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よいマイナス成長: 4Q12米国GDP統計

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12年10-12月期の米国GDP成長率は予想外のマイナス成長だった。しかし、成長を押し下げているのは一時要因にすぎず、個人消費などの経済のコア部分はむしろ加速していて「よいマイナス成長」といえる。その後公表された雇用統計、ISM製造業指数も景気拡大が堅調から加速に移りつつあることを示唆している。2013年通年の成長率約+1.8%という筆者個人の見通しは維持する。

成長を押し下げたのは一時要因

1月30日に公表された米国の2012年第4四半期(10-12月期)実質GDP成長率は、前期比年率-0.1%と予想外のマイナス成長となった。筆者個人の予想(1月28日付当レポート参照)は+1%台半ばだったから、結果は大幅な下ブレである。また、四半期の成長率がマイナスになるのは2009年第2四半期以来のことだ。

しかし内容を見てみると、この指標は見かけほど悪いものではない。表面の成長率を押し下げたのは、在庫や政府支出の一時的なマイナス要因にすぎない。むしろ個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内民間最終需要部分は伸びが加速している。米国実体経済は堅調な成長がつづいているといっていいだろう([第1図]参照)。

[第1図]
20130203図1

政府国防支出の大幅減少は支出時期ブレの可能性

成長がマイナスになった主因は、政府支出の大幅な減少と企業在庫増加ペースの大幅な減速である。この2項目で成長率がそれぞれ-1.33%、-1.27%、あわせて実に-2.6%押し下げられている。

政府支出の大幅減少の要因は、連邦政府の国防支出の減少(前期比年率-22.2%)だ。国防支出の減少理由は定かではない。ひとつには単純な支出時期のずれが原因と考えられる。国防支出は前7-9月期に同+12.9%増加している。10-12月期はその反動で見かけの支出が減少した可能性がある。

一方で、オバマ政権の政策から国防費の抑制が継続的になされているという構造要因である可能性も否定できない。イラク、アフガニスタンから軍事撤退により国防支出は2011年に-2.6%、2012年に-3.1%減少している([第2図]参照)。

さらに、「財政の崖」と連邦政府債務上限問題が国防支出減少の原因だった可能性がある。富裕層増税等とともに予算管理法 1)による歳出自動削減を2カ月凍結する法律2) が年初に成立し、「財政の崖」問題は一旦2末まで先送りとなった。また1月31日には、連邦議会上院が政府債務上限の暫定撤廃を5月18日まで認める法案3)を可決し(下院は1月23日に可決済み)連邦政府債務上限問題のリスク顕現も先送りとなった。しかし、3月以降予算管理法に基づく歳出自動削減が実施される可能性はまだ残っている。すると国防支出(裁量支出)は年間約425億ドル(約-7.3%)削減されることになる4)。昨年10-12月期時点ではこれらの事態の先行きが不透明であったことから、国防省には支出抑制の圧力がかかっていたとも報道されている(1月30日付WSJ紙)。

しかしながら、いずれの要因にせよ年率-20%を超える国防支出の減少がこのペースで継続することは考えにくい。今後連邦政府支出には引き続き抑制圧力がかかるものの、10-12月期の大幅減少は一時的な要因と見たい。

[第2図]
20130203図2

企業の在庫調整も一時要因と見る

企業在庫は10-12月期に増加ペースが大幅に減速し、政府支出とともに成長率を予想外に大きく押し下げる需要項目になった。現在の米国の企業在庫の水準をみると、在庫調整局面に入りつつあることは確かだ。ます、2012年11月時点の在庫売上高比率は1.28である。米国の在庫売上高比率は通常1.25~1.30の間で推移する。従って現在の企業在庫は、景気悪化時にみられる過剰感はないものの、通常の在庫調整局面にはあるといえる([第3図参照])。次に在庫循環図によれば、企業在庫は現在「意図せざる在庫増」局面にあり、次の「在庫削減」局面への移行時期にあることが分かる([第4図])。これらより、今後も当面米国では在庫調整が続くと考えられる。

