回帰式によれば、2%のインフレ率を実現するには需給ギャップが+2%の需要超過になる必要がある。90年代以降の最大の需要超過は2000年1-3月期の+2.0%である。つまり2%のインフレ率達成には相当な景気過熱が必要になる計算となる。ここからは、米国の持続的なインフレ率は2%をやや下回る水準とみておくのが妥当であろう(8月12日付当レポート参照)。ともあれ、今回のGDP統計は、FRBが今後もFF金利誘導目標の引上げを継続することを支持する結果といえる。

[第1図]
20171030図1

[第2図]
20171030図2

個人消費は反動でやや減速へ

以下、需要項目ごとに米経済に現状を点検し10-12月期の動向を占う。個人消費は7-9月期にも前期比年率+2.4%の堅調な拡大を見せた。しかし10-12月期はさらに減速して同+2%レベルの成長になると見る([第3図])。7-9月期の個人消費の拡大は、9月の新車販売の急増に押し上げられた要因が大きい。9月の新車販売台数は年率18.5百万台(前月比+15.3%)と、ハリケーンの影響と見られる8月の減少と自動車の棄損分をカバーして余りある増加となった。今後自動車販売台数は再び年率17百万台前後の巡航速度に減速していくと見る。

また、雇用増加ペースの中期循環的な減速も引き続き中期的な個人消費の抑制要因となろう。ハリケーンの影響で非農業部門雇用者数は9月に減少に転じたが、それ以前から非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は8月時点で+1.4%と、2016年平均の同+1.8%から大幅に減速している。失業率は既にほぼ1年間自然失業率を下回っており、労働市場は既に需要超過状態にある。この状態からは、雇用増加ペースは今後も減速していくと見られる。賃金上昇率は雇用市場のタイト化に遅行して伸び悩んでいる。一方でインフレ率は原油価格の持ち直しで7月辺あたりをボトムに上昇に転じている。

結果、家計の実質可処分所得の伸び率は前年比+1%強にとどまっている。現在の実質個人消費の伸び率は、可処分所得の伸びを大幅に上回るペースとなっている。可処分所得の伸びに比して大幅な個人消費の伸びは今後持続的とは言いにくいであろう。

[第3図]
20171030図3

[第4図]
20171030図4

設備投資拡大は続こう

設備投資は、昨年の不振から脱却して2017年は拡大が続いている。7-9月期のGDP統計上の設備投資は、構造物投資の同-5.2%マイナス転化により前期比年率+3.9%と減速したが、機器投資は同+8.6%と2四半期連続で+8%台の強い伸びを維持した。10-12月期GDP統計上の設備投資は再び同+6%程度の強い伸びが続くと見る([第5図])。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)が、7-9月期に前期比+11.6%と2014年7-9月期以来の強い伸びとなっていることが、9月以降の設備投資の持続的拡大を示唆している。

企業収益動向も設備投資の追い風となりそうだ。4-6月期の企業収益(在庫評価及び資本減耗調整後)は前年比+6.4%と堅調な伸び、うち原油価格下落の影響を受けた石油と公益事業を除く非金融機関の収益は同+5.9%と5四半期ぶりにプラス成長に転じた([第6図])。また、企業ネットキャッシュフローは企業収益を上回る増加を見せており、7-9月期時点で4四半期連続の前年比プラスの伸びを維持している([第7図])。

設備投資を抑制する要因は設備稼働率の低さである。当レポートでは、設備投資は企業ネットキャッシュフローと設備稼働率を決定要因として説明できると見ている([第1表]、及び1月9日付当レポート参照)。同回帰分析によれば、2016年以来の設備稼働率低下が向こう半年ほどは設備投資を押し下げる要因になると見ざるを得ない。しかしながら設備稼働率も今年の4月頃から上昇に転じ始めていることから、来年には再び設備投資を押し上げる要因となるだろう。

[第5図]
20171030図5

[第6図]
20171030図6

[第7図]
20171030図7

[第1表]
20171030表1

FRBの利上げは継続を見込む

住宅投資は、GDP統計上7-9月期まで2四半期連続のマイナス成長となった([第8図])。住宅着工戸数は9月まで3ヶ月連続で減少するなどやや減速状況にある。しかしながら、住宅販売在庫は中古住宅を中心に低位にあり、住宅市場の需給は依然タイトである。今後住宅供給力が確保できれば、10-12月期にはこれまでの反動で再び住宅投資はプラス成長に転じると見たい。財・サービス輸出入は、今年に入りいずれも増加ペースを速めたが、7-9月期にやや一服感がみられた。しかし、欧州・アジア等の海外景気は依然堅調でありまた今年に入ってからのドル安傾向は輸出増加に寄与すると見る。純輸出は10-12月期にも成長にプラスの寄与をすると見る。

以上から、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率約+2%強、2017年通年の成長率は前年比+2%強と見ておきたい。ハリケーン影響にも関わらず潜在成長率を上回る成長を続けている米経済であるが、中期的には今後減速局面に入っていかざるを得ないと引き続き見る。

FRBの金融政策については、12月のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)会合で+0.25%の追加利上げが決定されると個人予想する。その後来年については、2月で任期満了となるイエレンFRB議長の後任人事に左右されるところもある。しかしながら、上記の米経済の需給タイト化、インフレ率の持続的上昇見通しからは、9月時点のFOMC委員経済予測中央値で示されたように2018年には3回の利上げ、もしくはそれ以上の利上げが実施されると見ておく。

[第8図]
20171030図8

[第9図]
20171030図9

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