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<経済レポート> 継続性重視で来年利上げへ~3月FOMC

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イエレン議長最初のFOMC定例会合は、議長が金融政策の継続性を重視しているとの結果になった。フォワードガイダンス文言の変更は政策意図の変更を伴うものではなく、これまでの筆者個人の金融政策予想は維持できる。年内に資産購入停止、来年に利上げ開始と引続き見る。

資産購入縮小と新フォワードガイダンスは政策の継続性を重視

3月18-19日に開催されたFRB連邦公開市場委員会(FOMC)は、イエレンFRB新議長にとって最初の定例会合だった。19日の声明文では、予想通り資産購入ペースを合計100億ドル縮小して4月から合計550億ドルとするが決定が公表された。また、失業率が低下して従前のFOMCの閾値6.5%に接近したことから、声明文では利上げに関するフォワードガイダンス文言が変更された([第1表])。

3月FOMC声明文におけるフォワードガイダンス文言変更は、一言でいえば失業率に関する数値基準の削除である。従前の「少なくとも失業率が6.5%を上回り、1-2年後のインフレ率が委員会の2%長期目標を0.5%以上上回らず、長期インフレ期待が抑制されている限り」現在の0-0.25%のFF金利誘導目標を維持するとの文言を一旦削除し、代わって従前の「労働市場・インフレ率、インフレ期待・金融市場動向」に関する指標の考慮に関する文言を一部修正して、「現在のFF金利誘導目標0-0.25%をどれほどの期間維持するかの決定に当たっては、委員会は―実績と期待の双方につき―その雇用最大化と2%インフレ目標に向かっての進捗を評価する」「この評価は、労働市場条件の指標、インフレ圧力指標、インフレ期待指標、金融市場動向の指標を含む広い範囲の情報を考慮する」とした。さらに「委員会は現在、雇用とインフレが使命と整合的な水準に近づいた後も、当面の間委員会がFF金利を委員会が長期的に正常と見る水準より低く維持することを経済条件が正当化すると期待する」との新たな文言を追加した。

このフォワードガイダンス文言変更は、声明文にもあるように「委員会のいかなる政策意図の変更を示唆するものではな」い。失業率が従前の閾値である6.5%に接近したことから、閾値接近後の政策決定プロセスを明確化したものにすぎなない。新たに設定されたフォワードガイダンスは従前の数値基準に比較してやや定性的表現に留まっているともいえる。しかし「労働条件・インフレ圧力・インフレ期待・金融市場動向」に関する指標について新たな数値基準を設けることは「政策意図の変更」とみなされることで中銀政策の信頼感低下のリスクなしとしない。今回のフォワードガイダンス文言変更は政策意図の継続性重視というスタンスの反映と考えられる。従って、今回のフォワードガイダンス文言変更はFOMC金融政策についての予想に変更を要するものではない。2014年内に資産購入停止、2015年に利上げ開始との筆者の個人予想を維持したい。

[第1表]
20140323表1

イエレン新議長の労働市場評価はポジティブ:委員の太宗は2015年利上げを予測

イエレンFRB議長の会合後の記者会見冒頭発言テキストでは、声明文同様にフォワードガイダンス文言変更が政策意図の変更ではないことを改めて強調したうえで、雇用最大化と2%インフレ率という政策目標に対する進捗は「総じて不変」とし、従前のFOMCの判断との継続性を強調した。今年に入ってからの経済指標の軟化については声明文で「一部に悪天候条件により、経済活動は冬季に減速した」とした通り、天候による一時要因との見解を示した。

労働市場に関するイエレン議長の評価は概してポジティブである。「労働市場条件は改善を続けた」「縁辺労働者や経済的理由からパートタイム労働に従事する労働者は失業率以上に低下」「労働参加率は上昇」として、議長が重視する労働市場指標の改善を述べている。これは昨年12月の定例記者会見での評価からは明らかに好転している。12月の定例記者会見で当時のバーナンキ議長は「労働参加率の低下」と「求職意欲を喪失した潜在的な労働者」の存在を労働市場の懸念事項として挙げていた。労働市場重視のリベラル派であるイエレン議長が現在の労働市場をかようにポジティブに評価したことは今回のFOMCの数少ないサプライズの一つとも言える。ここには、個人の学説よりも金融政策の継続性を重視するイエレン氏の議長としての配慮がうかがわれる。ただし声明文にもあるように失業率は「高い水準にある」ことは記者会見でも改めて強調された。

