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<経済レポート>緩やかな拡大再開へ~米国設備投資

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1-3月期には在庫・設備投資・輸出といった企業部門が米GDPを大きく押し下げ、実質成長率(改定値)は前期比年率-1.0%のマイナスに転化した。短期的には悪天候要因による供給停滞の反動もあり民間設備投資はプラス成長に戻ると見る。しかし中期的には企業収益・キャッシュフローの飽和感と、設備稼働率回復ペースが遅いことで、民間設備投資の拡大は緩やかにとどまると見る。

企業部門がGDPを押し下げた

5月29日に公表された米1-3月期実質GDP成長率(改定値)は、前期比年率-1.0%と12四半期ぶりのマイナス成長に転化した(速報値は同+0.1%)。尤も、内容は表面の数字ほどには悪くない。米国経済をけん引している個人消費は同+3.1%と2四半期連続で3%台の高成長を示現し、成長に+2.09%寄与した。成長を押し下げたのは企業在庫(寄与度-1.62%)、純輸出(同-0.95%)、民間設備投資(同-0.20%)といった企業部門であった([第1図][第2図])。また住宅投資(同-0.16%)、政府支出(同-0.15%)も成長率を押し下げる要因になった。

GDPの押し下げ要因が主に企業部門であることは、循環要因や天候要因によるところが大きい。企業在庫は在庫調整という循環的要因であり、米国の場合4~6四半期で調整が終了する。純輸出(財・サービス赤字の拡大)は、財・サービス輸出が前期比年率-6.0%のマイナス成長というやや稀な要因である。財・サービス輸出の月次の推移を見ると食品と資本財を中心に1月~2月に輸出が急減したものの、3月以降は増加に転じていることから、輸出減少は悪天候による生産縮小が主要因と考えられる。

一方、民間設備投資も悪天候による生産停滞が一要因ではあるものの、成長への寄与度は過去5四半期にわたり1%を下回っている。2013年11月30日付当レポートでは、設備投資と企業キャッシュフロー及び設備稼働率の関係から、設備投資の拡大ペースは緩やかなものに留まるとの見方を示したが、以下に見るとおりその状況は現状でも大きく変わっていないようだ。

[第1図]
20140609図1
[第2図]
20140609図2

今年後半にかけて民間設備投資は拡大に転じると見る

まず、短期的な民間設備投資の動向を予想してみよう。GDP統計上の民間設備投資のうち機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の四半期毎の推移を見ると、4-6月期は4月までで前期比年率+9.4%と、前期の同横ばいから大きく反発している。月次統計では1月をボトムに増加傾向に転じており、寒波の影響が払しょくされたことが示唆されている。また、先行指標となる同受注も4月までで同+15.5%と、今後年後半にかけて民間設備投資が加速することを示唆している([第3図])。

企業景況感の推移もこの見方を支持するものだ。ISM製造業指数のうちの受注DIと生産DIはそれぞれ1月と2月をボトムに反転上昇している([第4図])。5月ISM製造業指数調査では「自動車部品用の棒鋼の需要が高く、供給はタイトで価格が上昇している(鉄鋼業)」「業況は予想通りやや向上している(一般機械)」「業量は増加しつつある(化学工業)」といった回答がみられる。また、フィラデルフィア連銀企業景況感指数のうちの設備投資DI(6ヶ月先)も、4-6月期(5月まで)で2004年第4四半期以来の高水準に上昇しており、今後半年間に企業設備投資が増加することを示唆している([第5図])。同調査による設備投資DIは2012年7-9月期をボトムに上昇基調にあるにもかかわらず、実際の民間設備投資実績が低調に留まっていることは、設備投資が地政学要因や天候要因などの外的要因で一時的に抑制されていることを示唆している。企業の設備投資意欲自体は高水準にある。

以上より、筆者は4-6月期以降GDP統計上の民間設備投資が平均して前期比年率+6%レベルの成長を継続すると個人的に予想している。2014年通年では前年比+3.8%と、2013年の同+2.7%を上回る成長を見込む。

