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<経済レポート> 目先は好調維持:米企業部門動向

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米企業部門の設備投資は現在強めの拡大を続けており、年内は堅調な拡大を持続すると見る。しかしながら、トランプ政権の政策効果の剥落やこれに伴う企業景況感の悪化、中期的に低い設備稼働率などを背景に来年には拡大ペースを減速させると見る。トランプ政権の対中国を始めとする通商政策の動向は依然波乱要因である。

年内の設備投資は拡大を続けよう

米企業部門の設備投資は強めの拡大を続けている。GDP統計上の設備投資は、2018年1-3月期に前期比年率+11.5%、4-6月期に同+8.5%と2桁前後の拡大を見せた。2015年~16年初にかけて一時マイナス成長に転化した企業部門がここ2年間回復を見せている。企業部門の回復は特に2017年のトランプ政権発足後に顕著である。同政権のプロ・ビジネスな政策が企業部門の設備投資意欲をも刺激した可能性がある。

2018年後半も設備投資は堅調に拡大する可能性が高いことを月次の指標も示唆している。7-9月期の非国防資本財出荷(航空機を除く)は7月までで前期比年率+6.5%とプラス成長かつペースが加速している。同受注も+8.5%と堅調で、この設備投資拡大ペースが年内持続する可能性を示唆している([第1図])。鉱工業生産指数は上昇基調を継続しており、8月現在で前年比+4.9%と実に2010年以来の強い伸びとなっている。うち製造業も同+3.1%と2012年以来の強い伸びを示している([第2図])。企業収益もまず堅調に推移している。4-6月期の企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年同期比+7.7%と3四半期連続で伸びが加速した。企業ネットキャッシュフローは、「減税及び雇用法」の法人税支払い額が減少し、2017年の水準(海外収益蓄積に対する2017年末の一時課税影響を除く)から大幅に増加した([第3図])。

こうした短期指標からは、年内いっぱい企業部門が堅調に拡大していく可能性が高いと見る。GDP統計上の設備投資は、2018年通年で前年比+8%レベルの強い伸びを個人予想する。

[第1図]
20180924図1

[第2図]
20180924図2

[第3図]
20180924図3

来年は設備投資拡大ペースは減速すると見る

ただし、かかる企業部門の拡大が今後中期的に持続的とは言いにくい。海外経済の回復と、トランプ政権政策期待という外的要因が、2017年以降の企業部門の回復を支えてきたといえる。IMFによれば、2017年は中国を含むアジア新興国で前年比+6.5%前年並みの高い成長が維持され、ユーロ圏でも同+2.4%と2%台成長に加速した。しかし2018年は、中国経済成長率が前年の同+6.6%から同+6.6%に減速が見込まれるうえ、ユーロ圏も同+2.2%程度の成長に減速の見込みである(IMF「世界経済見通しアップデート」2018年7月による)。トランプ政権の政策については、まず2017年末に成立した「減税及び雇用法」における法人税減税も企業部門拡大要因だったといえる。しかし、同減税効果は主に従業員還元や自社株買いに充てられたと考えられるうえ、来年以降は減税による成長率押し上げ効果は剥落していくだろう。企業部門への活性化策としてトランプ大統領は、1月の一般教書演説で10年間1.5兆ドルのインフラ投資計画を表明したが、政府財源の根拠が希薄であることなどから議会の同意が得られておらずこれまでに実態的な進展は見られない。

企業景況感も低下傾向にある。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における設備投資DI(6ヶ月後)は2017年半ばをピークに現在にかけて低下傾向にあり、今後設備投資の伸び率が低減していく可能性を示唆している([第4図])。鉱工業の設備稼働率は8月現在で78.1%と、1972-2017年平均の79.8%に回復していない。設備稼働率の相対的な低さは、設備投資がやや過大に拡大していることをも示唆しており、今後設備投資の拡大ペースが持続的でなくなる可能性を示唆する材料である。

在庫循環図は現在「在庫積み増し」局面から「意図せざる在庫増」局面に移行しつつある([第5図])。年内いっぱいは在庫積み上げが成長を押し上げる要因になると見るが、来年以降は在庫調整が成長にマイナス寄与する局面に入る可能性が高いと見る。

[第4図]
20180924図4

[第5図]
20180924図5

対中貿易戦争は本格化:2000億ドル相当に10%の追加関税

トランプ大統領は9月17日の声明で、米通商代表(USTR)宛に通商法301条に基づき中国からの輸入約2000億ドルに対する追加輸入関税賦課を指示した旨表明した、追加関税は24日から発効し年末までは10%とし、2019年1月1日から25%とするとされた。さらに中国が米国からの農産物輸入に対し報復を実施した場合、さらに2670億ドル相当の中国からの輸入製品に対する追加関税実施をただちに実施するとした。USTRは同日、同追加関税の実施と対象となる5745品目のリストを公表した。米国の対中財サービス輸入は2017年で約5055億ドル、財・サービス収支赤字は約-3756億ドルとなっている([第6図])。7月6日に340億ドル相当、8月23日に160億ドル相当の品目につきすでに実施された追加関税と合わせ、すべての追加関税が実施されれば、中国からの輸入額のほぼすべてに相当する金額が追加関税の対象となることになる。

現在のところ、中国に対する貿易戦争は米国の輸出入全体に対して大きな影響は見られない。また、企業の受け取り価格と支払い価格の差額である交易条件は2016年後半以降悪化傾向にあるが、これはむしろドル安傾向が企業の支払い価格を押し上げている要因が大きいとみられる([第7図][第8図])。

その他の国に対する通商政策は、欧州連合との間では関税ゼロの方向で合意を見た(9月10日USTR公表)。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉については、メキシコとの間で調達比率・数量制限・為替条項を含む合意内定に達したもののカナダとの交渉は前進がみられず、NAFTA再交渉が米国メキシコ間でのみ実施される可能性も示唆されている(各種報道による)。日本に対しては、24日に日米通商協議(FFR)、26日に日米首脳会談が実施される予定である。対日輸入については自動車・農産物がその焦点となろう。

[第6図]
20180924図6

[第7図]
20180924図7

[第8図]
20180924図8


貿易戦争は引き続き不確実要因

今後トランプ大統領がどこまで貿易戦争を拡大させるか、またその米経済への影響は不確実と言わざるを得ない。トランプ大統領の仕掛けている「貿易戦争」は当初の市場の想定以上に具体化している。当レポートでは、貿易戦争は11月の米議会中間選挙までには収束し、米中間に何等かの貿易に関する合意がなされるとの想定で、米経済成長への影響は限定的になると見たい。リスクシナリオとして、この制裁関税及び報復関税が長期化した場合には米国消費や生産に与えるマイナスの影響を見ておく必要があるだろう。


以上、米企業部門の設備投資については、年内は堅調な拡大維持を見込むものの、トランプ政権の景気刺激策効果の剥落、低い設備稼働率、在庫循環を背景に来年以降は減速を見ておきたい。トランプ大統領の通商政策は依然として波乱要因である。企業部門に係る月次統計は依然高等、雇用市場も堅調に拡大し、株価は9月に史上最高値を更新するなど引き続き好調である。これらの好調な指標が現状の企業や消費者の景況感を支えている可能性が高い。ただ、中期的なファンダメンタルズがそろそろ過熱から調整局面に入りつつあることは常に留意しておくべきであろう。
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