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<経済レポート> 加速へのギアシフト:3月FOMC

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FOMCは3月の定例会合で予想通り+0.25%の利上げを決定した。FOMC委員経済予測では、減税法案の成立を反映して成長予測は上方シフトした。年内の利上げ予測は3回と前回予測から不変であったが、全体としてFOMCがタカ派にシフトしていることがわかる。パウエル新FRB議長は金融政策において「ルール」が有効としていることも、今後利上げペースが加速する可能性を示唆している。今回を含め年内3回以上の利上げが決定されるとの個人予想を維持する。

FOMCは+0.25%の利上げを決定:年内利上げ予測は3回にとどまった

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は3月20-21日の定例会合で、予想通りFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ1.50-1.75%とすることを決定した。FOMCの利上げ決定は昨年12月定例会合以来のこととなる([第1図])。会合後に公表された声明文の内容は、前回1月定例会合のそれから本質的な変更はなかった。基調判断のパラグラフでは、1月以降の消費統計や資本財出荷統計の軟化を反映して「家計消費と設備投資の成長ペースが第4四半期の強い数字から軟化した」とされたが、経済見通しのパラグラフでは「経済見通しは最近強まった」との新たな文言が挿入されたうえ「経済活動は中期的に適度なペースで拡大」し「労働市場は強くあり続けると予想している」「12ヶ月のインフレ率はここ数ヶ月で上昇し、中期的には委員会の2%目標付近で安定するだろうと予想している」と従前の見通しを維持した。その上で上記の利上げが決定された([第2表])。

声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測においては、前回昨年12月予測に比べていくつかの大きな変化がみられた。まず実質GDP成長率(第4四半期前年同期比)の予測中央値が2018年+2.7%(12月予測+2.5%)、2019年+2.4%(同+2.1%)と上方シフトした。次に失業率(第4四半期平均)予測中央値も下方シフトし、2018年3.8%(同3.9%)、2019年3.6%(同3.9%)となった。PCEインフレ率予測中央値は12月予測と不変で、2018年前年比+1.9%、2019年同2.0%と、来年にかけてFOMCの目標値2%が達成されるとの予測が維持された。適正なFF金利水準は2018年については2.1%と前回予測比不変であったが、2019年については2.9%(前回2.7%)、2020年も3.4%(同3.1%)から上方シフトした。長期的均衡FF金利は2.9%(同2.8%)とわずかに上方シフトした([第1表][第2図])。

今回のFOMC委員経済予測では昨年末の減税法案成立が反映されて、成長率と失業率が好転方向に改訂された。利上げ見通しについては、今年の利上げ回数はこれまでと同様に年3回にとどまったものの、来年については上方シフトしている。年内の利上げ回数については3回以下とみる委員が8人、4回以上とみる委員が7人おり、両者は拮抗しているうえ、利上げ回数を4回以上とみる委員の数は12月予測比増加している([第3図])。これは減税法の成立によりFOMC委員の経済見通しと金融政策見通しがタカ派シフトしたことの証跡である。これらは従前からの当レポートの見方とも整合している。

[第1図]
20180325b図1

[第1表]
20180325b表1

[第2図]
20180325b図2

[第3図]
20180325b図3

経済成長予測は上方シフト:FOMCはタカ派に

3月FOMC定例会合は、2月に就任したパウエル氏のFRB議長として最初の会合であった。当レポートでは、パウエル氏は基本的にこれまでのイエレン氏の路線を継承しこれを調整していく政策をとると見ていた。パウエル氏は経済学者出身ではなく、共和党政権財務次官などを歴任した行政官である。しかしFRB理事として6年近くその任にあり、FOMCの運営についてはバランス感覚をもってこれを実施しうる十分な経験があるといえる。金融政策について特定の学説は持っておらず、基本的には中立路線を歩むと考えられる。しかしながら、リベラル派の経済学者であったイエレン前議長の金融政策との比較、また昨年末からの経済見通しの好転や需給の引き締まりの状況、また多数のFOMC委員がトランプ政権になってから交代していることからは、FOMCはタカ派にシフトしていくと見る。

3月FOMC会合の声明文やパウエル議長記者会見の内容はこうした見方を裏付けるものであった。声明文の構成や内容は議長交代にも関わらず従前の書式をほぼ踏襲したものであった。記者会見の内容もいわば安全運転といってよく、特段の注目すべき発言は見られなかった。一方でFOMC委員経済予測は従前比タカ派色が強かったといってよい。

