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デフォルト回避でも課題は残る~米債務上限交渉合意

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米政府債務上限引上げと暫定予算に関する民主・共和両党合意が成立し、米政府デフォルトは直前で回避された。ただし予算の期間は来年1月15日まで、債務上限引上げ期限は同2月7日までの暫定措置であり、今後合同予算委員会でのオバマケアや歳出削減に関する両党協議は続く。政府閉鎖は1ヶ月以内で終了したが10-12月期の成長予想は保守的に据置き、FRBの緩和縮小開始予想時期は来年に修正する。

債務上限交渉は直前まで二転三転した

10月13日付当レポート以降の経緯は次の通りである(各種報道による)。13日の民主党リード上院院内総務と共和党マコネル上院院内総務の協議は不調に終わった。焦点はオバマケアから歳出削減に移り、オバマケア停止要求スタンスをやや緩めた共和党に対し民主党が歳出自動削減の見直しを共和党に要求したとも報じられた。

14日には上院民主党が、債務上限の2月7日までの引上げとともに両院予算委員会で12月13日までに歳出自動削減案の代替案を策定する案を提示し、同案につきリード、マコネル両院内総務が「合意に楽観的」と述べたと報道され、市場にも楽観論が広がった。

しかし、共和党はこの民主党案にふたたびオバマケアの一部である医療機器課税の停止を付け加えた修正を加え、下院で15日採決する予定と報じられた。医良機器課税停止は9月29日の下院共和党案への回帰であり、再び議論を振出しに戻した感があった。ただ、政府デフォルト間際の強硬戦術につき共和党内でも賛否が分かれた模様で、結果15日の共和党修正案採決は見送られた。

民主党案で上院合意:下院共和党からは反対も

16日に交渉は急進展した。同日民主党が再度の提案すなわち①債務上限を2月7日まで引上げ、②政府機関を1月15日まで再開、③合同予算委員会で12月13日までに歳出自動削減の代替案報告、を行ったと報じられた。またベイナー下院議長は同案の下院での採決実施に同意したと報も報じられた。

さらにリード上院院内総務は同日「上院は債務上限引上げで両党が合意した」と述べ、再び合意への期待が高まった。共和党ベイナー下院議長は声明で「上院の合意案を阻止することは我々の戦術ではない」と事実上オバマケア阻止交渉における敗北を認め、デフォルト回避のため上院案に合意する意思を表明した。しかしベイナー議長の呼びかけにも拘わらず共和党下院議員内には依然妥協反対議員も存在した。

こうした中16日に、2014年歳出継続法案H.R.2775 Continuing Appropriations Act, 2014はまず上院にて81-18で可決された。続けて採決の行われた下院では144人の共和党議員が反対に回ったが結果285-144で可決された。同法案は即日オバマ大統領の署名を経て成立した。

2014年歳出継続法案成立:政府1月15日まで再開、債務上限2月7日まで引上げ

2014年歳出継続法は、①政府暫定予算を10月1日~2014年1月15日まで承認、②強制休暇職員に対する基準給与の遡及支払、③政府の公的債務上限を2014年2月7日まで不適用とし2月8日時点の公的債務残高を新たな上限とする、ことを定めている([第1表])。

うち職員の給与遡及支払は5日に下院で可決済のH.R.3223 Federal Employee Retroactive Pay Fairness Actを引き継いだもの。また債務上限を一定期間不適用とする方法は、2013年2月のNo Budget, No Pay Act of 2013で債務上限を同年5月18日まで不適用としたのと同じ手法である。

なお同法成立とともに、上下両院合同予算委員会Budget Conference Committeeが組成され、12月13日までに現在の歳出自動削減に代わる赤字削減案を報告する予定である。

[第1表]
20131020表1

オバマケア・歳出削減を巡る両党対立は続く:合同予算委員会で再び先鋭化も

歳出継続法の成立により、当面の米政府デフォルトは回避され、米政府機関も再開された。ただし、政府機関再開(暫定予算)、債務上限引上げいずれも来年1-2月までの暫定措置にすぎない。また、本合意はデフォルト回避のために共和党が民主党側にやむなく一時的に妥協した色彩が強い。

共和党ベイナー下院議長は16日の声明の中で「(オバマケアに対する)戦いは続ける」と明言している。12月13日を期限に新たな歳出削減案を協議する合同予算委員会の共同委員長となる共和党ライアン下院予算委員長は、2012年大統領選の共和党副大統領候補で、保守派の支持を受ける財政赤字削減推進派である。上院予算委員会のランキングメンバーである共和党セッションズ上院議員とともに、上記歳出継続法案に反対票を投じた議員である。

