FC2ブログ

<経済レポート> 減税効果で加速する:米経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
2018年の米経済は、ベースラインの循環的減速にも関わらず、税制改革法成立による減税効果で前年比+2.8%の強い成長を実現すると個人予想する。これに伴い、インフレ率は2%に達してFOMCは年内3回またはそれ以上の利上げを実施すると見る。もっとも米経済は既に需要超過状態にあり、減税効果がこれに拍車をかけることで、2019年以降には景気の転換期が訪れる可能性がある。

2017年10-12月期は高成長継続へ

2017年の米経済成長率は、ほぼ年初の予想通り前年比+2.3%レベルに着地した模様だ。2018年は、12月に成立した税制改革の効果で成長が一時的に+0.5%程度押し上げられると見たい。しかしながら米経済はすでに需要超過の状態にある。2007年の景気後退始期から10年が経過していることも合わせると景気循環的には近々景気の転換期が訪れうる状況である。本レポートでは、米2017年10-12月期、及び2018年の成長率を各種指標等から占っていく。

2017年10-12月期の実質GDP成長率は予想以上に拡大ペースを維持し、前期比年率+3%レベルの成長になったと見る。好調な年末商戦のスタートを反映して10-12月期の実質個人消費は11月までで前期比年率+2.8%の位置にある。12月の同消費が前月比+0.2%を確保すれば、10-12月期のGDP統計上の実質個人消費は同+3%台になる計算になる。

設備投資の先行指標となる非国防資本財出荷も11月までで同+11.6%の高い位置にある。住宅着工戸数も11月までで同プラスの位置にある。企業在庫は一時的に売上増加により10-12月期は圧縮されそうだが、内需項目の好調さからは、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3%近い成長が見込める。そうなった場合、2017年4-6月期から3四半期連続で+3%台の成長が実現することになる。

税制改革は2018年成長率を+0.5%押し上げる:通年成長率は+2.8%を予想

2018年の成長率予想の前に、米国の税制改革の影響を見ておく。2017年12月22日「減税及び雇用法(Tax Cuts and Jobs Act, H.R.1)」の米議会両院協議会案が上下院の可決を経て大統領署名により成立した、税制改革法案はもともと上院と下院がそれぞれの案を可決し、その後に両院協議会による一本化が図られた。両院協議会案は12月2日に上院可決(51 – 49)、20日に下院可決(224 - 201)されて大統領署名に至った。なお、同法案は上院において過半数の賛成で予算案可決が可能なreconciliationの手続きに則るため、多くの減税措置が2027年までの時限措置とされた(米議会上院では通常審議打切りに3分の2の賛成が必要)。

同税制改革法の骨子は[第1表]の通り。個人所得税の税率区分・課税所得区分の見直しと、法人税の21%への大幅引き下げ、また海外法人からの受取配当の非課税化が大きな減税項目である。一方で、海外における企業収益への見なし税率適用が増税項目となる。総じて、国内の個人・法人に対しては減税を、海外に滞留する法人収益については課税強化することで、所得の国内還流を図る形となっている。また減税の実施時期は個人所得税、法人税とも2018年とされた(上院案では法人税減税実施時期を2019年としていた)。

この税制改革は大幅に2018年の成長率を押し上げる可能性が高い。本改革の減税効果の名目GDPに対する割合は[第2表]の通りである。2018年の減税効果はネットで名目GDPの0.7%になる。これら減税による所得増がすべて消費や投資に回るとは考えにくい。しかし、現状の米個人の貯蓄率は低下中、つまり所得増以上の消費を行う傾向が続いている。法人については、設備投資の急激な加速は見込みにくいものの、企業の賃上げや配当増を通じて個人消費を加速する経路が考えられる。本レポートでは、2018年の減税効果による成長押し上げ効果を+0.5%と見ておくこととする。

[第1表]
20180106表1

[第2表]
20180106表2

経済は既に需要超過になっている

上記の減税効果も勘案して、2018年の米実質GDP成長率は前年比+2.8%を個人予想する([第1図])。これは、2015年の同+2.9%以来の高成長率となる。トランプ政権の成長政策の目玉の一つであった大型減税がようやく実現したことで、大統領のプロビジネスな政策効果が就任2年目で効果を発揮することになる。

しかしながらこれは、2019年以降の米経済が同様に成長を加速することを意味するものではない。景気循環からはベースラインの経済拡大ペースは2018年にすでに減速局面に入る可能性が高いと考える。米議会予算局(CBO)推計による米国の潜在GDPをもとに米国の需給ギャップを計算してみると、2017年10-12月期で既に+0.2%の需要超過となっている。米経済において需給ギャップがプラス(需要超過)になっているのはむしろ例外的である。直近では金融危機前の住宅バブルの時期である2006年1-3月期に+0.5%の需要超過になっていたのが最大である。減税効果により2018年の成長が加速すると、2018年10-12月期に需給ギャップは+1.5%と、ITバブル終期の2000年以来の需要超過幅になる計算になる([第2図])。米経済において需要超過の時期はむしろ例外的である。90年代後半のITバブル期、2007年にかけての住宅バブル期は需要超過の時期であったが、その後に景気後退期が訪れている。

失業率は12月時点で2000年以来の低水準にあること、自動車販売台数が2016年をピークに2017年には減少に転じたことなどは、現在の経済がピークにある可能性を示唆する経済指標である。また、直近の景気後退の始期である2007年第4四半期から現在で既に10年が経過している。景気サイクルを概ね10年とすると、まもなく景気の転換点が訪れてもおかしくはない日柄にある。景気循環の状況からはベースラインの成長率は2018年にすでに減速局面に入っていると見ておきたい。以下では需要項目ごとの2018年の成長を見ていく。

