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FOMC予測に追いついた~米国の成長率と失業率

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直近の経済指標によれば、米国の経済成長率と労働市場は予想以上の好転を見せている。統計からはQE3縮小開始へのハードルはかなり取り除かれた。FOMCが来年1月会合または3月会合でQE3縮小開始を決定するとの筆者個人の予想を維持する。

GDP成長率は3%台に大幅上方改訂された

5日に公表された米7-9月期GDP統計(改訂値)によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%と、予想を上回った速報値(同+2.8%)から更に大幅上方改訂となった。米国の成長率は3四半期連続の加速である[第1図])。上方改訂された需要項目は主に在庫投資で、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要はむしろ前期の同+2.7%から+2.1%に減速している。しかし、1%台の伸びにとどまると見ていた筆者個人予想(10月13日付当レポート参照)との比較では大幅な上ブレとなった。

10-12月期についても、直近の経済指標は筆者個人予想を上回る成長を示唆している。10月の実質個人消費は前期比年率+0.3%と、政府期間一部閉鎖実施にも拘わらず財消費中心に強い伸びとなった。11月の新車販売台数は年率16.3百万台と3ヶ月ぶりに16百万台台を回復、水準は2007年5月以来の高水準を記録している。このペースだと、10-12月期の実質個人消費は3四半期ぶりの2%成長が可能な計算になる。

以上より、10-12月期の実質GDP成長率の筆者個人予想を10月時点の前期比年率+1.0%から上方修正し、同+1.5%とする。

[第1図]
20131208図1


筆者個人の今年の成長予想はFOMC委員予測に追いついた

以下、FOMC委員の経済予測と直近経済指標との比較により、FOMCのQE3縮小開始の行方を占ってみよう。9月時点のFOMC委員経済予測における2013年成長率の中心傾向は2.0-2.3%(10-12月期前年同期比)だった([第1表])。上記の筆者個人の修正後予想は10-12月期の前年同期比では+2.2 %の水準に相当する。修正後の筆者個人予想は結果、FOMC委員による9月時点の経済予測における成長率予測の中心傾向の範囲内に入るまでに上昇したことになる([第2図])。

当レポートでは従前より、FOMC委員の成長予測が実態に比してかなり楽観的であることが、QE3縮小開始のハードルになると見てきた(10月20日付当レポート参照)。しかし直近のGDP統計からは、経済成長の実態はFOMC委員の予測に追い付いたと言える。成長率の観点からは「今後数ヶ月以内」のQE3縮小開始は可能ということになる。

10月30日FOMC会合議事要旨によれば「入手されたデータは2013年後半の成長が多くの参加者が予想していたより幾分弱めになるかも知れないことを示唆しているが、参加者は総じて経済活動のペースが加速すると引き続き予想した」とされており、その後のデータは少なくとも2013年についてはFOMC参加者の見方を裏付けるものと言える(10月会合は7-9月期GDP統計速報値公表直前)。

[第2図]
20131208図2

[第1表]
20131208表1

7%の失業率もQE3縮小開始の条件を満たしつつある

次にFOMC金融政策決定の重要要素である失業率を見る。6日に公表された米11月雇用統計によれば、11月の失業率は7.0%と前月の7.3%から‐0.3%の大幅低下、リーマンショック直後の2008年11月以来の低水準となった。9月時点のFOMC委員の失業率予測の中心傾向は7.1-7.3%(10-12月平均)で、10-11月実績はすでにこの予測の下限にある。FOMCは昨年12月以来声明文で「失業率が6.5%を上回っている限り」現在のゼロ金利政策を継続するとしている。失業率が7%にまで低下したことは、利上げに先立つ量的緩和縮小の開始時期が近いことを示唆している。

米国の失業率低下ペースは筆者個人の予想よりかなり早い。筆者は、需給ギャップと失業率の相関からは今年の失業率は8%レベルが均衡水準と見ていた(5月28日付当レポート参照)。また、米国の失業率の低下は労働参加率の低下つまり労働力人口からの人口の退出を伴ってきた。一旦労働力人口から退出した人口が景気回復時に再び労働力人口に流入すれば、失業率は再び上昇する可能性がある。

しかしながら、労働参加率の低下が既に5年に亘るトレンドになっていること([第3図])は、労働参加率低下が既に構造要因になっている可能性を示唆している(10月FOMC議事要旨によれば、何人かの参加者が「労働参加率の低下が労働人口からの引退の判断を反映したものならば、労働参加率の再上昇は考えにくい」と述べている)。

