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<経済レポート> 緩和の終わりと引き締めの始まり:9月FOMC

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FOMCは9月25-26日の定例会合で、予想通りFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ2.00-2.25%とすることを決定した。FOMC委員経済予測では、2018年にFF金利は中立水準を超える3%台半ばにまで引き上げられることが示唆されている。米経済が今後需要超過になり、インフレ率が2%水準で推移するとの見方に整合的な内容である。来年にかけFF金利誘導目標が3%台に引き上げられるとの筆者の個人予想を維持する。

FOMCは+0.25%の利上げを決定した:来年の利上げ回数予測は不変

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は9月25-26日の定例会合で、予想通りFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ2.00-2.25%とすることを決定した([第1図])。会合後に公表された声明文では、従前の「金融政策のスタンスは緩和的であり続け、強い労働市場条件と2%インフレ率の持続的回帰を支持する」との文言が削除された。声明文のその他の文言は、前回8月1日声明文の文言とほぼ不変であった。「委員会は、FF金利誘導目標の漸進的な引き上げが、持続的経済拡大、強い労働市場条件、そして委員会の対照的な2%中期目標近辺のインフレ率と整合的であると予想する」との文言は存置された。

声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測では、2018年末の適正FF金利予測中央値は2.4%(2.25-2.50%レンジ)、2019年末のそれは3.1%(同3.00-3.25%)と前回6月予測と不変で、2018年内にあと1回、2019年内に3回の利上げを予測する内容となっている。2020年のFF金利予測中央値は3.4%(同3.25-3.50%)これも6月予測と不変で、2020年内にさらに1回の利上げ(同3.00-3.25%)を実施し、2021年までこの水準が維持されることが示唆されている([第1表])。

パウエルFRB議長は会合後の定例記者会見の冒頭発言で「“金融政策のスタンスは緩和的であり続ける”文言の削除は金融政策の工程の変更の証左ではなく、金融政策が我々の予想通りに進んでいることの証左である」「声明文の通り、我々は漸進的なFF金利誘導目標引き上げを依然予想しておりこの予想は委員予測に反映されている」とのべ、今後も段階的な利上げを継続していく意図を示唆した。

[第1図]
20180930図1

[第1表]
20180930表1

FOMCは2%インフレ持続、需給ギャップは需要超過を予測している

9月FOMCの結果は当レポート予想及び市場の期待とほぼ整合的で、特段のサプライズはなかったといえる。注目されていた2019年の利上げ回数の予測中央値も6月時点予測から不変であり、FOMCの今後の金融政策に対するスタンスが過去3ヶ月で大きくはシフトしていないことを示唆している。

9月時点のFOMC委員経済予測のポイントは以下である。まず実質GDP成長率の予測中央値を見ると、2018年に前年比(第4四半期前年同期比)+3.1%と減税効果などで大幅に拡大したのち、2019年に同+2.5%、2020年に同+2.0%と徐々に減速していくことが予測されている。一方長期的な均衡成長率(潜在成長率)は同+1.8%とされており、今後約2年にわたり米国経済が潜在成長率を上回る成長を継続することが予測されている。結果米経済の需給ギャップは大幅な需要超過になることが予測されていることになる。失業率についても同様で、長期均衡失業率と予測されている4.5%に対し、今後の失業率は2021年にかけ3.5~3.7%と自然失業率を大幅に下回って推移するとの予測中央値となっている。GDP成長率予測同様に、米経済(労働市場)が大幅な需要超過になることをこの予測中央値は示唆している。

PCEインフレ率の予測中央値は2020年にかけ前年比+2.0~2.1%と、おおむねFRBの目標値(長期均衡水準)に近いところで推移するとされている。これに対してFF金利の長期均衡水準の予測中央値+3.0%とされている。ここからは、FOMCの見る自然利子率がおおむね+1%であることが示唆されている。

FF金利は長期均衡水準以上に引き上げられる

かかる経済予測を前提に、FOMC委員予測中央値ではFF金利誘導目標が2019年以降、長期均衡水準である3%を超えて3.4%引き上げられるとされている。すなわち、インフレ率がほぼ均衡水準で推移、需給ギャップが需要超過で推移することから、適正な政策金利は長期均衡水準(インフレ率+自然利子率=2%+1%=3%)以上に引き上げられるのが適切との考え方である。

