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<経済レポート> 好調の行く末に:米経済定点観測

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米国経済は個人消費を中心に好調な拡大を続けている。2018年通年の成長率は前年比+2.8%との個人予想を維持する。インフレ率もFRBの目標とする2%水準で今後推移し、FOMCは年内にあと2回の利上げを決定すると個人予想する。一方で企業景況感や住宅市場には減速の兆しがみられることにも留意が必要である。また、トランプ大統領の対中輸入関税政策等の影響はまだ統計で顕在化しておらず、不確実性要因である。

個人消費は年内成長の牽引役

米国経済は好調に拡大し、4-6月期は前期比年率+4.2%(改定値)の極めて強い成長だった。なかでも個人消費は所得税減税の効果もあり成長の牽引役となっている。4-6月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+3.8%(改定値)と2014年10-12月期以来の強い伸びとなった。7月に入っても、実質個人消費は前月比+0.2%と堅調である。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期よりは減速するものの、前期比年率+2%台後半の堅調な拡大を維持すると見る。

昨年末のトランプ政権税制改革に伴う個人の購買力は確実に拡大している。個人の名目可処分所得は7月現在で前年比+5.3%と、昨年の同+4%台半ばから伸びが拡大している。名目可処分所得の伸び率上昇には税金の可処分所得へのマイナス寄与縮小が大きな要因となっている([第1図])。減税による名目可処分所得の伸びへの寄与度はおおむね+0.5%レベルと計算される。一方でインフレ率が上昇したことで、実質可処分所得の伸び率は今年に入り前年と概ね横ばいの前年比+3%前後で推移している([第2図])。とはいえ、+3%台の実質可処分所得の伸びは潜在成長率を超える経済成長を十分に支えうる伸びである。

雇用市場の状況からも個人所得の堅調な拡大が確認できる。雇用市場では、非農業部門雇用者数が7月現在で前年比+1.6%の増加、時間当たり賃金が同+2.7%の上昇ペースとなっている。これに週平均労働時間の伸び同+0.3%を加えると、雇用者所得は同+4.6%の伸びを維持している計算になる。インフレ率2%を差し引いても、個人の購買力は+2%台後半のペースで拡大していることになる。

[第1図]
20180909図1

[第2図]
20180909図2

企業部門の景況感は軟化しつつある

企業部門は2018年に入り拡大ペースを強めている。GDP統計上の設備投資は1-3月期に前期比年率+11.5%、4-6月期に同+8.5%と成長を加速させた。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機を除く)は7月に前月比+0.9%と強い伸びを示した。7-9月期の設備投資も前期比年率+8%レベルの拡大が期待できるペースである。

一方で、企業景況観や設備投資意欲がここにきてやや減速していることには留意が必要である。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数は、直近の高値である5月の+34.4ポイントから8月にかけ+11.9ポイントに急落した([第3図])。また同調査による6ヶ月先の設備投資DIも、昨年7-9月期をピークに低下に転じている([第4図])。

企業景況観はトランプ大統領就任後かなり過熱気味に好転した。上記フィラデルフィア連銀製造業景況感指数の水準は金融危機直前の2004年の水準を超えていた。同大統領のプロ・ビジネスな政策が企業部門に好感されたためと思われる。しかしながら、最近のトランプ氏の保護主義的通商政策は、当初想定以上に攻撃的なものとなっている。鉄鋼・アルミへ輸入制限、対中国の関税引き上げなど、当初は交渉カードとみていた保護主義的通商政策を現実に実施している。こうした動きが米企業からも懸念が持ち上がっていることが推測される。過熱感のある企業部門の成長が今後循環的な減速に入る可能性を見ておく必要があろう。

[第3図]
20180909図3

[第4図]
20180909図4

住宅投資は減速を見込む

住宅市場はここ数ヶ月間減速が目立っている。住宅着工戸数は今年の6月に前月比-12.9%と急減し、7月も同+0.9%の増加にとどまった。住宅着工戸数は4-6月期に続き7-9月期にも前期比マイナスの伸びになるペースである。住宅着工の減少の要因の一つは、輸入制限による原材料価格上昇にあるとも考えられる。また労働市場のタイト化により労働力供給に制約が生じている可能性がある。