[第3図]
20140609図3
[第4図]
20140609図4
[第5図]
20140609図5

企業収益と設備稼働率は設備投資の緩やかな拡大を示唆

しかしながら、中期的には企業の設備投資が個人消費ほどの力強い拡大をする材料には乏しい。好況期には民間設備投資は2桁の成長をするのが経験則である。しかし来年にかけても民間設備投資の伸びは1桁台にとどまりそうだ。その要因の一つは企業収益の伸びの鈍化である。商務省統計によれば、4-6月期の企業収益(在庫評価及び資本減耗調整後)は前年同期比-3.0%と2009年以来のマイナスの伸びに転化した。また、GDPに対する企業収益の割合(企業分配率)も、リーマンショックから回復して2000年代に入ってからの最高水準である12%台にまで上昇したのちは横ばい状態が続いている([第6図])。上記のISM製造業指数調査においても、化学工業において売上増加にも関わらず価格転嫁が困難で利鞘確保が困難との回答がみられた。

同じく企業キャッシュフローの伸びも伸び悩んでいる。企業ネットキャッシュフロー(税引前利益‐ネット配当支払+固定資本減耗)は2014年1-3月期に前年同期比-6.6%と過去8四半期中3四半期でマイナスの伸びになっており、設備投資の源泉である企業キャッシュフローの拡大ペースが頭打ちになっていることを示唆している。一方で設備投資のキャッシュフローに対する比率は上昇傾向にあり、1-3月期時点で99.3%と、2008年の金融危機前以来の100%に接近している。設備投資/キャッシュフロー比率が100%を超えることは企業が当期の新たな現金取得額よりも多くの資金を設備投資に投入することを表す。米企業の設備投資/キャッシュフロー比率は中期的には低下基調にあり、企業がおおむね設備投資額をキャッシュフローの範囲内に収める傾向があった。しかしここにきて設備投資/キャッシュフロー比率が上昇していることは、企業の設備投資意欲がその財務状況を上回るものであることを示唆している。

設備投資の供給サイドの事情は上記の通りであるが、需要サイドの指標として設備稼働率を見る。鉱工業の設備稼働率は4月時点で78.6%と、リーマンショック前の水準である80%台をいまだ回復していない。また長期的な米国の平均設備稼働率(1972~2013年平均)は80.1%であるが、現在の水準はこれをも下回っている。実質GDPがリーマンショック前の水準を2011年に上回ったにも関わらず設備稼働率の上昇ペースが鈍いのは、設備投資のペースが成長を上回っていて過剰設備状態が続いていることを示している。企業収益状況と設備稼働率は、民間設備投資の拡大が今後も緩やかであることを示唆している。

[第6図]
20140609図6
[第7図]
20140609図7

企業在庫もあと2四半期は成長にマイナス寄与と見る

ここで、2013年11月30日付当レポートで見た、企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率を外生変数、名目民間設備投資を内生変数とする回帰分析をアップデートする。企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率及び名目民間設備投資の年次平均データの対数値を取り、外生変数のラグ期間を1年として回帰を行った結果が[第8図][第1表]である。2014年第1四半期までの企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率に基づく2014年の名目民間設備投資は2013年の前年比+8%から加速して同+12%の伸び(インフレ率差引後の実質ベースでは10%前後)となる計算になる。これは上記の筆者個人予想よりはやや強めの結果ではあるものの、持続的な2桁成長を担保する結果でないことは上記と整合している。2015年以降は今年の企業キャッシュフローと設備稼働率が大幅に好転しない限り設備投資拡大ペースは大きく加速はしないことになる。米国経済において企業部門は家計部門に遅行して回復しているものの、そのペースは引き続き緩やかにとどまりそうだ。

なお、1-3月期に大幅に積み増しペースを減速させて成長率を-1.6%押し下げた企業在庫は、現在在庫調整局面にある。米国の在庫循環図は寒波の影響でやや歪んだ形になっている。昨年11月までは在庫積み上げペースが加速していたが、ホリデー商戦に当たり政府債務上限問題などへの警戒感から12月にペースがやや減速した。その後は寒波の影響で企業売り上げが減少するのに合わせて在庫積み増しペースが減速した。5月以降は企業売上が再び増加に向かっているとみられるが、5月ISM製造業指数・非製造業指数のいずれも、在庫DIは前月比横ばいで、まだ在庫積み増しの兆候は見られない。4-6月期は在庫調整からはいわば意図せざる在庫減少局面に当たり、企業在庫は7-9月期までは成長にマイナスの寄与を続けると予想する。

[第8図]
20140609図8
[第1表]
20140609表1

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