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資産価格が金利を凌駕~来年の米国個人消費見通し

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消費者センチメント回復で米国の個人消費が加速している。来年も雇用・賃金に加え住宅価格上昇が個人消費拡大を支えると見る。今後見込まれる金利上昇は下方要因だが、住宅価格上昇でカバー可能と試算できる。2014年の米実質個人消費の伸びは今年並の2%、GDP成長率は2%半ばへの加速を見込む。

年末にかけ米個人消費は急加速した: ホリデー商戦も前年並みの伸び

米国の個人消費拡大が加速している。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2.0%と前期の同+1.8%から伸びを強めた。その後の月次個人消費統計でも、実質個人消費は10月に前月比+0.4%、11月に同+0.5%の強い伸びを見せた。前年同月比の伸び率は10~11月にかけ急上昇し、11月には2011年7月以来の前年比+2.6%となっている([第1図])。

ホリデー商戦売上もまずまずの出来のようだ。国際ショッピングセンター評議会ICSCの週次チェーンストアセールス売上指数によれば、既存店小売売上高の前年比の伸びは12月第1週に一旦軟化したものの、クリスマス前の2週間にかけ伸びを回復させている([第2図])。総じて今年の伸びは昨年を下回っているが、クリスマスにかけ昨年の伸びに近付いた。筆者は、今年のホリデー商戦売上高予想を当初の前年比+3.3%(11月3日付当レポート参照)から引上げ、現在では同+4.1%と2年連続減速ながらほぼ昨年並みの伸びを達成したと予想している([第3図])。

[第1図]
20131231図1
[第2図]
20131231図2
[第3図]
20131231図3

財政問題解決進展と消費者センチメント急回復が背景

こうした個人消費の急加速には短期的にはいくつかの要因が考えられる。まず、政府閉鎖の悪影響が予想以下だったことである。米連邦政府予算不成立により10月前半に2週間以上に亘る政府機関一部閉鎖が実施されたことで個人消費が抑制されると当レポートでは見ていたが、その影響は結果的に僅少だったことが判明した。

次に、政府財政問題の解決が進展したことである、12日に米議会で超党派予算法案が合意され18日に成立したことで2会計年度分の連邦政府予算が正式成立し、来年1月15日の暫定予算失効リスクが解消された。また、FOMCが12月17、18日の定例会合で1月からの資産購入縮小開始を決定したことも米経済見通しを好転させる契機となった。

更に、こうした背景から金融市場と消費者センチメントが好転したことである。12月に入り一時16000ドルを割り込んだNYダウ平均株価は、18日のFOMCを契機に再び急伸し30日には16504ドルと史上最高値を更新した。これらに伴い消費者センチメントが急回復した。ミシガン大学調査による消費者センチメント指数は10月の政府閉鎖時期に73.2ポイントに低下していたが、その後2ヶ月連続で上昇し12月には4ヶ月ぶりの80ポイント台となる82.5ポイントに上昇した([第4図])。

[第4図]
20131231図4

雇用と賃金で可処分所得は3~4%の伸びが来年も期待できる

中期的な個人消費の動向を占うため、個人消費の構造的な決定要因である所得の状況を見てみよう。名目可処分所得の伸び率は、今年の1-3月期をボトムに上昇に転じていて、7-9月期時点では前年比+3.8%の伸びになっている([第5図])。主な可処分所得押し上げ要因は雇用者報酬である。雇用者報酬の前年比の伸び率は7-9月期以降2四半期連続で3%台を維持している。これに加え政府給付金等の移転所得や金利配当所得の伸びが所得を支えていて、所得拡大に伴う税金支払い増加をカバーしている。

雇用統計によれば、非農業部門雇用者数の伸びは2013年を通じ前年比+1.5~+1.7%の伸びを維持している。また時間当たり賃金は失業率の低下にやや遅行して伸び率を高め、7-9月期には約2年ぶりに前年比+2%台に回復している。今後も雇用者数はほぼ今年と同じ伸びを維持し、時間当たり賃金は更に伸びを高めるとすれば、来年も可処分所得は前年比で3%台後半から4%の伸びが見込める。

米国の個人貯蓄率は現在5%前後で推移している。過去2005年~6年の好況期に貯蓄率は一時2%台に低下したが、金融危機を契機に上昇し2009年には6%台にまで上昇した。その後景気回復とともに貯蓄率は緩やかに低下傾向にある。来年も4~5%の間で貯蓄率は緩やかな低下傾向をたどると考えられる。