共和党としては、ベイナー下院議長の声明の通りデフォルトという最悪事態を回避することを優先したものの引続き歳出削減とオバマケア停止の意図は持っている。歳出継続法案の採決に当たり多数の共和党議員が反対票を投じた(上院18名、下院144名)ことからも、共和党内で民主党への妥協で党内をまとめることは困難であることが推測できる。

なお過去の例として、2011年財政管理法Budget Control Act of 2011に基づき設置された超党派財政赤字削減委員会は、同法で指示された10年間1.2兆ドルの財政赤字削減案を期限の2011年末までに合意できず、結果2013年からの歳出自動削減が発動されて現在に至っている。

経済成長は保守的予想を維持する

当レポートでは、政府閉鎖期間が1ヶ月の場合10-12月期の成長率(前期比年率)への影響を約‐1%とみて成長予想を引き下げた(10月13日付当レポート)。結果的に政府閉鎖期間は1ヶ月以内にとどまり、予算執行と政府職員給与支払いは10月1日に遡って実施されることになった。

しかしながら、上記のとおり引続き財政問題の不確実性は続いている。予算執行は政府閉鎖開始日である10月1日に遡って議会承認されたものの、実際には執行の遅れを即時取り戻すのは困難と推測できる。また観光客など民間部門のサービス提供は閉鎖期間分を今後取り戻すことが困難なものもある。従って経済予想については閉鎖期間1ヶ月を前提に策定したものを引続き維持することとしたい。

経済成長はFOMC予測から大きく下振れよう

金融政策につき当レポートでは年内のQE3縮小開始を予想してきたが、政府閉鎖の成長への悪影響を勘案、この予想を後倒し修正せざるを得ない。

9月FOMC声明文と同時に公表されたFOMC委員経済予測によれば、GDP成長率予測の中心傾向は6月時点予測に比べ大幅に下方シフトした。9月時点でGDP成長率予測は2013年が2.0-2.3%、2014年が2.9-3.1%となっている([第2表])。しかし、10月の政府一部閉鎖の影響を勘案すると9月時点のFOMC委員予測はまだ楽観的で、実際の成長率はこれよりも下振れする可能性が高い。因みに政府閉鎖勘案後の筆者個人の予想はFOMC委員予測の中心傾向下限に比べて2013年-0.8%、2014 年は-1.1%低めとなっている。

9月17-18日のFOMCでは予想外にQE3縮小開始が見送られた。その理由として声明文では「委員会は資産購入ペース調整の前にこの(経済活動と労市場改善の)進展が持続的であることの更なる証左を待つことを決定した」とされている。また同会合の議事要旨によれば、QE縮小開始に慎重な意見の参加者は「総じて入手された経済データが失望させるものであった」と、経済予測に対する実績値の下方乖離を理由に挙げている。

議事要旨によれば9月FOMC会合では多くのa number of参加者が「潜在的な政府閉鎖や債務上限議論に関わる制約を含む連邦政府財政政策の不確実性がもたらす経済見通しへの下方リスク」を指摘している。しかし、これはあくまでリスクシナリオであって、経済予測に実際の政府閉鎖が反映されているとは考えにくい。従って、経済成長の実績値は9月のFOMC委員予測よりも大幅に下ぶれる可能性が高く、これはQE縮小慎重派を支持する材料となるだろう。

QE3縮小開始予想は来年に持ち越しに修正

今後バーナンキ議長任期中にFOMC会合は10月、12月、2014年1月の3回予定されている。来年3月18-19日会合からイエレン新議長の下での会合となる([第3表])。まず、政府閉鎖解消直後かつ9月分経済指標が揃わない10月会合での縮小見送りは確実だろう。次に、12月会合で縮小を決定できる可能性は低い。経済指標がFOMC委員の予測に沿ったものに改善している可能性は12月時点では低いからだ。来年1月会合は上記の暫定予算期限の直後に該当する。ここで10-12月期の経済指標が委員の予測(おそらく12月会合時点で下方改訂されるもの)に沿ったものに改善し、かつ財政協議が歳出削減緩和方向に合意されていればここで縮小開始の決定がなされる可能性がある。筆者個人のQE3縮小開始時期を修正し、来年1-3月期に後倒しする。

ただし、この予想にもリスク要因がある。ひとつは1月時点で財政問題の協議が整わず再び財政危機に陥る場合である。次に、バーナンキ議長が任期最後の会合で大幅な政策変更に踏み切ることを見合わせる可能性である。さらに、3月会合でハト派のイエレン氏が議長としての初会合で緩和縮小を行うことを見合わせるリスクである。状況証拠からはQE3縮小開始は来年4-6月期に持ち越しのリスクシナリオも想定しておく必要がある。


[第2表]
20131020表2

[第1図]
20131020図1

[第3表]
20131020表3


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