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<経済レポート> 消費が牽引:日本経済定点観測

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日本経済は4-6月期に強い拡大ペースに回復し、引続き需要超過状態が続いている。雇用の拡大と賃金上昇を背景に家計消費が今後も経済をけん引しよう。2018年通年では前年比+1%前後の成長を個人予想する。インフレ率は日銀目標に照らせば低位であるものの、今後コアインフレ率は前年比+1%レベルに上昇して推移すると見る。もっとも日銀の金融政策は、新たなフォワードガイダンスのもと、来年の消費税率引き上げ効果の確認までは現状のスタンスを維持せざるを得ない可能性が高い。また、自然災害の影響やトランプ政権の通商政策は上記シナリオに対するリスク要因である。

経済は需要超過状態が続く

日本経済は、需要超過の中引続き潜在成長率を上回るペースで拡大している。内閣府推計によれば、4-6月期の日本のGDPギャップ(GDP統計1次速報値時点)は+0.3%の需要超過となっている([第1図])。同推計によれば日本経済は2017年1-3月期以来6四半期連続の需要超過である。その後4-6月期実質GDP成長率の2次速報値は前期比年率+3.0%と大幅に上方改訂された。結果4-6月期現在の経済のプラスの需給ギャップ(需要超過)幅は+0.6%レベルに拡大している可能性が高い。筆者個人は今後年後半も潜在成長率(内閣府推計では2018年4-6月期現在で前期比年率+1.1%)並みの成長を予想している。1-3月期のマイナス成長の影響で通年の成長率は4月時点の当レポートの予想からやや下振れするものの、2018年暦年、年度成長率いずれも前年(度)比+1%レベルに着地すると個人予想する(9月9日付当レポート参照)。結果日本経済の需要超過状態は少なくとも、来年2019年10月に予定されている消費税率引き上げまでは継続しよう。

経済が需要超過であることは、インフレ上昇圧力が今後も継続することを示唆する材料である。現在の日本のコアインフレ率(生鮮食品を除く総合消費者物価指数)は7月時点で前年比+0.8%の伸びにとどまっており、日本銀行の目標とする2%にはまだ遠いところにある。しかし後述の通り、今後日本経済の需要超過状態が継続して現状の物価上昇の趨勢が維持されれば、来年には+1%台前半のインフレ率が実現する可能性は十分にある(消費税影響を除く)。

短期的には、7月から9月にかけての自然災害が、年後半に一時的な生産の低下をもたらす可能性がある。一方で復興需要による生産回復が見込めることから、中期的な経済見通しへの影響は大きくはないと見ておきたい。以下では、需要項目ごとに現状の日本経済の状況を点検して、年内の動向を占っていく。

[第1図]
20180917図1

所得拡大で家計消費は経済をけん引する

家計消費は堅調な拡大で経済をけん引している。直近では、4-6月期GDP統計上の実質家計消費は前期比年率+2.9%と2017年4-6月期以来の強い伸びだった。もっともGDP統計上の家計消費の伸びはここ数四半期の間プラス成長とマイナス成長の間を行き来しており、短期的には安定的とは言いにくい。しかし、総務省の実質総消費動向指数(マクロCTI)の動きからは、今年に入り家計消費の総額の伸びが加速している状況が読み取れる([第2図])。また景気ウォッチャー調査においても、今年の夏の猛暑が消費の拡大というプラスの効果をもたらしたことが読み取れる。

中期的にみても、雇用や賃金の状況から家計所得は十分な購買力の伸びを維持している。労働力調査による2018年4-6月期時点の就業者数の伸びは前年比+2.2%となる([第3図])。現金給与総額(所定内給与)も、企業の賃金引上げ(ベア)などの効果で今年に入り上昇率を高め、7月時点で前年比+1.0%の伸びとなっている([第4図])。インフレ率(7月時点で同+0.9%)を差し引いても、家計の購買力は前年比約+2%台半ばの伸びがある計算になる。この所得の伸びは、潜在成長率を上回る成長を支えるに十分な拡大ペースである。

短期的には、7月の豪雨、9月の台風21号や北海道地震といった自然災害が生産や物流に悪影響をもたらしていることから、今後当面は家計消費の動きも不確実にならざるを得ない。しかし中期的には来年にかけて家計消費が経済をけん引する環境は整っているといえるだろう。

