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<経済レポート> インフレ認識引き上げ:5月FOMC

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FOMCは5月の定例会合でFF金利誘導目標を据え置いた。しかし声明文では、インフレ率が目標とする2%に接近し今後も2%近辺で推移する見通しを明言した。インフレ指標や実体経済指標もこの見通しを支持している。FOMCが年内に合計3回以上の利上げを決定するとの個人予想を維持する。

金融政策据え置き:「インフレ率は2%近辺で推移と予想」

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は5月1-2日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジを1.50-1.75%に据え置くことを決定した。しかし公表された声明文の内容は、インフレ率がFRB目標に接近したことを判断するタカ派的内容であった。本レポートでは、5月FOMC声明文の内容と実体経済指標をもとに、今後のFOMC金融政策を占っていく。

5月定例会合後のFOMC声明文は、前回3月定例会合のそれと比して(FF金利誘導目標据え置き決定の箇所を除き)、大きな違いは1点のみである。すなわち、インフレ率がFRBの2%目標に接近し今後もその近辺で推移するとの予想が明記されたことである。まず基調判断のパラグラフでは、12ヶ月の総合インフレ率と食品及びエネルギー価格を除く指標はともに「2%に近づいた」とされ、従前の「委員会の2%目標を下回って推移している」から判断が上方修正された。経済見通しのパラグラフでは、インフレ率は「中期的には委員会の対称的な2%目標近辺で推移するだろうと予想している」とされ、従前の「ここ数ヶ月で上昇し、中期的には委員会の2%目標付近で安定するだろうと予想している」からこれも表現が上方修正された(末尾[第2表])。

これらのFOMC判断と見通しは、今後FOMCが漸進的な利上げを継続することを示唆するものである。またこのインフレ見通しは、3月時点でのFOMC委員四半期経済予測におけるインフレ率に係る予測中央値とも整合している。

実体経済指標もインフレ率の2%維持を支持している

実際の経済指標からインフレ率の状況を見る。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、3月時点で前年比+2.0%と、2月の同+1.7%から大幅上昇し、2012年2月以来約6年ぶりに2%台を回復した。昨年3月の携帯電話料金引き下げ要因の剥落が主因で、消費者物価指数同様に少なくとも表面上はインフレ率が急上昇した形だ。食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは、前年比+1.9%とこちらも上昇が加速して前年比上昇率が2%に近づいた。

今後PCEデフレーターが前月比+0.15%程度の上昇を継続すると、2018年内に総合指数は一時前年比+2%を上回り、年末には同+2%レベルに着地する計算になる。コアPCEデフレーターは前年比伸び率を徐々に高め、これも年末に同+2%に着地する計算になる([第1図])。ここからは、すでにFRBのインフレ目標が上下対称的に維持される見通しが立っていることになる。

消費者の期待インフレ率の状況もこれを支持している。ミシガン大学消費者センチメント調査による期待インフレ率は、特に今後12ヶ月の短期期待インフレ率がここ1年強の間上昇基調にある。長期的な5年間の期待インフレ率は概ね横ばいで安定している([第2図])。また、時間当たり賃金上昇率もようやく上昇の兆しが見えてきている。時間当たり賃金上昇率は失業率低下にも拘わらず伸び悩んできたが、直近の4月雇用統計によれば、時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者、季節調整済)の伸びは前年比+2.6%と、失業率低下に遅行してようやく上昇基調に転じてきている([第3図])

[第1図]
20180506図1

[第2図]
20180506図2

[第3図]
20180506図3

需要超過に転じればインフレ上方リスクも

実体経済も順調に拡大している。1-3月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+2.3%と、潜在成長率(米議会予算局推計によれば2018年時点で約+2%)を上回った。議会予算局推計の潜在GDPをもとに計算した需給ギャップは-0.1%と、ほぼ需給均衡状態になった。今後年内2%を超える成長が続いた場合、米経済は年末までには需要超過状態になることになる。

需給ギャップとコアPCEデフレーターの関係を示すシンプルな回帰式によれば、需給均衡(需給ギャップゼロ)に対応するコアPCEインフレ率は丁度+2%と推計される([第4図])。現在の米経済の立ち位置からは2%インフレ率が均衡水準であることになる。言い換えれば、今後成長が+2%台で推移した場合、インフレ率が+2%をこえて上昇する上方リスクが出てくることになる。FOMCの「対称的な(symmetric)」インフレ目標に照らせば、場合によっては利上げを加速する必要が出てくる可能性がある。

3月及び5月のFOMC声明文で「軟化した」と判断された個人消費も、3月に大幅に回復した。3月実質個人消費は前月比+0.4%と、1、2月の連続マイナス成長からようやくプラスに転じた。所得税減税の効果が本格的に顕在化すれば今年いっぱいの個人消費は+2%レベルの成長は可能である。なお、実質時間当たり賃金、週平均労働時間、非農業部門雇用者数の伸びから集計した個人の実質購買力は、3月時点で前年比+2.1%となっている([第5図])。インフレ率の上昇にかかわらず、雇用の堅調な伸びと、最近では週平均労働時間が増加傾向にあることで、雇用者の購買力は2%成長を可能にする十分な伸びを確保している。

[第4図]
20180506図4

[第5図]
20180506図5

年内合計3回以上の利上げ予想を維持する

以上から、FOMCが(3月定例会合で決定した利上げを含め)年内合計3回以上の利上げを決定するとの個人予想を維持する。次回6月定例会合と、今年最後の12月定例会合での利上げを見込むほか、総合インフレ率が見通し通り2%を上回った場合、中間選挙前となる9月定例会合でも利上げが決定される可能性がある([第1表])。年内合計3回の場合年末のFF金利誘導目標は2.00-2.25%、4回の場合は2.25-2.50%となる。

テイラー・ルール公式によれば、2018年末の適正FF金利水準は3%超と推計される(3月25日付当レポート参照)。したがって、年内4回の利上げでもなお金融政策スタンスは緩和的といえる。パウエルFRB議長は就任直後の議会宛半期金融政策報告で「金融政策ルールは有用」である旨証言しており、同報告書にも複数の金融政策ルールによる適正FF金利推計結果を掲載している。テイラー・ルール(議会宛半期金融政策報告書にいうところの“1993年版”)はその中でも高めの3%水準のFF金利を推計する結果になっている。パウエル議長がテイラー・ルールを重視するならば、今後利上げペースは加速方向にシフトする可能性もある。

上記予想に対する下方リスクは、トランプ政権の通商政策等が米経済やグローバル経済の下押し要因となって成長が鈍化、あるいは更なる株安が景況観を悪化させるケース。また、米国の利上げが新興国からの資金流出を招いて新興国通貨安による金融不安をもたらすケースである。実際に5月にかけてブラジルやメキシコ通貨が対ドルで下落する傾向にあった。5月初にはアルゼンチン通貨が大幅下落している。中南米通貨安の背景は、トランプ政権の通商政策(メキシコはNAFTA交渉相手国、ブラジルは鉄鋼・アルミ輸入制限の交渉相手国)と、米金利上昇との双方の側面が考えられる。ファンダメンタルズ的には堅調なグローバル経済だが、金融市場の混乱はこの基調に冷や水を浴びせる要因になるリスクがある。

[第1表]
20180506表1

[第2表]
20180506表2

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