これらのFOMC委員予測の内容は、これまでの当レポートでの見方にも整合している。テイラー・ルール公式において適正なFF金利水準は、インフレ率実績と自然利子率の合計に需給ギャップとインフレギャップを加重平均して加味した水準として表される。インフレ率実績=2%、自然利子率=1%とした場合、需給均衡における適正FF金利は3%となる。需給ギャップがプラス(需要超過)である場合適正FF金利は3%よりも上方に位置することになる。テイラー・ルール(1993年版)において、自然利子率を1%とした場合の適正FF金利水準は、2018年1-3月期時点の需給ギャップとインフレ率実績をもとに計算すると+2%台後半と計算される。同じく成長とインフレに関する筆者の個人予想に基づく2018末時点での適正FF金利を計算すると+3%台半ばと推計される([第2図])。2018年後半にインフレ率が2%に上昇してインフレギャップが解消し、潜在成長率を上回る成長継続により需給ギャップが需要超過になることにより、適正FF金利水準が需給均衡における適正水準よりも上方にシフトするためである。2018年の成長加速により既に適正なFF金利水準は現状でも3%レベルにあるといえる。したがって少なくとも3%台半ばの水準に向かって段階的に利上げを継続するというスタンスは妥当と考えられる。

なお、2021年については、FOMC委員経済予測中央値は、成長率+1.8%、PCEインフレ率+2.1%と、成長とインフレがともに均衡レベルに回帰することとなっている。一方失業率予測中央値は3.7%と依然自然失業率4.5%を大幅に下回ることとなっている。つまり2021年において、米経済は需要超過状態のままプラスの需給ギャップ水準は横ばいで推移、またインフレ率は依然均衡水準で推移することとなる。プラスの需給ギャップが一定でインフレ率が一定のもとではFF金利は中立水準を上回るレベルで据え置かれることが適切であることがテイラー・ルール公式からも導かれる。FOMC委員の経済・インフレ予測と、2020年以降FF金利が横ばいで推移するとの予測は整合的である。

[第2図]
20180930図2

2019年に3%台に利上げとの個人予想を維持する

以上から、年内12月FOMC定例会合であと1回の利上げが決定され2019年にはFF金利誘導目標が3%台にまで引き上げられるとの個人予想を維持する。米経済は2018年4-6月期に前期比年率+4.2%の強い拡大を見せ、7-9月期も筆者予想を上回る+3%台の成長となる可能性が出てきている。PCEインフレ率は8月時点で前年比+2.2%と2%を超えて推移している。これらの直近の状況は、筆者個人予想及びFOMC委員の経済予測に沿った動きである。FRBの金融政策スタンスは、これまでの「緩和的」から「中立」へ、さらに来年には「引き締め」スタンスに段階的に移行していくと見る。

一方で、2020年以降の金融政策動向については不確実性があると言わざるを得ない。FOMC委員の経済予測は、今後米経済が2021年にかけて巡航速度の成長に回帰していくことを前提としているように見える。しかしながら、現実的には来年以降2021年にかけて米経済にはどちらかといえば下方のリスクがあると見ておきたい。

まず、中期的な景気循環の観点からは、2018年に需要超過に転化した経済がその後1~3年の間にサイクルの転換期を迎える可能性がある。次に、これまでトランプ政権への期待から上昇を続けてきた株価などのリスク資産価格はバリュエーション的に相当に割高になっている(9月末時点のS&P500の株価収益率は約25倍)。さらに期近なイベントとして、2018年11月には米議会中間選挙が予定されている。米議会下院において共和党が過半数を割り込む状況になった場合、トランプ政権への期待剥落から金融市場の反落の可能性もある。2年後以降の中期的な金融政策見通しについて、FOMC委員予測がこれらを完全に織り込んでいるとは考えにくい。2020年以降の金融政策スタンスについての委員予測はあくまで経済が均衡に回帰するとの前提におけるものに過ぎないと見るべきであろう。

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