パウエル氏は特段の金融政策に関する特定の学説はもっていないとしたが、同氏は就任直後の議会証言で興味深い発言をしている。2月27日の米議会下院金融サービス委員会における半期金融政策報告においてパウエル氏は「金融政策スタンスの評価においてFOMCは、政策処方箋と我々の使命に関係する変数とを結びつける金融政策ルールを定期的に参照している」「私は個人的にルール処方箋を有用なものとみている」と述べている。これは、パウエル議長が金融政策の遂行に当たりルールを重視していること、また同氏率いるFOMCが従前のイエレン前議長でのFOMCよりもタカ派しシフトする可能性を示唆するものである。

金融政策ルールによれば適正FF金利はより高い水準になる

FRBが議会宛に提出する半期金融政策報告書には、前回の2017年7月報告書以来、複数の金融政策ルールに基づく適正FF金利の推計値が掲載されている。2月の金融政策報告においては、金融政策ルールとして5通りの公式が示され、これらに基づく2017年第4四半期時点での適正FF金利推計値はゼロ%~3%の間に位置するとされている。これらの中で最も高い適正FF金利を推計する公式は「バランスト・アプローチ・ルール」(テイラー・ルールの一種)とされている公式で、2017年第4四半期の適正FF金利が約3%との推計結果になっている。また「テイラー・ルール(1993)」公式による推計値もほぼ3%を指している。最も低い適正FF金利を推計する公式は「価格レベル・ルール」とされているもので、2017年第4四半期の適正FF金利は約ゼロ%と推計されている。一般に適正FF金利の推計において、需給ギャップ(労働市場ギャップ)の比率を高く見る公式(バランスト・アプローチ・ルールやテイラー・ルール)」は、需給ギャップがマイナス(失業率が自然失業率を上回る)の時期には適正FF金利が低めに推計され、需給ギャップがプラス(失業率が自然失業率を下回る)時期には適正FF金利が高めに推計される。FRB金融政策報告書によれば、需給ギャップを相対的に重視する公式では高めの適正FF金利が推計され、インフレ率を重視する公式では低めの適正FF金利が推計されている。

パウエル議長が金融政策決定において金融政策ルールを重視し、またその際にテイラー・ルールまたはその修正版を用いた場合、今後FOMCは、3月時点の委員予測よりもさらに利上げペースを加速させる可能性がある。テイラー・ルールによれば2017年末の適正FF金利水準は実績値よりもかなり高い水準であり、さらに2018年の成長加速とインフレ率上昇を勘案すれば、2018年の適正FF金利は更に高水準になる計算になる。

テイラー・ルール公式を用いた当レポートにおけるこれまでの筆者個人の適正FF金利推計値もこれらと同様の傾向を示している。自然利子率を0.8%とした場合の筆者による適正FF金利推計値は、2017年末が2.6-2.8%、2018年末が3.3%-4%である([第4図])。これはFRBの内部推計の結果とも方向性を一にするものである(なお、当レポートで「99年版」テイラー・ルールとしている公式はFRB金融政策報告では「テイラー・ルール(1993)」とされている。当レポートでの「1993年版」に相当する公式はFRB金融政策報告には記載されていない)。

[第4図]
20180325b図4

年内3回以上の利上げ予想を維持する

以上より、FOMCが3月利上げを含め年内3回以上の利上げを決定するとの当レポートの個人予想を維持する(年末のFF金利誘導目標レンジは2.00-2.25%またはそれ以上)。筆者個人の成長率及びインフレ率予想はFOMC委員予測とほぼ整合している([第5図])うえ、上記の通りテイラー・ルールによる適正FF金利推計値は2018年末に3%以上を示唆している。パウエルFRB議長の発言も今後FOMCが利上げを加速する可能性を示唆している。

インフレ率の上昇に対して中央銀行がビハインド・ザ・カーブになるリスクを、FOMCは今後より重視することになるだろう。1月FOMC定例会合の議事要旨によれば、インフレの上方リスクに対する参加者発言が複数出されている。現状すでに米経済は需要超過の状態にあり、伸び悩んでいる時間当たり賃金も今後上昇ペースが加速する可能性が高いと見る。昨今の為替市場におけるドル安に加え、3月にトランプ大統領が決定した鉄鋼・アルミニウムに対する輸入制限は、米国の輸入物価を上昇させる可能性が高い。

一方で、上記個人予想に対する下方リスク要因は、米経済の予想外の減速である。大型減税による購買力拡大が内需ではなく輸入拡大につながった場合は成長が予想通りに加速しない可能性がある。また米トランプ政権の内政・通商問題による混乱も下方リスクである。トランプ大統領が決定した輸入制限は「企業部門の懸念事項」とパウエル議長も記者会見で述べている。トランプ政権の混乱は引続き米経済及び金融政策予想への下方リスク要因であり続けそうだ。

[第5図]
20180325b図5

[第2表]
20180325b表2

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