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平行線は継続~オバマ大統領一般教書演説の経済政策

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オバマ米大統領の一般教書演説で示された経済・雇用政策には特段のサプライズはなかった。従前通り民主党・共和党の主張は平行線である。今月は引続き自動赤字削減の回避如何に注目する。

経済・雇用に重点、これまでのオバマ大統領の政策の延長

12日に行われたオバマ米大統領の一般教書演説は、ほぼ市場の予想通り経済・雇用対策に重点をおいたものになった。大統領が演説で主張した主な経済・雇用政策は以下の5つである。
1. 自動歳出削減回避のための税制改正実施
2. 雇用拡大のための米国雇用法案の完全立法
3. 持家保有者の住宅ローン借換促進
4. 連邦政府の定める最低賃金引上げ
5. 企業の新規雇用と設備投資に対する税還付実施

歳出自動削減回避のための税制改正をあらためて主張

オバマ大統領は、具体的政策の冒頭に連邦政府自動歳出削減回避をおいた。3月1日から発動予定の自動歳出削減sequesterを”悪いアイディアreally a bad idea“と評した。さらには「議会の一部の人々が、防衛費の削減を回避して、教育・職業訓練・メディケア・社会保障費などの費目を大幅削減をしようとしている」ことは「なおさら悪い」と、共和党の財政主張を事実上の名指しで批判した。

自動歳出削減に代わる財政赤字削減策として「富裕層やコネのある人のための税の抜け穴や優遇措置の廃止」を主張した。これは去る5日に大統領が表明した提案と同内容である。

これに対し共和党ベイナー下院議長は、演説後直ちに他のいくつかの論点とともにホームページで反論を展開した。まず大統領が”bad idea”と呼んだ自動歳出削減(2011年予算管理法)はそもそも民主党の提案であると反論。さらに、共和党は自動歳出削減の代替案として、政府歳出の無駄の削減を中心に据えた法案を共和党多数の下院ですでに2本可決した実績をアピールし、オバマ大統領の事実上の名指し批判を反批判している。

党派色の強い米国雇用法案の完全立法を要請

次に雇用対策として、大統領米国雇用法案American Jobs Actの完全立法化を議会に要請した。米国雇用法案とは、オバマ大統領が2011年9月に提案した一連の雇用創出政策である。

当時は欧州財政懸念で景況感が急速に悪化し、かつオバマ大統領が再選をめざす大統領選挙の1年2ヶ月前だった。オバマ大統領は当時同法案と同時にいわゆる「バフェット増税」を提案し、選挙戦開始を意識してか急速にリベラルな党派色を全面に打ち出したことで知られている。

同法案の中からは、給与税減税や拡大失業保険給付の延長など一部が立法化された。12日の一般教書演説ではこれらの完全実施を議会に要請したが、現実にはこうした党派色の強い法案がねじれ状態の議会で完全成立する可能性は低いといえるだろう。

住宅ローン借換促進策にはリスクもある

持家保有者対策として大統領は、住宅ローン借換条件を緩和し持家保有者が現在の低金利のメリットを享受できる法案の採決を議会に要請した。住宅価格がローン残高を下回る状態、いわゆるunder waterの住宅ローン債務者に対して住宅ローン借換を許容することで、債務者の返済負担を軽減しかつ数年後にはunder waterを解消できる仕組みだ。これは2012年2月に大統領が提案した法案である。

過去に高金利で借り入れた住宅ローンを現在の低金利で借り換えることで、持家保有者は一人当たり年平均3000ドルの借り入れコスト削減になると大統領はのべている。住宅価格がローン残高を下回る状態のため借換ができず、低金利のメリットを享受できない持家保有者を救済する政策だ。

既にリーマンショック以降、住宅公社の保証対象のローンを中心に住宅ローン借換条件(特にLTV=住宅ローン残高/住宅価格比率)の緩和はいくたびか行われており、この政策もその延長線上のものといえる。しかし、借り入れ条件の度重なる緩和は、損失発生の場合住宅公社ひいては政府の負担を増大するリスクもあることは留意するべきである。

最低賃金の9ドルへの引上げは政治的には困難

また大統領は、連邦政府の定める時間当たり最低賃金を現在の7.25ドルから9.00ドルに引上げることを提案した。過去オバマ政権下の2009年に連邦最低賃金は6.55ドルから7.25ドルに引き上げられた。今回はこれを更に9.00ドルに引上げようとの提案だ。

この引上げにはかなりインパクトがある。米国では連邦政府の定める最低賃金と各州の定める最低賃金があり、原則両者のうち高い方が適用される。前回の連邦最低賃金引上げ時には、実際にそれに合わせて最低賃金の引上げが必要になった州は一部だった。現在でも、州最低賃金が連邦最低賃金7.25ドルを上回っている州が19州ある。

しかし、現在最低賃金を9.00ドル以上に定めている州は1州もない。つまり連邦最低賃金が9.00ドルに引き上げられれば、全ての州で最低賃金の引上げが発生することになる。これは企業の反発などを考慮すれば政治的にはかなりの困難が予想される引上げである。

雇用に対する法人税還付の実効性は疑問

経済政策の5番目として大統領は、新規雇用や設備投資をおこなった企業に対する税還付を主張した。雇用を増やした企業に法人税還付をすることはオバマ大統領が常々主張してきた政策だ。しかし現実には、企業にとって税還付を受けるために必要以上の雇用を行うインセンティブはうすく、効果のほどは疑問といえるだろう。

自動歳出削減回避の両党妥協がメインシナリオ

総じて一般教書演説での経済・雇用政策には目新しいものはなく、大統領の従来の政策を確認した結果になった。共和党はその多くに反対を表明しているが、共和党側のほうも増税反対に固執するあまり実効性のある対案を示しているとは言い難い。

当面は3月初からの自動歳出削減回避の如何に注目したい。何らかの妥協案や先延ばし策が議会で合意されると個人的には憶測している。その場合は今年の米国経済への影響は軽微にとどまるだろう。一方、自動削減完全実施の場合は今年の成長率が約-0.5%押し下げられて+1%台前半になる計算であることは2月10日付当レポートで見たとおりである。


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