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<経済レポート> 年後半にかけ上昇と見る~米国消費者インフレ率

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米国のインフレ率は、FOMCの目標とする2%をほぼ過去2年に亘り下回って推移している。しかし、このインフレ率低下は、エネルギー価格低下や住宅販売の一時的減少を背景とするものといえる。一方で、失業率低下に伴い時間当たり賃金の上昇率が加速しており、需給ギャップやインフレ期待もより高いインフレ率を示唆している。年後半にかけて消費者インフレ率は1.7%レベルに上昇するとの見方を維持する。

米国の消費者インフレ率には底入れ感がある

米国の消費者物価指数(CPI)の前年比の伸びは過去約2年間2%を下回って推移しており、3月時点で総合指数が同+1.5%、コア指数は同+1.7%となっている(4月19日付<経済指標コメント>参照)。FRBがインフレ目標の指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の伸びは更に低く、3月時点で総合指数が前年比+1.1%、コア指数が同+1.2%と、FRBのインフレ目標である2%を過去2年間下回っている。

しかしより短期的な、6ヶ月前対比のCPIの伸び率(年率)は、3月時点で総合CPI、コアCPIいずれも+1.8%の水準にあり、前年比の伸び率を上回っている([第1図])。これは短期的に消費者インフレ率が底入れしている可能性を示唆するものである。

当レポートでは従前より、現在のインフレ率は理論値に比して低すぎることから年末にかけてPCEデフレーターの前年比の伸び率は1.7%レベルにまで上昇すると見てきた。本レポートではこの見方を支持する要因を改めて検証してみる。

[第1図]
20140511図1

エネルギー価格、住宅販売の回復がインフレ率上昇の鍵

CPIインフレ率の低下要因をその品目別に見てみる。まず総合CPIを押し下げているのはエネルギー関連品目である。CPIのうちのエネルギー価格は3月時点で前年比+0.4%の上昇にとどまっている。うちガソリン価格が同-4.7%と大幅に低下している([第2図])。米エネルギー情報局(EIA)によれば、全米の1ガロン当たりガソリン価格は、2012年4月に3.9ドルのピークを付けたのちほぼ横ばいから低下基調にあり、2012年の平均価格3.62ドルに対し、2013年は3.51ドル、2014年に入ってからは3月時点で3.53ドルレベルにある。もっとも今年の1月、2月は寒波の影響でガソリン需要が低下したことが価格が一時的に3.3ドル台にまで低下していた。一方でWTI原油価格先物は今年に入り1バレル=100ドル前後で概ね安定推移している。今後については、米国のロシアに対する経済制裁などどちらかといえば原油価格には上昇圧力がかかりやすい環境である。

エネルギー及び食料品を除くコアCPIの構成品目のうち指数押し下げに寄与しているのは、衣服・新車(乗用車)・住宅造作備品(家具・家電等)である([第3図])。衣服価格の低下は原材料価格の低下を反映したもの、また新車価格は年末にかけての新車販売の一時低迷の反映と考えられる。また住宅に関連する家具・家電製品価格の低下は、昨年来の住宅販売戸数の減少の反映と考えられる。

原油価格は今後上方圧力があり、新車販売は4月に大幅に増加した。住宅販売は依然減少傾向ではあるが、住宅市場の需給はまだタイトであり、住宅の供給が追い付けば再び住宅販売は増加に転じる可能性が高い。

[第2図]
20140511図2

[第3図]
20140511図3

時間当たり賃金の上昇がCPIに先行して加速している

次に消費者物価上昇圧力の一要因としての賃金上昇圧力をみてみよう。[第4図]によれば、CPIの上昇に先行して時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の伸び率が底打ちの後加速しつつあることが分かる。時間当たり賃金上昇率は2008年のリーマンショック以降失業率の上昇と共に低下を続けたが、2012年に底入れし、今年の4月時点では前年比+2.3%にまで回復している。

失業率と時間当たり賃金の関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、現在の失業率(4月時点で6.3%)は、時間当たり賃金の伸びの前年比+2%台後半に概ね相当する([第5図])。したがって、今後は賃金上昇がインフレ率の押し上げ要因のひとつになると考えられる。

もっとも4月のFRB地区連銀経済報告(ベージュブック)によれば「殆どの地区で賃金圧力は抑制されているか最低限である」とされている。2%台の賃金上昇率は歴史的には決して高くはないが、今後失業率が自然失業率の5.5%に近づくにつれて、その伸びを加速させることが期待できる。

[第4図]
20140511図4

[第5図]
20140511図5

需給ギャップと期待インフレ率との回帰では1.7%が適正水準

更に、需給ギャップと期待インフレ率を説明変数、コアPCEデフレーターを被説明変数とする回帰分析を行う。需給ギャップは米議会予算局の「予算・経済見通し(2014年2月)」における同局推計の米国潜在GDPから筆者が試算、期待インフレ率はミシガン大学消費者センチメント調査における12カ月後の期待インフレ率を用いた(なお、過去に失業率と期待インフレ率を説明変数とする同様の回帰分析を行った―3月23日付当レポート参照―が、最近の失業率の急低下により説明力が低下したことから、ここでは失業率に替えて需給ギャップを説明変数に用いることとした)。

結果は[第6図]と[第1表]の通りで、両方の説明変数はいずれも有意となり、現在の需給ギャップと期待インフレ率に相当するコアPCEデフレーターの前年比の伸び率は約+1.7%との結果になった。つまり現在のインフレ率は理論値に比べてやや低すぎるとの結果がここでも出たことになる。以上より、米国の消費者インフレ率は、年後半にかけて+1.7%レベルにまで上昇するとの筆者個人予想を維持する。

因みに、FOMC委員による経済予測(3月時点)によれば、コアPCEデフレーターの前年比の伸び率予測の中心傾向は2014年(第4四半期の前年同期比)が1.4~1.6%、2015年(同)が+1.7~2.0%となっている。筆者個人予想はFOMC委員予想の中心傾向にくらべればやや強気予想ということができる。しかし、インフレ率が今後1~2年をかけて2%の政策目標に回帰するとの見方は同じであり、金融政策についても、年内にFRBの資産購入停止と来年の利上げ開始予想に整合している。

[第6図]
20140511図6

[第1表]
20140511表1


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