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需給と調整のはざまで~米国住宅市場見通し

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米住宅市場の好調な拡大は短期的な需給要因によるところが大きい。中期的にはまだ住宅市場は調整局面にある。ただ今年1年間は主に需給要因によって住宅建設は約10%伸び、住宅価格は10~15%上昇すると見る。リスク要因は金利上昇とタイトな信用条件である。

住宅投資は2ケタの伸びが続いている

米住宅投資は堅調な伸びで米国経済を支えている。GDPに占める住宅投資の比率は住宅バブル期2005年の6%台をピークに金融危機後の2010年に2.5%にまで低下したが、その後底入れして2013年には3%台にまで持ち直している。GDP統計上の実質住宅投資は2012年に前年比+12.9%の伸びを見せ、2013年も同約+13%(筆者予想)と2年連続で2ケタの成長となる見込みだ。

米住宅投資の拡大は[第1図]に示すとおり、やや減速の兆しを見せつつも高いペースである。実質住宅投資の先行指標である住宅着工件数は増加ペースをやや落としながら前年比+20%近い伸びを保っている。これに遅行する形で実質住宅投資は約10%の伸びを維持している。このペースだと、2014年通年の住宅投資も、13年よりわずかに減速しつつも前年比+10%レベルの成長が期待できる。

[第1図]
20140104図1

タイトな住宅需給が住宅建設を促している

好調な住宅投資の背景には、極めてタイトな住宅市場の需給がある。まず販売市場では、住宅販売の太宗を占める中古住宅販売の在庫期間(販売在庫戸数÷月次販売戸数)が短期化している。中古住宅販売在庫期間は、2012年に節目となる6ヶ月を割りこんで以来、2013年末には5ヶ月レベルにまで低下した([第2図])。通常米国の適正な住宅販売在庫は6ヶ月程度と見られるから、5ヶ月の在庫はかなりタイトな状況だと言える。

次に賃貸市場の需給を表す貸家空室率が大幅低下している。貸家空室率は金融危機後の2009年に11%台にまで上昇したのち景気回復とともに低下し、現在では8%強と2005年頃の住宅バブル期の8%を下回る水準にまで低下している([第2図])。

これらタイトな需給要因は住宅着工の増加を促し、2014年一杯は投資が2ケタの伸びを続けるという見方を支持している。

[第2図]
20140104図2

中期的には住宅市場はまだ調整局面

一方中期的に見ると住宅需給が寧ろ緩和している材料もある。家計の持家比率は2005年の69%台をピークに低下を続け、現在では90年台前半とほぼ同じ65%台になっている([第3図])。90年台後半以降政府による住宅公社を活用した持家取得推進策や、サブプライムローンなど民間住宅ローンの拡大により米国民の持家比率が飛躍的に拡大した。

しかし2005年以降住宅バブル崩壊や金融危機により、持家を手放す家計が増加したことから持家比率が低下した。持家比率が低下を続けていることは、中期的な住宅市場が未だ調整途上にあることを示唆している。

[第3図]
20140104図3

実質住宅投資は10%レベルの安定した伸びを予想する

住宅投資の伸びをこれら短期的需給要因と中期的需給要因に分けて要因分解してみた。短期的需給要因として販売需給要因(中古住宅販売在庫期間)と賃貸需給要因(貸家空室率)、中期的需給要因として持家比率を用いた結果が[第4図]である。

これによれば、持家比率の低下が住宅投資の抑制要因となっているものの、販売需給と賃貸需給要因という二つの短期的需給要因がこれを上回り、住宅投資を拡大させていることが分かる。

一方、短期的需給のタイト化、長期的需給の緩和いずれもそのペースが徐々に落ちていて、住宅投資に対する寄与度が低下している。ここからは、今後の住宅投資がより安定した伸びに落ち着くことを示唆している。これらより、2014年のGDP統計上の実質住宅投資は過去2年の伸びよりやや減速しても、約+10%の伸びが可能になると予想する。

住宅価格も引き続き強めの前年比+10~15%の上昇を維持すると見る。住宅価格の伸びは住宅販売在庫期間に約半年遅行する傾向がある。[第5図]によれば、現在の住宅販売在庫期間5ヶ月は、住宅価格の伸び約10%に相当する。実際にはS&Pケースシラー住宅価格指数(20都市)は昨年9月時点で前年比+13%台と、在庫期間との相関からの推計値を上回るペースで上昇している。

[第4図]
20140104図4
[第5図]
20140104図5

リスク要因は金利上昇と信用条件

もっとも直近の指標を見ると、金利上昇が住宅販売の抑制要因になり始める兆しがある。昨年11月の中古住宅販売は年率4,900千戸と3ヶ月連続減少し、約2年ぶりに前年同月比でマイナスの伸びに転化した([第6図])。全米不動産業協会NARは「モーゲージ(住宅ローン)金利上昇と在庫不足とタイトな信用の継続」を中古住宅販売悪化の要因として挙げている。「新築住宅建設の遅い回復による住宅供給の制約」が家賃上昇、住宅価格上昇の原因となっているとしている(2013年12月19日付NARプレスリリース)。

住宅市場が在庫不足でタイトな状況にあり、住宅建設需要が極めて強い状況であることは前述の筆者予想の前提と整合している。ただし実際、住宅ローン金利はFRBの緩和縮小期待が高まった昨年10月頃から急上昇している。また住宅ローン残高は金融危機以降減少トレンドが続いていて、増加の確実な兆しはまだ見られない(2013年12月31日付当レポート参照)。金利上昇とタイトな信用条件は上記予想に対するリスク要因として認識する必要がある。

[第6図]
20140104図6

住宅ストック水準はまだトレンドを下回っている

因みに、現在の住宅市場はいわゆるバブルではない。住宅価格は需給をほぼ適正に反映しているといえる。住宅着工件数もバブル期に比べて低水準にある。フローベースでの住宅投資は今後さらに回復の余地がある。

ストックベースでの住宅も経済規模に対して低水準にある。民間住宅投資ストックの対GDP比率は持家比率同様に2005年をピークに低下傾向にある[第7図]。GDPに対して積み上がりすぎた住宅ストックは未だ調整局面にある。[第8図]は民間住宅ストックの推移からそのトレンドをHPフィルターを用いて抽出したものである。これによれば2012年時点で民間住宅ストックの水準はトレンドをやや下回っている。民間住宅のストック調整終了と住宅価格上昇による住宅ローン貸出条件緩和が進めば、住宅市場が中期的回復局面に入るだろう。

なお、筆者個人の2014年の実態経済・金融市場予想を[第1表]に示す。

[第7図]
20140104図7
[第8図]
20140104図8
[第1表]
20140104表1

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