なお、3月定例会合では、ほぼ四半期毎に行われるFOMC委員の経済予測が公表された([第2表])。実質GDP成長予測は前回12月時点からほぼ不変で、中心傾向は2014年が2.8-3.0%(第4四半期前年同期比)とされた。一方で失業率については2月までの予想以上の失業率低下を反映して委員予測も下方シフトし、2014年予測の中心傾向(第4四半期)は6.1-6.3%となった。インフレ率については12月予測とほぼ不変で、2014年のPCEインフレ率予測の中心傾向は1.5-1.6%となった。なお、適切な利上げ時期については、2015年の利上げを予測する委員が12月時点より1人増加して13人となり、ほぼ大多数の委員が2015年の利上げを予測するという結果になっている。

[第2表]
20140323表2

成長は上ブレリスクあり、6.5%の失業率は持続的に維持可能

以下、FOMC委員予測と筆者個人の予想を対比しながら金融政策の行方を検証してみる。まず実質GDP成長率のFOMCの予測は、筆者個人の予測に比べてやや楽観的である。筆者は2014年第4四半期の成長率(前年同期比)を+2.4%レベルと見ている。これに対しFOMC委員予測の中心傾向2.8%-3.0%はかなり意欲的な予測といえる([第1図])。しかしながら、米国のGDP統計はここのところ予想比上ブレの傾向があるため、委員予測の実現もあながち非現実的とは言えない。10月の政府機関一部閉鎖の悪影響は予想より小さかっ上、年末から2月にかけての寒波の影響も統計をさほど悪化させているようには見えない。実際、9月時点の2013年成長率予測2.2-2.3%がかなり楽観的に見えたにも拘らず、結果的に同期の成長率が前年同期比+2.5%に着地したことは、引き続き米国経済が上ブレリスクを孕んでいることを示唆する挿話といえる。

次に、失業率についてはほぼFOMC委員の予測とおりの低下が見込めるとみてよいだろう。米国の需給ギャップと失業率との相関から推計される今後の米国失業率は、今後米国が3%成長を継続した場合に2015年初に6.5%にまで低下する計算になる([第2図])。実際の失業率は2月時点で6.7%の水準にあり、この推計値をやや下回るレベルにある。今後労働参加率の持ち直しにより失業率低下ペースはやや減速する可能性が高いものの、FOMCの従前の閾値である6.5%レベルの失業率は概ね今年一杯で持続的に維持できると考えるのが自然であろう。

なお、米議会予算局CBOは2014年2月の「経済・財政見通し」において、米国のマイナスの需給ギャップ推計値を大幅に縮小方向に改訂した(2月1日付当レポート参照)。従前のCBO需給ギャップ推計値からは6.5%の失業率達成は2016年中でも困難との計算であったが、需給ギャップがこれまでの想定より小さかったことからら、失業率の低下予測はより正当化されやすくなったといえる。

[第1図]
20140323図1
[第2図]
20140323図2

インフレ率は今後上昇へ:資産購入の年内停止と来年の利上げ予想を維持する

更に、インフレ率も現在はFOMCの2%目標を大幅に下回っているものの、年内には概ねFOMC委員の予測(中心傾向1.5-1.6%)に沿った水準に回帰すると見る。FOMCが参照するインフレ率である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比の伸びは1月時点で+1.2%と、2%目標を大幅に下まわっている([第3図])。しかしながらこの水準は、需給ギャップとインフレ期待から推計されるインフレ率を大幅に下回っており、いずれは上方に回帰していくと筆者は考えている。[第4図]は、失業率と期待インフレ率(ミシガン大学消費者センチメント調査における12ヶ月後期待インフレ率)とを変数とする回帰分析によるコアPCEデフレーターの前年比の伸び率の推計値とその実績値である。これによれば、現在のコアPCEインフレ率は1.8%レベルが適正との計算になる。FOMCが予測する通り、今後1年間はインフレ率は2%目標を下回るもののその水準に向かって徐々に上昇していくとみておきたい。

今後のFOMC金融政策について、2014年内に資産購入停止を決定し、2015年半ばに利上げ開始するとの筆者個人の予想を維持する。定例会合毎に100億ドルの縮小ペースだと、遅くとも今年12月の定例会合までにはFOMCは資産購入の終了が決定される計算になる。10-12月期の米国成長率(改訂値)は前期比年率+2.4%と速報値から大幅下方改訂となったものの、筆者の当初予想より上ブレた(3月2日付<経済指標コメント>参照)。今年に入ってからの経済指標も寒波の影響はさほど大きくはなさそうである。従って米国経済・労働市場・インフレ率は概ねFOMC委員予測の中央値に整合する形で推移する可能性が高い。イエレン議長は19日の記者会見の質疑応答で、成り行きでの資産購入停止時期を「今年の秋」と述べた。また同じ質疑応答で「資産購入終了後相当の期間」につき「定義はしにくいが恐らく6ヶ月位」と回答したこともこの見方を支持している。

[第3図]
20140323図3
[第4図]
20140323図4

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