可処分所得を3%台後半~4%の伸びとしてインフレ率を1%台半ばとすれば、所得効果からは来年の実質ベースの個人消費は2%台半ばの伸びが期待できる。

[第5図]
20131231図5

住宅価格上昇が個人消費を押し上げ始めた: 資産価格を含めた要因分解

雇用と賃金に基づく所得効果に加え、資産効果も勘案した個人消費の動向を占うため、株価や住宅価格を決定要因に加えた要因分解を試みる。[第6図]は、実質個人消費の決定要因として雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格を変数とした回帰分析の結果である。各要因に対する実質個人消費の弾性値を[第1表]に示した。

これによれば、所得効果に加え2012年7-9月期以降住宅価格の上昇が実質個人消費の伸びにプラス寄与している事が分かる。S&Pケースシラー住宅価格指数(10都市)は2012年後半から前年比の伸び率がプラスに転じ、直近9月では前年比+13.3%の伸びとなっている([第7図])。[第1表]からは住宅価格1%の上昇は実質個人消費を約0.1%押し上げることになる。7-9月期においては住宅価格上昇が実質個人消費を約+1.2%押し上げている、

住宅価格の上昇は家計バランスシート構造を好転させている。FRBの資金循環統計によれば、7-9月期時点で家計の住宅に関する純資産比率=(住宅価格-住宅ローン残高)÷(住宅価格)は、7-9月期に5年ぶりに50%台に回復している。また住宅価格の上昇は住宅ローン借換を容易にすることで住宅ローン延滞を抑制する効果がある。現在中古住宅の在庫期間が5ヶ月と低水準であり住宅市場の需給はタイトである。住宅価格上昇ペースは今後も現状か更に加速する可能性が高い。

ただし、住宅価格上昇の個人消費への能動的な波及経路はまだ定かでない。住宅ローン全体の残高は金融危機以来減少が続いていたが7-9月期に22四半期ぶりにわずかながら前期比で増加に転じた。しかし、住宅価格上昇を利用した消費者ローンであるホームエクイティローンの残高は現在も減少を続けている。住宅価格上昇の資産効果は今のところ心理的なものまたはローン延滞回避という受動的効果にとどまっているようだ。

[第6図]
20131231図6
[第1表]
20131231表1
[第7図]
20131231図7

金利上昇がマイナス要因になるも住宅価格上昇でカバー可能

一方で上記[第6図]によれば、7-9月期に金利上昇が実質個人消費にマイナスの影響を与え始めたことが分かる。米長期金利は欧州財政危機による米国債への資金逃避で今年前半にボトムをつけ、その後リスク資産への資金回帰とFRBのQE縮小期待からじり高推移、12月時点で米国債10年物利回りは約3%、30年物モーゲージ(住宅ローン)金利は4%台に上昇した([第8図])。

金利の実質個人消費に与えるマイナス影響は意外に大きく、7-9月期には住宅ローン金利上昇(前年同期の3.5%から4.5%に上昇)が実質個人消費を約-0.9%押し下げた計算になる。今後FRBによる資産縮小が進み成長期待が高まると、住宅ローン金利の更なる上昇が見込まれる。

そこで今後4四半期につき、雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格の推移に前提をおいて実質個人消費の伸びを試算した(上記[第6図]の「試算」部分)。来年7-9月期まで雇用と賃金は現状の伸びを維持、物価上昇率は+1.7%まで上昇、住宅ローン金利は現状の4%台から6%に上昇、NYダウは17500ドルまで上昇、住宅価格の前年比伸び率は+15%まで加速と前提した。結果、今後住宅ローン金利が6%まで上昇(現状比約+1.5%ポイント)すると個人消費は-1%以上押し下げられるとの結果になった。しかし、住宅価格の上昇率が+15%レベルにまで加速すればこれはほぼ相殺され、実質個人消費は2%台の成長可能との試算になった。因みに株価の個人消費押し上げ効果は限定的で、前述の株価上昇前提でも来年の個人消費押し上げ効果は+0.3%程度にとどまっている。

[第8図]
20131231図8

来年の実質個人消費は2%の伸びを予想する

金利上昇のほか個人消費の押し下げ要因になるのが拡大失業保険給付の年内失効である。超党派予算法案で連邦政府予算が決定された際に、これまで何度か延長措置がされてきた拡大失業保険給付の延長は見送られた。これにより来年の個人消費は最大-0.3%押し下げられる計算になる(12月15日付当レポート参照)。

こうした下方要因も勘案し、筆者個人の2014年の実質個人消費の伸び率予想を今年並の前年比+2.0%とする。なお実質GDP成長率は今年の前年比+1.8%(予想)から加速して同+2.3%の伸びになると見ている。拡大失業保険給付再開の手当てがなされる可能性や企業部門の回復など、米経済見通しのリスクは総じて上方と見る。
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