住宅販売市場では、中古住宅販売戸数が4月から7月まで4ヶ月連続で減少している。全米不動産業協会(NAR)は、住宅価格上昇や在庫不足を販売減少の要因としている。全米建設業協会(NAHB)の住宅市場指数は引き続き高水準にあるものの、昨年12月をピークに緩やかに低下傾向にある([第5図])。同指数は来店客数などの傾向から住宅市場の主に需要の強さを表す指数である。同指数の減速は、住宅市場が供給面のみならず需要面からも減速を始めていることを示唆している。背景には住宅ローン金利上昇が考えられる。

供給面、需要面の双方から住宅市場が減速しているとすれば、年内住宅投資が成長を押し上げる要因になるとは考えにくい。住宅投資は成長率に対する下方リスク要因といえる。

[第5図]
20180909図5

輸入関税政策の影響は不確実性が高い

トランプ政権の保護主義的通商政策の影響は輸出入統計には顕著には表れていない([第6図])。同政権は鉄鋼・アルミ輸入関税引き上げを選択的に3月より実施した。また対中国の制裁輸入関税引き上げを、7月6日に340億ドル相当、8月23日に160億ドル相当の品目につき実施、中国はそれぞれに対し即時に報復輸入関税引き上げを実施した。米国はさらに2000億ドルの追加制裁を準備している。今後対中国を中心に輸出入の減速が考えられるが、中国側が報復措置を実施していることから、対中の貿易赤字が即座に縮小するかは不確実である。8月以降の統計で対中貿易戦争の影響を確認することとしたい。

在庫循環は依然在庫積み増し局面にあり、今後年内は成長率にプラスの寄与をすると見る。在庫投資は4-6月期には予想外の在庫縮小で成長を-1%近く押し下げる要因なったが、7-9月期はその反動で大幅プラス寄与を見込む。

以上から、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2%台後半、10-12月期も同+3%レベルの成長となり、2018年通年の成長率は前年比+2.8%との予想を維持する。ただし、企業景況感の減速や住宅市場の軟化は、景気の循環的な減速の兆しである可能性には留意が必要である。米経済はすでに需要超過で、中立から過熱領域に入っている。2018年は減税効果で一時的に成長加速するものの、2019年には効果剥落で+2%前半に成長は減速しよう。さらに景気サイクルの転換がここ2年以内には訪れる可能性を見ておく必要があろう。

[第6図]
20180909図6

FF金利誘導目標は来年3%台へ

インフレ率は今後来年にかけてFRBが目標とする2%水準で推移すると見る。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は7月現在で前年比+2.3%、食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは同+2.0%となっており、3月以降概ね持続的に2%レベルで推移している。年末にはPCEインフレ率、コアPCEインフレ率のいずれもが同+2%水準に着地すると見る([第7図])。雇用市場では、時間当たり賃金上昇率(生産及び非監督雇用者)が8月時点で前年比+2.8%と、失業率低下に遅行してようやく上昇を始めた([第8図])。労働市場や生産市場の需給の引き締まりは、インフレに今後も上昇圧力を継続すると考えられる。

こうした背景から、FRBは今後も利上げを継続すると見る。FOMCは9月、12月の定例会合でそれぞれ+0.25%の利上げを決定し、2018年末のFF金利誘導目標は2.25-2.50%になると個人予想する。また2019年にも2回以上の利上げが実施され、FF金利誘導目標レンジは+3%台に上昇すると見る。現状ではインフレ実績は目標インフレ率とほぼ同じレベルにあり、需給ギャップは需要超過と考えられる。テイラー・ルール公式において、仮にインフレギャップと需給ギャップがゼロとした場合、インフレ実績=2%、自然利子率=1.5%における適正FF金利水準は3.5%と計算される。

FOMC委員の四半期ごとの経済予測の中央値(6月現在)に基づけば、長期的な均衡インフレ率は+2%、FF金利水準は2.9%とされている([第1表])。これは、FOMCが自然利子率を約+0.9%とみていることを示唆している。自然利子率が+0.9%程度であった場合でも適正FF金利は2.9%であり、さらに実際には需給ギャップが需要超過であることから、現状でも事実上3%台のFF金利誘導目標が正当化される。

[第7図]
20180909図7

[第8図]
20180909図8

[第1表]
20180909表1

[第2表]
20180909表2


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