<経済レポート> 小休止後は再加速へ:日本経済定点観測

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日本の実質GDP成長率は7-9月期に前期比年率+1.4%に減速した。10-12月期にも家計消費や設備投資の減速で成長は更に減速しそうだ。しかし来年には、家計所得の拡大や設備投資回復を背景に再び1%台の成長に回帰すると見たい。2017年度の成長率は前年度比+1.6%を個人予想、来年も+1%強の成長を見込んでおく。

家計消費は大幅減速も実収入は増加している

日本の7-9月期実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+1.4%となった。内容的には、家計消費がマイナス成長となったのをはじめ内需が大幅後退し、家計消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同-1.4%と、7四半期ぶりのマイナス成長に転化した(11月26日付<経済指標コメント>参照)。10-12月期も、家計消費の低迷が続いて成長率は同+1%割れにとどまりそうだ。2017暦年成長率は前年比+1.5%、2017年度成長率は前年度比+1.6%の成長を達成すると個人予想する。なお、来年にかけ内需は再び潜在成長率を上回る成長に回帰し、実質GDP成長率は年率+1%強の成長を続けると見る。

GDP統計上の家計消費は7-9月期に前期比年率-1.8%と、前期の同+2.8%から大幅反落した。しかし、7-9月期のマイナス成長は前期の家計消費の急拡大の反動減と考えられる。今後は再び家計消費は年率+1%程度の巡航速度の伸びに回帰すると見る。ただし、10-12月期の走りはよくない。10月家計調査によれば、実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-2.0%の大幅減となった(12月3日付<経済指標コメント>参照)。11、12月での反発を見込んでも、10-12月期のGDP統計上の実質家計消費は前期比横ばい程度にとどまる可能性が高い。

もっとも、家計の実質ベースの実収入は10月時点で前年比+2.9%と高水準のプラス成長、6ヶ月移動平均も同+1.2%の伸びに加速している([第1図])。実質ベースの家計収入の伸びの加速は、実質家計消費の今後+1%前後の成長が持続可能であることを示唆する材料である。現金給与総額(所定内給与)ベースで見ても、7-9月期時点で前年比+0.5%と、インフレ率をやや下回るものの増加ペースを保っている([第2図])。結果、10-12月期のGDP統計上の家計消費は前期比年率横ばい、その後来年には再び同+1%程度の拡大を回復すると見たい([第3図])。

[第1図]
20171203b図1

[第2図]
20171203b図2

[第3図]
20171203b図3

設備投資は一服、在庫増は成長押し上げ要因になる

企業部門は、10-12月期に拡大が一服すると見る。7-9月期のGDP統計上の設備投資は前期比年率+1.0%とかろうじて4四半期連続のプラス成長を維持した。しかし、その間の機械受注の減少や、資本財出荷の9月以降の減少からは、10-12月期はマイナス成長に転化する可能性が高い。もっとも、10月には機械受注が反発増加しており、来年以降は再び巡航速度のプラス成長に転化しそうだ。

在庫投資は、年末にかけて一時的に成長を押し上げ続けると見るが、来年は在庫調整が成長抑制要因になると見る。7-9月期には在庫投資が成長を年率+1.1%押し上げた。ここ数ヶ月の出荷の鈍化により、在庫循環は一時「意図せざる在庫増」局面に入っている([第5図])。10-12月期には引き続きこの在庫増が成長を押し上げる要因になると見る。その後2018年は在庫調整が成長を抑制する局面に転換する可能性が高い。もっとも、今後の出荷の回復で在庫循環が再び「在庫積み増し」に回帰する可能性もあり、在庫投資は当面成長のかく乱要因となりそうだ。

純輸出については、財貨・サービス輸出の伸びが同輸入の伸びを上回る傾向が当面継続するとみて、10-12月期には成長にプラスの寄与を見込む([第6図])。

[第4図]
20171203b図4

[第5図]
20171203b図5

[第6図]
20171203b図6

インフレ率は来年+1%台に高進を見込む

インフレについては、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)の前年比の伸び率が、2018年に+1%台に上昇すると見る。10月時点のコアCPIインフレ率は前年比+0.8%、今後原油価格が1バレル=50~60ドルで安定推移するとすれば、成り行きのコアCPIインフレ率は2018年に+1%台前半に上昇する計算になる([第7図])。

