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<経済レポート> 巡航速度に向かい風:日本経済定点観測

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2018年の日本経済成長率についての個人予想は前年比+1%台前半を維持する。需給の引き締まりでインフレ圧力は高まり、コアインフレ率は前年比+1%前後を年内維持すると見る。しかし、中期的な景気循環の観点からは景気のピークが1年後位に訪れる可能性が否定できない。また短期的にも株価や米国通商政策、そして日本の内政など下方リスク要因が存在する。

日本経済は3四半期連続の需要超過

日本経済は2017暦年に前年比+1.7%と、潜在成長率(内閣府推計では+1.1%)を大幅に上回る成長を実現した。2018年はここからやや減速して同+1.3%と、それでもなお潜在成長率を上回る成長を継続すると個人予想する。もっとも1-3月期は個人消費や設備投資の減速で一時的に成長は軟化するだろう([第1図])。本レポートでは、日本経済についての個人予想を最近の経済指標から点検していく。

まず、日本経済の長期的立ち位置を見る。日本経済は既に需要超過となり、均衡水準からすでに過熱領域に入っている。内閣府推計によれば、2017年10-12月期現在のGDPギャップは+0.7%と、3四半期連続の需要超過となっている。筆者個人の成長率予想に基づけば、2018年末にかけてGDPギャップはほぼ横ばいで推移し、年末の水準は+0.7%となる計算になる([第2図])。直近の過去の日本経済のプラスの需給ギャップのピークは、金融危機直前の2007年第4四半期の+1.7%、ITバブル期の1997年1-3月期の+1.0%であった。現在の需要超過レベルは過去のピーク比高いものではない。しかしながら、日本経済において需要超過状態が長くつづいたことはない(直近では1996~1997年の7四半期)。中期的な景気循環の観点からは、今後1年前後の間に景気の転換期が訪れる可能性があるといえる。

より短期的には、現在前年比+1%前後で推移しているインフレ率に、需給の引き締まりによる上方圧力がかかっていく可能性が高いことを示唆している。

[第1図]
20180428図1

[第2図]
20180428図2

1-3月期成長率はやや減速の見込み

次に、直近の経済指標から1-3月期の成長率を占っていく。昨年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.6%だったが、1-3月期はやや減速して同+0.6%程度を見込む。家計消費について、GDP統計上の昨年10-12月期実質家計消費は前期比年率+2.1%と予想外に強い伸びだったが、1-3月期はやや減速すると見る。総務省の家計調査による1-3月期実質家計消費支出(二人以上の世帯)は2月までで前期比+1.4%と前期のマイナスからプラスに転じている。同じく実質総消費動向指数も2月までで同+1.0%とプラスに転じている([第3図])。しかしながら、昨年10-12月期のGDP統計上の家計消費のプラス成長は月次統計の悪化に比べてやや出来すぎ感がある。GDP統計上は前期の反動でやや成長が減速すると見ておきたい。

設備投資も昨年10-12月期の同+4.2%からやや減速すると見る。先行指標となる資本財出荷は2月までで前期比+0.6%と前期の同+1.7%から減速している([第4図])。住宅投資は更に減少して3四半期連続のマイナス成長となろう。3月までの住宅着工戸数は前期比-5.9%と3四半期連続のマイナスとなるペースである([第5図])。マンション建設の減少等が全体の戸数を押し下げている。

1-3月期の成長減速の背景には2月以降の株価急落、安倍政権の不安定化、米国の鉄鋼・アルミ輸入制限などの保護貿易策強化、などが要因の一部としてあると考えられる。これらの景気に対する向かい風要因が、消費者や企業のセンチメントを通して成長減速の一要因となっていると憶測できる。内閣府景気ウォッチャー調査のDIがここのところ低下傾向にあるのは、こうしたセンチメントの一時的な悪化を示唆している。一方で、ファンダメンタルズ的にまだ日本経済に著変は見られない。例えば労働市場では就業者数が2月時点で前年比+2.4%の強い伸びを示している。実質賃金の前年比伸び率は結果2018年通年では依然潜在成長率に近い成長が可能と見る。

[第3図]
20180428図3

[第4図]
20180428図4

[第5図]
20180428図5

インフレ率は1%前後で推移とみる

インフレ率は2018年一杯、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)の前年比伸び率が+1%前後で推移すると見る([第6図])。日本銀行の目標とする2%には達さないものの、需給の引き締まりは確実にインフレ圧力の高まりを示唆している。さらに現在、原油価格が1バレル=60ドル台後半に上昇していることは、このインフレ見通しに対する上ブレ要因である。

インフレ率が1%前後で推移してデフレ脱却の可能性が高まってくると、日本銀行の量的・質的金融緩和政策も緩和を縮小する方向に調整されていく可能性が高いと見たい。インフレ率が+1%レベルで安定推移する状況で現在の規模も量的・質的緩和を継続する必要性は後退していると考えられる。現在の量的・質的緩和では、日本銀行による長期国債保有残高の増加額が年間80兆円をめどとする長期国債買入れを行うこととなっているが、実際のマネタリーベース増加額は3月現在で前年比約+40兆円にまで低下している([第7図])。いわゆるステルステーパリングと呼ばれる、緩和規模縮小である。今後ありうる緩和縮小の方法としては、イールドカーブコントロールにおける10年物国債金利のコントロール水準を現在のゼロ%から引き上げる方式、コントロール対象を10年物からより短い期間にシフトする方式、などが考えられる。

一方で、日本銀行が目標とする2%のインフレ目標の達成は依然遠い道のりである。日本銀行の1月「経済・物価情勢の展望」によれば、コアCPIの前年比伸び率に関する政策委員見通しの中央値は2018年度が+1.4%、2019年度が+1.8%と、当レポート見通しよりもやや強気になっている。しかし需給ギャップとコアインフレ率との関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、2%のインフレ率達成には需給ギャップが+4%を超える需要超過となる必要がある。これまでの日本の需給ギャップの推移からはこれはやや非現実的な想定といえるだろう。

[第6図]
20180428図6

[第7図]
20180428図7

[第8図]
20180428図8

株価や米国の輸入制限は下方リスク

上記個人予想に対するリスク要因は、株価の更なる下落、及び米国による鉄鋼・アルミの輸入制限などが日本経済に悪影響を与える可能性である。日経平均株価は1月下旬の24000円台の高値から3月下旬に20600円台にまで下げた後、現在そのほぼ半値戻しに当たる22000円台で推移している。今後は再び株価はじり高傾向をたどると見ているが、半値戻しをピークに再び下落に転じるというシナリオはテクニカルにもありうるところである。

米国による輸入制限に影響は日本からの対米輸出抑制を通じた日本の成長下押し要因となる。米国は現在日本を輸入制限の対象外とはしていない。また17-18日の日米首脳会談でも、通商問題を巡ってはトランプ米大統領が対日赤字の縮小と2国間交渉を強く主張したとされている(報道による)。米国の対日赤字に対するスタンスは今後も強硬なものとなる可能性があり、これは成長に対する下方リスク要因となる。

総じて2018年の日本経済は潜在成長率程度の成長を維持し、インフレには上方圧力がかかると見る。しかし、中期的景気循環はまもなく景気のピークが訪れうることを示唆しており、またかかる下方リスク要因が存在することから、筆者個人予想に対するリスクは心持ち下方と見ておきたい。

なお、筆者個人の経済・金融予想アップデートを[第1表]に示す。

[第1表]
20180428表1

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