[第1図]
20180106図1

[第2図]
20180106図2

消費の減速を減税がカバー、インフレ率は2%台へ

減税効果を勘案しないベースラインの実質個人消費は、2018年にはさらに減速する見込みだ。GDP統計上の実質個人消費は、2015年前年比+3.6%、2016年同+2.7%ののち、2017年も同+2.7%程度に着地した見込みである。2018年のベースラインの実質個人消費は同+2%台前半に減速するが、ここに減税効果が上乗せになって結果同+2.5%の拡大を見込む。ベースラインの実質個人消費の減速の背景は、雇用増加ペースの減速、金利上昇、そしてインフレの進行である。雇用・賃金・物価・株価・金利・住宅価格を決定要因とする実質個人消費の要因分解によれば、雇用と賃金の増加ペースの減速が中期的な個人消費の減速要因となっている。非農業部門雇用者数の前年比の伸びは2017年12月現在で+1.4%と、2016年末の同+1.6%レベルからさらに減速している。これは、失業率が自然失業率を下回る完全雇用のもとでの循環的な雇用拡大ペースの減速である。2018年にも雇用拡大ペースの減速が続くことに加えて、インフレの進行と、FRBの利上げ継続に伴う金利上昇が更に個人消費を減速させると見る([第3図])。

設備投資は2018年にベースラインで前年比+5~6%の拡大に加速すると見る(2017年は同+4%レベル)。設備投資の月次の先行指標は好調、10-12月期の非国防資本財受注(航空機を除く)は11月現在で前期比+8.1%の高水準にあり、設備投資が今後半年ほどは強い伸びを示すことを示唆している。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数の設備投資DIは90年代以降でほぼ最高の水準にあり、企業の設備投資意欲が極めて高いことを示唆している([第4図])。在庫循環は現在「在庫積み増し局面」にあり、年前半は成長にプラス寄与すると見る。年後半は在庫調整局面入りで成長抑制要因になるだろう([第5図])。

インフレについては、需要超過の拡大により2018年にはインフレ圧力が高まると見る。需給ギャップとコア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)とのシンプルな相関によれば、2018年末のプラスの需給ギャップ見込み+1.5%に対応するコアPCEインフレ率は約+2.1%と推計できる([第6図])。2018年にはFRBが目標とする2%インフレ率が達成できる環境にある。実際にはPCEデフレーターは2018年に前年比2%前後で推移、コアPCEデフレーターはやや遅行して2018年末に同+1.8%までの上昇を見込む([第7図])。

[第3図]
20180106図3

[第4図]
20180106図4

[第5図]
20180106図5

[第6図]
20180106図6

[第7図]
20180106図7

FRBの年内3回の利上げを見込む:リスクは上方

FRBの金融政策については、2018年中に3回の利上げが決定され、年末のFF金利誘導目標は2.00-2.25%になると個人予想する。利上げ時期としては、2018年3月、6月、9月の定例会合にそれぞれ+0.25%の利上げが決定されると予想する。これは、12月のFOMC委員による経済予測によるFF金利予測中央値と整合するものである([第3表][第4表])。ただし、この予想は上方リスクを孕んでいる。場合によっては12月会合でも年内4回目の利上げ決定される上方リスクを見ておく。まず、テイラー・ルールに基づき、上記の筆者個人の成長・インフレ予想から2018年末の適正FF金利を推計すると、実に4.8%との計算になる(テイラー・ルール公式は99年版、自然利子率=1.5%)。テイラー・ルール公式のインフレギャップがインフレ実績2%によりほぼゼロとなる一方、需給ギャップが+1.5%と大幅にプラスになることが適正FF金利水準を押し上げる要因となっている。

FOMC委員予測中央値によれば、長期的な均衡インフレ率は2%、FF金利の長期的な均衡水準は2.8%とされている。ここからはFOMCの見る自然利子率が約+0.8%であることになる。2018年のインフレ率予測中央値は1.9%、成長率予測中央値は+2.5%(9月時点の+2.1%から、おそらく減税法案成立を勘案して上方シフト)と、筆者予想よりも幾分低めである。また、イエレン議長が採用する99年版テイラー・ルール公式では需給ギャップがインフレギャップの2倍勘案されているが、2018年のイエレン議長退任後は需給ギャップとインフレギャップを均等に勘案する93年版公式をベースとすることも考えられる。93年版テイラー・ルール公式に基づき、経済成長とインフレ率をFOMC委員予測中央値、自然利子率+0.8%を適用した場合でも、2018年の適正FF金利は3%レベルとなる計算になる。

2月3日のイエレンFRB議長任期終了後に議長就任予定のパウエル氏は、基本的にイエレン路線を継承すると見る。一方で2018年のFOMCの地区連銀総裁投票メンバーについては、クリーブランド連銀メスター総裁、サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁という2名のタカ派が2017年のタカ派(フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、ダラス連銀カプラン総裁)に代わる一方、2017年のハト派投票メンバー(シカゴ連銀エバンス総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁)に代わる2名のメンバーは中立スタンスとみられる([第5表])。また、現在副議長(フィッシャー前副議長後任ポスト)を含む合計3名の理事ポストが空席であり、議長任期終了とともに理事退任が考えられるイエレン氏の後任も含めると年内に合計4名の理事ポストが交代になる。うち理事1名には、ルールベースの金融政策を主張するグッドフレンド氏が候補指名されている。こうしたFOMC内勢力図からは、2018年の金融政策はよりタカ派またはルールに基づく金利引き上げ加速方向の政策がとられる可能性が高いとみる。

[第3表]
20180106表3

[第4表]
20180106表4

[第5表]
20180106表5

[第6表]
20180106表6

スポンサーサイト

コメント

トラックバック