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キャッシュフローと稼働率が鍵~米国企業設備投資動向

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米国の企業設備投資が伸び悩んでいる。長期的な設備投資の決定要因として、企業キャッシュフローの改善と設備稼働率の更なる上昇が鍵である。そのためには個人消費中心の内需の成長持続と海外経済の回復が必要となる。来年も引続き米企業設備投資は1ケタの低い伸びにとどまると見る。

米民間設備投資の伸びは低迷している

米国では個人消費が堅調な成長を続けているのに対し、企業設備投資が伸び悩んでいる。2013年7-9月期GDP統計速報では、米国の実質GDP成長率は前年比+2.8%と予想以上の強さをみせた。ただ、個人消費の寄与度+1.04%に対し、民間設備投資(構造物投資+機器投資+知的財産投資)の寄与度は+0.20%と3四半期連続で1%を下回った。

民間設備投資の伸び率は景気拡大期には2ケタになるのが経験則であるが、7-9月期のそれは前期比年率+1.6%にとどまっている。過去8四半期の間設備投資の2ケタ成長はなく、かつ今年の1-3月期には一時マイナス成長に転化している。

とりわけ、機器投資の低迷が目立つ。7-9月期の機器投資は同-3.7%と4四半期ぶりにマイナス成長に転化。過去8四半期中2回目のマイナス成長を記録した([第1図])。

[第1図]
20131130図1


短期の先行指標も低下中

民間設備投資の短期的な先行指標も芳しくない。機器投資の基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は10月に前月比‐0.2%と2ヶ月連続のマイナスの伸びとなった。このペースだと、機器投資は10-12月期には3四半期ぶりに前期比プラスの伸びに転化するもののそのペースは前期比年率+0.7%と僅かな伸びにとどまる計算になる。

出荷指数の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)も9月が前月比-1.4%、10月が同-1.2%と2ヶ月連続で大幅に減少している。これは年末にかけての資本財出荷の伸びが再びマイナスになる可能性を示唆している。

これらの指標を前年同月比の伸びで見ると、出荷は過去1年間ほぼ底ばい状態、受注は8月に低い水準のピークを付けたのち下降サイクルに入りつつあることを示唆している([第2図])。

[第2図]
20131130図2

企業景況感は不悪だが経済見通しは不確実

企業設備投資が伸び悩んでいるのとは対照的に、企業景況感は改善している。ISM製造業指数は10月まで4ヶ月連続で55%を超える水準を維持している。フィラデルフィア連銀企業景況感調査の資本支出DI(6ヶ月後見通し)は7月と9月に2005年以来の高水準である+27.7%ポイントを付けた。その後やや低下したものの、11月時点でも17.2%ポイントと比較的好水準を維持している。

企業景況感が悪くないにも拘わらず企業設備投資が伸びない理由の一つに、世界経済の不確実性があろう。個人消費は株価上昇など市場要因に短期的に影響されやすい。これに比べ、企業設備投資はより中期的な生産計画に基づくため個人消費よりも慎重になりやすい。中国を含むアジアの景気減速見通し、米国連邦政府債務上限問題など、先行きの見通しにくい外的要因が企業設備投資を抑制していると推測できる。

企業キャッシュフローは悪化中

次に設備投資のやや長期的な決定要因を見る。まずフロー要因である企業キャッシュフローを取り上げてみよう。米国企業は金融危機以降、設備投資額をネットキャッシュフロー(税引後利益‐ネット配当支払+固定資本減耗)の範囲内に抑制する傾向がはっきりしている。設備投資/キャッシュフロー比率は90年代に概ね120%レベルだったのが、ITバブル崩壊後の2000年代に100%台レベルに低下し、更に金融危機後は100%を割り込んで推移している。短期的には今後100%を超えてくる兆しは見られるものの、長期トレンドが下向きであることは不変である([第3図])。

一方、企業キャッシュフローは金融危機の2009年をピークに伸び率が低下サイクルにあり、2013年4-6月期には過去3四半期中2四半期目のマイナスの伸びに転化した([第3図])。企業収益(税引前)の伸び自体が景気拡大期に2ケタの伸びになるのが経験則であるのに対し、最近はここ5四半期連続で1ケタの伸びにとどまっている。

企業キャッシュフローと名目設備投資の間には、約1年のラグを伴って相関関係が見られる([第4図])。つまり企業設備投資の拡大のためにはその元手となる企業キャッシュフローの拡大が必要ということになる。

[第3図]
20131130図3

[第4図]
20131130図4

資本ストックは相対的に過剰

次に、設備のストック面から資本係数と設備稼働率を見てみる。名目GDPに対する民間非住宅資本ストックの比率(資本係数)は、2000年代半ばから上昇をはじめて金融危機直前の2008年にピークを付けた。その後ストック調整から資本係数はやや低下しているが、90年台の水準にはもどっていない。米国経済の成長スピードに対して、2000年代半ばに積み上げた資本ストックに未だに過剰感があると言える。

資本ストックの過剰感は設備稼働率にも表れている。10月鉱工業生産統計によれば、設備稼働率は78.1%だった。これは、まだまだ金融危機前の水準を回復していない水準である。またこれは、1972年~2012年の平均設備稼働率である80.2%と比較しても相対的に低水準である。こうした設備の余剰も設備投資を抑制する要因だと言える。

[第5図]
20131130図5

キャッシュフローと設備稼働率が設備投資拡大の決定要因

企業キャッシュフローと設備稼働率を外生変数とし、名目民間設備投資を内生変数とする回帰分析の結果が[第1表]①である。回帰分析は変数を対数化して行い、外生変数は内生変数に1年先行させた。結果、この2変数で設備投資のほぼ9割が説明可能との結果になった(なお、資本係数は外生変数として有意でなくまた説明力への影響もわずかであった―[第1表]②)。

企業が設備投資を加速させるためには、主に収益向上による企業キャッシュフローの向上と、景気回復による経済ののりしろeconomic slackの今一歩の縮小が必要ということになる。企業収益は7-9月期の企業収益は、国内部門で金融業が前年同期比+16.3%と大きく伸びている一方、国内部門の製造業が同‐7.0%、海外部門が同-6.1%と減益となっている。引続き米国の企業部門は個人消費を中心とする内需成長の持続性と、海外経済の回復が鍵になると言える。

来年も設備投資は5%台の低い伸びにとどまると見る

しかし米国内需と海外経済回復が今後1年間に急加速するとは考えにくい。米国のマイナスの需給ギャップは現在-5%台と推測されるが、2%水準の成長率ではこのギャップは縮小しにくいと見る。従って設備稼働率の上昇のためには当面新たな設備拡大は抑制する必要があることになる。

筆者は来年の米国の成長率を前年比約2%と試算している。うち設備投資は同+5%台と、引続き低めの伸びにとどまると見る。

[第1表]
20131130表1



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