しかし今後の在庫調整は、厳しい在庫削減をともなうものにはならないだろう。過去約半年間の在庫積上がりの背景は、海外経済減速による輸出減少、10-11月のハリケーンの影響などが考えられる。海外経済には概ね底入れ観が出てきているうえ、小売売上高などに表れる企業売上は好調に伸びている。また上記の在庫売上高比率からわかるように、在庫水準自体が通常の在庫循環の域を出ない。さらに最新11月分の在庫統計をみると、11月末時点の企業在庫残高は9月に比べ増加していることになっている。GDP統計上の在庫項目は上方修正の可能性もある。

こうしたことから、10-12月期の在庫大幅減少も一時要因であり、今後の在庫増加ペースはやや減速するものの、大きく成長を押し下げる要因にはならないと見る。

[第3図]
20130203図3

[第4図]
20130203図4

個人消費・設備投資・住宅投資の成長は加速した

一方、米国経済の中心をなす内需項目は拡大が加速した。個人消費は前期比年率+2.2%、設備投資が同+8.4%、住宅投資が同 +15.3%といずれも7-9月期を上回る成長だった。これらの3項目の合計(国内民間最終需要)は前期比年率+3.7%と2012年1-3月期以来の高い伸びになり、成長率を+3.2%押し上げた。米国経済のコア部分である内需は堅調から加速に転じつつあるといっていいだろう。

特に設備投資は、筆者個人の予想(前期比横ばい)を大きく上回る好調な伸びだった。構造物投資(建物など)は予想通り同-1.1%のマイナス成長だった。しかし機器ソフトウエア投資が同+12.4%と、7-9月期の同-1.8%から大きく反発している。基礎統計である非国防資本財出荷の動きからはやや上ブレしている数字ではある。今後設備投資はやや減速しながら年率4~5%の伸びを続けると見る。

個人消費は筆者予想よりやや弱めだったがそれでも同+2.2%の伸びを確保した。堅調な雇用の伸びが個人消費を支えていたことが明らかになった。1日に公表された1月の雇用統計でも非農業部雇用者数は前月比+157千人の増加を見せたほか、年次改訂で2012年分の雇用者数が大幅に上方改訂されている。

確かに今後は今年はブッシュ減税の一部終了と給与税増税が個人消費を抑制するだろう。さらに消費者信頼感指数をやや押し下げているという事実もある。しかしながら一方で、株価の上昇は想定を上回るペースだ。1日にNYダウは2007年10月以来の14000ドル台まで上昇して引けた。こうした環境からは、今後の消費者センチメントの低下は限定的で、引き続き消費も堅調な伸びを続けると見る。

「よいマイナス成長」2013年通年成長率は1.8%予想を維持する

こうしたことから、今回のマイナス成長は表面の数字は悪いが内容は好調で、米国経済が堅調から成長加速に向かいつつあることを示唆している。いわば「よいマイナス成長」だといえる4)

本指標公表の結果、2012年通年のGDP成長率は前年比+2.2%に着地した。これは前年2011年の同+1.8%からやや加速した伸びだ。今後は、10-12月期のマイナス成長がほぼ一時要因として、在庫と政府支出には1-3月期に反動増があるものと見る。したがって2013年通年で前年比+1.8%の成長との予想を維持することができる([第5図])。

上記の雇用統計のほか、1日に公表された1月分ISM製造業指数もこの見方を支持している。同指数は1月に53.1%と、昨年5月以来の水準に上昇した。このレベルはGDP成長率でいえば3%近い成長に相当する。同指数を構成する5つのDIはいずれも50%以上を維持して上昇。うち雇用DIは5つのDIのうち最も高い54%に達していて、今後も雇用市場が堅調な拡大を続けることを示唆している([第6図])。

[第5図]
20130203図5

[第6図]
20130203図6

1)Budget Control Act of 2011
2) H.R.8, The American Taxpayer Relief Act of 2012
3) H.R. 325, No Budget, No Pay Act of 2013
4) Center on Budget and Policy Priorities, “Here’s How the March 1 Sequester Would Work” January 22, 2013
5) 調査会社Global EconomicsはこのGDP統計を”the best-looking contraction in the U.S. GDP you’ll ever see”と評している(The Wall Street Journal, January 30, 2013)。


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