需給ギャップとインフレ率との相関からも、今後の+1%のコアインフレ率は正当化できる。需給ギャップとコアCPIインフレ率の相関を示す回帰式によれば、需給均衡におけるコアCPIインフレ率が約+0.4%と推計できる([第8図])。内閣府によれば、7-9月期時点で日本のGDPギャップは+0.5%の需要超過(潜在成長率は1.0%)となっており、これに相当するコアCPIインフレ率は+0.6%と、概ね同期間のコアCPIインフレ率実績と整合している。今後潜在成長率を上回る成長で需要超過が進み2018年にプラスの需給ギャップが+1%程度に進行すれば、これに整合する推計コアCPIインフレ率は+1%をやや上回る水準となる。

なお、失業率をコアCPIインフレ率変化で回帰して得られた自然失業率の推計結果のアップデートを[第9図]に示す。これによれば、推計自然失業率は2013年の約4.6%をピークに低下傾向をたどっており、7-9月期時点で約3.5%の位置にある。失業率低下にも拘わらず賃金上昇やインフレ高進が起きない理由として、日本の自然失業率が実際には3%よりも低い位置にある可能性が示唆されることがある。しかしこの推計結果からは、依然日本の自然失業率は3%台であり、労働市場は既に需要超過状態にあると見たい。これは内閣府推計のGDPギャップが需要超過にあることとも整合している。

[第7図]
20171203b図7

[第8図]
20171203b図8

[第9図]
20171203b図9

来年は金融政策の調整が必要な環境になる

日本銀行の金融政策については、2018年にも現状の「長短金利操作付き量的・質的緩和」を名目上は継続する可能性が高そうだ。しかし、インフレ率の上昇に伴い、「長短金利操作」の水準や「量的・質的緩和」のペースは調整される可能性があると見る。上記のとおり2018年にコアCPIインフレ率が1%台に上昇すれば、日銀当座預金マイナス金利付与、10年物国債金利ゼロ%への操作、長期国債買入れによる保有残高増加額年間80兆円、を含む「長短金利操作付き量的・質的緩和」を維持する必要性は薄れてくる。一方で日銀は「オーバーシュート型コミットメント」として「マネタリーベースを消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する」ことをコミットしている(2016年9月21日付日本銀行「金融緩和強化のための新しい枠組み」、2016年9月25日付当レポート参照)。このオーバーシュート型コミットメントがある限り、マネタリーベース拡大を停止するような金融政策の変更は困難となる。

一方で、同コミットメントからは、長短金利操作の水準変更や停止は状況に応じ可能なように読める。また、同緩和政策導入前にはマネタリーベース年間80兆円増加が数値目標であったが、2016年9月の同緩和政策導入時に数値目標を廃止し、長期国債の保有残高増加額年間約80兆円をもってこれに代えている。つまり、オーバーシュート型コミットメントの下でも、マネタリーベース拡大ペースの縮小は可能ということになる。インフレ率が1%台に高進すれば、長短金利操作の水準を引き上げるか、資産買入れペースを減速させることで、徐々に金融緩和の水準と規模を縮小していくことがコミットメント上も可能である。

2018年4月に任期を迎える黒田日銀総裁は、次期も続投することの市場の見方が強い。もし黒田総裁が続投となった場合、「長短金利操作」と「量的・質的緩和」自体を2%インフレ率達成前に解除することは、市場との対話の観点から日本銀行のコミットメント低下のいう逆アナウンスメント効果を生む可能性があり、早期の実施は困難であろう。その場合、同操作と緩和の政策自体は維持した上で、金利操作水準の調整や資産購入ペースの減速の実施、あるいはいわゆる「ステルス・テーパリング」などの方策を実施することとなろう([第10図])。

なお、年内の経済・金融個人予想を[第1表]に示す。

[第10図]
20171203b図10

[第1表]
20171203b表1

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