[第2図]
20180917図2

[第3図]
20180917図3

[第4図]
20180917図4

企業部門は今後拡大ペース調整へ

企業部門も現状は好調である。4-6月期のGDP統計上の設備投資は前期比年率+12.8%と、2015年1-3月期以来の2桁成長となった。その後の月次指標も堅調である。7-9月期の機械受注(船舶・電力を除く民需)は7月までで前期比+2.2%とプラスの位置につけており、今後の企業の設備投資の拡大継続を示唆している。

しかしながら、鉱工業生産指数は7月まで3ヶ月連続して低下、やや頭打ちの傾向にある。また在庫循環図は「意図せざる在庫増」局面に入っており、今後在庫調整が生産の抑制要因となることが考えられる([第5図])。企業部門のベースラインの拡大ペースは現状に比べより巡航速度に近いペースに減速しそうだ。自然災害による企業部門の生産低下が今後の統計に顕在化する可能性もある。短期的には企業部門の生産と設備投資も災害影響で変動の可能性はあると言わざるを得ない。ただし、「景気ウォッチャー調査」によれば7月豪雨からの復興需要がすでに企業部門に見られるなど、生産回復の動きも顕在化しつつある。自然災害は中期的な経済見通しには大きな影響を与えないと見ておきたい。

さらに、トランプ大統領の通商政策の影響も不確実性要因である。米トランプ政権は日本車に愛する輸入関税引き上げの可能性を依然示唆している。9月下旬開催の方向で調整中の第2回日米貿易協議及び日米首脳会談において本件協議がなされる模様だ。仮に関税引き上げや輸入制限が実現した場合、日本から米国への自動車輸出及び自動車生産には相応の悪影響があると言わざるを得ない。

[第5図]
20180917図5

インフレ率は来年にかけて1%台へ:金融政策は消費税率引き上げまで様子見

コアインフレ率は来年にかけて、前年比+1%前後に上昇して推移すると見る。生鮮食品を除く総合消費者物価指数(いわゆるコアCPI)は7月現在で前年比+0.8%と、2月の同+1.0%をピークにやや伸び率が低下している。しかし、今後コアCPIが前月比+0.1%の伸びを継続すれば、来年にかけてコアCPIインフレ率は上昇率をやや高め、前年比+1%強の伸びに上昇する計算となる([第6図]、消費税影響を除く)。一方で、需給ギャップとコアインフレ率のインプルな相関からは、+1%のインフレ率が維持されるには需給ギャップが約+0.9%の需要超過となる必要がある([第7図])。現在の需給ギャップを約+0.6%とした場合、今後潜在成長率を上回る成長が継続すれば、需給との関係からも1%台のインフレ率維持は可能な範囲にある。また、失業率と賃金上昇率の関係を示すシンプルなフィリップス曲線からは、現状の失業率(7月現在で2.5%)に相当する賃金上昇率は約+1.4%と計算される([第8図])。需給の引き締まりは、今後もインフレ率に上昇圧力を継続すると見ておく。

日本銀行の金融政策は、2019年10月の消費税率引き上げの影響見極めまでは、現状の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを維持すると今や見ざるを得ない。日銀は7月30-31日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の事実上の柔軟化を決定した。そこでは、日本銀行当座預金のうちマイナス金利が適用される政策金利残高を従前の10兆円程度)から減少させること、また10年物国債金利をゼロ%で推移するようコントロールすることを維持しつつその水準を「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」することなどが決定された。新たな長期金利の変動幅は現状の概ね±0.1%の幅から「上下その倍程度に変動し得る(7月31日黒田総裁記者会見)」とされた。長期金利はこの日銀決定以降今日まで概ね0.10%前後で推移しているが、最大0.20%レベルまでの上昇は許容しうることになる。

7月31日の金融市場調節方針に関する公表文に追加された「フォワードガイダンス」では「2019 年10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定」しているとされた。このフォワードガイダンスから推すに、大幅な景気の加速やインフレ率上昇がない限り、消費税率引き上げ前の金融緩和政策の調整は困難ということにならざるを得ない。1%のインフレ率とプラスの需給ギャップからは、非伝統的金融政策を継続する意義は薄れつつあると考える。しかし、消費税率引き上げによる一時的な景気下振れの可能性のあるタイミングでは緩和政策の解除は現実的には取りにくい手段と言わざるを得ない。

[第6図]
20180917図6

[第7図]
20180917図7

[第8図]
20180917図8

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