また、失業率低下の要因を生産年齢人口要因・労働参加率要因・就業者数要因に分解してみると、労働参加率低下とともに就業者数増加も失業率低下に相応に寄与していることが分かる([第4図])。特に11月は、労働参加率が63.0%と、昨年10月以来の上昇幅となる+0.2%の上昇をみせたにも拘らず、就業者数増加要因がこれを上回り失業率は大幅低下した。

10月FOMC会合議事要旨によれば「参加者は総じて、(今後の経済)データは労働市場条件の今後の改善にいついての委員会の見通しと整合的であること、そして今後数ヶ月以内に資産購入のペースを縮小することを正当化するだろう」と述べ、10月時点ですでに労働市場改善が見通し通りとの認識を持っている。11月統計も少なくとも数値上はQE3縮小開始の条件を満たしつつあると言っていいだろう。

[第3図]
20131208図3

[第4図]
20131208図4

インフレ率はFOMC目標を大幅に下回るが、いずれ上昇に転じよう

FOMC委員予測に比して大幅に下ブレ推移しているのがインフレ率である。FOMCが指標として用いる個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)10月時点で前年比+0.7%と、FOMCの目標である同+2%(2012年1月FOMC会合後に公表されたもの)を大幅に下回っている。9月時点のFOMC委員の2013年のPCEデフレーターの伸び率予測の中心傾向は+1.1~1.2%(10-12月期前年同期比)であり、直近の実績はこれも下回っている([第5図])。

FOMCは7月会合の声明文で「2%の目標を継続的に下回るインフレ率は経済実績にリスクをもたらしうる」との文言を追加して現在に至っている。2%を大幅に下回る現在のインフレ率は引続きFOMCの懸念事項でありQE3縮小開始のハードルとなりうる。しかしながら一方で、7月FOMC声明文では「委員会は中期的にインフレ率が目標値に向かって回帰すると期待している」との文言変更も実施、インフレ率低下を金融政策変更のハードルにしない配慮をしているようにも見える。

10月FOMC議事要旨によれば、インフレ率低下については多くの議論はなされていない。これは、低インフレ率が必ずしもQE3縮小開始の致命的なハードルではないことの示唆とも言えよう。

筆者個人は、米国のインフレ率は今後1年間で前年比+1.5~2%の伸びに回帰していくと見ている。7月28日付当レポートでは、「失業率」と「ミシガン大調査消費者インフレ期待(12ヶ月)」を説明変数としてコアPCEインフレ率を推計した。同じ回帰式で最新のデータを用いて推計を行ったところ、7-9月期のコアPCEインフレ率の推計値は約+1.7%との結果になった。同期のコアPCEインフレ率実績+1.2%は依然としてこれを大幅に下回っている([第6図][第2表])。

インフレ率実績値の推計値からの下方乖離は、税制や商品価格変動による一時的なものと筆者は見ている。FOMC委員も同様の見方をしているならば、インフレ率低下はQE3縮小開始の大きなハードルにはならないと言える。

[第5図]
20131208図5

[第6図]
20131208図6

[第2表]
20131208表2

1月または3月のQE3縮小開始予想を維持する

ついては、FOMCが来年1月会合または3月会合でQE3縮小開始を決定するとの筆者個人の予想を維持する(10月20日付当レポート参照)。直近の経済指標好転を勘案すれば、バーナンキ議長任期最後の会合である1月会合で政策変更を決定した上でイエレン新議長に引き継ぐ方法が政策の継続性維持の観点からは適切だと言える。

10月の政府閉鎖実施の経済への影響や、ハト派イエレン氏の次期FRB議長就任内定により、縮小開始が4月以降にずれ込むリスクも一時あった。しかし、10月政府閉鎖の悪影響は10月、11月の経済指標からは予想以下だったと言える。10月会合以降の経済指標は当時のFOMC委員の見通し以上に好転している。数値上の指標好転が見られればこれに沿って整斉と縮小開始を判断するのが市場との対話の観点からの適切と言える。

リスク要因はまず政府財政問題である。10月16日に成立した2014年歳出継続法で定められた連邦政府予算の期限が来年1月15日に、政府債務上限の一時不適用の期限が来年2月8日に到来する。また上下院合同予算委員会による新たな財政赤字削減案の策定期限は12月13日であるが、報道によれば先週までの間に特段の合意は為されていない模様だ。10月の政府閉鎖や、過去に遡る予算を巡る議会内対立の経験からは、財政問題が経済に与える悪影響は今や限定的ともいえる。ただし、株価が史上最高値を更新するなど市場に過熱感がある現状では、悪材料への反応も案外大きい可能性がある。


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